騎士王転生の天之河光輝、異世界に降り立つ。(元 天之河光輝成り代わり物)   作:ゼロさん

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これからうらーらも書いて行きたいがテンションが書いてるウチに変な風に上がって行くんだよな…

難産だったぜ…

普通に文章のミスがヤバイ…風邪の中書いてたから変な所あるけど許してもろて…


ありふれた展開で世界最低 3

……………………私はこの世界に来てから考えていた。

 

 

私のスキル、約束された勝利の剣(エクスカリバー)はあくまでも『スキル』だ。私が持っている聖剣はあくまでも〝聖剣〟という剣、約束された勝利の剣(エクスカリバー)=私の持っている聖剣では無い。

 

 

訓練により風王結界(インビジブル・エア)を纏う事が可能になった際にふと気付いた。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)…同じ様に纏えるのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「えっ?えっ?ホントに?ホントに南雲くんなの?えっ?なに?ホントどういうこと?」

 

「いや、私もあの光ってる人が光輝くんなのかわからないんだけど…」

 

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?」

 

 

 

香織と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。そんな雫の名を呼びながら諌めるハジメは、ふと気配を感じて頭上を見上げた。そして、落下してきた金髪の女の子ユエをお姫様抱っこで受け止めると恭しく脇に降ろし、ついで飛び降りてきたウサミミ少女シアも同じように抱きとめて脇に降ろす。

 

 

 

最後に降り立ったのは全身黒装束の少年、遠藤浩介だ。

 

 

 

「な、南雲に光輝ぃ!おまっ!余波でぶっ飛ばされただろ!ていうか今の何だよ!いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか……」

 

 

 

文句を言いながら周囲を見渡した遠藤は、そこに親友達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。そんな遠藤に、再会の喜びとなぜ戻ってきたのかという憤りを半分ずつ含めた声がかかる。

 

 

 

「「浩介!」」

 

「重吾! 健太郎! 助けを呼んできたぞ!」

 

 

 

〝助けを呼んできた〟その言葉に反応して、魔人族の女はようやく我を取り戻した。そして、改めてハジメと光輝と二人の少女を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメは少し面倒臭そうな表情をしながら、ユエとシアに手早く指示を出した。

 

 

 

「ユエ、悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シア、向こうで倒れている騎士甲冑の男、容態を見てやってくれ」

 

「ん……任せて」

 

「了解ですぅ!」

 

 

 

ユエは周囲の魔物をまるで気にした様子もなく悠然と歩みを進め、シアは驚異的な跳躍力で魔物の群れの頭上を一気に飛び越えて倒れ伏すメルドの傍に着地した。

 

 

 

「ハ、ハジメくん……」

 

 

 

香織が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。それは、この死地にハジメが来てしまったが故だろう。どういう経緯か香織にはわからなかったが、それでも直ぐに逃げて欲しいという想いがその表情から有り有りと伝わる。

 

 

 

ハジメは、チラリと香織を見返すと肩を竦めて「大丈夫だから、そこにいろ」と短く伝えた。そして、即座に〝瞬光〟を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、〝宝物庫〟からクロスビットを三機取り出し、それを香織と雫の周りに盾のように配置した。

 

 

 

突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる香織と雫。そんな二人に背を向けると、ハジメは元凶たる魔人族の女に向かって傲慢とも言える提案をした。それは、魔人族の女が、まだハジメの敵ではないが故の慈悲であった。

 

 

 

「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと消えろ」

 

「……何だって?」

 

 

 

もっとも、魔物に囲まれた状態で、普通の人間のする発言ではない。なので、思わずそう聞き返す魔人族の女。それに対してハジメは、呆れた表情で繰り返した。

 

 

 

「戦場での判断は迅速にな。死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」

 

「ハジメ…力の差もわからないアホ相手に言っても無駄でしょ。ごめんね?あー…『きみは、よわいから、にげたほうがいいよ?』(ゆっくり&はっきり)」

 

「………殺せ」

 

魔人族の女はスっと表情を消すととハジメと光輝(煽りカス)の方を指差し魔物に命令を下した。

 

 

 

この時、あまりに突然の事態――――特に虎の子の魔物アハトドが正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。

 

 

ヤベー奴らの実力を見誤ったという事だ。

 

 

ハジメ達の背後から「ハジメくん!」「南雲君!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。しかし、ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手の義手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げた。

 

 

 

キメラが、驚愕しながらも拘束を逃れようと暴れているようで空間が激しく揺らめく。それを見て、ハジメが侮蔑するような眼差しになった。

 

 

 

「おいおい、何だ? この半端な固有魔法は。大道芸か?」

 

 

 

気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があると、ハジメは、思わずツッコミを入れる。奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったのだ。それらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽など、ハジメからすれば余りに稚拙だった。

 

 

 

数百キロはある巨体を片手で持ち上げ、キメラ自身も空中で身を捻り大暴れしているというのに微動だにしないハジメに、魔人族の女や香織達が唖然とした表情をする。

 

 

 

ハジメは、そんな彼等を尻目に、観察する価値もないと言わんばかりに〝豪腕〟を以てキメラを地面に叩きつけた。

 

 

ズバンッ!!

