騎士王転生の天之河光輝、異世界に降り立つ。(元 天之河光輝成り代わり物)   作:ゼロさん

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南雲ハジメ「別にどれだけ被害が出ても他人だし割とどうでもいい…やり過ぎだ光輝!限度ってもんを覚えろ!」

ハジメヒロインs「複雑だけどしょうがない」

光輝ヒロインs「まぁ光輝のやる事だし。」

転生者s「ヒャッハー!新鮮な異世界人だぁ!死体は生き返らせてウチの世界に連れてくぜ!」


ありふれた展開でk…あーもうめちゃくちゃだよ。

「なんだ!? なにが起こった!?」

 

「いやぁ! なに、なんなのぉ!?」

 

 

 

一瞬で五感の一つを奪われた帝国貴族達が混乱と動揺に声を震わせながら怒声を上げる。

 

 

 

「狼狽えるな! 魔法で光をつくっがぁ!?」

 

「どうしたっギャァ!?」

 

「何が起こっていっあぐっ!?」

 

 

 

比較的冷静だった者が、指示を出しながら魔法で光球を作り出し灯りを確保しようとする。が、直後には悲鳴と共に倒れ込む音が響いた。同時に、混乱する貴族達が次々と悲鳴を上げていく。

 

 

 

その異様な光景に再び場は混乱に陥った。特に、令嬢方は完全にパニックに陥っており、闇雲に走り出したようで、そこかしこから転倒音や衝突音が聞こえ始める。

 

 

 

「落ち着けぇ! 貴様等それでも帝国の軍人かぁ!」

 

 

 

 暗闇の中、ガハルドの覇気に満ちた声が響き渡る。闇夜を払拭しそうなほど大音量の喝は暗闇と悲鳴の連鎖で恐慌に陥りかけた帝国貴族達の精神を強制的に立て直させた。

 

 

 

しかし……

 

 

 

ヒュ! ヒュ! ヒュ!

 

 

 

「っ!? ちっ! こそこそと鬱陶しい!」

 

 

 

そのガハルド目掛けて闇の中から無数の矢が飛来する。

 

 

 

通常では考えられないほど短いくせに驚く程の速度と威力を秘めた矢が四方八方からガハルドを襲ったのだ。その上、絶妙にタイミングをずらし、実に嫌らしい位置を狙って正確無比に間断なく撃ち込まれるので、さしものガハルドも防戦一方に追い込まれてしまった。とても態勢を立て直す為の指示を出す余裕はない。

 

 

 

それでも真っ暗闇の中、風切り音だけで矢の位置を掴み儀礼剣だけで捌いているのは流石というべきだろう。怒声を上げるガハルドを中心にギン! ギン! ギン! ギン! と金属同士が衝突する音が鳴り響く。

 

 

 

次々と上がる悲鳴と物や人が倒れる音が響く中、ガハルドの喝と、そのガハルドが襲撃を受けていることから冷静さを取り戻した者達が灯りとして火球を作り出すことに成功した。

 

 

 

険しい表情で周囲を見渡しつつ衛兵を大声で呼ぶ彼等。

 

 

 

その視界の端に何か黒い影のようなものがヒュッ! と風を切りながら横切る。

 

 

 

「ッ!? 何者っげぶっ!?」

 

 

 

咄嗟に、その影に向かって火球を飛ばそうとした帝国貴族の男。

 

 

 

しかし、直後に背後の闇から飛び出した黒装束(+ウサミミ)が暗闇と同化したような黒塗りの小太刀を一閃すると、まるで冗談のように、一瞬で首を刈り取られてしまった。

 

 

 

ポ~ンと首が飛びクルクルと回って生々しい音と共に地面に落ちる。その頭は、どこかキョトンとしており、自分の首が刈り取られたという事に気がついていないかのようだった。

 

 

 

気が付けば、周囲を照らしていた幾つかの火球は全て消えて、再び闇一色となっている。

 

 

 

光に誘われる蛾のように火球を作り出した者のところへ向かっていた帝国貴族や令嬢達は、火球が消滅する寸前に垣間見えたウサミミを生やした黒装束が、一瞬で人の首を飛ばす光景を目の当たりにした。そして再び、闇に紛れて消えた襲撃者に無様にも腰を抜かしていく。

 

 

 

「ひっ、ば、化け物ぉ~!」

 

「し、死にたくないぃ~、誰かぁ!」

 

 

 

腰を抜かした者の多くは令嬢や文官達だったが、少なからず軍の将校もいる。前線から退いて贅沢の極みを尽くしてきた彼等には死神の鎌に等しい暗闇と襲撃者の存在に精神が耐えられなかったのだ。

 

 

 

そんな彼等は、一人の例外もなく、何も出来ないまま、そしてしないまま、音もなく肉薄した黒装束達に手足の腱を切られて、痛みにのたうちながら倒れ伏すことになった。

 

 

 

