騎士王転生の天之河光輝、異世界に降り立つ。(元 天之河光輝成り代わり物) 作:ゼロさん
誤字が多すぎる…(次の日の筆者)
時間は少し戻る。ちょうど、リリアーナ達が王宮内に到着した頃。
パキャァアアアアン!!
「ッ!?クソッ、一体なにがっ!?」
ガラスが砕かれるような不快な騒音に、自室で就寝中だった坂上 龍太郎は、シーツを跳ね除けて枕元の籠手を手に取ると一瞬で装備し、構えた。明らかに普段から気を休めず警戒し続けている者の動きだ。
「……」
しばらくの間、戦闘態勢で険しい表情をしながら息を潜めていた龍太郎だったが、室内に異常がないと分かると僅かに安堵の吐息を漏らした。
彼がここまで警戒心を強めているのは、ここ数日、顔を合わせることの出来ないリリアーナと愛子の事が引っかかっているからだ。
彼は光輝が外道に堕ちたと知ったあの後から、王宮内に漂う違和感には気がついていた。あの日、愛子が帰還した日に、夕食時に重要な話があるといって別れたきり姿が見えない事で、愛子の身に何か良くない事が起きているのではとも疑っていた。
本来の彼はそこまでの警戒心は無かった。しかし光輝に銃で撃ち殺されそうになった事で、「自分の知っている天之河光輝は死んだ。クラスメイトを導けるのは自分達だけだ。」と思い、更に雫が何故かは知らないが帰ってきてからメンヘラみたいになった事で尚更その責任感は高まった。*1
当然、愛子達二人の行方を探し、イシュタルから総本山で異端審問について協議しているというもっともらしい話を聞き出したのだが、直接会わせてもらうことは出来なかった。なお食い下がった龍太郎だったが数日後には戻ってくると言われ、またリリアーナの父で国王でもあるエリヒドにも心配するなと言われれば、渋々ではあるが一先ず引き下がるしかなかった。
しかし、それでも漠然とした不安感は消えず、今のようにどこぞのスパイのような警戒心溢れる就寝をしていたのである。
音もなくベッドから降りると、数秒で装備を整えて慎重に部屋の外へ出た。光輝がハジメと共に旅に出てから龍太郎は一人部屋だ。廊下に異常がないことを確かめると、直ぐに向かいの雫…達の部屋は放置して他の奴らの部屋をノックした。最近の雫は鬼気迫る様子で部屋に入る事を拒絶するし、ストレスなのか『髪の毛が白っぽい』し、『目も充血しているのか赤い』のでなんか怖いのだ。
何でも、王都を守護する三枚で構成された大結界は、外から第一、第二、第三障壁と呼ばれ、魔人族の大軍が王都近郊に展開された後、彼等の攻撃により第一の大結界が破られたらしい。内側の第三障壁が展開規模も小さい分もっとも堅牢な障壁となっているのだがそれが破られるのも時間の問題かもしれない。
王宮の人々からもたらされた情報が余りに現実離れしており、クラスメイト達も冷静さを失ってざわざわと喧騒が広がった。魔人族の大軍が、誰にも見咎められずに王都まで侵攻するなど有り得ない上に、大結界が破られるというのも信じ難い話だ。彼等が冷静でいられないのも仕方ない。そもそも彼等の大半は前線に立つ意欲を失った者達だ。とても大軍相手に時間稼ぎとはいえ挑むことなど出来はしない。
「クソッ…多分雫は戦力にならねェし…メルドさん達と合流して戦力を揃えなきゃなんねぇ…」
龍太郎はメルド達騎士団や兵団と合流することにした。生徒達は、出動時における兵や騎士達の集合場所に向けて走り出した。すぐ傍の三日月のように裂けたメイド達の笑みには気づかずに……
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龍太郎達が、緊急時に指定されている屋外の集合場所に訪れたとき、既にそこには多くの兵士と騎士が整然と並び、前の壇上にはハイリヒ王国騎士団副団長のホセ・ランカイドが声高に状況説明を行っているところだった。月光を浴びながら、兵士達は、みな青ざめた表情で頬をこけさせながら呆然と立ち尽くし、覇気のない様子でホセを見つめていた。
