騎士王転生の天之河光輝、異世界に降り立つ。(元 天之河光輝成り代わり物) 作:ゼロさん
「以上で報告を終わります!」
「ご苦労、下がれ」
「はっ」
ツカツカと規則正しい足音を響かせて部下が出て行った扉をしばらく見つめた後、ヘルシャー帝国皇帝ガハルド・D・ヘルシャーは、先程まで話をしていた少女に視線を転じた。
澄まし顔の少女ハイリヒ王国王女リリアーナ・S・B・ハイリヒは、ガハルドの視線に気が付くと「大変そうですね?」と心配するような微笑みを向けた。隣国の王女として先程報告された内容を憂いているような、されど口出しは余計だと弁えているような、そんな表情だ。
「全く、困ったものだ。ふざけた強さの魔物の次はふざけた格好のふざけた強さの変態の襲撃か……この件、どう思う? リリアーナ姫」
「私にはわかりかねますね。魔人族の暗躍ではないですかね?有り得ない魔物を使役するのですから、何があってもおかしくないですよきっと。」
「そうだな。……その可能性はあるだろう。例え、市民から引き抜いた脊髄を眩い光を纏う剣として振るっていたとしても、勇者と同じ金髪でも…な?」
「……そうですわね。恐ろしいことです」
「ああ、全くだ。何が目的かと尋ねたら亜人奴隷達の解放だとふざけた様子で抜かすのだから、意味不明すぎてとても恐ろしいと、俺も思う」
「そうですわね」ニコッ
リリアーナの表情は崩れない。
「ところで、リリアーナ姫」
「はい?」
「勇者は今、どちらに?」
「……勇者様は、現在、行方不明ですわ。陛下なら知っているのでは?」
「おや、てっきり帝都に来ているのかと思ったぞ? そして、どこかで奴隷解放でも詠っているのかと思った」
「あら、ガハルド陛下ともあろう御方が、推測と事実を混同なさっているのですか? そのようなことありませんわよね?」
「はっはっは、もちろんだ! 根拠もない推測を事実のように語ったりはしない」
「ふふふ、そうでしょうね」
しばらくの間、「ははは」「ふふふ」と皇帝陛下と王女の笑い声が応接室に響き渡っていた。
一見、余裕そうに見えるリリアーナだったが、内心では、
(やはり流石ですわね♡)
全肯定BOTと化していた。なんでこうなったんだろうか…*1
「ハイハイ…」
「なんであんな頭おかしい格好で陽動した?なんであんなに暴れた?」
「ソッチのほうが目立つじゃん?」
「光輝、やり過ぎ。暴れたお陰で城の兵士全然いなかったけどこれからクッソ動きにくくなったんだが?」
「………それはごめんね?」
「………本来出動しない筈の城の兵士まで引っ張り出した手腕は流石だと思う。」
「褒めてくれてありがとうユエ。」
「でも全裸は気持ち悪い。」
「………フフッ、ひどい言い草だね…事実だからしょうがないけど。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
事前に城への連絡と許可証を手配していた光輝によって、一行は城を通された。
通された部屋は、三十人くらいは座れる縦長のテーブルが置かれた、ほとんど装飾のない簡素な部屋だった。そのテーブルの上座の位置に、頬杖をついて不敵な笑みを浮かべる男――ヘルシャー帝国皇帝ガハルド・D・ヘルシャーがいた。彼の背後には二人、見るからに〝できる〟とわかる研ぎ澄まされた空気を纏った男が控えている。
そして、部屋の中に姿は見えないが、壁の裏に更に二人、天井裏に四人、そして閉まった扉の外に音もなく二人が控えているのをハジメはしっかりと感じ取っていた。ガハルドの背後に控える男二人程ではないが相当の手練である。
「お前が、南雲ハジメと…死んだ筈の勇者、天之河コウキか?」
ハジメ達が部屋に入るなり、リリアーナによる紹介もなにもかもすっ飛ばして、ガハルドはハジメと光輝をその鋭い眼光で射抜きながらプレッシャーを叩きつけた。
数十万もの荒くれ者共を力の理で支配する男の威圧。半端なものではない。同じ王族であるリリアーナが息苦しそうに小さな呻き声を上げる。
