今回めちゃくちゃ遺伝子工学に関する用語がでてきます。解説は軽くしてますが、興味がでたらぜひ調べてみてください。特に遺伝子ドライブは100億%唆ると思います。(これ使えばゴキブリ滅ぼせるかも?)
4月15日改訂
ゲノム編集技術にiPB法を追加
気球クラフトが完成し、相良油田を探す傍らで、千空が求めていたのは麦だった。今後世界を股にかけて船で移動するならば、保存食は必要不可欠。特に小麦から作られるパンは長期的な保存が可能な航海に適した食べ物だ。
気球を使った上空からの地上偵察。上空から発見した小麦の一部をコハクに積ませ、関東平野にある旧司帝国に運ばせた。
「今この瞬間から私たちは、自然の恵みを取るだけではなく、知恵と力で自ら食糧を創るのだ……!」
農耕の時代の始まりだ!!
―――旧司帝国のある関東平野は農業に適した地理的特徴を有しており、そこにいる科学王国の人民は鍬を手に開墾する。
「(この小さな種があれば、誰も餓えて死ぬことはない!! 皆の大切な人が復活した時、何も恐れることなく食卓を囲めるんだ!!!)」
並ならぬ思いを持つその男は、凄まじい勢いで鍬を振り、多少の岩もなんのその、木の根も歯牙にもかけず土地を耕していく。
その男の名は大木大樹。彼の両親は現代で既に死んでいた。
だからこそ、他の皆の大切な人が、家族が復活した時に、何の憂いもなく過ごして欲しいのだ。
ゆえに。
「ボロスーー!!!」
「はっ……何時でも元気だな、大樹お前はよ」
1つアイデアが浮かんだ大樹は己の親友、魂の盟友である千空に負けずとも劣らぬ科学力を持つボロスの元を訪れた。
「俺は頭が雑だから分からん!! だからボロスに聞きに来たのだ!!」
「なんだ?」
「現代では、人の科学は生命の根源まで手をつけていたのだろう!! ボロスならそれが小麦でもできるんじゃないか!!?」
「遺伝子組換のことか?」
「それだ!! もしそれができるなら、普通の小麦より美味くて早く育たせることもできるんじゃないのか!!!!?」
そうだ。目の前の男ならできると大樹は無類の信頼を置いている。千空と同じ無限の信頼を。
かつて世界中の貧困を無くせるかもしれないというところまで開発した植物なら、もっと豊かに、素晴らしい事が起きるのではないか。
そんな思いを胸に大樹は研究室の扉を叩いたのだ。
「どうだ、ボロス!!!?」
「ハハッ、似てるなお前ら。実は千空からも似たような依頼を受けてたんだ」
こっちへ来い。
手招きされて椅子に座らされた大樹の目の前に、シャーレに乗せられた小麦の種が差し出された。
「これがみんなの希望の種なのか!!?」
「いんや。まだ上手くいってない。これは試作品だ。ちょうど100回目のな」
ぐるりとボロスが見渡した先を追えば、そこには多くのシャーレが棚に納められており、ボロスの言葉が正しければ、まさに99回失敗してこれが100回目の種なのだろう。
「同じだボロス。千空と俺も、石化解除実験でたくさん失敗した」
「ああ。だろうな。原理不明な現象をまともな機械が無い状況でやってたんだ。その苦労、かけた時間は私の想像を絶するだろう。その点で私は、君にも尊敬の念を抱いている」
「わはは!! なんだかボロスに褒められると気恥ずかしいな!!!」
後頭部に手を当てて笑う大樹を傍目に、ボロスは100回目の試作品である小麦の種に水銀を撒くと、水銀がその小さな種に見合わない程に大きく拡大する。
「遺伝子を弄った小麦は、日本では栽培と流通が禁じられてる上に、持たせた性能は何かしらの農薬に対する耐性で、味を向上させた小麦は無かったはずだ」
水銀から迸る錬成光。
それは研究室の中を一瞬、緑色に染め上げた。