そんな情けない者達もいるが、ここが実力至上主義を掲げる軍事国家である以上、いつまでも混乱に甘んじているわけがない。ガハルドのように儀礼剣は持っていないが護身用の懐剣を頼りに何度か襲撃を凌いだ猛者達が、仲間の気配を頼りに集まり陣形を組みだした。

 

 

 

背中合わせになり、中央に術者を据えて詠唱を任せる。見事な連携だ。

 

 

 

ガハルドの比較的近くにいた者達も直ぐに陣形を組んでガハルドの背後を守りだした。注意すべき範囲が一気に半分になったガハルドに、もう矢による攻撃は通じない。余裕が出来たガハルドは何十という数の矢を片手間に叩き落としながら詠唱を始めた。

 

 

 

とんでもない発動速度で瞬く間に作り出された十近い火球。それは、一瞬で会場に広がり、始源の煌きを以て闇を払い始めた。

 

 

 

反撃開始だ! そう息巻いたガハルド等だったが、直後、目の前に金属塊がコロコロと転がってくる。

 

 

 

「なんだ? これは……」

 

 

 

訝しみながらも正体を確かめようと接近するガハルドの側近を務める男。それは、彼だけでなく離れた場所で灯りを確保した者達も同じだった。

 

 

 

猛烈に嫌な予感がしたガハルドは、咄嗟に制止の声をかける。

 

 

 

「よせ! 近づくなっ!」

 

「っ!?」

 

 

 

ガハルドの言葉に反射的に従って後ろに飛び退ろうとした側近だったが、その金属塊のもたらす効果からすれば無意味な行動だ。それは、次の瞬間に証明された。

 

 

 

カッ!

 

キィイイイイイン!!

 

 

 

突然、金属塊が爆ぜたかと思うと、強烈な光が迸り、莫大な音の波が周囲を無差別に蹂躙したのである。

 

 

 

「ぐぁあ!?」

 

「ぐぅうう!」

 

「何がァ!?」

 

 

 

光が爆ぜた瞬間、咄嗟に目を瞑って腕で顔を庇ったガハルド達だったが、余りの不意打ちに完全には防ぎきれず、一時的に視力を失う程にきっちりと目を灼かれ、酷い耳鳴りによって聴覚も失う事になった。

 

 

 

そして、その絶好のチャンスを襲撃者たるハウリアが見逃すはずもない。

 

 

 

絶妙なタイミングで急迫した黒装束のハウリア達が極限の気配殺しで標的の懐に踏み込む。そして、漆黒の小太刀を一閃、二閃。

 

 

 

五感の二つをいきなり奪われ、抵抗する余裕など微塵もない将校達の手足の腱は、あっさりと切り裂かれてしまった。

 

 

 

激烈な痛みに悲鳴を上げて倒れ伏す側近達。

 

 

 

直後、口にナイフを突き込まれて舌を裂かれる。詠唱封じの目的だ。離れた場所でも同じように数人が手足の腱を切られて倒れ伏し口から血を流していた。大きな魔術を行使しようとしていた者は容赦なく首を飛ばされている。

 

 

 

そんな中、ギンギンギン!と金属同士の激突音が響いた。何と驚いたことに、ガハルドだけは、目も耳も潰された状態で、極限まで気配を殺したハウリア族二人の斬撃を凌いでいたのである。

 

 

 

これには襲撃しているハウリア族の二人も黒装束から覗く瞳を大きく見開いて驚きをあらわにした。

 

 

 

その一瞬の動揺を感じ取ったのか、隙を突いて気合一発、ガハルドは大きく踏み込み震脚によって衝撃を発生させる。

 

 

 

「っ!」

 

「くっ!」

 

 

 

体勢を崩された二人のハウリアが思わず呻き声を上げた。そして、ガハルドは、目も耳も使えないとは思えないほど正確な踏み込みで二人に横殴りの斬撃を浴びせる。

 

 

 

「散らせぇ!〝風壁〟!」

 

 

 

辛うじて小太刀で受けつつも強烈な破壊力を秘めた斬撃によって弾き飛ばされた二人のハウリア族と入れ違いに、凄まじい数の矢がガハルドを集中砲火するが、たった二言で発動した風の障壁によって、その全てはあっさりと軌道を逸らされてしまった。

 

 

 

「撃ち抜けぇ!〝炎弾〟!」

 

 

 

そして再び二言で魔法を発動。〝火球〟より威力のある〝炎弾〟を一度に十も作り出し、〝風壁〟によって感じ取った矢の射線に向かって一気に掃射する。

 

 

 

発動速度も威力も尋常ではないガハルドに戦慄する気配が無数に湧き上がる。気配を殺していたハウリア達が動揺して気配を僅かに漏らしたのだ。

 

 

 

ガハルドの閉じたままの瞼が僅かに開き、見えていないにもかかわらずギラリと野獣じみた危険な光を宿す。そして、グリン! と首を回しその視線が闇の奥のハウリアを正確に捉えた。先程、僅かに漏れた気配を感じ取ったのだ。

 

 

 

