アナザールートの続き、というか別視点。
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ガンツによる“再生”とは、データバンク内の情報を基にした
「あれ?他のみんなは···」
通常は死者に対する運用が想定されているこの“機能”は、しかし生者に対しても使えてしまう。
「もう、みんな···帰ったの」
生者のデータを基に“再生”を行うと、同じ人格や記憶を持った
「は?···意味分かんね」
そしてそれを知った上で、彼女──下平玲花は実行した。自らの恋心を遂げるために、“2人目の玄野計”を創造した。
「玄野くんのこと···諦めきれなかったの」
“同一の併存”という致命的な矛盾。
歪んだ恋情は、摂理すらも捻じ曲げた。
「俺···偽物ってこと?」
「ごめんなさい···」
玲花は泣きながら謝るが、本人にしてみれば堪ったものではないだろう。
彼は生まれた瞬間からアイデンティティを喪失していたのだから。
「どういうことしたか分かってんのか?俺···住む場所とか、食い扶持···学校もどーすりゃいいの?」
「私のマンションに、一緒に住んで···勉強は私が教える···。一生、私が責任持って──」
「そういう問題じゃねーッて!!」
玄野計には小島多恵という恋人がいる。
しかし彼女には他ならぬ自分の複製元となった“オリジナルの玄野計”がいる。
「もっと頭が良いコだと思ってた」
「お願い、行かないで」
「離せよッ!」
苛烈な戦場を生き延びたと思ったら、自分には何も残っていなかった。
その怒りや不安感は計り知れない。彼は玲花を突き放し、夜の街へと駆け出していった。
“自分”の住むアパートへ向けて、見知った道をひた走る。
この記憶すらも“人工物”なのだという事実には目を背けながら。
「タエちゃんに電話しよう、起きてっかな」
だけど彼が住んでいた筈のアパートには···“本当の”自分がいて。
愛する彼女の名を呼んでいた。
「さよなら···タエちゃん」
逃げようとして、拒絶しようとして。
だけど現実は彼を逃がしてはくれなかった。
涙を流しながら立ち去り、アパートの近くにいた玲花に視線を向けた。
生まれながらにして全てを喪い、たった1つだけ残されたモノ。
それは彼女だけだったから。
◆◆
ファミレスでさっと食事を済ませ、玲花の住むマンションに招かれた。
綺麗に整頓された、しかし生活感のある部屋。
「ベッドが1つしかないの」
「······」
「狭いけど···一緒に、私のベッドで」
「!·········」
彼は思春期真っ盛りの高校生である。
悲しきかな、自らを“偽物”へと貶めた憎い存在であっても、超の付く美人に誘われグラついてしまった。
「俺···ここでいいし」
そう言ってベッドではなくソファに寝転がる。
グラつきはしたが、そう簡単に心を許したくなかったのだろう。
「···私のこと、嫌い?」
「······うん」
玲花は悲しげに目を伏せ、自室のベッドで眠りに就いた。
「タエちゃん···」
ソファの上で毛布に包まり、目を閉じても寝付けない。彼女のことばかり考えてしまう。
「えっ、きゃぁ!?」
半ば自棄になって、静かな寝息を立てる玲花に
毛布を引き剥がし、フリルのついた寝間着を脱がせる。両手首を押さえつけ、抵抗を封じた。
「いいよ、玄野くん···どうしたいの?」
美しく上気した表情。露わになった豊満な胸。
そして玲花本人の合意。
“そこ”に至るピースは揃ったが···彼はすんでのところで踏みとどまった。
「ごめん」と淡白な謝罪を口にして、自分の寝床へと帰っていった。
◆◆
翌日の朝。
「今日学校休んで、玄野くんとどっか行きたい」
「俺行きたくないし···学校行ってきなよ」
トーストを頬張りながら、素っ気なく返す。
再び拒絶された玲花はそれ以上何も言わずに、制服に着替えて部屋を出ていった。
暇を持て余した彼はベランダに出て景色を眺め、「岸本ってこんな気分だったのかな」と、かつての想い人を想起した。
その後は部屋に置いてあった“レイカ”の写真集を見漁り、今までの出来事を反芻する。
そしてふと思い立ち、“オリジナル”に会うために部屋を出た。
アパートの前で待ち構えていると、日も暮れかかった時間になって、“オリジナル”はようやく現れた。
自らと瓜二つな存在を見た彼の“オリジナル”は仰天し、星人ではないかと疑ったが、すぐに本物の“自分”だと察したらしい。
「ホントに、俺···なのか?」
「だからそーだって。玲花に“作られた”んだよ···メーワクな話だ」
「えー、あのレイカさんが?マジかよ···」
「どうすれば良い?」
すると“オリジナル”から予想外の──あるいは予想通りの言葉が返ってきた。
「どーするって···いや別に
「はァ?お前、ちょッ···そーゆーとこあるよな、俺······」
彼はテキトーだった。
「だって羨ましーって。あのレイカだぜ」
「じゃあ入れ替われよッ」
「ダメだよ···だって俺タエちゃんのモンだし」
「信じらんねー···ったく、俺そういうところあんだよな〜」
「まっ、いーじゃん。俺はタエちゃん···お前はレイカを幸せにしてやれよ」
他人に対してなら怒れただろうが、目の前の相手は他ならぬ“自分”である。
不満気な顔をしつつも「(まあいいか···)」と思い始めていた。
夜遅くになって、ようやく玲花が帰ってきた。
そして「遅くなってごめんね」と言いながらカレーを作り始める。
「いつもこんなに遅いの?」
「ううん、今日はちょっとね···」
数十分後。
玲花がカレーをよそい、彼の隣に座った。
「いただきます」
「···いただきます」
「···あんまり美味しくないね」
本人も自覚しているようだが、なぜカレーが不味く仕上がるのか。
口には出さなかったけども。
それよりも先程から鳴り続けている携帯電話の方が気になった。
「···ケータイ鳴ってるけど」
「ああ···今日仕事辞めてきちゃったんだ」
「は?」
「明日からずっと···ずっと一緒にいられる」
コイツ怖え。彼はそう思った。
連打されるインターホンも──
「あ、マネージャーだ。シカトシカト」
···と言って本当に取り合わなかった。
ヤンデレイカの面目躍如である。
しかしそれでも彼の能天気さは崩れなかった。
「一緒にお風呂入ろう」という甘言にホイホイ釣られ、「この世界が終わってしまうなら、玄野くんと一緒に居たかった」という心中宣言を聞いても満更でも無かった。
終いにはとうとう“やってしまった”。
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少し長くなりそうなので、ここで一区切り。
人生テキトー!!!(大鉄並感)
どっちが好き?
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本編
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アナザールート