朝起きたら世界中の空が血の色に染まっていた。
···私が死に戻ってからおよそ1年半。
ようやくカタストロフィまで辿り着けた。
世界中に設置されたブラックボールには独自のネットワークが存在している。
それを活用することで他のガンツチームに蜂起を呼びかけ、戦力増強を図った。
零くんの呼びかけに応じて集まった戦力は東京8人、大阪6人*1、地方6人の総勢20名。
まずは食肉加工場らしき建物に囚われている人たちを救出する。
コンビニから食料·飲料品を略奪して体力を補給しつつ、救助率70%まで到達。
···いよいよ、因縁の生物兵器と対面だ。
◆◆
「ここは···」
コンクリ(っぽい材質)の壁や骨組みだけが残った廃墟が立ち並ぶエリア。
俺の記憶が正しければ、ここはクソ強い生物兵器(?)群が居る場所だ。
奥へ進むと、巨人によって身ぐるみを
多種多様な虫(?)っぽい化け物たちと戦っているが、状況はあまり芳しくない。
今この瞬間も若い男性が魚に似た星人に喰い殺され、初老の女性が“光球腫瘍”によって異形と化している。
「アンタたちも人間を助けに来たのか!?」
「私たちいきなりここへ転送されたの!」
どうやら彼らは俺たちが呼びかけるよりも先に、拐われた人間を助け出そうとしていたらしい。
“いきなり転送された”ということは、彼らのブラックボールは巨人によってハッキングされたのだろうか。そしてこの“狩り場”に誘われた?
原作でも明確にされていないから、単なる予想でしかないけど。
それともう1つ気になるのがレイカの反応だ。
表面上は平静を装ってるけど、この場所に対してなぜか異常に怯えている。
刀を持つ右手が小刻みに震え、呼吸も少し荒い。
俺にとってもこの場所はトラウマなんだけど、自分よりもビビられると逆に冷静になる。
光球腫瘍、カマキリ、スケルトン。
皆に対処法を共有して、誰一人欠けることなく全てを倒した。
後で情報の出どころを聞かれるかもしれないけど、それは今考える事じゃない。
「アイツが···最後か」
俺たちの頭上に居座る化け物を見据える。
原作ではレイカを殺した相手だ。
···レイカの顔色が悪いのも、コイツが原因なのかもしれない。
「待ってくれ···嫌な予感がする」
「このまま全員で逃げよう···その方がいい」
勝手に言ってろ、俺一人でも戦うぞ···と、強気に返そうかと思ったけどやめた。
今のレイカの雰囲気は危険過ぎる。
内容は聞こえないけど何かブツブツ呟いてるし、目の焦点が合ってない。
俺が離れたら何をしでかすか読めない。
「レイカ、逃げよう」
「······みんな逃げて」
「いや、何言ってるの」
「早く」
「レイカを置いていけない」
「いいから」
「でも」
「いいからッ!!!」
初めて聞く、レイカの怒鳴り声に気圧された。
······それでも。俺は離れない。
今ここでレイカを置き去りにしたら、きっと一生後悔する。そんな気がする。
「私は···ッ!もう零くんを死なせたくないの···だから早く···あっちに行って···」
「それは俺も同じだから。···レイカには絶対死んでほしくない」
「でも···!」
「“でも”じゃない。レイカが逃げないなら俺もここに残る。それが嫌なら、とっとと逃げるよ」
「···ッ、うぅ···零くん···」
泣きじゃくるレイカを見て、ようやく彼女が強くなった理由を確信できた。
···勘違いじゃなければ、前世の俺はよほどの大馬鹿だったらしい。
いや今も大して変わらないかもしれないけど。
せめてほんの少しでも安心出来るように。
俺はレイカを強く抱きしめた。
彼女も強く抱きしめ返してくれた。
「レイカ、愛してる」
「嬉しい···私も愛してる」
「いや何やっとんねん、お前ら。2人揃って死にたいんか?」という岡の余りにも真っ当な指摘があるまで、俺とレイカは抱き合っていたそうな。
そういえばここって巨人族の狩り場でしたね。
しかも皆に見られてたっていうね。
······どうしよう、ちょっと死にたい。
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生物兵器「出番まだかな···(ソワソワ)」