「おぉおおお!爆ぜろぉ、〝炎弾〟!」

 

 

 

放った炎弾には背を向けながら、闇の奥のハウリアに向かって一直線に突進するガハルドは再度詠唱した。

 

 

 

直後、パーティー会場の天井付近に向かって飛んでいた背後の炎弾が一瞬の収縮のあと轟音と共に大爆発を起こした。

 

 

 

天井からクロスボウで援護をしていたハウリア達は、炎弾を回避するためにその場から急いで撤退していたのだが、炎弾が爆発したせいで広範囲に衝撃と熱波が撒き散らされたために完全にはかわすことが出来なかった。少なくとも、足場にしていた場所は崩落してしまい、次の狙撃ポイントに移るまで僅かな時間、援護が途絶えてしまった。

 

 

 

「舞い踊る風よ!我が意思を疾く運べ、〝風音〟!」

 

 

 

その隙にガハルドは次の魔法を行使する。風系統の補助魔法〝風音〟。周囲の空気に干渉して音を増幅したり、小さな音を遠くに運んだり出来る魔法だ。大音量に狂わされた聴覚を、この魔法で補助して僅かにでも取り戻そうというのだろう。

 

 

 

確かに、応用すれば気配感知の技能の魔法バージョンと言えるかもしれない。と言っても、結局は聴覚を通じて感知するので精度は下がるし、感じ取るのに集中力も必要で近接戦闘時に使うには不向きな魔法ではある。基本は斥候や諜報員が使う連絡・諜報用の魔法なのだ。

 

 

 

「らぁああ!!」

 

「ッ――!!」

 

「くぅう!」

 

 

 

裂帛の気合と共に、斬撃が鞭のようにしなりながら変幻自在に振るわれる。

 

 

 

それを苦悶の声を上げながらも、気配に緩急をつけてガハルドの感覚を誤魔化しつつ、連携で何とか凌いでいくハウリア達。しかし、〝風音〟のせいで気配操作は余り役に立っていないようだ。ハウリア族が動いた時の微妙な風切り音をしっかりと感じ取っているらしい。

 

 

 

視覚を奪われながら、おそらく発動しても〝気配感知〟には程遠い効果しかないだろう連絡・諜報用の魔法に身を委ねて躊躇うことなく踏み込めるガハルドの胆力と凄絶な殺気の奔流。

 

 

 

これが皇帝。これが軍事国家の頭。力こそ全てと豪語する戦闘者たちの王なのだ!

 

 

 

それを、身を持って実感したハウリア達は……

 

 

 

しかし、萎縮するどころか誰もがその口元に凄惨な笑みを浮かべた。覆面の隙間から覗く瞳はギラギラと獰猛に輝き、一人一人から濃密な殺気が噴き出す。気配操作が意味をなさないのなら、連携で仕留めてやんよぉ!と言わんばかりに、ハウリア達はまるで一つの生き物のように動き出した。それにこちらには、我欲で味方してくれる『助っ人』が居るのだ。死ぬ事だって一切怖くない。

 

 

 

「ククク、心地いい殺気を放つじゃねぇか! なぁ、ハウリアぁ!」

 

 

 

四方八方からヒット&アウェイを基本とした絶技と言っても過言ではないレベルの連携攻撃が殺到する。その斬撃を独特の剣術で弾きながら、ガハルドは楽しげに叫んだ。どうやら、とっくにハウリア族とばれていたようだ。

 

 

 

ハウリア達は、ガハルドの雄叫びを聞いても無言だ。ただ、ひたすら殺意を滾らせていく。

 

 

 

「あぁ?ビビって声も出せねぇのか!?」

 

 

 

言葉からして、やはり、魔法のおかげで聴力だけは少し回復しているらしい。そのガハルドの叫びに、一際強烈な殺気を振りまくハウリア――カムが小太刀の二刀を振るいながら、その溢れ出る殺意とは裏腹に無機質な声をポツリと返した。

 

 

 

「戦場に言葉は無粋。切り抜けてみろ」

 

「っ! はっ、上等ぉ!」

 

 

 

暗闇に火花が舞い散り、更に激しさを増す剣戟は嵐の如く。

 

 

 

しかし、双方の体に刃は届かない。数十秒か、数分か……会場で意識はあるものの口も手足も切り裂かれて苦悶に表情を歪める者達は、なぜ外から誰も駆けつけないのかと苛立ちながらも自分達の王の勝利を祈る。

 

 

 

同時に、剣戟の火花により時折浮かび上がる影で襲撃者が兎人族であると察し、有り得ない事態に、その未知に、恐怖に慄く体を必死に押さえ込んでいた。

 

 

 

と、その時、彼等の期待を裏切るように事態が動いた。

 

 

 

「っ! なんだっ? 体が……」

 

 

 

ガハルドが突如ふらつき始め、急速にその動きを鈍らせたのである。「待ってましたぁ!」と言わんばかりに、四方八方からハウリア達が飛びかかる。

 

 

 