 

 

 

ドグシャ!

 

 

 

そんな生々しい音を立てて、地面にクレーターを作りながらキメラの頭部が粉砕される。そのままハジメは銃を構え、光輝は的確に敵の頭を潰し始めた。

 

 

 

乾いた破裂音を響かせながら、二条の閃光が空を切り裂き目標を違わず問答無用に貫き、目に見えぬ速度で光輝が素手で頭を切り落としていく。一方的な処刑だ。

 

 

 

あまりにあっさり殺られた魔物を見て唖然とする魔人族の女や、この世界にあるはずのない兵器に度肝を抜かれて立ち尽くしているクラスメイト達。そんな硬直する者達をおいて、魔物達は、魔人族の女の命令を忠実に実行するべく次々にハジメへと襲いかかった。

 

 

 

黒猫が背後より忍び寄り触手を伸ばそうとするが、光輝が頭を鷲掴みにし、地面に叩きつけ、踏み潰しながら極光で跡形も無く消し飛ばした。

消し飛んだ仲間の魔物には目もくれず、左右から同時に四つ目狼が飛びかかる。が、ハジメがいつの間にか抜かれていたシュラークが左の敵を、ドンナーが右の敵をほぼゼロ距離から吹き飛ばす。

 

 

 

その一瞬で、絶命した四つ目狼の真後ろに潜んでいた黒猫が、ハジメの背後から迫るキメラと連携して触手を射出するが、ハジメは、その場で数メートルも跳躍すると空中で反転し上下逆さとなった世界で、標的を見失い宙を泳ぐ黒猫二体とキメラ一体をレールガンの餌食とした。

 

 

 

血肉と弾丸が花吹雪のように舞い散る中で、着地の瞬間を狙おうとでも言うのか、踏み込んで来たブルタールモドキ二体がメイスを振りかぶる。しかし、光輝によってメイスごと細切れにされた。

 

 

 

「何なんだ……あの白髪と光ってる奴は一体、誰なんだ!?」

 

 

 

龍太郎が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

 

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲と光輝だよ」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

 

 

遠藤の言葉に、龍太郎達が一斉に間の抜けた声を出す。遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。遠藤は、無理もないなぁ~と思いながらも、事実なんだから仕方ないと肩を竦めた。

 

 

 

「だから、南雲ハジメと天之河光輝だよ。あの日、橋から落ちた南雲と光輝だ。迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ!って俺も思うけど……事実だよ」

 

「南雲って、え?南雲と光輝が生きてたのか!?」

 

 

 

龍太郎が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年共を見つめ直し……やはり一斉に否定した。「どこをどう見たら南雲なんだ?」「天之河光輝はあんなピカピカしてる奴だったか?」と。そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメと天之河光輝であることを再度伝える。

 

 

 

皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていた。

 

 

 

 

 

 

突然クラスメイトに、比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。遠藤の頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだのだ。呼吸のタイミングが悪かったようで若干溺れかける龍太郎。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!? と混乱するクラスメイトに、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。

 

 

 

「……大人しくして。鬱陶しいから」

 

 

 

声のする方へクラスメイト達が視線を向けた途端、思わず唾を呑み込んだ。なぜなら、その声の主、ユエのクラスメイト共を見る眼差しが、まるで虫けらでも見るかのような余りに冷たいものだったからだ。同時に、その理想の少女を模した最高級のビスクドールの如き美貌に状況も忘れて見蕩れてしまったというのも少なからずある。

 

 

それは、龍太郎達も同じだったようで、突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。鈴などは明からさまに見蕩れて「ほわ~」と変な声を上げている。単に、美しい容姿というだけでなく、どこか妖艶な雰囲気を纏っているのも、見た目の幼さに反して光輝達を見蕩れさせている要因だろう。

 

 

 

と、その時、魔人族の女が指示を出したのか、魔物が数体、龍太郎達へ襲いかかった。メルドの時と同じく、人質にでもしようと考えたのだろう。普通に挑んでも、ハジメと光輝を攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。

 

 

 

鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな鈴をユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

 

 