しかし、そんな強烈なプレッシャーの中でも、ハジメ、光輝、ユエ、シア、ティオ、香織の五人は平然としていた。一番経験の少ない香織ですら【メルジーネ海底遺跡】では極まった狂気の嵐と太古より生きる不死身の怪物と相対して生き残ったのだ。
皇帝の威圧とは言え、大迷宮攻略者にとってはそよ風に等しい。
そんなハジメ達を見て、ますます面白げに口元を吊り上げるガハルドに、ハジメが返事をする。
「ええ、俺が南雲ハジメですよ。御目に掛かれて光栄です、皇帝陛下」
「「「「「!?」」」」」
胸に手を当てて軽くお辞儀しながら、そんな事を言うハジメに光輝達が驚愕の視線を向けた。
その見開いた瞳は明らかに「お前、誰だよっ!」と物語っていた。特に、リリアーナの動揺が激しい。ガハルドの威圧を受けて小さな呻き声を上げつつも、ほとんど表情を変えなかったというのに、今は隠しもせず愕然とした表情でハジメを凝視している。
ハジメとてTPOを弁える事くらいは出来る。いつもは、敢えて無視しているだけだ。
だが、今回は帝城に用事があるので、皇帝の機嫌を損ねて追い出される訳にはいかない。既に信ずべき神がいない以上、〝神の使徒〟という肩書きもどこまで有効かわからないのだ。なので、最低限の礼を示すべきだと判断した。一人称が改まっていない辺りがハジメらしいが。
「ククク……思ってもいないことを。普段の傍若無人な態度はどうしたんだ? ん? 何処かの王女様が対応の違いに泣いちまうぞ?」
しかし、ガハルドは笑い声を漏らしながら揶揄する。
ハジメは、チラリとリリアーナを見た。「姫ェ、てめぇ、なに余計なこと喋ってんだ、あぁ?」という視線をハジメから向けられたリリアーナは、ぷいっ! とそっぽを向く。ガハルドからハジメがどういう人間か聞かれた際に、つい自分に対する扱いがなっていないと少しばかり愚痴っぽく語ってしまったのだ。
「似合わねぇ喋り方してぇねぇで、普段通り話しな。俺は、素のお前に興味があるんだ。それに『死んだ筈』の勇者君にもなぁ…」
「……はぁ、そうかい。んじゃ、普段通りで」
「じゃ、私も。」
「くく、それでいい」
ハジメの態度に驚きつつも、順に席に着く光輝達。
それを見て、ようやくハジメから視線を外したガハルドがハジメの傍に陣取るユエ達を興味深げに観察し、特にシアに対しては意味深げな視線を向ける。次いで、光輝達の方に視線を向けると……光輝はスルーして隣の雫に目を向けニヤリと楽しげな笑みを浮かべた。
「雫、久しいな。白くなったお前も美しい…俺の妻になる決心は付いたか?」
「雫は、既に断った筈だろう?」
ガハルドの言葉に雫が何かを言い返すより早く、光輝が反応する。チラリと光輝を見たガハルドは、面白いというような視線を向ける。
雫は澄まし顔をして答える。
「前言を撤回する気は全くありません。陛下の申し出はお断りさせて頂きます」
「つれないな。だが、そうでなくては面白くない。元の世界より、隣の勇者より、俺がいいと言わせてやろう。その澄まし顔が俺への慕情で赤く染まる日が楽しみだ」
「そんな日は永遠に来ませんよ。……というか、皇后様がいらっしゃるでしょう?」
「それがどうした? 側室では不満か? ふむ、正妻にするとなると色々面倒が……」
「私は陛下のものにはなりません。諦めて下さい」
「まぁ、神による帰還が叶わない以上、まだまだこの世界にいるのだろうし、時間をかけて口説かせてもらうとしようか。クク、覚悟しろよ、雫」
どうやら本当に、ガハルドは雫を気に入っているようだ。強欲な皇帝陛下らしく、断られたくらいでは諦めないらしい。その鋭い眼光が完全に雫をロックオンしていた。雫は、心底嫌そうな表情でそっぽを向いているのだが、全く気にした様子もない。
と、その時、そっぽを向いた先で雫の視線が、偶然、光輝と合う。その時の光輝の眼差しには、「流石、苦労人(笑)」という明らかに面白がるような色が含まれていた。