「その事は千空も知っていたし、ゲノム編集したものは危険である事も知っていた。だから私に頼んだ事は成長速度を早めた小麦の開発だった」
小麦は種まきから収穫まで早くて100日以上かかる作物だ。
それでも収穫は植物全体で見れば早い方ではあるが、今後の事を考えると遅いのだ。
「成長速度の向上はつまり、細胞増殖速度の向上だ。周囲に豊富な栄養素があれば細胞サイクルを早めても問題ない。肥料は予め撒いておけばいい話だからな。さて、ではどう解決するかだが……大樹。君は人間の細胞の中で1番早く増殖する細胞が何か知ってるか?」
ボロスの話についていけなくなってきていた大樹は頭から湯気を出しながら何とか答える。小さい頃から千空の科学話を聞いてなければついていけなかっただろう。
「脳か?」
「不正解。正解は癌細胞だ。悪性腫瘍な。癌細胞はまさしく箍が外れた細胞だからな、増殖スピードがとんでもない」
「そうか!! つまり小麦の細胞を全て癌細胞にするのか!!!」
「60%正解だ。正確には発芽までに絞る。発芽したら後は普通の小麦と同様のスピードで成長させる」
今回も駄目だったらしい。何を確かめているかは不明だが、ボロスはシャーレの蓋に大きくバツ印を付けた。
そして新たな小麦の種を取り出し、101個目のシャーレに移す。
「どうしてだ? 最後までやったら良いじゃないか」
「後が読めないんだ。癌細胞はイカれた細胞、正常じゃない。なら出来上がった麦は病気にかかっているのと同じだ。健康被害の懸念が大きい」
「石化光線で治せないのか?」
「そんなのは現状分からんしか言いようがない。もし石化光線が適用されるなら嬉しいけどな。たらればは駄目だ」
「それなら、後から戻せないのか?」
「……あ゛ー。それを今やってるんだ。トリガーを引くととあるタンパク質が生成され、そのタンパク質が目的のDNA、つまり細胞増殖因子に関わる領域を切断する。これによって細胞増殖因子が過剰に転写されなくなる。結果、細胞増殖が抑えられる訳だ」
「???」
ボロスが話してるのは遺伝子工学の話だ。
ゲノムを弄るには幾つか方法がある。
有名なものはバクテリアの機構を応用した分子ハサミである
作物のゲノム編集では、通常アグロバクテリウム(土壌細菌)を使った形質転換法を使用する、小麦は難培養性作物の1つで、アグロバクテリウム法など細胞培養を介した形質転換やゲノム編集技術を適用することが困難である。この難培養性の問題を解決するため、in planta Particle Bombardment ――iPB法が開発された。iPB法は植物体を直接ゲノム編集するため、難培養性の問題をクリアし、現行の優良品種のゲノム編集も可能になるという画期的な技術である。
と説明してきたものの、今回使うのはまた別の遺伝子編集技術。それは産まれてくるに必要な遺伝子がその後どんな働きをするか知りたい時に使われる技術であり、名を――
――
受精卵の状態で切り取ってしまえば、産まれてこない。
だからこそ、産まれた後で切り取ってしまえば最早関係ない。
その後の検体の状態で異常が見つかれば、それは産まれてくるに必要な遺伝子が別の作用を有している可能性が示唆されることになる。
「cle/loxpシステム……と言っても分からないよな。千空に訊いてみるか」
「すまん! 俺では力になれなかった!!」
「気にすんな。人には向き不向きがある。私は今から連絡塔に行くよ。一緒に来るかい?」
「ああ!!!」
連絡塔とは、旧司帝国本拠地の頂上に設置された櫓のこと。ここに千空達が作った電話機が設置されている。
ジリリリリリ!!!