「……大丈夫」

 

 

 

ただ一言そう呟いたユエに、鈴は、何の根拠もないというのに「ああ、もう大丈夫なんだ」と体から力を抜いた。自分でも、なぜそうも簡単にユエの言葉を受け入れたのかは分からなかったが、まるで頼りになる姉にでも守られているような気がしたのだ。

 

 

 

ユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

 

 

「〝蒼龍〟」

 

 

 

その瞬間、ユエ達の頭上に直径一メートル程の青白い球体が発生した。それは、炎系の魔法を扱うものなら知っている最上級魔法の一つ、あらゆる物を焼滅させる蒼炎の魔法〝蒼天〟だ。それを詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る太陽を仰ぎ見た。

 

 

 

しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。なぜなら、燦然と燃え盛る蒼炎が突如うねりながら形を蛇のように変えて、今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。

 

 

 

宙を泳ぐように形を変えていく蒼炎は、やがてその姿を明確にしていく。それは蒼く燃え盛る龍だ。全長三十メートル程の蒼龍はユエを中心に光輝達を守るようにとぐろを巻くと鎌首をもたげた。そして、全てを滅する蒼き灼滅の業火に阻まれて接近すら出来ずに立ち往生していた魔物達に向かって、その顎門をガバッっと開く。

 

 

 

ゴァアアアアア!!!

 

 

 

爆ぜる咆哮が轟く。と、その直後、たじろぐ魔物達の体が突如重力を感じさせず宙に浮いたかと思うと、次々に蒼龍の顎門へと向けて飛び込んでいった。突然の事態にパニックになりながらも必死に空中でもがき逃げようとする様子から自殺ではないとわかるが、一直線に飛び込んで灰すら残さず焼滅していく姿は身投げのようで、タチの悪い冗談にしか見えない。

 

 

 

「なに、この魔法……」

 

 

 

それは誰の呟きか。周囲の魔物を余さず引き寄せ勝手に焼滅させていく知識にない魔法に、もう光輝達は空いた口が塞がらない。それも仕方のないことだ。なにせ、この魔法は、〝雷龍〟と同じく、炎系最上級魔法〝蒼天〟と神代魔法の一つ重力魔法の複合魔法でユエのオリジナルなのだから。

 

 

 

ちなみに、なぜ〝雷龍〟ではなく〝蒼龍〟なのかというと、単にユエの鍛錬を兼ねているからという理由だったりする。雷龍は、風系の上級である雷系と重力魔法の複合なので、難易度や単純な威力では〝蒼龍〟の方が上なのだ。最近、ようやく最上級の複合も出来るようになってきたのでお披露目してみたのである。

 

 

 

当然、そんな事情を知らないクラスメイト達は、術者であるユエに説明を求めようと〝蒼龍〟から視線を戻した。しかし、背筋を伸ばして悠然と佇み蒼き龍の炎に照らされる、いっそ神々しくすら見えるユエの姿に息を呑み、説明を求める言葉を発することが出来なかった。そんなユエに早くも心奪われている者が数人……特に鈴の中の小さなおっさんが歓喜の声を上げているようだ。

 

 

 

一方、魔人族の女は、遠くから〝蒼龍〟 の異様を目にして、内心「化け物ばっかりか!」と悪態をついていた。そして、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。

 

 

 

しかし、魔人族の女は、これより更なる理不尽に晒されることになる。

 

 

 

シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。

 

 

 

また、香織と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、何かがスっと雫とキメラの間に入る。

 

 

『ザ・ワールド』である。

 

 

キメラは自分を守るように動いた幽波紋(スタンド)に向けて轟音を響かせた。雫が「ホントに何なの!?」と内心絶叫していると、スタンドが拳を動かす。

 

 

 

香織と雫が、混乱しつつも、とにかく迫り来る魔物に注意を戻すと、そこには全身を爆散させた魔物達の姿が……唖然としつつ、先程のスタンドの元に視線を転じてその正体を確かめる。

 

 

 

「あれって……スタンド?ジョジョの…」

 

「ジョジョって……あの絵柄の癖が強いジャンプのあれ?」

 

 

 

香織と雫が、馴染みのない知識を引っ張り出し顔を見合わせる。そして、ハジメが両手に銃を持ちながら「スタンドォ!」とか「無駄無駄無駄ァ!」と言いながら大暴れしている姿を見やって確信する。浮遊するスタンドは、南雲ハジメが出しているのだと。

 

 

 

「す、すごい……ハジメくんってスタンド使いだったんだ」

 

「彼、いつの間に漫画の中の住人になったのよ……」

 

 

 

