石世界の錬金術師   作:ポンタ ponta

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 今回はちょっと短め〜。

 皆さんから高い評価頂けてとても嬉しいです!!
 今後も頑張ります!!


第6話 世界最高の錬金術師

 かつて日本は第2次世界大戦にて、アメリカによって落とされた2つの爆弾によって敗戦を喫した。

 

 広島に落とされたリトルボーイ

 長崎に落とされたファットマン

 

 核兵器により甚大な被害を被ったこの日本で、核爆弾を使うと宣言したボロスに皆が度肝を抜かれた。

 

「っ、正気かボロス貴様ぁあ!!!!!」

 

 いち早く我に戻った龍水は、勝ち気の笑みを浮かべるボロスの横っ面を思いっきり殴った。

 勢いよく壁に激突し、倒れ込んだボロスの胸元を掴み、龍水は唾を飛ばさん勢いで吠える。

 

「我々は日本人だ!! 唯一核兵器を使われた国として、絶ッッ対に核兵器など使ってはならん!!! あの爆弾がどれほどの被害を、数多の尊い命を奪ったか知らない筈が無いだろう!!!!!」

 

 目と鼻の先で睨めつける龍水を、ボロスは腕力のみで突き飛ばし、机にぶつかった龍水の胸元を掴み返した。

 

「知ってるさ!! この目でしかと見た!! 黒く染まった空も、壊滅した都市も、死を待つしか無い人間も、何もかも見届けた!!! 核兵器によって奪われた全てを、痛みを今でも鮮明に思い出せる!!!」

「では何故!! 核兵器を使うという選択肢が出る!!!」

「奪われる前に奪わなくては!!! 国との戦いは結局は力だ!!! 科学など真に圧倒的な力の前では簡単に踏み躙られる!!! だからこそ核兵器という強大な力で敵の科学を捻じ伏せなければならないんだ!!!」

「まぁまぁ、落ち着いて2人とも」

「「黙ってろゲン!!!」」

 

 互いに冷静でいられず、龍水とボロス両名とも徐々に声が荒々しくなっていく。

 

「戦争を体験してない人間に、何が分かる!!?」

「あぁ分からん!! だから歴史に学ぶのだ!!! 2度と同じ轍を踏まないように!!! それが未来に生まれた、平和を生きる人間の責務だろうが!!!!」

 

 ゲンも羽京もクロムも止めに入ろうとするも、頭に血が上った2人はもう止まらない。止まれない。

 鋭い目でボロスを睨み、愚かな発言を撤回させるように激しく吠える龍水。

 憎悪に燃える瞳で龍水を見下し、己の主張こそが正しいと貫くボロス。

 

「核兵器など造ってはならん!!! 例えそれでカタが付くとしてもだ!!!!」

「何故分からない!!? 核兵器こそ人類最強の抑止力だってことが!!!」

「現代で多くの国が核兵器を造っていた中、唯一日本だけが核兵器の禁止を掲げていたのだ!!! その裏にある心が汲み取れんのか!!!!?」

「今と昔じゃ事情が違う!! 日本を守ってくれていたアメリカは、今じゃ科学独裁国家になってんだ!!! 千空を、我々を、日本を攻撃しないと何故言える!!!!!?」

 

 正論を叩きつけられた龍水は一瞬グッと息を詰まらせたものの、直ぐに反論を叫ぶ。

 

「そもそも!! 核爆弾を造ったところでどうやってアメリカまで運ぶつもりだ!!? 大陸間弾道ミサイル(ICBM)など高等なものはボロス貴様でも作れまい!!!!」

「確かに造れないさ!!! なら単身乗り込めばいい!!! そこで自身もろとも爆破させれば問題ない!!!」

「そんな事したら貴様が死ぬだろう!!!」

「私は不老の錬金術師だ!!! 簡単には死なないんだよ!!!!」

「それが本当である証拠はどこにあるんだ!!! 確かめる訳にはいくまいし、確かめさせる訳もない!!!」

 

 堂々巡りに痺れを切らしたボロスが、ダンッと作戦机に飛び乗り、力の限り叫んだ。

 