イラっときた雫はつい、拳を握りしめて振り抜き、狙い違わず光輝の憎たらしい顔面に飛来し……直撃したがノーダメだった。ステータスの差は偉大である。
そんな様子を見ていたガハルドは、改めてハジメに鋭い視線を向ける。色んな意味で値踏みするような眼差しだ。
「ふん、面白くない状況だな。……天之河コウキ。お前には聞きたいことが山ほどあるんだが、まず、これだけ聞かせろ」
「なんだ皇帝。」
「お前、俺の雫はもう抱いたのか?」
「「「「ぶふぅーー!?」」」」
唐突にとんでもない事を真剣な表情で尋ねるガハルドに、雫を含めた数人が吹き出した。
ガハルドの背後に控える護衛の男達ですら「陛下……最初に聞くのがそれですか……」と頭の痛そうな表情をしている。彼等も苦労人のようだ。
「ちょっ、陛下! いきなり何をっ……」
「雫、お前は黙っていろ。俺は、天之河コウキに聞いてんだよ」
当然、雫が泡を食ってガハルドにツッコミを入れようとするが、ガハルドはそれを無視して光輝に視線を向けている。それに対してハジメは呆れ顔だ。
「何をどうしたらそんな発想に辿り着くんだよ」
「どうやら、雫はお前に心を許しているようだからな……態度から見て、ないとは思うが、念のためだ」
「………無理。抱くとか気まず過ぎるから。」
「……ふむ、嘘はついてないな。では、雫のことはどう思っている?」
その質問に、部屋中の視線がカスに集まった。ユエ達や光輝ガールズ達の様々な意味が込められた視線が突き刺さる。
光輝は、何で皇帝陛下と謁見して最初に聞かれる質問が雫との関係なのかと溜息を吐きながら、何となしに雫に視線を向けた。雫の表情が大変面白いことになっていた。
若干、真っ白な雫の耳が赤くなり始めている気がするが……
取り敢えず告げた答え本音は……
「……………………鎌倉武士?」
「OK、その喧嘩買ったわ。表に出なさい、光輝とついでに南雲君」
雫がすわった眼差しで光輝とついでに八つ当たりでハジメを睨みながらゆらりと席を立とうとする。既に、先程までの微妙な雰囲気は微塵もない。慌てて(実は付いてきていた)隣の鈴と巻き込まれたハジメが雫を掴み止めて必死に宥めにかかった。
「……カマクラ…よくわからんが…まぁ、いい。雫、うっかり惚れたりするなよ?お前は俺のものなのだからな」
「だから陛下のものではありませんしこんなカスに惚れる奴はもう私だけで良いですしさっさと私に首を切り落とされるべきだs」
「わかった、わかった。そうムキになるな。過剰な否定は肯定と取られるぞ?」
「ぐぅ……」
「出な…『ぐぅ』の音が。」
「南雲君殺す」
「待て落ち着け。」
「南雲ハジメ。お前も、雫に手を出すなよ?」
「興味の欠片もねぇから、安心しろ。つか、ホント無駄話しかしないなら、もう退出したいんだが?」
「無駄話とは心外だな。新たな側室……あるいは皇后が誕生するかもしれない話だぞ?帝国の未来に関わるというのに……まぁ、話したかったのは確かに雫のことではない。わかっているだろう?お前の異常性についてだ」
雫を絡めてハジメを観察する時間を稼いでいたガハルドだが、そろそろ潮時と判断してガラリと雰囲気を変える。今までの覇気を纏いつつもどこかふざけた雰囲気を含ませていたのとは異なり、抜き身の刃のような鋭さを放ち始める。
ガハルドは、ハジメ達との謁見の時間をとった最大の理由に切り込んだ。
「リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前が、大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると……魔人族の軍を一蹴し、二ヶ月かかる道程を僅か二日足らずで走破する、そんなアーティファクトを。真か?」
「ああ」
「そして、そのアーティファクトを王国や帝国に供与する意思がないというのも?」
「ああ」
「ふん、一個人が、それだけの力を独占か……そんなことが許されると思っているのか?」
「誰の許しがいるんだ?」
ハジメの簡潔な返しにガハルドが目を細める。