周囲の魔物が一瞬で駆逐されたことで多少の余裕を取り戻した香織と雫が、二人には似つかわしくないツッコミを入れる、実はそれがスタンドを通してハジメに伝わっており、なぜ二人がそのネタを知っているのかと逆にハジメの方がツッコミを入れていたりするのだが、ユエ達で鍛えられたスルースキルで、ハジメは気にしないことした。

 

 

 

「ホントに……なんなのさ」

 

 

 

力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。何をしようとも全てを力でねじ伏せられ粉砕される。そんな理不尽に、諦観の念が胸中を侵食していく。もはや、魔物の数もほとんど残っておらず、誰の目から見ても勝敗は明らかだ。

 

 

 

魔人族の女は、最後の望み!と逃走のために温存しておいた魔法をハジメと光輝に向かって放ち、全力で四つある出口の一つに向かって走った。ハジメのいる場所に放たれたのは〝落牢〟だ。それが、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。龍太郎達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。

 

 

 

動揺するクラスメイト達を尻目に、魔人族の女は、遂に出口の一つにたどり着いた。

 

 

 

 しかし……

 

 

 

「はは……既に詰みだったわけだ」

 

「その通り」

 

「まぁ私が態々魔法を喰らってやる訳無いし。ハジメもあの程度なら防げるし。」

 

 

魔人族の女の目の前、通路の奥に変身を解いた光輝が聖剣で素振りをしておりその剣をぶん回していた。乾いた笑いと共に、ずっと前、きっとハジメ達に攻撃を仕掛けてしまった時から既にチェックメイトをかけられていたことに今更ながらに気がつき、思わず乾いた笑い声を上げる魔人族の女。そんな彼女に背後から憎たらしいほど平静な声がかかる。

 

 

 

魔人族の女が、今度こそ瞳に諦めを宿して振り返ると、石化の煙の中から何事もなかったように歩み寄ってくるハジメの姿が見えた。そして、拡散しようとする石化の煙を紅い波動〝魔力放射〟で別の通路へと押し流す。

 

 

 

「……この化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんた、本当に人間?」

 

「実は、自分でも結構疑わしいんだ。だが、化け物というのも存外悪くないもんだぞ?」

 

「法律とか無視出来るからね。」

 

 

そんな軽口を叩きながら少し距離を置いて向かい合うハジメと魔人族の女。チラリと魔人族の女が部屋の中を見渡せば、いつの間にか本当に魔物が全滅しており、改めて、小さく「化け物め」と罵った。

 

 

 

ハジメは、それを無視してドンナーの銃口をスっと魔人族の女に照準し、光輝が首に聖剣を寸止めする。眼前と首元に突きつけられた死に対して、魔人族の女は死期を悟ったような澄んだ眼差しを向けた。

 

 

 

「さて、普通はこういう時、何か言い遺すことは? と聞くんだろうが……生憎、お前の遺言なんぞ聞く気はない。それより、魔人族がこんな場所で何をしていたのか……それと、あの魔物を何処で手に入れたのか……吐いてもらおうか?」

 

「あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに? バカにされたもんだね」

 

 

 

嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。そして、光輝に目線を送ると、光輝は何の躊躇いも無く片腕を切り落とした。

 

 

 

「あがぁあ!!」

 

 

 

傷口を抑えながら悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。魔物が息絶え静寂が戻った部屋に悲鳴が響き渡る。情け容赦ない光輝の行為に、背後でクラスメイト達が息を呑むのがわかった。しかし、ハジメはそんな事は微塵も気にせず、ドンナーを魔人族の女に向けながら再度話しかけた。

 

 

 

「人間族だの魔人族だの、お前等の世界の事情なんざ知ったことか。俺は人間族として聞いているんじゃない。俺が知りたいから聞いているんだ。さっさと答えろ」

 

「……」

 

 

 

痛みに歯を食いしばりながらも、ハジメを睨みつける魔人族の女。その瞳を見て、話すことはないだろうと悟ったハジメは、勝手に推測を話し始めた。

 

 

 

「ま、大体の予想はつく。ここに来たのは、〝本当の大迷宮〟を攻略するためだろ?」

 

 

 

魔人族の女が、ハジメの言葉に眉をピクリと動かした。その様子をつぶさに観察しながらハジメが言葉を続ける。

 

 

 

「あの魔物達は、神代魔法の産物……図星みたいだな。なるほど、魔人族側の変化は大迷宮攻略によって魔物の使役に関する神代魔法を手に入れたからか……とすると、魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか……」

 

「どうして……まさか……」

 

 

 