「何も分からぬ愚かな人間が!!! 私に指図するなぁああああ!!!!!」

 

 何をするつもりか、ボロスは強く両手を合わせた。

 足元から大きく拡大していく錬成陣。それはまるで水のように波打ちながら、机の足を伝って床に広がっていく。

 

 不意に、吹き荒ぶ風が部屋の中を蹂躙し始めた。

 

「愚かなお前達(人間)に教えてやる!!! 錬金術の大いなる力を!!!!!」

 

 錬成発動のトリガーである緑色の発光が視界を埋め尽くした――瞬間。

 

「――そこまでだ!!」

 

 突如乗り込んできたコハクによって、ボロスは意識を刈り取られた。

 

「ふぅ、危ねえー。コハクを連れてきて良かったわ」

「はぁあああ……助かったぜ千空、コハク」

「……一体何があったんだ? 龍水とボロスの怒号が外まで漏れてたぞ」

「ちーと、意見の相違があってな。気にすることじゃねえ」

 

 『それならいいが……』とコハクが倒れたボロスを移動させようと腕を触った途端、ボロスが目覚めた。

 瞬間、誰もが全身を強張らせたが、ボロスは冷静に片手を振って正気であることを示した。

 

「……悪い、頭に血が上ってた。止めてくれてありがとう」

「こっちこそ殴って悪かったな」

「はい仲直りの握手〜」

 

 ゲンが2人の手を握って強制的に握手させたところで、千空が口を開いた。

 

「核兵器は無しだ。敵味方に血を流させる訳にはいかねぇ。これが俺ら科学王国のモットーだ。ちゃんと守れ」

「僕も核兵器は断固反対だね。日本人として、いや人として核兵器の使用に反対する」

 

 千空、羽京と続きゲンも核兵器の製造と使用に反対だった。ボロスと龍水の喧嘩の裏で核兵器について教えてもらったクロムも声を大にして反対の意を表した。

 そして少数意見となったボロスの案は民主主義に則りボツとなった。

 

「……分かった。核兵器の使用はしないが、造るのは許してくれ。私の錬金術なら元々安全なもの、例えば水銀を錬金術でプルトニウムに変換して、原子爆弾にできる。私にしかできない事だ。それに作製自体は他に尽くす手が無くてどうしようもない時に行うし、絶対使うつもりはない。脅迫の道具として使う。これでどうだ?」

「ククッそれすら要らねーよボロス。錬金術そのものを見せれば分かるからな。相手は天才科学者様だぞ? 核兵器にも転用できるってソッコー分かるわ」

「そうか……」

「はい! これにて一件落着!! 次の議題に移ろっか!」

 

 ゲンはパンパンと両手を叩き、話を前に進めた。

 

「アメリカ様は今科学によって統治されている。その科学力は俺らを上回っているだろう。そこで、俺らが次に造るのは科学の目、レーダー様だ」

「! なるほど。感知の目を広げて少しでも攻撃されるまでの時間を確保するんだね!!」

「あ゛ぁ、それもあるが、半分は食糧確保だ。船を造って海を渡るんだ。魚群探知機が必要になる。んでもってもう半分はGPSだ。海の上で迷子にならないようにな」

「そうか。では私は暗視ゴーグルでも造ろうか。夜の海上で必要になるだろ」

「おお!! 確かにな! んじゃあーそれはボロス、オメーに任せる!!」

 

 一体どうなることやらと不安になった会議は、最終的にはうまく丸く収まった。

 

 

 

【第6話 世界最高の錬金術師】

 

 

 

 千空はレーダーの製作に移り、ボロスは暗視ゴーグルの製作に移った。

 本当は別々の場所で製作するつもりだったが、クロムがどっちも見たいとごねたため、同じ場所で造ることになった。

 

「粉々にした閃亜鉛鉱を水に溶いて三角フラスコにブチ込んどきゃ勝手に底にへばりつく。蛍光塗料ゲットだ!!」

「粉々にした重晶石をアルコールに溶いて三角フラスコにブチ込み、炭も投入。そして高温を与えるんだが、そこは錬金術でショートカット。そうすりゃ白色の硫化バリウム――燐光塗料のゲットだ!!」

