不遇水魔法使いの禁忌術式~柔の章~   作:メノン

1 / 2
※掲示板のネタからの派生です


プロローグ:被害総額推定500億

「何故、このような事態になっているか理解できますね?」

 

そう言って眼鏡の男─オルセド・エイワズ・フラクシス─は、正座する青髪の女性─サーシャ・スプリングスを冷ややかに見下ろした

 

「はい…わたしが、宝物塔の守衛当番をサボったからです...」

 

場所は王立魔法研究機関(アカデミー)の副学長室。部屋の主であるオルセドは俯き目を合わせようとしないサーシャに溜息をつき、再び口を開く

 

「ええ、あなたが資料庫に籠り勉学に勤しんでいた事。その努力は評価しましょう。しかし、課せられた仕事を放棄していいはずがない」

 

杖を一振りし、机の上に置かれていた資料を手元に引き寄せる。そこには、今回起きた『事件』の被害が記載されていた

 

「あなたがサボっている間に宝物塔に賊が侵入し、王立魔法研究機関(アカデミー)の保有する魔法資産がいくつか持ち去られました。特に致命的なのは…『禁忌術式』」

 

禁忌術式。その言葉を聞いたサーシャの身体がびくりと震える。それの価値と重要性を、サーシャも深く理解していた

 

「ここで保管している8つ、全てが盗まれました。数百年前、魔法王が残したとされる貴重な魔法が」

「どう、責任を取るつもりなのですか?」

 

口調は変わらず、しかし声のトーンは一段低く、オルセドはサーシャへと問いかける

 

「うぅ………どうにかして、盗まれた物を見つけ出します…」

 

長い沈黙の後、サーシャは小さな声で回答を絞り出した

 

「ええ、この失態に対しあなたが負う責務はそれしかないでしょう」

 

オルセドはサーシャに1枚の羊皮紙を突き付ける。それは、魔法文字による契約書であった。

 

「《誓約(ゲッシュ)》です。サーシャ・スプリングス、あなたを王立魔法研究機関(アカデミー)より追放します。解除の条件は、盗まれた禁忌術式を全て回収すること、それを達成しない限り、ここへ戻ることは許しません」

 

それはあまりにも達成困難であり、不可能と同義であるとサーシャは感じた。しかし、他に責任の取りようのないサーシャは、これに応じる他ない。

 

「わかり...ました。必ず、禁忌術式を取り戻します」

「よろしい。では夜明けまでに荷物を纏めなさい」

 

 

 

空が少し白み始めた頃、サーシャは王立魔法研究機関(アカデミー)の門へと向かった。オルセドは、門の少し手前で待っていた。

 

「見送りくらいはしてあげますよ。追放する側としての務めとして、ね」

「ありがとうございます」

 

旅に適した服に身を包み大きな旅行カバンを持ったサーシャは、振り返り王立魔法研究機関(アカデミー)の全景を眺める

 

「…必ず、ここに戻ってきます」

「ええ、期待していますよ」

 

オルセドの言葉は何処まで本気なのか、それとも単なる社交辞令か。しかしサーシャにとっては少しばかり嬉しい言葉だった

 

「旅立ちの前に一つ教えておきましょう。あなたに関して一つ《予言》が出ました。『砂漠に向かえ』と」

「砂漠というと…この近くだとリカルド砂丘でしょうか?」

 

近い、と言っても歩いて半月はかかる。本当に長い旅になりそうだとサーシャは感じた。

 

「─折角です、見送りのついでに旅費と時間の節約もしてあげましょう」

「えっ?」

 

オルセドがサーシャに杖を向ける。サーシャは、心の底からの嫌な予感を感じた。

王立魔法研究機関(アカデミー)副学長オルセド・エイワズ・フラクシス。得意魔法の一つは──()()()()()()

 

「ままま待ってください副学長行けない距離でもないのでお手を煩わせるわけにもいきませんしそれにわたしあの魔法すごい苦手で──」

 

「行ってらっしゃい。《射出(カタパルト)》」

 

瞬間、サーシャの視界が反転し…1秒後には遥か遠くに地面と王立魔法研究機関(アカデミー)が見えた

 

「ああああああああああああああああああ!!!???」

 

 

 

 

こうして、サーシャ・スプリングスの長い旅が始まった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。