帝王の覇気が更に増し、リリアーナなどは歯を食いしばっており相当苦しそうだ。ガハルドの背後にいる護衛達がガハルドに合わせて殺気を放ち始める。対して、部屋の周囲に隠れている者達の気配が更に薄まっていた。
しかしそれに対するはプロトアーサーの名誉毀損世界記録保持者天乃河光輝。ナチュラルに取り出した聖槍を握りしめると、丁度息子♂の真下の位置の床をソニックブームが出るレベルの速度で刺し貫いた。
「………はっはっは、止めだ止め。こいつは正真正銘の化け物だ。やり合えば今直ぐ皆殺しにされちまうな!」
ガハルドが豪快に笑いながら、覇気を収めた。それに合わせて周囲の者達も剣呑な空気を収めていく。
「なんで、そんな楽しそうなんだよ?」
「おいおい、俺は〝帝国〟の頭だぞ? 強い奴を見て、心が踊らなきゃ嘘ってもんだろ?」
楽しげなガハルドに呆れたようにツッコミを入れるハジメ。それに対するガハルドの返事は、実に実力至上主義の国の人間らしいものだった。
「それにしても、お前が侍らしている女達もとんでもないな。おい、どこで見つけてきた? こんな女共がいるとわかってりゃあ、俺が直接口説きに行ったってぇのに……一人ぐらい寄越せよ、南雲ハジメ、天之河コウキの方でもいいぞ?」
「馬鹿言うな。ド頭カチ割るぞ。」
「おい待てよせヤメロめんどくさくなるだろ。」
「退けハジメェ!この身の程と格と礼儀を弁えていないゴミは粛清するしかない!!!殺すしかない!!!」
「…南雲ハジメ、なんかすまん。」
「光輝!帰るぞ光輝!ステイ!ハウス!ゴーホーム!」
「ゴーホームする為に頑張っているんだろうが!それはソレとして退け!」
「まぁ、最低限、聞きたいことは聞けた……というより分かったからよしとしよう。ああ、そうだ。今夜、リリアーナ姫の歓迎パーティーを開く。是非、出席してくれ。姫と息子の婚約パーティーも兼ねているからな。真実は異なっていても、それを知らないのなら、〝勇者〟や〝神の使徒〟の祝福は外聞がいい。(抑えるのを)頼んだぞ?」
バタンと扉の締まる音(と光輝の怒声)が響いた。
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応接室を出てお付のメイドに部屋へ案内されたハジメ達。メイドを追い返したあと、ずっと、何かに集中するように目を瞑っていたハジメがスッと目を開く。それに気がついたユエが、普段よりずっと口数の少ないハジメに声をかけた。
「……どう? ハジメ」
「……ん~、上々だな。予定の六割は完了した」
ユエに答える声も、他の何かに集中しているかのように鈍い。
「早いね。やっぱりトラップは多いのかな?」
「……そうだな。だが、全てを解除する必要はない」
「ふむ、今夜がパーティーというのは幸いじゃの。人が固まれば、色々動きやすいのじゃ」
「最終的にはパーティー会場に集まることになりそうですね。……上手くいくでしょうか?」
シアが、少し不安そうな表情になる。
何せ、これから自分の家族の未来が決まる一世一代の大勝負が始まるのだ。緊張しない方がおかしいだろう。そんなシアのウサミミをハジメがモフり、ユエが頬をムニり、ティオが髪をナデナデして、香織が手をギュッと握る。
微笑む仲間に、シアは込み上げるものを感じる。
しかし、涙は流さない。たとえ、それが嬉し涙でも、まだまだ流すのは早いからだ。代わりに、いつものようにニッコリと輝く笑みを浮かべた。自分は一人ではない。家族もいる。恵まれすぎなくらいだと、その思いを隠さずあらわにした笑顔。ハジメ達が好むシアの魅力だ。
シアの笑顔を確認したハジメは、いたずらを前にした子供のようにニヤリと笑みを浮かべると仲間に力強く告げる。
「さて、主役達のために舞台を整えようか」
その言葉に、シア、ユエ、ティオ、香織も同じような笑みを浮かべて力強く頷いた。
光輝?皇帝への怒りと膨張♂を収める為に此処に居ないメンバーとイチャイチャしてるよ。
ちなみに裸はスレッドの住民からもドン引きされた模様