その理由は電波をキャッチしやすいからであるが、同じ理由で石神村の電話機は長の住む家に設置されている。なので出た
『どうした?』
「ちょっと行き詰まっててね。千空の意見を聞きたくて」
遺伝子組換、
その2つの言葉を伝えただけで、千空は理解したようだった。
「loxp配列を組み込んでCREを発現させるところまではうまくいってるんだが、余計な配列まで切り取ってるようでな。成長しなくなってしまった」
『あ゛あー……』
黙り込む千空。きっと彼の頭の中では凄まじい勢いで脳が働いているのだろう。
千空が再び口を開いたのは、黙り込んでから僅か1分後の事だった。
『ボロスお前、まさか全部切り取ってねぇか?』
「……あ」
『クククッ、そりゃ増殖に関わるとこ全部取っ払っちまえば成長もクソもねぇだろ。上流のプロモーターんとこだけ切り取っとけ。それかc-MycやK-rasとかの増殖促進因子だけ狙ってみろ』
「ありがとう千空。私は初歩的な事を間違えていた。次報告する時は良い結果を持ってくるよ」
『クク、首を長くして待ってやるよ』
ガチャリ。
「(やはり千空に相談して良かった)」
光が見えて安堵したボロスは、即断即決とその場でいきなり水銀を溢し、小麦の種を据えた。
「うわ、ちょっと何すんの! 何か始めるつもり?」
「何か掴めたんだな、ボロス!!」
いつの間にか混ざり込んでいた北東西南と大樹は、奇行を始めたボロスに期待を込めた視線を送る。
それに気付いてか気付かずか、ボロスは清貧なる礼拝者のように大きな柏手を打った。
途端、輝く水銀、巡る錬金構築式――
――そして築き上げられた錬成陣。
刮目せよ。これが生命の根源まで操る錬金術師の秘蹟なり。
「これは……!!!」
「わぁ……!!!」
種から芽が生え、空に向かって伸びる。根はそれに比例して広く、深く伸びていく。
青々とした若葉がその腕を広げて、窮屈な種から解放されたように生き生きとした姿を見せる。
「やったぜ、千空。ひとまず成功だ」
遺伝子組換小麦の作製成功の旨を知らせた途端、電話口から大きな声で『はぇーよ!!!』というツッコミをいただいたボロスは、遺伝子組換小麦の安全性テストや品質テストなどを行ったのち、最終的に完成した小麦の種を関東平野に植えた。
また、予め決めていた発芽までの期限をやめ、小麦の起生期まで成長スピードを早めた遺伝子組換小麦は、特定のホルモンの存在に応じてCREが発現するように設定され、成長スピードをリセットされるように設計された。
「遺伝子組換食品って、現代でもちょお〜と問題になってたじゃないボロスちゃん? そこんとこどうなのよ」
「問題無い。そう言い切りたいところだが、どう転ぶかは未来にならなければ分からん。不安の種は全て潰したが、体内挙動は不明だからな。体内にどれだけの成分があると思ってんだ」
「あらそうなの。あとはほら、自然への影響とかどうなの? 広がってかない?」
「問題ない。遺伝子組換小麦のゲノムは野生型と交雑した場合、次世代は産まれないように調整している」
遺伝子組換小麦のゲノムには、ある〝仕掛け〟を施している。これにより、遺伝子組換小麦と野生の小麦が混ざった場合、出芽しなくなる。自然への悪影響を極力抑えられるのだ。
この技術は遺伝子ドライブと呼ばれるものである。簡潔に述べると、特定の遺伝子を100%子孫に受け継がせる技術であり、2019年には遺伝子ドライブを施して不妊遺伝子を有した蚊を使った研究が報告されている。なおその結果は実験室レベルだと7〜11世代後に全滅した。
「千空ちゃんみたいによく分からないや。ひとまず、問題は無いってことだけ分かればオールオッケーよ。……それに、当初の目的は達成したしね」
「ん? ……あぁ、なるほど。皆の懐疑心を無くしたかったのか」
ボロスとゲンの周りは1段低くなっており、そこを囲むように科学王国民が集っていた。ゲンの狙いは遺伝子組換食品に関する現代人の懸念を払拭したかったのだろう。
「そゆこと。それに、ボロスちゃんにこれあげる」
「麦わら帽子?」
「農耕王のしるし。ボロスちゃんが1番頑張ってたからね〜」
「……有り難いが遠慮する。私は特殊なケースだ。私よりひたすら地道に頑張った大樹が適任だろう」
なんだか知らないうちに農耕王と呼ばれる存在に担ぎあげられそうになったが辞退し、我武者羅に頑張っていた大樹にその椅子を渡した。大樹が選ばれた事に関する反発は無く、皆も大樹の働きには舌を巻いていたようだ。
そしてボロスは今、石神村にいた。
石神村にて、千空達はボロスが開発した遺伝子組換小麦を使って試しにパンを焼いてみた。
「なんだこりゃ。ほぼ炭だろ」
「石炭だな」
出来上がったパンは、次のような特徴を持っていた。
見た目…真っ黒
硬さ…釘を打てるレベル
匂い…形容しがたいなにか
ちなみに石炭の特徴は次の通り。
見た目…真っ黒
硬さ…釘を打てるレベル
匂い…独特な匂い
つまり出来上がったパンは石炭だった。
「……クククッ、どうやら俺らは錬金術に成功しちまったらしいな」
「ならこの石炭を金にしなくてはな!!!」
「「ワハハハハハハハハハハッ!!!!」」
「千空と龍水が現実逃避してる……」
羽京が珍しいものでも見たかのように2人を見つめ、手に持った石炭モドキに目を落とす。そして意を決して口に運んでみた。
ガキバリゴリッッ!!!!!
