石世界の錬金術師   作:ポンタ ponta

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 なんか千空の口調が分からなくなってきた。
 ちょっと分かりづらいと思いますが、賢者の石(ボロス視点)=愚者の石(ニコラ視点)です。


第23話 古代の錬金術師

 人工衛星から出てきた黒い影は、形を崩したかと思えば辺りを包み込むように広がった。

 

「ずっと、俺らの傍にいたのか」

『その通り』

「賢者の石。それそのものがニコラ・フラメルか……!!!」

 

 そうしている間も、何処からとも無く賢者の石が姿を現し、夥しい数の賢者の石が視界を埋め尽くす。

 

『残念ながら半分ハズレだ。答え合わせをしてやろう』

 

 そして、真実が明らかとなる。

 

 全てはエジプト。カイロから始まった。

 ニコラ・フラメルが黄金の錬金術師であるクフ王について調査している中、ピラミッドの中で三葉結び目の石を発見した。

 それに錬金術的価値があると判断したニコラ・フラメルはそれをフランスに持ち帰り、研究した。

 

 その結果、不老不死を齎すことが示唆された。

 しかし石化は不必要なものであり、石化しなくとも不老と不死の効果が欲しかった。

 妻であるペレネル・フラメルは錬金術師ではなく科学者であり、1人で研究するには人手が足りなかった。

 そこで、ニコラ・フラメルは人間を錬成した。つまり人造人間であるホムンクルスを作製し、数多のホムンクルスの中でも一番錬金術の資質が高かった個体に永遠を表すウロボロスから取り、ボロス・フラメルの名を名付けた。

 

 錬金術で生まれたボロス・フラメルはニコラ・フラメルを凌ぐ程の錬金術の才能を有しており、物心つく頃には基礎的な錬金術を習得していた。

 それを目の当たりにしたニコラ・フラメルは、こう思った。

 

 このままいけば、どれ程のものを創り出すのかと。

 

 ボロス・フラメルはホムンクルスだ。人造人間とは言え寿命がある。そして自身にも寿命がある。

 その寿命問題を解決しなければならない。

 ホムンクルスを錬成した経験から、魂の研究も始めた。そのお陰で、クフ王の石が魂で動作し、かつ石化の効果を排除する石を錬成することができた。しかし石化を介さず石を使うには、一般人の魂では力不足だった。

 そこで呪術師としての力を持っていた己の妻の魂を使い、ボロス・フラメルが18歳の時に不老不死を齎した。しかし自分を巻き込む前に石は崩壊してしまった。

 

 こうなってしまえば、自身は死神から逃れられない。

 ボロス・フラメルの行く末を見られない。

 

 特に後者は重要だった。百年もあれば、いや数十年でボロス・フラメルは至高の錬金術師となれるだろう。錬金術の秘伝をものにして、過去の錬金術師を彼方へと追いやれる。

 しかし肉体は既に老いに蝕まれている。あと十年だって生きられるかどうか。

 

 そこで、閃いた。

 既にボロス・フラメルには賢者の石という錬金術の最奥を見せている。

 ならば必ず賢者の石の錬成にまで辿り着ける筈だ。その道筋は何も己が通った道でなくても良い。寧ろ違った方が価値がある。

 

 そうして、ニコラ・フラメルは自身の死を偽装してボロス・フラメルを世に解き放った。

 

 ボロス・フラメルが自身を探していることは分かっていた。そのため、フランスから出てアメリカへと渡った。

 アメリカ政府に潜り込み、石化と復活を繰り返し死から逃れること数百年。目覚めた時、世界は第二次世界大戦の真っ只中だった。

 1945年ハリー・S・トルーマンにより石化を解かれたニコラ・フラメルは、世界の状況を把握するのと同時に人間を見限った。

 

 何故争う?

 何故奪う?

