騎士王転生の天之河光輝、異世界に降り立つ。(元 天之河光輝成り代わり物)   作:ゼロさん

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ありふれた展開でこの木なんの木

体に纏わりつくような濃霧の中を、迷いのない足取りで進む人影がある。

 

 

 

ハジメ達だ。

 

 

 

シアを先頭に、ハジメ達は現在、大樹に向けて歩みを進めていた。フェアベルゲンに到着し、その後大樹への道が開ける周期が訪れたのである。

 

 

 

道中、当然のように樹海の魔物が霧に紛れて奇襲を仕掛けて来た。しかし、ハジメ、光輝、ユエ、シア、ティオ、そしてハウリア達は一切対処せず、全て恵里と清水に任せている。【ハルツィナ樹海】の大迷宮がどのような試練を用意しているかわからない以上、ウォーミングアップをしていてもらおうというわけだ。

 

 

 

もっとも、樹海の霧は亜人族以外の種族の感覚を著しく狂わせるため何時も通りとはいかず、おちょくるようにヒット&アウェイを繰り返し濃霧を最大限に生かす魔物に清水は露骨に苛立っていた。

 

 

 

「……チェストォォォォァァァ!!!

 

 

「うるさぁ…」

 

「香織の奴頭が薩摩に染まってやがる…」

 

そんな中、恵里達と混じって戦闘を繰り返しているのは香織だ。転生者により蘇生された事で、蘇生にノイントの体を使用しておらずどれだけ鍛えても基礎スペが低い事に悩んだ香織は光輝にお願いして鞘入りでの魔物食を決行。

その際サツマ(ナニカ)に目覚めたらしく、光輝の通販で購入した《殺魔(薩摩)式戦闘術@異世界編〜バーサークヒーラーの書〜》という剣術EXの転生者達がノリと勢いで書いた剣術書を読み耽り、今では立派な薩摩武士にクラスチェンジを果たしたのだ。

 

 

 

 

 

「大分慣れてきたみたいだな。毎日、ユエと喧嘩しているだけの事はある」

 

「……スペック(と頭)が異常。うかうかしていられない」

 

 

 

ハジメが、「ふぅ~」と息を吐いて残心を解く香織の姿を見ながらポツリと呟いた。

 

 

 

「そんな事ないよ。魔法はまだ実戦だと使い物にならないし、分解も集中しないと発動しないし……ユエからは腕一本すらも()れないし」

 

「ん…普通に毎回首元狙ってくる。猿叫煩いし表情迫真過ぎ、怖い。」

 

ハジメとユエの会話が聞こえていたらしく、歩み寄りながら香織が唇を尖らせる。早く強くなりたいのに、そのイメージはあるのに、思う通りにいかなくてもどかしい……そんな気持ちが表情に出ている。

 

 

 

「……香織。あなた何を言ってるのよ。私のちょい下位(世界トップクラス)の身体能力、魔法は全属性に適性があって無詠唱・魔法陣無しで発動可能。剣術も冗談みたいに上達して上限は未だ見えず、ただでさえ要塞みたいな防御能力なのに傷を負わせても回復魔法の練度はそのまま継承しているから即時に治癒して……もうチートなんて評価じゃ足りない、バグキャラというべきよ。なのに、まだ不満なの?」

 

 

 

雫から呆れたように客観的なスペックを指摘されて、確かに化け物じみていると感じた香織は目を泳がせる。

 

 

 

「でも、ユエやシアにも勝てないし……私がバグキャラなら、ハジメくんと光輝くんは?」

 

「……名状しがたい何かと理解してはいけない狂人…としか……」

 

 

 

雫が難しい表情でハジメ達をあらわす表現を考えるが、結局、何も出てこなかったらしい。

 

 

「みなさ~ん、着きましたよぉ~」

 

 

 

シアが肩越しに振り返りながら大樹への到着を伝える。濃霧の向こう側へ消えていくシアを追ってハジメ達も前へ進むと霧のない空間に出た。前方には以前見た時と変わらない枯れた巨大な木がそびえ立っている。

 

 

「なぁ、恵里…この木を見て…どう思う?」

 

「すごく……大きいね……清水ちゃん」

 

「コレだけ大きいと燃やしたらどうなるか気になるな…これから毎日森を焼こうぜ?」

 

「やめてください光輝さん、ホントに。」

 

 

頭上を見上げ、大樹の天辺が見えないこと、横幅がありすぎて一見すると唯の壁のように見えることに口をポカンと開けて唖然とする恵里達。きっと、初めて訪れたとき自分達も同じような表情になっていたのだろうなと、ハジメとユエは顔を見合わせて小さく笑みをこぼした。