何とかそれを弾き返すガハルドだったが、最初からガハルドの異変は想定済みだったようで、絶妙なタイミングで放たれた矢がガハルドのふくらはぎを深々と貫いた。

 

 

 

「ぐぁ!」

 

 

 

ガクンと膝を折るガハルドにカムが小太刀を振るう。辛うじて剣で受け止めるもののもう片方の小太刀で腕の腱を切られ、ガハルドは遂に剣を取り落とした。

 

 

 

ガハルドは、瞬時に魔法を発動しようとするも、刹那のタイミングで交差するようにすれ違った二人のハウリア族が、戦闘中に確かめていた位置に小太刀を振るい、隠し持っていた魔法陣やアーティファクトを破壊または弾き飛ばす。同時に、残りの腕と足の腱も切断した。

 

 

 

「ッ――」

 

 

 

 迸る激痛に、しかし、悲鳴は上げないガハルドだったが、その体は意志に反してゆっくりと傾き、ドシャと音を響かせてうつ伏せに倒れてしまった。

 

 

 

静まり返るパーティー会場。誰も言葉を発しない。それは、物理的に口を閉じさせられているからというのもあるが、きっと、たとえ口が利けたとしても、言葉を発する者はいなかっただろう。

 

 

 

ヘルシャー帝国皇帝の敗北。

 

 

 

暗闇に視界を閉ざされていようが、理解できてしまう。その事実は、人から言葉を、あるいは思考自体を奪うには十分過ぎる衝撃だった。

 

 

 

ハウリア族の一人が、倒れ伏すガハルドにスっと近寄る。そして、視力と一応聴力を回復させる薬をガハルドに施した。これからの交渉に必要だからだ。

 

 

 

「ふん、魔物用の麻痺毒を散布してここまで保つとはな」

 

「くそがっ、最初からそれが狙いだったか……」

 

 

 

衣服に仕込まれた魔法陣やアーティファクトも全て取り除かれ死に体となったガハルド。視力と聴力が回復してきたところでカムから体の不調の原因を聞かされて悪態をつく。

 

 

 

そんなガハルドに、突如、頭上から光が降り注いだ。ハウリア達の装備の一つでフラッシュライトのようなものだ。それがまるでスポットライトのようにガハルドを照らしているのである。

 

 

 

『どどどどど、どういうことですか!? ここここ、これは!? きょきょきょ、きょうきさん! いいい、一体ぃ!!』

 

『いいから、ちょっと落ち着いて?確かに私は狂気(きょうき)さんだけどね。』

 

 

 

手足の腱を切り裂かれ、魔法陣の破壊の為にあちこち衣服を切り裂かれて地に伏せるガハルドが光に照らされて現れたのを見て、いきなりハジメの影から現れた光輝に羽交い締めにされて口元を塞がれているリリアーナが動揺もあらわに光輝を問い詰める。

 

 

 

襲撃の際、皇太子バイアスの傍らにいたリリアーナだったが、ハジメが瞬時に回収して元の位置に戻って来ていたのだ。ハウリア族の作戦遂行中、ハジメ達は皆、邪魔にならないように会場の端っこに集まっていた。その後影にウサギ(ニンジャ)の能力で潜んでいた光輝が出てきて口を塞いでいたのだ。因みに光輝君現在変装中である。なんでリリアーナにバレたのか?愛の力じゃない?(適当)

 

 

 

幾人もの帝国貴族達が死んだことを感じ取っているようで光輝が(後で生き返らすの面倒くさ…あんま殺すなって言ったじゃん…)と盛大に顔をしかめている。

 

鈴や雫も難しい表情で黙り込んでいた。これが、亜人の境遇を改善する最大のチャンスであり、文字通りハウリア達の運命を左右する一戦であることを理解しているためじっとしているが、やはり目の前で繰り広げられる惨劇をあっさり割り切ることは出来ないのだろう。

 

 

 

もっとも、たとえ割り切れなくとも静観する以外に道はない。もし感情に任せて、「これ以上はやり過ぎだ!」等と言いながらカム達の邪魔をしようものなら、その瞬間、背後からレールガンと聖剣に襲われることになるだろう。

 

その後、変装(黒コート&目出し帽&ウサミミ&変声機を装備)している光輝…もとい革命家『ラビット・タンク』が姿を表した。ラビット・タンクはこういうイベントが大好きなのだ。

 

 

じゃぁ、いいかなリリィ。静かにしててね?ご機嫌よう、ガハルド・D・ヘルシャーよ。私は今回の首謀者、革命家の『ラビット・タンク』だ。以後よろしく、さて皇帝。今生かされている理由は分かるな?」

 

「ふん、要求があるんだろ? 言ってみろ、聞いてやる」

 

「……減点だ。Mr、ガハルドよ、立場を弁えろ…やれ。」

 

「Yes。」

 

 

姿は見えず、パーティー会場全体に木霊するように響き渡る男の声。正体はカムだ。

 

 

 