 力でしか解決できない愚かな(ニンゲン)が。

 

 そう思いながらも、契約上ニコラ・フラメルはアメリカに協力した。錬金術の存在を鼻で笑った科学者の頭を消し飛ばし、オッペンハイマーらと共に核兵器を完成させた。

 

 勝利を祝うアメリカを冷めた心で過ごし、大統領に引き留められるもアメリカを出た。

 ブラジルの秘境で今後の計画を練る中、密かに決意した。

 

 一度(ニンゲン)をリセットしよう。

 

 もちろん、全ての人間が愚かだとは思わない。思考能力(知性)が著しく低い、愚かな(ニンゲン)のみをリセットする。

 石化効果を持つ石を愚者の石と名付け、己の魂を分割して搭載し、石板を作製した。

 それと同時に、肉体の死から逃れるために魂を愚者の石に移し、酸化による機能不全を防ぐために空気のない宇宙へ、月へと移動した。

 

 月面の星条旗から、地球を見上げ、魂の繋がりを利用して石化光線を発射した。

 雀を目的としたのは、石化という現象に世の科学者がどこまで理解できるか試すためだった。

 しかし、アメリカを含め殆どの大国は石化をどう軍事利用するかで議論して、石化の解明に勤しむのは日本だけだった。

 

 やはり人類は一度リセットする必要がある。

 

 地球が石化光線に包まれたのを確認したのち、愚者の石の複製と自己の複製を始めた。

 魂の分割を行い、自我を複数持つことで擬似的な不死を再現する。

 しかし己から分割した魂は愚者の石に収めたせいか知能が低く、多く見積もっても6歳児程度の知能しか持たなかった。知能が育つには多くの時間が必要となり、(ニンゲン)をリセットするという目的を果たしたニコラ・フラメルは、そこで再び眠りに就いた。

 

 複製した自分に起こされた。報告によると、地球に生き残りがいるらしい。

 おそらく宇宙飛行士の末裔だろう。愚者の石をその島に送り偵察してみれば、文明は望んだ通り崩壊し文字すら持っていなかった。

 そのまま観察を続けていると、島内で内戦が起こった。やはり宇宙飛行士の末裔とはいえ、文明が崩壊すれば人間は猿になる。

 もう一度滅ぼそうと思ったが、考え直した。

 現代において人間は愚者の石を戦争道具として認識したが、野蛮人はどう認識するのか気になった。島というのも丁度よく、閉鎖系での実験となり予測が立てやすい。

 適当に発動方法を伝えつつ、いくつかの愚者の石を投下した。

 案の定、戦争の道具として使い出したが、内戦が終結すると愚者の石は神聖な物として扱われ始めた。

 神聖故に、神罰として石化が使われ始めた。

 どんな結果になるかある程度予測していたため、予想外の結果にならず興味を失った。

 

 再び眠りに就き、数百年。今度は面白い奴がいると報告された。

 興味を唆られ見てみれば、確かにそれは興味深い存在だった。

 リソースが無ければ地球へと墜落する筈のISSが一基だけ残っていた。その核となるロボットは自力でISSを修復し、足りないものを考えゼロから必要なものを創り出していた。

 

 素晴らしいと思った。

 

 だから機械の肉体に生物的な機構を搭載し、観察用に愚者の石も内部に封じた。

 これで世界最高のロボットの完成だ。素体IDとして刻まれていた製作者――石神百夜も喜ぶに違いない。

 満足感とともに眠りに就き、そしてその日が訪れた。

 

 巨大な電波を検知したのだ。

 

 石化は脳を限界まで使うと解除される。つまり思考能力(知性)が低い(ニンゲン)は復活できない。

 更に3700年という年月は、解除要件を満たしていない。

 

 なのに、何故(WHY)

 

 考えられるのは、ボロス・フラメルによるコンタクト。 

 

 誰だ(WHO)

 

 投げかけた問いに、返ってきた声は見知らぬ男の声。

 

 何故だ?

 何故ボロスじゃない?

 ――何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)? 何故(WHY)

 

 ――悟った。

 いや、正直に言うと薄々気付いていた。

 人類石化後、何のコンタクトも無かった以上、ボロス・フラメルは石化を解けなかった。

 凡人の域を出なかったのだ。

 失敗作だった。

 

 それはあまりにも認め難い現実だった。

 自身の手掛けたホムンクルスは失敗作で、期待した至高の錬金術は幻だったのだ。

 

 しかしボロス・フラメルに失望するのと同時に、この男――石神千空に興味が湧いた。

 先程述べたように、3700年は石化解除の要件――①エネルギーの枯渇による解凍②ナイタール液による解除、のどちらも満たさない。だがこの男は何らかの手段で復活を果たした。硝酸、あるいはアルコールのみで復活を果たしたのか?

 答えはなんであれ、この男はこれ程大きな電波を放てるほどの科学を築き上げた。更に、ナイタール液で復活させたと思わしき猿もいた。

 

 まさか復活してからまともな実験設備も無い中、答えを導き出したのか?