 

 

 

ハジメは、〝宝物庫〟から今まで攻略して来た大迷宮の証を取り出しながら根元にある石版のもとへ歩み寄る。石版も以前と変わらず、七角形の頂点に七つの各大迷宮を示す紋様が描かれており、その裏側には証をはめ込む窪みがあった。

 

 

 

しゃがみこみながら、ハジメが計五つの証を掌で弄んでいると、気を引き締めろと、ハジメは鋭い視線をハウリア達に飛ばした。

 

 

 

「カム、何が起こるかわからないからハウリア族は離れておけ」

 

「了解です、ボス。ご武運を」

 

 

 

フェアベルゲンとの交渉で、大樹近辺から南方はハウリア族の土地になったので付いてきたカム達だったが、ハジメの言葉に少し残念そうな表情になりつつ、それでも一斉にビシッと敬礼を決めて散開していった。

 

 

 

それを確認すると、ハジメはおもむろに【オルクス大迷宮】攻略の証である指輪を石版の窪みにはめ込んだ。一拍置いて、石版が淡く輝き出し文字が浮き出始める。

 

 

 

〝四つの証〟

 

〝再生の力〟

 

〝紡がれた絆の道標〟

 

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

 

 

「これも前と同じだな。使う証は……【神山】以外のでいいか」

 

 

 

 ハジメは呟きながら一つずつ証を石版にはめ込んでいった。【ライセンの指輪】【グリューエンのペンダント】【メルジーネのコイン】……

 

 

 

 一つはめ込んでいく度に石版の放つ輝きが大きく強くなっていく。そして、最後のコインをはめ込んだ直後、その輝きが解き放たれたように地面を這って大樹に向かい、今度は大樹そのものを盛大に輝かせた。

 

 

 

「む? 大樹にも紋様が出たのじゃ」

 

「……次は、再生の力?」

 

 

 

 ティオが興味深げに呟いた通り、大樹の幹に七角形の紋様が浮き出ていた。トコトコとその輝く紋様に歩み寄ったユエは、そっと手を触れながら再生魔法を行使する。

 

 

 

 直後、

 

 

 

パァアアアアア!!

 

 

 

今までの比ではない光が大樹を包み込み、ユエの手が触れている場所から、まるで波紋のように何度も光の波が天辺に向かって走り始めた。

 

 

 

燦然と輝く大樹は、まるで根から水を汲み取るように光を隅々まで行き渡らせ徐々に瑞々しさを取り戻していく

 

 

 

「あ、葉が……」

 

 

 

シアが、刻々と生命力を取り戻していく大樹にうっとりと見蕩れながら頭上の枝にポツポツと付き始めた葉を指差す。まるで、生命の誕生でも見ているかのような、言葉に出来ない不可思議な感動を覚えながら見つめるハジメ達の眼前で、大樹は一気に生い茂り、鮮やかな緑を取り戻した。

 

 

 

少し強めの風が大樹をざわめかせ、辺りに葉鳴りを響かせる。と、次の瞬間、突如、正面の幹が裂けるように左右に分かれ大樹に洞が出来上がった。数十人が優に入れる大きな洞だ。

 

 

 

ハジメ達は顔を見合わせ頷き合うと、躊躇うことなく巨大な洞の中へ足を踏み入れた。

 

 

 

ハジメが少し懸念していたこと――実際に四つ以上の大迷宮を攻略していないメンバーは樹海の大迷宮に挑戦できないのではないかという点については、どうやら杞憂だったようである。問題なく全員が洞の中へ入ることが出来た。

 

 

 

おそらく他の大迷宮と同じく、「入りたければ、あるいは入れるものなら入ればいい。但し、生きて出られる保証は微塵もないけど」というスタンスなのだろう。

 

 

 

ハジメは視線を巡らせる。だが、洞の中は特に何もないようだった。ただ大きな空間がドーム状に広がっているだけである。

 

 

 

「行き止まりなのかな?」

 

 

 

光輝が訝しそうにポツリと呟く。

 

 

 

直後、洞の入口が逆再生でもしているように閉じ始めた。

 

 

 

徐々に細くなっていく外の光。入口が完全に閉じ暗闇に包まれた洞の中で、咄嗟にユエが光源を確保しようと手をかざした。が、その必要はなかった。

 

 

 

なぜなら、足元に大きな魔法陣が出現し強烈な光を発したからだ。

 

 

 

「うわっ、なんだこりゃ!」

 

「敵襲!?」

 

「騒ぐな!転移系の魔法陣だ!転移先で呆けるなよ!」

 

 

 

動揺する清水と恵里にハジメが注意した直後、彼等の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「っ……ここは……」