硬すぎて歯が死んだ。
「食べ物じゃないね、これ」
千空と龍水が『ボロスの真似〜』とパンッと両手を合わせて石炭に手をかざしてるなか、石神村の人間であるコハク達は石炭をバリボリと貪り食っていた。ついでにボロスも。
「うん、まぁ食えなくはないね。不味いけど」
「えぇ、何で食べれてるの……?」
「何故そんなゲテモノでも見たような顔をする羽京。昔のイギリス料理の方が遥かに酷かったぞ。特に産業革命時は酷かった。手早く満腹を意識し過ぎて、真っ黒に焦げた
「そ、そうだったんだ。そう言えば、イギリス料理が不味くなったのは産業革命以降と言われてたね」
周りをよくよく見れば、ボロスに慄いてるのは羽京を含めて現代組のメンバーで、喜んで齧りついてるのは石神村の人間達だった。
特にコハクなんて凄まじい勢いで咀嚼してる。およそパンとは思えないような硬ったい咀嚼音を奏でながら。
「「プロのシェフを叩き起こす!!!!」」
「良かった。正気を取り戻したみたいだね、2人とも」
アホ千空とバカ龍水になっていた2人が同時に叫んだ。それほどまでにこのパンは不味かったようだ。
「――おうそうだボロス! 聞きてぇことがあるんだ!!!」
「なんだい?」
千空と龍水達が何やら話しているが、ボロスはそこから視線を外し、己に話しかけてきたクロムに顔を向けた。
「遺伝子組換ってなんだ!!? てか遺伝子ってなんだ!!?」
「細胞の形や働きなどを決める設計図だ。遺伝子組換はいわば設計図を弄って自身が望む働きをさせる」
「マジかよ!!! 現代の科学はそこまでいってんのかよ!!!!」
パンを片手にキラキラと目を輝かせるクロムを面白く思い、ボロスは追加で色んな科学を教えた。
その度にクロムは『マジか!!!?』『すげぇええ!!!』『ヤベー!!!』と叫び、ついには口の端から涎を垂らしながらひっくり返った。
「うへへ、生命の設計図、自分が欲しい
「おいクロム壊れたんだが?」
「気にすんな。科学の
「よくあるのか。てことはこれが何回も?」
「ああ。地球の話とか宇宙の話をしてたらひっくり返ったわ。初めて見た時はヤクでも決めたかと思ったがな」
ピクピクと痙攣して人がしていい顔をしてないクロムを放置し、千空がボロスへと再度口を開いた。
「フランソワっつうヤツを叩き起こすんだが、復活液の取引条件にカメラを要求されてな。カメラのフィルムを作れるか?」
「カラーだよな?」
「もちろんだ。モノクロも作るが、司帝国の記者にはそれよりいいヤツを与えてやんねーとな」
「良いぜ。食を豊かにするのは私にとっても喜ばしい事だ。喜んで協力するよ」
千空と握手を交わしたボロスは、未だ痙攣してるクロムを背負い、千空と共に石神村のラボに入った。そこら辺に適当にクロムを転がし、ボロスは机の上に水銀を溢す――ところでクロムが起きた。
「閃いちゃったぜ!!!」
「おう、お目覚めか。過去イチで早かったな。もうちょいかかると思ってたぜ」
「ボロス!! さっき他の生物の遺伝子を別の生物の遺伝子に組み込む事が遺伝子組換って言ってたよな!!!?」
「そうだな。そんな感じだ」
「なら、人間の遺伝子に鳥の遺伝子を組み込めば、空を飛べるんじゃ無いのか!!!?」
現代人からすれば荒唐無稽の話。
どうだ! と言わんばかりのドヤ顔を晒すクロムに否を突きつけたのは千空だった。