 

 だとすれば、なんと素晴らしい人間だろうか。

 是非とも欲しい。

 そしてボロス。無能な奴はもう要らん。

 錬金術の素材にでも使った方が有用だ。何なら私の方がその肉体を有効活用できる。

 

 監視としていくつかの愚者の石を地球の側に配置した。

 そして以前島に投下した愚者の石に通信を試みた。魂の繋がりから察するに残っているのは一つだけ。更に酸素による酸化、潮による錆などの劣化のせいか、自我は失われていた。しかし傍聴は可能であったため、そのまま道具として放置することにした。

 

 地球の監視を続けているうち、アメリカ・カリフォルニア州からの電波を検知した。日本で電波を検知してから約半年後の出来事だった。詳しく観察してみると、多くの人間の姿が観察された。また工場の存在も発覚し、優れた科学者の存在が示唆された。

 

 電波を傍受し、判明した科学者の名前はDr.ゼノ。

 こちらは復活者全員が優れた人間のように思えた。石神千空とは違い、復活液までは辿り着けていないようだ。

 しかし一つの科学だけでなく、万に通じている事は確かだ。優れた人間であることは疑いようの無い。

 

 石化を起こさなければこの2人は世間に埋もれ、愚者によって支配されていただろう。石化は間違いでは無かった。愚か者が淘汰された、人間にとって理想の世界となったのだ。

 

 そろそろ私も本腰を入れて研究しよう。

 人間が未だ辿り着けない境地までの道のりを。

 

$$G_{ \mu\nu }+\Lambda g_{ \mu\nu }= \frac{8πG}{{c}^4} Tμν$$

 

 アインシュタイン方程式を元にした理論の構築と修正に没頭している中、大気圏外からでも視認できる程の石化光線が放たれた。

 監視していた分身から一連の出来事の報告を受け、結果を予測した。

 (原始人)人間(科学)の対決だ。あの男が率いるチームが勝ったに違いない。

 コンタクトを取るべく、地球の直径を指定した起動ワードを電波に乗せて送った。

 地球の直径と、石神千空の声を模したことにより、大まかに私の居場所と科学力を推し量ったところだろう。

 案の定、向こう側からコンタクトがあった。

 正直、出来損ない(ボロス・フラメル)が石神千空らと行動を共にしていたのは予想外であったが、僥倖だった。

 アメリカの科学者の居場所を伝え、月に来るよう命じた。奴は失敗作であっても錬金術師。月に来れないなどあり得ない。

 

 ――だというのに、無能はアメリカに負けた。もはや無能いう名すら奴には惜しい。廃棄物の方が似合っているだろう。

 その後の行動すら私の癪に障る。

 ブラジルで安易に愚者の石板を発動させ、石化光線で地球を包み、12年のロスを生じさせた。

 

 ひたすら私の計画の邪魔をする廃棄物に反吐が出る。

 もはや猿だ。淘汰されるべき汚物だ。

 

 運よくロボットの愚者の石を無効化したようだが、関係ない。月に来たら良いように錬成してやる。

 

 ――そして今、ようやく私の前までやって来た。

 

 

 

 

 

【第23話 古代の錬金術師】

 

 

 

 人類選抜。

 それが人類を石化させた目的だった。

 結果、得られたのは世界最高峰の頭脳の持ち主。

 

 ニコラ・フラメルはこの時を待っていた。

 

『Dr.千空、Dr.ゼノ。君らは人類の中でも優れた頭脳を有している。よって、君らを私の部下として招き入れてやる』

「んで、俺らを仲間に引き入れて何が目的だ?」

『人類未踏の科学の境地に進みたい』

「具体的には?」

『宇宙の外側だよ』

 

 その言葉に、思わず千空の眉が跳ねた。

 

『今も加速・膨張を続ける宇宙。その外側には何があると思う?』

 

 宇宙に関する研究はずっと続けられていた。

 ダークマターの正体は?

 ダークエネルギーの正体は?

 ビッグバンの前には何があった?

