ROM専がGANTZ世界に転生した話   作:訥々

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歪む摂理と恋心(後)

打ち切りエンドと言うなかれ。

複製玄野のハッピーエンドも見たかったのです。

 

──────────────────────

 

『アメリカ政府とは依然連絡が取れず──』

 

テレビから流れるアメリカ壊滅の報せ。

血の色に染まった空···そして地上に降り立った、巨人の尖兵と超巨大構造物。

 

「このまま死を待つのは···嫌だ」

 

街が崩壊していく様を、2人の男女がベランダから眺めている。

 

「私も···闘って、1人でも多く人の命を助けてから···死にたい」

 

彼の言葉に彼女が応える。

 

「いや違う···闘って、人も救って、俺たちも生き残るんだ!!

 

ガンツに招集された人間は奉仕者ではない。

たとえ全世界が滅びようとも、自分たちだけは生き残ってみせる。

揺るぎない決意を固め、宣戦した。

 

「行くぞッ、玲花!!」

「うんッ!」

 

 

◆◆

 

 

関東近辺のチームとの邂逅や強制招集を経て、東京チームを中核とする日本ガンツチームは、巨人族の宇宙船へ突入した。

 

拐われた人間を助けている最中にガンツがハッキングに遭い、彼らは巨人族の“狩り場”へと強制転送され──しかし岡八郎らの奮戦により死者を出すことなく切り抜けた。

 

窮地を脱した彼らは九州チームの手引きで、月と地球の間に停泊中の母船へ転送された。

そこで彼らはGANTZの“真実”を知る。

 

 

◆◆

 

 

彼らがブラックボールに転送された先は···広くて、高くて、まっさらな···殺風景な空間。

周りにはガンツスーツを着た大勢の人間や、日本のフリーライターがいる。

そして部屋の中心には、2()()()()()が立っていた。

 

1人は茶髪のショートヘアに、黒を基調としたコスチュームを身に纏った活発そうな少女。

もう1人は長い黒髪に、黒と対になる白を基調としたコスチュームを身に纏った淑やかな少女。

原点にして頂点、初代プリキュアヒロイン──を超高度文明異星種族が模倣(コスプレ)した姿である。

 

「なんだ···これ···」

 

転送された全員の両目から赤い涙が零れ、加藤が素朴な疑問を口にする。

 

「玄野くん!久しぶり!」

「菊池さん···お久しぶりです」

「さっきからみんな彼女たちに質問をぶつけている。どんな質問でも答えてくれるんだ」

 

多言語による難解な質問責めを、目の前の少女(偽)は逡巡すること無くさばいていく。

 

 

 

Pourquoi les gens ne peuvent-ils pas vivre sans sacrifier la vie des autres?*1

C'est comme ça.*2

 

Por que existe uma lacuna entre os pobres e ricos?*3

Assim é a existência.*4

 

Is "that flow" the only way you can answer?*5

It's because it is the most important shot.*6

 

 

 

もっとも···その内容や口調は、可憐な見た目と声に似合わないモノだったが。

 

「どんな質問でも···って、子供じゃねーか」

「ええと、じゃあ···俺たちは今まで何のために戦わされてきたのか、教えてくれ」

 

──君たちが何故今まで何度も部屋に呼ばれ、憎くもない敵と闘わされてきたのか答えよう

 

そして少女(偽)は語りだす。

星人の正体からブラックボールの出自まで、一切の淀みなく説いた。

 

「ありがとう···人類を救ってくれて」

 

加藤を皮切りに、周りの人間たちも心からの感謝を2人に示す。

すると2人はなぜか表情を曇らせ、「感謝する必要は無い」と口にした。

 

我々が巨人族を撃退し、地球を守ることは十分に可能だった。しかし因果律の維持を優先し、最低限の軍事技術を与えるだけに(とど)めたのだ。···この判断は間違っていなかったと信じているが、それでも君たちには悪いことをした

「それでも···アンタのお陰で、俺たちは生きてる。だからありがとう」

 

玄野が再び礼を言い、2人の少女が微笑んだ。

すると彼女たちが突如として閃光を放ち、周りの人間たちが思わず目を閉じる。

それが収まり目を開くと、少女たちは跡形も無く消えていて。

···代わりに1人の青年が立っていた。

 

「···黒川?」

最後に1つだけ教えよう。彼は今回の事態を把握していた。···玄野計、心当たりは無いか?

