ROM専がGANTZ世界に転生した話   作:訥々

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歪む摂理と恋心(前)

アナザールートの続き、というか別視点。

 

──────────────────────

 

ガンツによる“再生”とは、データバンク内の情報を基にした()()()()()()である。

 

「あれ?他のみんなは···」

 

通常は死者に対する運用が想定されているこの“機能”は、しかし生者に対しても使えてしまう。

 

「もう、みんな···帰ったの」

 

生者のデータを基に“再生”を行うと、同じ人格や記憶を持った()()()()新たに作り出される。

 

「は?···意味分かんね」

 

そしてそれを知った上で、彼女──下平玲花は実行した。自らの恋心を遂げるために、“2人目の玄野計”を創造した。

 

「玄野くんのこと···諦めきれなかったの」

 

“同一の併存”という致命的な矛盾。

歪んだ恋情は、摂理すらも捻じ曲げた。

 

「俺···偽物ってこと?」

「ごめんなさい···」

 

玲花は泣きながら謝るが、本人にしてみれば堪ったものではないだろう。

彼は生まれた瞬間からアイデンティティを喪失していたのだから。

 

「どういうことしたか分かってんのか?俺···住む場所とか、食い扶持···学校もどーすりゃいいの?」

「私のマンションに、一緒に住んで···勉強は私が教える···。一生、私が責任持って──」

「そういう問題じゃねーッて!!」

 

玄野計には小島多恵という恋人がいる。

しかし彼女には他ならぬ自分の複製元となった“オリジナルの玄野計”がいる。

 

「もっと頭が良いコだと思ってた」

「お願い、行かないで」

「離せよッ!」

 

苛烈な戦場を生き延びたと思ったら、自分には何も残っていなかった。

その怒りや不安感は計り知れない。彼は玲花を突き放し、夜の街へと駆け出していった。

 

“自分”の住むアパートへ向けて、見知った道をひた走る。

この記憶すらも“人工物”なのだという事実には目を背けながら。

 

「タエちゃんに電話しよう、起きてっかな」

 

だけど彼が住んでいた筈のアパートには···“本当の”自分がいて。

愛する彼女の名を呼んでいた。

 

「さよなら···タエちゃん」

 

逃げようとして、拒絶しようとして。

だけど現実は彼を逃がしてはくれなかった。

涙を流しながら立ち去り、アパートの近くにいた玲花に視線を向けた。

生まれながらにして全てを喪い、たった1つだけ残されたモノ。

それは彼女だけだったから。

 

 

◆◆

 

 

ファミレスでさっと食事を済ませ、玲花の住むマンションに招かれた。

綺麗に整頓された、しかし生活感のある部屋。

 

「ベッドが1つしかないの」

「······」

「狭いけど···一緒に、私のベッドで」

「!·········」

 

彼は思春期真っ盛りの高校生である。

悲しきかな、自らを“偽物”へと貶めた憎い存在であっても、超の付く美人に誘われグラついてしまった。

 

「俺···ここでいいし」

 

そう言ってベッドではなくソファに寝転がる。

グラつきはしたが、そう簡単に心を許したくなかったのだろう。

 

「···私のこと、嫌い?」

「······うん」

 

玲花は悲しげに目を伏せ、自室のベッドで眠りに就いた。

 

 

 

「タエちゃん···」

 

ソファの上で毛布に包まり、目を閉じても寝付けない。彼女のことばかり考えてしまう。

 

「えっ、きゃぁ!?」

 

半ば自棄になって、静かな寝息を立てる玲花に()()()を掛けようとした。

毛布を引き剥がし、フリルのついた寝間着を脱がせる。両手首を押さえつけ、抵抗を封じた。

 

「いいよ、玄野くん···どうしたいの?」

 

美しく上気した表情。露わになった豊満な胸。

そして玲花本人の合意。

“そこ”に至るピースは揃ったが···彼はすんでのところで踏みとどまった。

「ごめん」と淡白な謝罪を口にして、自分の寝床へと帰っていった。

 

 

◆◆

 

 

翌日の朝。

 

「今日学校休んで、玄野くんとどっか行きたい」

「俺行きたくないし···学校行ってきなよ」

 

トーストを頬張りながら、素っ気なく返す。

再び拒絶された玲花はそれ以上何も言わずに、制服に着替えて部屋を出ていった。

暇を持て余した彼はベランダに出て景色を眺め、「岸本ってこんな気分だったのかな」と、かつての想い人を想起した。

 

その後は部屋に置いてあった“レイカ”の写真集を見漁り、今までの出来事を反芻する。

そしてふと思い立ち、“オリジナル”に会うために部屋を出た。

 

 

 

アパートの前で待ち構えていると、日も暮れかかった時間になって、“オリジナル”はようやく現れた。

自らと瓜二つな存在を見た彼の“オリジナル”は仰天し、星人ではないかと疑ったが、すぐに本物の“自分”だと察したらしい。

 

「ホントに、俺···なのか?」

「だからそーだって。玲花に“作られた”んだよ···メーワクな話だ」

「えー、あのレイカさんが?マジかよ···」

「どうすれば良い?」

 

すると“オリジナル”から予想外の──あるいは予想通りの言葉が返ってきた。

 

「どーするって···いや別に()()()()()

「はァ?お前、ちょッ···そーゆーとこあるよな、俺······」

 

彼はテキトーだった。

 

「だって羨ましーって。あのレイカだぜ」

「じゃあ入れ替われよッ」

「ダメだよ···だって俺タエちゃんのモンだし」

「信じらんねー···ったく、俺そういうところあんだよな〜」

「まっ、いーじゃん。俺はタエちゃん···お前はレイカを幸せにしてやれよ」

 

他人に対してなら怒れただろうが、目の前の相手は他ならぬ“自分”である。

不満気な顔をしつつも「(まあいいか···)」と思い始めていた。

 

 

 

夜遅くになって、ようやく玲花が帰ってきた。

そして「遅くなってごめんね」と言いながらカレーを作り始める。

 

「いつもこんなに遅いの?」

「ううん、今日はちょっとね···」

 

数十分後。

玲花がカレーをよそい、彼の隣に座った。

 

「いただきます」

「···いただきます」

「···あんまり美味しくないね」

 

本人も自覚しているようだが、なぜカレーが不味く仕上がるのか。

口には出さなかったけども。

それよりも先程から鳴り続けている携帯電話の方が気になった。

 

「···ケータイ鳴ってるけど」

「ああ···今日仕事辞めてきちゃったんだ

「は?」

「明日からずっと···ずっと一緒にいられる」

 

コイツ怖え。彼はそう思った。

連打されるインターホンも──

 

「あ、マネージャーだ。シカトシカト」

 

···と言って本当に取り合わなかった。

ヤンデレイカの面目躍如である。

 

しかしそれでも彼の能天気さは崩れなかった。

「一緒にお風呂入ろう」という甘言にホイホイ釣られ、「この世界が終わってしまうなら、玄野くんと一緒に居たかった」という心中宣言を聞いても満更でも無かった。

 

終いにはとうとう“やってしまった”。

 

 

 

──────────────────────

 

少し長くなりそうなので、ここで一区切り。

人生テキトー!!!(大鉄並感)

 

 

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