と、広場に入ってきた龍太郎達に気がついたホセが言葉を止めて龍太郎達を手招きする。
「……よく来てくれた。状況は理解しているか?」
「ウッス、ニアさんから聞きました。えっと、メルドさんは?」
ホセの歓迎の言葉と質問に龍太郎は頷き、そして、姿が見えないメルドを探してキョロキョロしながらその所在を尋ねた。
「団長は、少し、やる事がある。それより、さぁ、我らの中心へ。キミが我らのリーダーなのだから……」
ホセは、そう言って龍太郎達を整列する兵士達の中央へ案内した。居残り組のクラスメイトが、「えっ? 俺達も?」といった風に戸惑った様子を見せたが、無言の兵達がひしめく場所で何か言い出せるはずもなく流されるままに龍太郎達について行った。
無言を通し、目のイッてる表情もほとんど変わらない周囲の兵士、騎士達の様子に、皆の中の違和感が膨れ上がっていく。それは、起きた時からずっと感じている嫌な予感と相まって、龍太郎の心を騒がせた。無意識の内に、拳を握る手に力が入る。
そして、生徒達がちょうど周囲の全てを兵士と騎士に囲まれたとき、ホセが演説を再開した。
「みな、状況は切迫している。しかし、恐れることは何もない。我々に敵はない。我々に敗北はない。死が我々を襲うことなど有りはしないのだ。さぁ、みな、我らが勇者を歓迎しよう。今日、この日のために我々は存在するのだ。さぁ、剣をとれ」
兵士が、騎士が、一斉に剣を抜刀し掲げる。
「始まりの狼煙だ。注視せよ」
ホセが 懐から取り出した何かを頭上に掲げた。彼の言葉に従い、兵士達だけでなく龍太郎達も思わず注目する。
そして……
カッ!!
光が爆ぜた。
ホセの持つ何かがハジメの閃光弾もかくやという光量の光を放ったのだ。無防備に注目していたクラスメイト達は、それぞれ短い悲鳴を上げながら咄嗟に目を逸らしたり覆ったりするものの、直視してしまったことで一時的に視覚を光に塗りつぶされてしまった。
そして、次の瞬間……
ズシャッ
そんな生々しい音が無数に鳴り、
「あっ?」
「ごぁ?」
「ぐふっ!?」
次いで、あちこちからくぐもった悲鳴が上がった。
先程の、光に驚いたような悲鳴ではない。苦痛を感じて、意図せず漏れ出た苦悶の声だ。そして、その直後に、ドサドサと人が倒れる音が無数に聞こえ始める。
そんな中、龍太郎だけは、その原因を理解していた。広場に入ってからずっと最大限に警戒していたのだ。ホセの演説もどこか違和感を覚えるものだった。なので、光が爆発し目を灼かれた直後も、比較的動揺せずに身構え、直後、自分を襲った凶刃を何とか拳で防いだのである。目が見えない状況で気配だけを頼りに防げたのは鍛錬の賜物だろう。
そして、閃光が収まり、回復しだした視力で周囲を見渡した雫が見たのは、クラスメイト達が全員、背後から兵士や騎士達の剣に貫かれた挙句、地面に組み伏せられている姿だった。
「な、なんだよ…コレは…!」
呻き声を上げながら上から伸し倒されるように押さえつけられ、更に、背中から剣を突き刺されたクラスメイト達を見て、龍太郎が声を詰まらせる。全員殺されてしまっているようだ。
予断を許さない状況に険しい視線を周囲の兵士達に向ける龍太郎だったが、その目に奇妙な光景が映り込み思わず硬直する。
「流石だね、……龍太郎。」
「え?はっ……雫テメェ何をっ!?」
クラスメイト達が倒れ伏す中、たった一人だけ平然と立っている生徒がいたのだ。その生徒は精神的に不安定なので騎士団との合流には呼ばれていなかった…は言葉を詰まらせつつ反射的に疑問を投げ掛けようとした。
その瞬間、雫が刀を突き出してきた。
「クソッ!?」
よく知る相手の豹変に動揺しつつも、辛うじて雫の刀を弾いて
躱した。