 

 その中でも、宇宙の外側に関する研究もあった。

 そもそも外側という概念がない。

 地球と同じく面積は有限で端がない。

 宇宙の外にも宇宙があるマルチバース説。

 様々な仮説はあるものの、真実は明らかとなっていない。

 

『どうだ? 唆らないか?』

「クククッ分かってんじゃねーか」

『なら』

「だがその提案、断らせていただくぜ」

『何故だ?』

「テメーでいうとこの猿が、俺の仲間なんでね。そいつらを置いてはいけねぇよ」

『有象無象の猿など滅んだ方が世の為だ』

「長生きし過ぎてボケたかテメーは。色んなヤツがいる=科学だ。色んなヤツが一步ずつ科学を進めた結果、俺らは今ここ(月面)にいんだよ」

 

 千空が取り出したのは、石器。

 原始のストーンワールドで、皆の力でここまで来たのだ。

 そう訴えるかのように、石器を強く掲げた。

 

『Dr.ゼノ。君はどうだ?』

「生憎だが、私も親友が居てね。断らせてもらおう」

『そうか。残念だ』

 

 交渉は決裂。

 ならば次に繰り出されるのは恐喝に決まっている。

 

『そこまで猿が大事なら、失ってしまえば元も子もないだろう』

「地球の石化か? 悪いが先手は打ってある。テメーが猿と言ったボロスのお陰で、石化されても復活できるように手筈は整ってんだ」

 

 リザレクション・ウォッチ。それを地球上のほぼ全員が装着し、更に石化復活液のタンクすら準備してある。

 たとえ石化光線を放たれても、必ず誰かが生き残るように仕組んである。

 

『それを、私が想定していないとでも思ったか?』

 

 だが、ニコラ・フラメルは更にその上を行く。

 それを証明するように、夥しい賢者の石の一部が波打ち、そこから千空達と同じ宇宙服がゆっくりと出てきた。

 

『お前達の仲間だろ』

 

 その中身は石化した龍水だった。

 挑発的な笑みが刻まれたまま、時が止まっている。

 

『選べ。このまま猿を見殺しにするか。私の部下になるか』

 

 突きつけられた2択に、かつてスタンリーが千空に告げた言葉が蘇る。

 

『――ここで全員死ぬまで抵抗するか、誰も死なずに俺達アメリカの科学王国のメンバーになるか』

 

 千空は降伏を選んだ。

 それは何故か?

 答えは単純――既に錬金術師(ジョーカー)は沈黙していたから。

 

「クククッ」

 

 だが今は隣にいる。

 だからこそ、千空はニヤリと口角を上げて吠えた。

 

「選べよ伝説の錬金術師! ゼノと俺の記憶を消去されるか、尻尾を丸めておねんねするか!!!」

 

 ボロスの両手は既に合わされ、ゼノと千空の肩に触れている。ニコラ・フラメルが妙な動きをすれば、一瞬のうちにボロスが2人の記憶を消すのだろう。

 

『……』

 

 ニコラ・フラメルが欲するものはゼノと千空の思考能力及び科学知識。

 だかもし、それらが失われれば前提条件が崩れる。

 そうなってしまえば猿しかいない地球を観察する意味は無く、ならば研究は滞る。人類未踏の科学へは辿り着けない。

 

『……良いだろう』

「錬金術に誓えよ」

『ああ。錬金術に誓って、私は手を出さない』

 

 永遠にも思えるような沈黙のうち、答えは出た。

 3700年にも渡る石化を巡る物語が、今幕が下りたのだ。

 

 命のやりとりを含む交渉は極限の緊張と疲労を生み、それが安堵によって解放されたのか、ゼノと千空は大きな溜息を吐いて、しかし隠しきれない笑みを浮かべる。

 

『――私はね』

 

 ――筈だった。

 

 数多の賢者の石の壁の向こうから、石化光線が飛び出した。

 

$${v(R) = 0.0998 ・ R^{0.775}}$$

 

 石化光線の速度式より、半径が大きくなるほど光線速度は速くなる。

 一瞬の抵抗をも許さない程の速度は、人間の時間分解の限界である0.01秒を遥かに下回り、月面を飛び出す程の石化光線はいとも容易く、ゼノと千空、そしてボロスを石化させたのだった。




 なんか新情報をバンバン出してると思いつきで出されてると思われそうなので、一応改めて明記しときます。
 錬金術は基本的に理論さえあれば再現可能。
 ボロスはニコラをも凌ぐ錬金術の才能を持っています(今話と第8話(こっちは仄めかし))。
 ボロスはニコラの死後からずっと魂や記憶、精神に関する研究をメインにしています(第2話参照)。

 ちょっとした伏線回収(第8話)
「待って待って待って!!!? まだ情報処理しきれて無いんだけど!!?」
「石化装置が賢者の石で錬金術師だと……!!」
↑ココ!!


 超かぐや姫の二次書きたい。
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