這い蹲るガハルドに声をかけた光k…『ラビット・タンク』だったが、ガハルドの横柄な態度に、僅かな間の後、まるで機械のような声音で忠告を発した。

 

 

 

そして、その忠告は言葉だけではなかった。

 

 

 

突如、ガハルドから少し離れた場所にスポットライトが当たる。そこには、ガハルドと同じく手足の腱を切られ、詠唱封じのために口元も裂かれた男の姿があった。その男にスポットライトの外から腕だけが伸びてきて髪を掴んで膝立ちにさせたかと思うと、次の瞬間には、男の首が嘘のようにあっさりと斬り飛ばされた。

 

 

 

「てめぇ!」

 

「減点だ、追加だな。」

 

 

 

思わず怒声を上げるガハルド。他の場所からも生き残り達が見ていたのだろう。悲鳴や息を呑む音が聞こえる。しかし、そんなガハルドの態度に返ってきたのは機械じみた淡々とした声。

 

 

 

そして、再び別の場所にスポットライトが辺り、同じように男の首が刈り取られた。

 

 

 

「ベスタぁ!このっ、調子にのっ――」

 

「減点」

 

 

 

側近だったのか、たったいま首を刈り取られた男の名前を叫び、悪態を吐くガハルドだったが、それに対する返しは、やはり淡々とした声音と刈り取られる男の首だった。

 

 

 

「……」

 

 

 

ギリギリと歯ぎしりしながらも押し黙り、それだけで人を殺せそうな眼光で前方の闇を睨むガハルド。そんなガハルドに、やはりタンクは淡々と話しかける。

 

 

 

「そうだ、自分が地を舐めている意味を理解しろ。判断は素早く、言葉は慎重に選べ。今、この会場で生き残っている者達の命は、お前の言動一つにかかっているのだから。同志諸君、『首輪』の用意を。」

 

 

 

その言葉と同時に、いつの間にかスポットライトの外から伸びてきた手が素早くガハルドの首にネックレスをかけた。細めの鎖と先端に紅い宝石がついたものだ。

 

 

 

「それは〝誓約の首輪〟。ガハルド、貴様が口にした誓約を、命を持って遵守させるアーティファクトだ。一度発動すれば貴様だけでなく、貴様に連なる魂を持つ者は生涯身に着けていなければ死ぬ。誓いを違えても、当然、死ぬ。」

 

 

 

言外に、帝室の人間は確保しており、同じアーティファクトが掛けられていると伝えるカム。ガハルドもそれを察したようで苦虫を万匹くらい噛み潰したような表情になる。

 

 

 

カムがガハルドの首にかけた〝誓約の首輪〟と呼ばれるネックレス型のアーティファクトは、魂魄魔法を生成魔法によって付与した宝石と鉱石で作られたもので、カムの言葉通り、口にした誓約を魂魄レベルで遵守させる効果を持つ。

 

 

 

具体的には、発動状態で口にした誓約が直接魂魄に刻まれ、誓約を反故にしたり〝誓約の首輪〟を外したりすれば魂魄自体が消滅することになる。また、連なる魂を持つ者、すなわちガハルドの一族に対しても効果があり、同じく〝誓約の首輪〟を着けなければ死ぬ事になる。要するに、皇帝一族全員に、末代まで誓約を守らせるというアーティファクトなのだ。(姻族に対しては別途アーティファクトが必要)

 

 

 

「誓約……だと?」

 

「…減点にしようかと思ったが、まぁ良い。Mrが誓う誓約の内容は四つだ。一つ、現奴隷の解放、二つ、樹海への不可侵・不干渉の確約、三つ、亜人族の奴隷化・迫害の禁止、四つ、その法定化と法の遵守。わかったか?わかったのなら、〝ヘルシャーを代表してここに誓う〟と言え。それで発動する」

 

「呑まなければ?」

 

「今日を以て帝室は終わり、帝国が体制を整えるまで将校と市民の首が飛び続け、その後においても殺戮が延々と繰り返される。我等ハウリア族が全滅するまで、帝国の夜に安全の二文字はなくなる。帝国の将校達は、帰宅したとき妻子の首に出迎えられることになるだろうな。」

 

「帝国を舐めるなよ。俺達が死んでも、そう簡単に瓦解などするものか。確実に万軍を率いて樹海へ侵攻し、今度こそフェアベルゲンを滅ぼすだろう。わかっているはずだ。奴隷を使えば樹海の霧を抜けることは難しくない。戦闘は難しいが、それも数で押すか、樹海そのものを端から潰して行けば問題ない。今まで、フェアベルゲンを落とさなかったのは……」

 

「畑を潰しては収穫が出来なくなるから……か?」

 

「わかってるじゃねぇか。今なら、まだ間に合う。たとえ、奴の力を借りたのだとしても、この短時間で帝城を落とした手際、そしてさっきの戦闘……やはり貴様等を失うのは惜しい。奴隷が不満なら俺直属の一部隊として優遇してやるぞ?」

 