「………」
「クソッ!(俺の知っている雫の剣速よりもずっと速ぇし力強い…剣筋が普段より何故かブレブレじゃなけりゃ死んでた…)」
更に激しく、そして他の兵士や騎士も加わり突き出される剣の嵐。龍太郎は、どうにかそれらも全て凌ぐが、素手で剣を捌き切るのは流石に無理が有る。次第に傷を負っていく龍太郎。
「あぐっ!?ク…クソッ…、どうしてだよ……何がお前をそんな風に…」
「……」
ついに片腕を切り飛ばされる龍太郎、訓練やスキルで痛みを軽減していなければ気絶していただろう。
「いや待て…テメェまさか…っ…大結界が簡単に…破られたのは……」
「………気がついた?うん、大結界のアーティファクトを壊してもらったの…」
最悪の推測は当たっていたらしい。魔人族が、王都近郊まで侵攻できた理由までは思い至らなかったが、大結界が簡単に破られたのは、雫の仕業だったようだ。雫の視線が、彼女の傍らに幽鬼のように佇む騎士や兵士達を悲しげに見ている事から、彼等にやらせたのだろう。
「もう王国にはいられないし……魔人族とコンタクトをとって、王都への手引きと異世界人の殺害を手伝って貰ったの。」
「馬鹿な…魔人族と連絡なんて…出来る訳…」
信じられないと言った表情で呟く。しかし八重樫雫ならば可能だ。彼女は自分達と訓練を行わず引きこもっていた。大結界の中に魔人族が入れない以上コンタクトを取るなんて不可能だと思いたいが、何者かの手引きさえあれば出来るかもしれない。
「【オルクス大迷宮】で襲ってきた魔人族の女の人の事、憶えてる?私の予想通り暫く後に魔人族が回収に来てね、そのまま寝返らせて貰ったの。」
「出来る訳がねぇ…そんな事…信じねぇぞ…」
「清水君に、どうやってあんなに二人は強くなったのか聞いたら、『魔物の肉を大迷宮の地下で取れる神水で中和しながら食べる事で体が強くなった』って聞いて帰り道を抜け出して…ハジメ達みたいに大きな穴から下に落ちて…苦労したけどどうにか魔物の肉を安全に食べれたの。その後光輝達のキャンプの跡から道筋を辿って『本当』の迷宮を攻略して…神代魔法も手に入れたのよ?その魔法のお陰で留守にしてた時間を誤魔化せられたし…『生成魔法』って名前で、魔法を鉱物に付加して特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法なの。魔族の洗脳とか記憶の改竄とかが出来る人に協力して貰って…曖昧でしょ?記憶。なんで私の部屋に入ったりしなかったのか思い出せる?急に髪が真っ白になっても違和感なんて無かったわよね?そういう魔法を付与した物資を使ったの。」
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ」
「アナタ達以外は洗脳したのよ?」
「みんなの…様子が…おかしいのは……」
「そういう事よ。………兵士達とかメイドには使ったけど、みんなは危ないから殺しておけって言われてね。銀髪の人が協力してくれなかったら危なかったかな…そろそろ時間的に殺さなきゃ…ごめんね」
龍太郎はそこでようやく気がついた、雫の虚ろで痩せこけた表情には少しの躊躇いと共に哀しみの涙が溜まっている事に。しかし八重樫 雫はもう止まれない。そのまま刃を首に添え、坂上龍太郎の首を断ち切った。
という事で闇落ち八重樫雫(『生成魔法』所持+魔物食)です。クラスメイトは全員死亡済み。兵士とかメイドは降霊術より虚ろだけど意識がはっきりして行動にも違和感の少ない状態です。因みに生成した鉱物は危ないお薬的な粉の塊です。食事に混ぜました。クソ転生者のせいで生まれた悲しきヒロイン…テメェの作った怪物だぞ光輝。
ついでに龍太郎みたいな前衛は魔法耐性が高いのでどうにか普通の態度で少し記憶にモヤが掛かる程度でしたが他のクラスメイト共はガッツリ洗脳されてました。