「何故、このような事態になっているか理解できますね?」
そう言って眼鏡の男─オルセド・エイワズ・フラクシス─は、正座する青髪の女性─サーシャ・スプリングスを冷ややかに見下ろした
「はい…わたしが、宝物塔の守衛当番をサボったからです...」
場所は
「ええ、あなたが資料庫に籠り勉学に勤しんでいた事。その努力は評価しましょう。しかし、課せられた仕事を放棄していいはずがない」
杖を一振りし、机の上に置かれていた資料を手元に引き寄せる。そこには、今回起きた『事件』の被害が記載されていた
「あなたがサボっている間に宝物塔に賊が侵入し、
禁忌術式。その言葉を聞いたサーシャの身体がびくりと震える。それの価値と重要性を、サーシャも深く理解していた
「ここで保管している8つ、全てが盗まれました。数百年前、魔法王が残したとされる貴重な魔法が」
「どう、責任を取るつもりなのですか?」
口調は変わらず、しかし声のトーンは一段低く、オルセドはサーシャへと問いかける
「うぅ………どうにかして、盗まれた物を見つけ出します…」
長い沈黙の後、サーシャは小さな声で回答を絞り出した
「ええ、この失態に対しあなたが負う責務はそれしかないでしょう」
オルセドはサーシャに1枚の羊皮紙を突き付ける。それは、魔法文字による契約書であった。
「《
それはあまりにも達成困難であり、不可能と同義であるとサーシャは感じた。しかし、他に責任の取りようのないサーシャは、これに応じる他ない。
「わかり...ました。必ず、禁忌術式を取り戻します」
「よろしい。では夜明けまでに荷物を纏めなさい」
空が少し白み始めた頃、サーシャは
「見送りくらいはしてあげますよ。追放する側としての務めとして、ね」
「ありがとうございます」
旅に適した服に身を包み大きな旅行カバンを持ったサーシャは、振り返り
「…必ず、ここに戻ってきます」
「ええ、期待していますよ」
オルセドの言葉は何処まで本気なのか、それとも単なる社交辞令か。しかしサーシャにとっては少しばかり嬉しい言葉だった
「旅立ちの前に一つ教えておきましょう。あなたに関して一つ《予言》が出ました。『砂漠に向かえ』と」
「砂漠というと…この近くだとリカルド砂丘でしょうか?」
近い、と言っても歩いて半月はかかる。本当に長い旅になりそうだとサーシャは感じた。
「─折角です、見送りのついでに旅費と時間の節約もしてあげましょう」
「えっ?」
オルセドがサーシャに杖を向ける。サーシャは、心の底からの嫌な予感を感じた。
「ままま待ってください副学長行けない距離でもないのでお手を煩わせるわけにもいきませんしそれにわたしあの魔法すごい苦手で──」
「行ってらっしゃい。《
瞬間、サーシャの視界が反転し…1秒後には遥か遠くに地面と
「ああああああああああああああああああ!!!???」
こうして、サーシャ・スプリングスの長い旅が始まった