「論外。貴様等が今まで同志達にしてきた所業を思えば信じるに値しない。それこそ〝誓約〟してもらわねばな」

 

「だったら、戦争だな。俺は絶対、誓約など口にしない」

 

 

 

どうだ?と言わんばかりに口元を歪めるガハルドに、カムは、どこまでも機械的に接する。

 

 

 

「そうか。……減点だ、Mr,ガハルド」

 

 

 

 再度、その言葉が発せられ、降り注いだスポットライトに照らし出されたのは……

 

 

 

「離せェ! 俺を誰だと思ってやがる! この薄汚い獣風情がァ! 皆殺しだァ! お前ら全員殺してやる! 一人一人、家族の目の前で拷問して殺し尽くしてやるぞ! 女は全員、ぶっ壊れるまでぇぐぇ――」

 

 

 

皇太子バイアスだった。

 

 

 

皇太子の喚き声に混じって息を呑む音がそこかしこから聞こえる。

 

 

 

直後、何の躊躇いもなく銀線が翻り、ヘルシャー帝国皇太子の首はあっさり宙を飛んだ。

 

冗談のように、あっさり切り離され宙を飛んだ次期皇帝バイアスの首。

 

 

 

「……」

 

「あれが次期皇帝。お前の後釜か……見るに堪えん、聞くに堪えん、全く酷いものだ」

 

「……言ったはずだ。皆殺しにされても、誓約などしねぇ。怒り狂った帝国に押し潰されろ」

 

「息子が死んでもその態度か。まぁ、元より、貴様に子への愛情などないのだろうな。何せ、皇帝の座すら実力で決め、その為なら身内同士の殺し合いを推奨するくらいだ」

 

 

 

カムの原作で言っていた通り、帝国では皇帝の座をかけた身内での決闘が認められている。その決闘においてならたとえ相手を殺しても罪には問われない。

 

 

 

ガハルドには正妃の他にも側室が大勢おり、バイアスも正妃の息子というわけではなく側室の子ではあるが、決闘により実力を示したために皇太子となったのである。まさに、実力至上主義、強い者に従え! というわけである。

 

 

 

そのせいか、ガハルドの表情に変化はない。元より、強いか弱いかが基準であり、息子娘に対して人並みの愛情は持っていないという噂があったりするのだが……特に感情を押し殺しているようには見えないので、本当なのかもしれない。むしろ、先程の側近の時の方が怒りをあらわにしたくらいだ。

 

 

 

カムの言葉に鼻を鳴らすガハルド。

 

 

 

「わかってんなら無駄なことは止めるんだな」

 

「そう焦るな。どうしても誓約はしないか? これからも亜人を苦しめ続けるか?我等ハウリア族を追い続けるか?」

 

「くどい」

 

「そうか……では、実力行使の時間だ。やれ。」

 

 

 

――飼い主(ハンドラー)、こちらデルタワン。了解

 

 

 

訝しそうな表情になるガハルドだったが、次の瞬間、腹の底に響くような大爆発の轟音が響き渡り、顔色を変える。

 

 

 

「っ。なんだ、今のは!」

 

「なに、大したことではない。奴隷の監視用兵舎とついでに都市の一角を爆破しただけだ」

 

「爆破だと? まさか……」

 

「ふむ、中には何人いたか……取り敢えず数百単位の兵士と数千の市民が死んだ。ガハルド、お前のせいでな」

 

「貴様のやったことだろうが!」

 

「いいや、私は掃除をしただけだ。害獣のな“デルタワン、こちら飼い主(ハンドラー)・タンク、起動しろ”」

 

 

 

再び言葉を呟くタンクに、ガハルドは、咄嗟に制止の声をかける。この場にいて、遠隔地を爆破できるなど冗談にしてはタチが悪かった。

 

 

 

「おい!ハウリアっ」

 

 

 

しかし、ガハルドの言葉も虚しく、二度目の轟音。何処かで大爆発が起きたのだ。

 

 

 

感情を押し殺した声音でガハルドが尋ねる。

 

 

 

「……どこを爆破した?」

 

「この国全ての治療院だ。」

 

「なっ、てめぇ!」

 

「安心しろ。死んだのは兵士と病人と医者達だけ……もっとも、宿、娼館、住宅街、先の魔人族襲撃で住宅を失った者達の仮設住宅区にも仕掛けはしてあるが、リクエストはあるか?」

 

「一般人に手を出してんじゃねぇぞ! 堕ちるところまで堕ちたかハウリア!」

 

「……貴様等は、亜人というだけで迫害してきただろうに。立場が変わればその言い様か……やはり器が知れる。“デルタ、こちら飼い主(ハンドラー)・タンク。今回は大きめめにやれ”」

 

「まてっ!」

 

 

 

亜人族を帝国全体で迫害しておいて、今更関係のない一般人はないだろう? と若干、呆れ気味の声を出すタンク。首元で皇帝にナイフを突きつけるカムも呆れ顔だ。そして、容赦なく命令を下す。

 

 

 