 

 錬金術を使用することにより時間を省略したボロスは、ほとんど同じタイミングで千空の蛍光塗料の完成と重なった。

 

「暗視ゴーグルにはいくつか世代があるんだけど、基本的な原理は共通してるし、簡単だ」

 

 光が物体(金属)に当たると電子が飛び出す。これを光電効果という。かのアインシュタインが見つけた現象だ。

 これが暗視ゴーグルの核となる原理である。

 

「んでもって飛び出た電子を電圧で加速させて、燐光体にぶつける。そうすると燐光体がエネルギーを受け取って光る訳だ」

 

 ちょうど今、千空が作り上げたブラウン管には蛍光体が使われているが、蛍光と燐光は原理が異なる別物だ。

 蛍光は光を即座に放出、10億分の1秒から10万分の1秒という短い時間で瞬時に消える。

 一方燐光は、1000分の1秒から10秒と時間をかけて消えていく。

 

 暗視ゴーグルは燐光を使う事で、視覚の安定性を得ている。蛍光は瞬間的かつ強力なため、急激な明るさの変化が目に負担をかけやすいが、燐光はその特性により視覚的に安定しており、長時間の使用でも疲れにくくなる。

 

「――接続先をアンテナからマイクにすりゃソナーにもなる」

「――というわけで、暗視ゴーグルの完成だ!!」

 

 

 

【レーダー&ソナー&暗視ゴーグルを手に入れた!!!】

 

 

 

「どうだ羽京。専門家のテメー的には」

「暗視ゴーグルは電池で問題ないんだけど、気になるのはレーダーの方かな。電池じゃちょっと出力がもの足りない」

「そこはクソデカエンジンを船に何基も積んで、バリッバリ発電させる!!」

「オホー! そのエンジン作ったらついに船の完成じゃないの……!?」

「あ゛あ。ただちーと問題なのは、クソデカ鋼鉄製品っつう話になるとな、もう研究室レベルの仕事じゃねぇ。工業の世界だ。アホほど鉄も石油も要る」

 

 頭を抱えるその問題も、クロムによって解決された。

 レーダーを応用して金属探知機を作ったクロムが、鉄鉱石の鉱床を見つけたのだ。

 

 しかし。しかしだ。

 問題は次から次へと降ってくる。

 

 鉄鉱石はどう運ぶのか?

 ――トロッコによる運送でクリア。

 

 それをどう司帝国まで運ぶのか?

 ――小舟による運送でクリア。

 

 他にも道路舗装などの些細な問題は発生したが、クリアしてきた。

 だが肝心な船に大きな問題が発生した。

 

 ――精密な木材加工が不可能。

 

 大型船の構造設計・製造は高度かつ専門的な技術が要求される。

 たとえ計算が正確でも、切断した木材の歪みが大きければ船全体の歪みに繋がる。それを解消しようとあちこち弄れば、更に歪みは大きくなる。

 造船は今、負のスパイラルに陥っていた。

 

 だがその螺旋を、その男――龍水がぶった切った。

 

「――俺が模型で大型船を作る!! それを正確に拡大して、カセキの努力の結晶を補正していく!! できるだろう千空貴様なら、違うか……!!?」

「あ゛ぁ、できる」

「そしてボロス!! 超精密な鉄の加工も可能だろう、貴様の錬金術なら、違うか……!!?」

「誰にもの言ってんだ。お前の前にいるのは世界最高の錬金術師だぜ」

 

「なんでか安心なんだよ。千空と龍水とボロスのトリオだけで、なんでもできちゃいそうな気がするんだよ……!!!」

 

 

 ――時は巡りて西暦5741年9月10日

 『機帆船ペルセウス』竣工――

 

 その日、ペルセウスを造り上げるために必要な旋盤、機材が全て出揃い、技術習得が完了した。




 錬金術使ってるのでペルセウス自体は早めに完成していましたが、原作に出てきたような旋盤や溶鉱炉などの作製もちゃんしていたため、結局原作と同じ日に出発となりました。
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