 

 

 

再び光を取り戻したハジメ達の視界に映ったのは、木々の生い茂る樹海だった。大樹の中の樹海……何とも奇妙な状況である。

 

 

 

「みんな、無事かい?」

 

 

 

光輝が軽く頭を振りながら周囲の状況を確認し仲間の安否を確認した。それに雫達が「大丈夫」と返事をする。ユエ、シア、ティオ、香織も特に問題はないようで、周囲を警戒し鋭い視線を飛ばしている。

 

 

 

「ハジメ……どっちに向かえばいいと思う?」

 

 

 

ハジメ達が飛ばされた場所は、周囲三百六十度、全てが樹々で囲まれたサークル状の空き地であり、取るべき進路を示す道標は特に見当たらなかった。

 

 

 

頭上は濃霧で覆われているので風王鉄槌で吹き飛ばしても良いが、味方を巻き込む可能性がある為ハジメに尋ねたのだ。

 

 

 

「……取り敢えず、探すしかないな」

 

 

 

ハジメは、どこか不機嫌そうな表情でそれだけ呟くと、近くの木の幹に手を当て〝追跡〟を発動する。魔力的なマーキングがなされ、進行方向を示すように矢印型の紅い光が木に貼り付いた。

 

 

 

ハジメと光輝は、どこか瞳に冷たさを宿しながら何故かその場を動かない。歩き出して、それに気がついたシアが頭上に〝?〟を浮かべてハジメの方へ振り返った。

 

 

 

「……ハジメさん? どうし――」

 

 

 

シアが、ハジメに声をかけた……その瞬間、

 

 

 

シュバッ!

 

 

 

そんな風切り音が響いたかと思うと、一瞬でユエとティオの両手両足が光輝によって切り落とされていた。

 

 

 

ジタバタと芋虫の如くもがくユエとティオ。そんな彼女達を見て光輝がハジメに視線を向ける。雫達もどこか緊張したような表情で光輝に視線で事情説明を求めた。

 

 

 

「……少し黙ってろ」

 

 

 

ハジメはそれだけ言うと疑問には答えずユエのもとへ無言、無表情でスタスタと歩み寄った。

 

 

 

そして、自分を困惑したように見上げるユエの額にゴリッとドンナーの銃口を押し付けた。その瞳には絶対零度の冷たさが宿っており、ハジメが激烈な怒りを抱いていることが示されていた。

 

 

 

「ハジメ……どうしっ」

 

 

 

ユエが、自分に銃口を向けるハジメを見て信じられないといった表情をする。そして、ハジメの名を呼びながら疑問の声を上げようとした。

 

 

 

が、その直後、

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

ハジメは躊躇うことなくドンナーの引き金を引いた。樹海に、乾いた炸裂音が木霊する。一応、銃口は額から外されてユエの肩に向けられていたが、それでもハジメが最愛の恋人を撃ったことに変わりはない。

 

 

 

その事実に、光輝以外は当然のことシア達は激しく動揺する。そして、ハジメの正気を疑うような眼差しを向けた。

 

 

 

「な、何をやってるの! 南雲くん!」

 

「ハジメくん! やめて!」

 

 

 

雫と香織が、焦燥感に満ちた制止の声を上げハジメを止めようとするが、そこでようやくシアが違和感に気がついたようで逆に香織達を手で制した。

 

 

 

取り押さえようと今にも飛びかかりそうな雰囲気だったが、それは、次ぐハジメの言葉で霧散することになった。

 

 

 

「許可なくしゃべるな、偽物。紛い物の分際でユエの声を真似てんじゃねぇよ。次に、その声で俺の名を呼んでみろ。頭を切り落とすぞ(光輝が)」

 

 

 

ハジメが声を発した瞬間、まるでその場が極寒の地にでもなったかのように冷気で満たされた。実際に気温が下がっているわけではない。その身から溢れ出る殺意が、生命の発する熱を削ぎ落としているのだ。心なし、周囲が暗くなった気さえする。余りに濃密な殺意に、呼吸が自然と浅くなり冷や汗が滝のように流れ落ちた。

 

 

 

「お前は何だ? 本物のユエは何処にいる?」

 

「……」

 

 

 

ユエの姿をした〝何か〟は表情をストンと落とすと無機質な雰囲気を纏って無言を貫いた。〝何者〟ではなく〝何か〟なのは、撃たれた肩から血が流れ落ちないからである。明らかに〝人〟ではなかった。

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

ハジメは、今度は逆の肩を撃ち抜く。しかし、ユエの偽物は表情一つ変えることはなかった。どうやら痛覚がないらしい。ノイントよりも尚、人形のようなイメージを受けるそれは、あるいは本当に意思を持っていないのかもしれない。