「······やっぱりそうだったのか。だからアイツは遠回しに助言してくれたんだな」

そうだ。詳しい事は話せないが···彼は君たちの味方だ。生還したら一言礼を言うと良い

 

それではこれをもって、全てを終了とする。この先我々が、地球人類に干渉することはないだろう。···時々遊びには行かせてもらうが

 

部屋が再び光に包まれた。

 

 

◆◆

 

 

彼らが真理の部屋から出た後は、なぜか全てのブラックボールが機能停止していた。

周りの人間たちから“アメリカチームの黒球は稼働する”と聞いた日本チームは急行し──格子状の屋根と壁に囲まれている広々とした空間に出た。

 

そこではアメリカチームの1人が、巨人の残存精鋭兵とタイマンを張っていた。

アメリカの男が僅か数分で巨人の足を斬り落とし、変則的な動きをする“ロケットパンチ”も全弾回避。

すぐさま両腕と首も断ち斬って巨人は絶命。

無傷での勝利を収めた。

 

もう1人の巨人兵も挑みかかるが結果は変わらず、アメリカ側の完全勝利。

スーツの耐久を損耗すること無く、しかも銃器を使わず戦闘を楽しむ余裕さえある。

彼らと共に潜入しているテレビクルーの表情も明るい。

 

しかし巨人族の最高戦力──イヴァ・グーンドが出てきた後は“悲惨”の一言に尽きた。

まず巨人に対して圧倒的な強さを見せつけていた戦士が、たった一度のパンチでスーツを壊され···次の一撃で“潰された”。

アメリカチームも総攻撃を仕掛けて応戦したが、結果は全滅。

 

 

 

クロノケイ···ここへ来い。声紋で認証し、転送する···今すぐ名乗れ

「お···俺?」

お前(複製体)ではない。私の弟を殺した···もう1人のお前(オリジナル)だ。···このままクロノケイがここに来なかった場合、あるいは敗北した場合は、母船を自爆させ地球に落とす

 

しかしそれを聞いた(複製体)は、不敵に笑った。

 

「なら俺たちが勝てば良いんだよな?」

 

1人では敵わずとも、2人ならば──!

イヴァによって転送されてきたもう1人の“自分”と肩を並べる。

 

「おい、刀持ってねーのかよ」

「こっちも色々あったんだよ」

「ったく···そういうとこあるよな、俺」

「俺には言われたくねーっつの」

 

不毛な言い合いに苦笑しつつ、1人がソードを構え、もう1人がスタートの姿勢をとる。

 

「「行くぞォッ!!」」

 

同時に叫び、駆け出す。

複製体がイヴァと刀を打ち合う間に、オリジナルが落ちていた刀を拾い上げて振るう。

イヴァに浅いながらも裂傷が刻まれた。

 

しかし軍神は強かった。2人の玄野を相手に、それでも尚拮抗を保っている。

それどころか一瞬の隙を突いて複製体を蹴り飛ばした。

 

「ッ、くそッ···!!」

 

イヴァが巨大な右足を振り下ろし、動きが止まった複製体を潰す───その寸前に前嶋が左足を、岡が右足を殴り飛ばした。

バランスを大きく崩されたイヴァが前に倒れ込む。とはいえあくまでも姿勢が崩れただけで、軍神ならば刹那のうちに立て直せる。

 

「お前、喧嘩売る相手を間違(まちご)うたな」

 

しかし岡はイヴァの後ろで()()()()()()()玄野計(オリジナル)を見て、勝利を確信した。

イヴァの相手がもし並の相手だったなら──否、精兵であったとしても、リカバリーは充分に可能だった。

相手が悪すぎた···この一言に尽きる。

 

その一閃はイヴァの胴を断ち斬り──軍神を絶命させるに至った。

 

「人類が···!2人の玄野計が異星人の英雄に勝利しました!奇跡が起こりました!人類が圧倒的戦力の侵略者を撃退しました!!」

 

 

◆◆

 

 

軍神討伐後は残った巨人兵によって、玄野たちの制止も虚しく宇宙船の自爆が始まってしまった。

 

玄野(複製)や玲花たちは辛うじて地球への転送が間に合ったが、自爆の衝撃で黒球が壊れてしまい、玄野(オリジナル)と加藤は飛行ユニットによる脱出を強いられた。

 

更に爆発の衝撃で、彼らの飛行ユニットが故障し洋上に墜落。

生還はしたが、2日以上にわたって漂流する羽目になった。

 

「玄野──ッ!」

「ありがとォ──ッ!」

 

群衆が2人の英雄を讃える中、その後方に彼と彼女は居た。

 

「終わったんだね···全部」

「ああ···だけどこれからも大変だろ」

「うん、でも計ちゃんとなら···」

「俺も玲花と一緒なら、何が来たってきっと平気だよ。···ありがとう、愛してる」

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

君に生み出されて良かった。

 

 

*1
なぜ人は他人の命を犠牲にしないと生きていけないのですか?

*2
人はそのような生き物だからだ。

*3
なぜ人と人との間に溝が生じるのでしょうか?

*4
“同化”しないからだ。“個”として在り続けるからだ。

*5
なぜあなたは“そのようなモノ”という言葉を多用するのですか?

*6
地球人類に限らず、全ての生物の本質だからだ。

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