市民達は死んだ。建物は軒並み崩れた。因みに奴隷達は既に有志の転生者達により回収済みだ。

 

 

 

「貴様が誓約しないというのなら、仕方あるまい。城に仕掛けた爆弾を発動させ、貴様等帝室とこの場の重鎮達への手向けとしてやろう。なーに、民が死出の旅に付き合ってくれるのだ。悪くない最後だろう?まぁ、もう復興は不可能だろうがな?今ので3割市民が死んだ。」

 

 

 

容赦ない要求に、即断できず沈黙するガハルド。その頭の中は目まぐるしく状況の打開方法を探っているのだろうが、妙案は一向に出てこない。苦みばしった表情と流れる冷や汗が、追い詰められていることを如実に物語っていた。

 

 

 

そして、そんな状態でもカムは全く容赦しない。返答が遅いと言わんばかりに命令を下す。

 

 

 

「“デルタ、こちら飼い主(ハンドラー)、……や”」

 

「まてっ!」

 

 

 

ガハルドが慌てて制止の声をかける。そして、苛立ちと悔しさを発散するように頭を数度地面に打ち付けると、吹っ切ったように顔を上げた

 

 

 

「ちくしょうが!要求を呑む!だから、これ以上、無差別に爆破すんのは止めろ!」

 

「それは重畳。では誓約の言葉を頼もうか?」

 

 

 

要求が通ったというのに、やはり淡々と返すタンク。ガハルドは、もはや死相が出ている様な顔だ。そして、肩の力を抜くと、会場にいる生き残り達に向かって語りかけた。

 

 

 

「お前等…すまんな。今回ばかりはしてやられた。……帝国は強さこそが至上。こいつら兎人族ハウリアは、それを“帝都を掌握する”ことで示した。民の命も削られ、恐らく残りも握られている。故に、“ヘルシャーを代表してここに誓う! 全ての亜人奴隷を解放する! ハルツィナ樹海には一切干渉しない! 今、この時より亜人に対する奴隷化と迫害を禁止する! これを破った者には帝国が厳罰に処す! その旨を帝国の新たな法として制定する!”文句がある奴は、俺の所に来い! 俺に勝てば、あとは好きにしろ!」

 

 

 

亜人を今まで通り奴隷扱いしたければ、ヘルシャーの血を絶やせ! 受けて立つ! という宣言だ。本当に、実力至上主義を体現した男である。もちろん、この判断には、要求を呑んでも亜人と関わりがなくなるだけで帝国側に害はないという判断も含まれているのだろうが、やはり、直接の戦闘で負かされたというのが大きいようだ。

 

 

 

「ふむ、正しく発動したようだ」

 

 

 

その言葉と共に、皇帝の一族達にスポットライトが降り注いだ。本来なら会場にいないはずのまだ幼い皇太孫もおり、一様に首から紅い石のついた首飾りをさげている。

 

 

 

「ヘルシャーの血を絶やしたくなければ、誓約は違えないことだ」

 

「わかっている」

 

「明日には誓約の内容を公表し、少なくとも帝都にいる奴隷は明日中に全て解放しろ」

 

「明日中だと? 一体、帝都にどれだけの奴隷がいると思って……」

 

「減t」

 

「くそったれ! やりゃあいいんだろう、やりゃあ!」

 

「解放した奴隷は樹海へ向かわせる。貴様はフェアベルゲンまで同行しろ。そして、長老衆の眼前にて誓約を復唱しろ」

 

「一人でか? 普通に殺されるんじゃねぇのか?」

 

「我等が無事に送り返す。貴様が死んでは色々と面倒だろう?」

 

「はぁ~、わかったよ。お前等が脱獄したときから何となく嫌な予感はしてたんだ。それが、ここまでいいようにやられるとはな。…………なぁ、俺に、あるいは帝国に、何か恨みでもあったのかよ、ラビット・タンク…いや、アマノガワ・コウキ。」

 

 

 

「ガハルド、警告しておこう。粉をかける女は選ぶのだな。」

 

「……そういう事かよ…」

 

 

「案ずるな、ガハルド。ハウリア族以外の亜人族にアーティファクトが渡ることはない。お前が誓約を宣誓したところで、調子に乗って帝国を攻めることなど有り得んよ。もしそうなったら、我の刃はフェアベルゲンの愚か者に振るわれるだろう」

 

 

 

その言葉に、ガハルドは、ハウリア族がフェアベルゲンとも独立して、ただひたすら亜人族(実際には兎人族だが)の不遇改善と戦争の回避を望んでいると察する。そして更に、ラビット・タンクが絶対的なハウリアの味方でない事も。

 

 

 

「そうかい。よーくわかったよ。だから、いい加減解放しやがれ。明日中なんて無茶な要求してくれたんだ。直ぐにでも動かなきゃ間に合わねぇだろうが」

 

「……いいだろう。ハウリアはいつでも貴様等を見ている。そのことをゆめゆめ忘れるな…後、ついでに質問だ。」

 