 

 

 

「答える気はないか。……いや、答える機能を持っていないのか。ならもういい。死ね」

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

ハジメは、ドンナーの銃口をユエの額に向けると今度こそ頭部をレールガンで撃ち抜き吹き飛ばした。ユエ(偽)の後方に、何かがビチャビチャと飛び散る。

 

 

 

思わず顔を背ける雫達だったが、堪えてよく見てみれば飛び散ったのは脳髄などではなく赤錆色のスライムのようなものだった。頭部を失ったユエ(偽)の胴体は、一拍おいてドロリと溶け出すと、同じように赤錆色のスライムに戻りそのまま地面のシミとなった。

 

 

 

ハジメは続けてボーラで拘束しているティオの頭部も撃ち抜く。弾け飛んだ光景に思わず狼狽えたが、やはりユエ(偽)と同じように赤錆色のスライムに戻るとそのまま地面に吸い込まれていった。

 

 

 

「チッ。流石大迷宮だ。いきなりやってくれる……」

 

「ね。あっ清水達は無事だよ。流石の大迷宮も影の中は手が届かないらしい。」

 

 

ハジメがドンナーをホルスターに仕舞いながら悪態を吐き、光輝が聖剣を肩に担いで微笑む。

 

 

 

「ハジメさん……ユエさんとティオさんは……」

 

「転移の際、別の場所に飛ばされたんだろうな。僅かに、神代魔法を取得する時の記憶を探られる感覚があった。あの擬態能力を持っている赤錆色のスライムに記憶でも植え付けて成り済まさせ、隙を見て背後からって感じじゃないか?」

 

 

 

ハジメが恋人をダシにされて不機嫌そうに表情を歪ませる。ハジメの推測を聞いて雫と鈴が感心したように頷いた。

 

 

 

「なるほどね。……それにしてもよくわかったわね」

 

「うん…あっそうだ!ハジメくん達はどうやって気がついたの?」

 

 

 

香織が、また成り済ましで仲間に紛れられたら困るとハジメ&光輝に見分け方を聞いた。

 

 

 

そんな疑問に対するハジメの答えは……

 

 

 

「どうって言われてもな。……見た瞬間、わかったとしか言いようがない。目の前のこいつは〝俺のユエじゃない〟って」

 

 

光輝は……

 

「感、直感、なんとなく、とりあえずの結果かな。…後死んでも生き返らせれば良いし。」

 

「「「「「……」」」」」

 

 

 

ある意味、惚気とも言えるような回答とカスの極みな回答に誰も何も言えなかった。

 

 

 

「じゃあその、ハジメくんはティオさんの事見抜いたの?」

 

「一度、偽者がいるって分かれば、後は注意して見れば〝魔眼石〟で違和感を見抜くことは出来るんだよ。だから、今後は俺といる限り心配無用だ」

 

 

 

そうですかぁ~と、どこか呆れたような眼差しをハジメに向けた。そんな中、シアが何か思いついたようにハッとすると、もじもじしつつ期待を含めた眼差しでハジメに問う。

 

 

 

「あの、ハジメさん……私でも、見た瞬間に気づいてくれますか?」

 

「!」

 

 

 

シアの問い掛けに隣の香織が反応し、視線で「私はどうかな?」と問いかける。何となくハジメに視線が集まる。微妙に甘酸っぱい雰囲気の中、ハジメは特に気負った様子もなくあっさり答えた。

 

 

 

「さぁ? 見た瞬間は無理じゃないか?」

 

「「……」」

 

 

 

普通は空気を読んで「もちろん、気が付くに決まっているだろ?」と答えるべき場面であるが、そこはハジメクオリティー。容赦なく思ったことをそのまま伝える。

 

 

 

思わずジト目になるシアと香織だったが、そんな二人の視線などどこ吹く風といった様子でハジメは樹海の奥へスタスタと進み始めてしまった。

 

 

 

「神経が太すぎるのも考えものね……」

 

「香織は本当に、何だってあんな奴を……」

 

 

 

ハジメの後に続きながら、雫達が頬を膨らませて不機嫌さをアピールしている香織とシアをチラ見する。一行は最初から色々問題を抱えつつ樹海の中へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

「『ちなみに、内心では「シアなら分かる」と、ハジメは思っていたりするのだが……素直に態度で示そうと決めたばかりなのに、つい素っ気なくしてしまうところはやはりツンデレと言えるかもしれない。』以上!モノローグ音読会終了!」

 

「テメェ後で覚えてろよ…!」

 

「ハジメさん…」

 

 




忙しい…キツイ…暫く無理…
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