前編
All Endings - ROM専GANTZ
2025/05/18追記
(注意)
本編とは何の関係も無い番外編です。
黒川も登場しません。
書きたくなったので書きました(開き直り)
(備考)
舎弟ちゃんの見た目は短髪白髪ボクっ娘ロリ。
腹筋はうっすら割れている。
『ロリ神五条』をイメージすると近いかも。
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「ふぅ···」
広場の一角は死屍累々の様相を呈していた。
数十人のゴロツキ共が気絶ないしは戦闘不能となって寝転がっている。
それをボク──
「少しは強い人がいるかと思ったのにな」
平日の昼下がり。
真っ当な人生を送っている人間なら、基本的に学校か職場にいる頃。
そんな時間帯にたむろしているいかにもワルそうな奴等は、大抵カタギじゃない···不良かヤクザ、ドロップアウトしかけた碌でなし。
そしてボクもそんな碌でなしの1人だった。
優しかった両親が車の事故で死んで、ボクは少しばかり気持ちが荒んでいた。
高校をバックレて喧嘩に明け暮れる日々。
退屈だった。
父さんに叩き込まれた独自の戦闘術を駆使して、自分よりもずっと大きな相手を打倒する。
最初のうちはそれなりに刺激的だったけど、2ヶ月もすれば飽きてしまった。
ついさっきの乱闘だって半ば惰性。
テキトーにボクから突っかかって、ボクと戦いたくなるように仕向けた。
予想通り烏合の衆だったけど、他者との実戦を積まなければ腕が錆びつく。
両親がいた証を喪いたくなかった。
これからボクはどうなるんだろう。
漠然とした不安を抱えながら、ボクは福岡を無差別に荒らし回った。
路上のゴロツキから不良高校のボスまで。
転機が訪れたのは少し先の事だった。
◆◆
「···本当にいるのかな?」
誰か強い奴はいないのか。
過去にボコった高校のボスに聞いてみると、「とある高校に風変わりな格好をした、恐ろしく強い男がいる」との情報が返ってきた。
聞いたその足で向かった場所は、ごく普通の高校──いわゆる不良高校とは似ても似つかない場所だった。
落書きも見当たらないし、窓ガラスも割れていない···むしろ優良校だ。
喧嘩自慢がいるようには思えない。
まあせっかくここまで来たのだし、真偽を確かめておこう。
そう思い、大きく息を吸って叫んだ。
「この高校で一番強い奴は出てこい!!」
「え、何あの子」
「中学生?」
「堀野飛鳥だ!」
「なんでウチの高校に!?」
おそらく授業中だった校舎全体がざわめく。
反応は大きく分けて2つ。
ボクの身体を見て戸惑い、侮る女子生徒。
どこからか噂を耳にしたのだろう、ボクに恐怖している男子生徒。
「一番強い奴だってよ」
「どうする?」
「強い奴って言ったらアイツしかいないだろ」
「おっさん、早く行けよ!」
···数分待つと筋骨隆々の大男がやって来た。
なるほど、確かに珍しい格好だ。
学ランを改造したものだろうか、逞しい上半身を大きく露出させている。
おまけに履物は下駄だ。
「···なんの用だ」
「聞いたよ、アンタ強いんだってね。ボクより強いか勝負してみない?」
「悪いことは言わん、やめておけ」
「···怖いんだ、ボクに負けるのが」
「負ける気はせんが···」
大男の困ったような表情がほんの一瞬、父さんに重なって見えた気がした。
「だったら早く
「風大左衛門」
「ふーん、名前まで古風なんだね。まあどうでもいいか」
雑談はここまで。
男が下駄を脱ぎ捨て、眼光鋭くこちらを睨んだ。
これくらいのガタイの奴は何人か倒してるけど···目の前の大男はそいつらとは違う気がする。
「さァ、どっからでも来な···」
「じゃあお言葉に甘えて···ボクから行くよッ!」
◆◆
大男───風の強さは想像以上だった。
ボクの攻撃は尽く弾かれ、流され、耐えられた。
数十度の打撃を受けてなお立っていられる人間は、今まで父さんしかいなかった。
しかも相手はボクに一度も攻撃していない。
余裕ある態度···明らかに格上···思わず笑みがこぼれた。
「はぁっ!!」
短い助走で高く飛び上がり、後頭部を全力で蹴り飛ばす。
某プロレスラーの“延髄切り”に似ているけど、ボクは予備動作に回転を仕込んでいる。
素手で受け止められる代物ではない。
···頭蓋を強く叩いた感触。手応え有り。
「っ!?」
クリーンヒットしたのに膝をつかない。
耐えられた。再びの想定外。
そしてボクの右足は受け止められる───どころか大きな掌に掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。
小さいとはいえ人間1人を片手で投げ飛ばす···凄まじい膂力だ。
もし地面に叩きつけられていれば、おそらくボクは戦闘不能···最悪死んでいた。
「もう十分やろう」
「いいや、まだボクは負けてないよ!」
宙返りしながら着地し、再び突撃。
胴に拳のラッシュを見舞うが、やはりダメージは浅いようだった。
ここまでは計画通り。
···少し卑怯だけど、6歳の頃に父さんに使ってからずっと封じていた“技”を使う。
拳打は“技”を確実に決めるための囮だ。
「(···今!)」
ボクの背丈は150cmにも満たない。
風との身長差は50cm程だろうか···そしてそれが、この場においては有利にはたらく。
風の掌が捉えられないように低く屈み、足元へ潜り込む。
そして全身のバネを活かして飛び上がり、全力で拳を振り上げた。
狙うのは、ボクには存在せず男にのみ存在する、絶対不変とされる弱点···すなわち
父さん曰く睾丸とは臓器であり、この上なく脆い存在である。
たった一撃で男を再起不能へと至らしめる一撃であり──故に、使う相手は圧倒的な強者に限らなければならない。
股間を抑えて悶え苦しむ父さんの姿を見た時から、この技はずっと封じてきたけど···今この瞬間、ボクはその禁を破る。
ぐりっ。
ナニカが軋む感触がした。
「ぐァッ!!ッう···ぉぉぉおおおお!!」
咆哮。女の体を持って生まれたボクには一生分からないけど、尋常ではない痛波が襲いかかっているんだろう。
鳩尾の突きを喰らっても揺るがなかった男が顔を伏せ、激痛の余り吼えている。
「ズルいけど、これで勝負アリかな」
「いや···まだやッ!!」
「っ、な···!?」
瞬間、ボクは両脇を掴まれ高く放り投げられた。
不味い、完全に油断していたところを狙われた!
ボクが宙に浮かんでいる刹那、風は既に体勢を整えていて。
虚を突かれたボクはまともに迎え撃つ事も出来ず、背中からの体当たりで吹き飛んだ。
辛うじて受け身はとれたけど···
「ぁ···ぐっ···」
鉄山靠···洗練された技だった。
風はきっと、数多の挑戦者をこの技で打ち倒してきたんだろう。
軽く10mは飛ばされただろうか。
視界が揺れ、今にも意識が途切れそうだ。
立ち上がれないでいるボクを風が見下ろす。
はは、負けたよ···完敗だ。
ボクは目を閉じた。