ハジメが口にした推測の尽くが図星だったようで、悔しそうに表情を歪める魔人族の女は、どうしてそこまで分かるのかと疑問を抱き、そして一つの可能性に思い至る。その表情を見て、ハジメは、魔人族の女が、ハジメもまた大迷宮の攻略者であると推測した事に気がつき、視線で「正解」と伝えてやった。

 

 

 

「なるほどね。あの方と同じなら……化け物じみた強さも頷ける……もう、いいだろ? ひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね……」

 

「あの方……ね。魔物は攻略者からの賜り物ってわけか……」

 

 

 

捕虜にされるくらいならば、どんな手を使っても自殺してやると魔人族の女の表情が物語っていた。そして、だからこそ、出来ることなら戦いの果てに死にたいとも。ハジメとしては神代魔法と攻略者が別にいるという情報を聞けただけで十分だったので、もう用済みだとその瞳に殺意を宿した。

 

 

 

魔人族の女は、道半ばで逝くことの腹いせに、負け惜しみと分かりながらハジメに言葉をぶつけた。

 

 

 

「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

 

 

 

その言葉に、光輝は口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

「キミの恋人が誰かは知らないが…もしあったら…キミの無様な最期を半笑いで伝えて上げるよ。」

 

 

 

互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。

 

 

 

しかし、いざ引き金を引くという瞬間、光輝の制止がかかる。

 

 

「待ってくれ、良いものがあるんだ。」

 

 

「嫌な予感がするな…なんだ?」

 

「コレだよ。」スッ

 

 

「タイヤ?なんでタイヤなんか…」

 

「後はガソリン。」

 

 

「…ってめぇまさか!」

 

 

「ガソリンをビッシャーしーの、タイヤ嵌めーの。」

 

 

「な…なんだい…いったい何を…」

 

「着火ァァ!!!『タイヤネックレス』だオラァ!!!」*1

 

ボウッ

 

「ギィ!?ギャァァァァァァァァァ!?」

 

 

静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが…しかも優しいクラスのリーダーが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。そんな彼等の中でも一番ショックを受けていたのは香織と雫のようだった。

 

 

 

人を殺したことにではない。それは、香織達自身覚悟していたことだ。この世界で、戦いに身を投じるというのはそういうことなのだ。迷宮で魔物を相手にしていたのは、あくまで実戦訓練なのだから。

 

 

 

だから、殺し合いになった時、敵対した人を殺さなければならない日は必ず来ると覚悟していた。香織は自分が後衛職で治癒師である以上、直接手にかけるのは雫や光輝達だと思っていたから、その時は、手を血で汚した友人達を例え僅かでも、一瞬であっても忌避したりしないようにと心に決めていた。

雫も魔物を殺し続け覚悟は出来ていた。

 

 

香織達がショックを受けたのは、ハジメと光輝に、人殺しに対する忌避感や嫌悪感、躊躇いというものが一切なかったからである。息をするように自然に人を殺した。香織達の知る光輝は、他人(ハジメ)の為に渦中(奈落)へ飛び込めるような優しく強い人だった。

 

 

 

その〝強さ〟とは、決して暴力的な強さをいうのではない。どんな時でも、どんな状況でも〝他人を思いやれる〟という強さだ。だから、無抵抗で戦意を喪失している相手を何の躊躇いも感慨もなく殺せることが、自分達の知る光輝と余りに異なり衝撃だったのだ。

 

 

 

雫は、親友だからこそ、香織が強いショックを受けていることが手に取るようにわかった。そして、雫自身も光輝が演技をしていた事に一切気づかず優しい青年だと思っていたのでショックが大きかった。当然、正義感の塊たる勇者と思っていた光輝の行動に誰もが目を疑った。

 

 

龍太郎が叫んだ。

 

 

「な…なんでだよ…なんであんな風に残酷に殺す必要があったんだよ……教えろよ…教えろよ光輝!お前に何があったんだよ!」

 

「ハァ〜…」

 

 

「さっさと答え」

 

 

パァン!!!

 

 

「………は?」

 

龍太郎の状況が飲み込めていないという様な気の抜けた声が響く。

 

 

「え?」

 

雫は自分の目を疑っている。

 

 

「煩いなぁ…龍太郎はいっつもそうだね、けどまぁ…もう用済みだ。」

 

天之河光輝が、坂上龍太郎を躊躇無く撃ち殺したのだ。

*1
中東とかのマフィアの処刑方法。タイヤをネックレスの様に首に掛け、炎で燃やす事でタイヤが溶け、体に張り付く。とても辛いらしい。




ドラゴン化も聖剣を纏うモードも碌に使わなかった…

原作天之河枠は龍太郎にやって貰う。
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