「無理だな。系統樹が違い過ぎる。そうだな……遺伝子組換とはち〜と違うが、細胞融合がある。これはDNAを大量に移動するやつだ。例えば、トマトとジャガイモは見た目こそ全然違うが、トマトはナス科のナス属、ジャガイモも同じだ。だから細胞融合によってポマトが作れる。トマトとジャガイモが収穫できる、まさに2度美味しいやつがな。白菜とキャベツを掛け合わせたハクランとか、ヒエとイネを掛け合わせたヒネもあるぞ」
「だが鳥と人は
「クククッ、人間様のゲノムをイチから設計し直せば、ワンチャン飛べるがな」
「そうなのか……」
「……まぁ、これは全て空論だ。現代では人間のゲノムを弄った子供を生み出す事は禁止されていたからな。記憶が正しければ、研究する事すら禁じられていた筈だ。倫理に反するからな」
「受精卵までは弄っても良いが、着床は駄目だな」
「そうだったのか。ありがとう千空」
ちなみに、2018年中国でエイズ耐性を付与した双子が誕生した(とされている)。このようにゲノム編集を施した赤子のことをデザイナーベビーという。もちろん違法。
「クロム、君は人を人足らしめるものは何だと思う? 千空にも訊くが」
科学講座が一段落したところで、不意にボロスはそう訊ねた。
「DNAが100億%ヒト種だと判定が出れば、まぁ科学的に人間だわな」
「千空は、まぁそう言うだろうな」
「なんだ? テセウスの船みてぇなことか?」
テセウスの船とは、物体の構成要素をすべて新しい部品に置き換えた場合、その物は以前のものと同一物といえるのか、という問題を指す哲学的な思考実験だ。
という説明をクロムにすると、クロムは唸りながら腕を組んだ。
「心なんじゃねぇか? 頭と心で俺たちゃ動いてんだ。心が1番大事だろ」
「なるほどね」
「んで、何が知りたかったんだボロス、テメーはよ」
「なに、そのうち知られるから予め話しておこうかと思ってね。……私は厳密にはヒト種じゃない。ヒト種じゃ無くなったと言った方が正しいか」
「DNAを弄った、と。テメーは言いたいんだな?」
「ああ。錬金術の秘伝にはDNAを示唆するものがある。私は私自身の全ゲノムに各種病原体に対する耐性遺伝子を組み込み、また毒物に対する耐性遺伝子も組み込んだ。私が何の対策もせず水銀を取り扱ってるのは、その為でもある」
人間のDNAを弄ってはいけない。
そのルールが世界に広がる遥か昔から、ボロスは自身を実験体にし、そして成功させた。
「私は君たちとは違う生物だが、それでも君たちは私を人間として扱うか?」
「……なぁにくだらねぇこと言ってんだ」
「おうよ」
千空とクロムはチラリと視線を交わすと、
「「俺たちは仲間だ」」
と、至極当然のようにそう言った。
「ボロスが人間じゃなかろうとどうでもいい。その頭脳と力を貸してくれんならな」
「言い方が酷いぞ千空! 俺はボロスの事はちゃんと人間だと思ってるからな!!!」
2人の言葉にボロスはフッと息を漏らした。
「悪い。愚問だったな」
その心に温かいものを感じながら。
「(師匠、私は
本分中に出てくる遺伝子工学用語の、CREとcreは別物です。CREというタンパク質がコードされている遺伝子をcreと呼びます。
iPB法云々は『化学と生物 Vol.63.No.3,2025』に記載されたものを引用し、一部編集しました。
今回遺伝子組換小麦を野生に放ってますが、これはマジで違法なので逮捕ものです。でも2次創作ということで許して。