「金髪ロリ皇帝ってえっちじゃないか?」

 

「????????????」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ふーざーけーるーなぁー!!!アマノガワァァァァァァ!?」(ロリボイス)

 

 

ガハルド(オッサン)はガハルド(ロリ)にメガ進化した。嫌がらせらしい。

 

 

ロリにされた皇帝が切れ散らかしつつも、無駄死に確定の現実を前に手を出せず歯噛みする帝国の生き残り達が、ロリになっても強さの変わらないガハルドによって纏められ落ち着きを取り戻して少し。

 

 

 

生き残りの重鎮達が集められ、夜中にもかかわらず急遽開かれた緊急会議で誓約を果たすための段取りが決められた。途中、会場にいなかった重鎮の一人が誓約内容を聞いて何を馬鹿なと嗤ったのだが……

 

 

 

その瞬間、会議室の明かりが数瞬消えて、再び明かりが戻った時には反対した重鎮の男がロリになっているというホラーが発生。(元)男は青褪めたままただ頷くしかなかった。他の重鎮達もパーティーの悪夢を思い出しガクブルと震える。その後の話は実に迅速に纏まったようだ。

 

 

 

各所から被害報告を纏めつつ、亜人に対する法律を急ピッチで作成していく(草案はハウリア族の方で用意しておいた)。

 

 

しかし当然、猛反発が起きるに決まっている。夜中に突然叩き起されたかと思ったら、所有している奴隷を強制的に没収されるのだ。特に、奴隷商会においては、商会が潰れるのと同義である。金銭的補償は後からなされる上に、皇帝の勅命であるとはいえ、容易には納得できないことだ。

 

 

 

それでも、国からの命令である以上、最後は折れなければならないわけだが……あの手この手で時間を引き伸ばし、駄々を捏ねる者もそれなりにおり、そういう者は大体、即座に姿を消した…いや、消された。

 

 

 

そして、約束の一日が過ぎた翌昼過ぎ、帝都中の亜人奴隷が一箇所に集まるという異常事態に何事かと集まる帝都民を前にして、帝国側からの発表がなされた。誓約の内容と、更に細かく定めた法の内容である。

 

 

 

淡々と告げられる内容に、唖然とする帝都民達。それも当然だろう。今まで身近にあって当然の如く便利な道具扱いしてきたものが一気になくなるのだ。しかも、今後、手に入れることも禁止される。正直、わけがわからないといった様子…だったのが原作だが、革命家はバリバリ市民も爆殺していたので命の危険により皆アッサリ受け入れた。彼等の目の前で、数千人の亜人奴隷達の枷が兵士達の手により次々と外されていく。

 

 

 

亜人達は、それを呆然とした様子でただただ黙って受け入れた。何が起きているのか正直よくわかっていないといった様子がほとんどだ。理解はしていても信じられないといったところなのだろう。

 

 

 

やがて、それなりの時間をかけて全ての亜人から奴隷の枷が外されると、勇者である光輝が持ち前のカリスマ(スキル)を発揮しながら帝都外へと亜人達を先導した。そこには、当然、ガハルド(ロリ)やハジメ達、爆発された地区から事前に移された亜人達もいる。

 

 

 

そして、帝都の外に出ても未だ呆然としている亜人達に、身体強化によって声を増幅させたシアが大声で「自由ですよぉー! お家に帰りますよぉー!」と叫ぶと、ようやく“解放”されたことを実感したようで、一斉に大地を揺るがす程の大歓声が上がった。

 

 

 

晴れ晴れとした青空の下、帝都の外壁を背にしつつ、数千人に及ぶ亜人達が家路につく。有り得ないと思っていた現実に、涙を流し、肩を叩きあって喜びをあわらにする亜人達。

 

 

 

彼等の中には、心身共に酷い傷を負っている者も多くいたが、再生魔法と魂魄魔法によって大抵治っている。記憶をピンポイントで消すような細かい事を数千人規模で行うことは流石にユエでも出来ないが、光輝がどうにかした。自分が出来ない事をやってのけた光輝にユエが不貞腐れて光輝を搾り取った(血液)のは、また別の話だ。

 

 

 

また、帝都以外の町にもまだまだ奴隷となっている亜人達はおり、彼等に対する治癒までハジメ達は請け負えない。彼等は樹海に帰還した後、周囲の助けを借りて心身を癒していくしかない。

 

 

 

それでも、生きて再び故郷の地を踏める、生き別れた大切な人達と再会できる……それはきっと“奇跡”と呼ぶに相応しい出来事だ。

 

 

 

ハジメは、歓声を上げる亜人達を眺めながら、日本や家族に想いを馳せ「俺もいつか……」と内心で呟きつつ、自分に寄り添うユエの手をそっと握った。可愛く愛しい恋人は、まるで「大丈夫」とでも言うかのように、優しく、されど力強くハジメの手を握り返すのだった。

 

 

 

光輝はガハルド(ロリ)とベッドで戦ってた。何やってんだ勇者と皇帝。

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