「あれ…ここどこ?」
目を覚ませば、そこは辺り一面真っ白な空間だった。なんで?
えっ?僕普通に自室で寝てたよね?何が起こってるのこれ?
「目を覚ましたか、人の子よ」
「えっ誰!?」
半ば反射的にあたりを見渡すが、誰もいない。依然変わらず真っ白な空間が続くだけだった。怖い。
「我は神である。単刀直入に言おう、お前は死んだのだ」
やはり姿は見えず声だけが響く。神様って自称してるし、マジで神様なのかな?
………えっというか僕死んだの!?まだ中学校卒業してないんだけど!?まだやり残したことあり過ぎるんだけど!?ヒロアカの最終巻読めてないしめだかボックスも球磨川事件編の途中で読むの終わってるんだけど!?
「困惑しているようだな」
「当たり前ですよ!?だって死んだって言われたんですから!?」
「それもそうだ。だが、焦る必要は無い。我がお前を転生させてやろう」
「えっ!?……………えっ?」
ちょっと待って情報量とその内容で頭がパンクしそう。
「無論、ただ善意で第2の人生を与えるわけではない。人の子を記憶を保持したまま転生させ、その人生を見るという我らの娯楽に付き合ってもらうのだ」
うん?つまりあれか、人生ずっとモニタリングされるってこと?見られ続けるって考えると少しソワソワするけど、別に僕に害無いな?ギブアンドテイク感出してるだけで、こっちとしてはただセカンドライフを送るだけじゃん。善神ってやつですかねこのお方は。
「転生する世界は、お前の知る『僕のヒーローアカデミア』の世界である」
「……あ、そういう感じですか」
「そしてお前には望むモノを1つ与えよう。才、肉体、物質、概念。お前にはお前の知るその総てから選ぶ権利がある。お前の思案する程度の時間なぞ、我にとっては須臾に等しい。時間は存分に使え」
「ありがとうございます」
やっぱり優しい。実際その通りなだけかもしれないけど、こういうの言われると嬉しくなるというか申し訳なさが軽減するよね。
さて、それで貰えるモノを決めるとしようか。
まず物はないよね。ヒロアカって現代よりも技術力ある世界だから、こっちの物、例えばスマホを持っていっても、どう頑張ろうがあっちのスマホの下位互換にしかならない。架空の物を持っていく手もあるけど、正直ヒロアカ世界で持っておきたい物が思い付かない。
体関係は良さげな気がする。筋肉は努力でもあるだろうけど才能部分もあるはずだし、なにより自分の美醜を自分で振り分けられるのもいい。これって結局のところ第一印象っていう部分で大事だからね。イケメン過ぎるのもあれかもだけど、普通にカッコいいくらいなら親しみもあっていい感じそうじゃない?
概念は、つまり超能力とか持っていけるってことでしょ?ヒロアカってデフォルトで個性っていう超能力あるから正直いらない気がする。無個性なら無個性で今世……前世?と変わらないだけだならね。もし持っていくならめだかボックスの【
……あ、そういえばさ、
つまり、
うん、物は試しにってやつだ。神様に聞いてみるか。
「神様、質問なのですが、前提として
「ふむ、トンチであるな?実に愉快である。続けよ」
神様から好評の言葉と許可が出たので、話を続ける。
「はい。……これでは与えるとおっしゃった神様が約束を違えることになるわけです。なので、
「ふむ、よかろう。お前のその望みは確かに受理した。だが、我もそこまで優しくなどない。その残りのその2つは程度の低いモノに限るとする」
「ありがとうございます」
うーんやっぱり想定通りにはいかないか。というか
それで、あと貰えるモノは程度の低いモノ2つか……うん、決まった。
「残りは平均以上の顔にします。あと少し高い身体能力を」
「うむ、受理しよう。では、人の子よ。お前の好きに生きよ、そしてその人生をもって我々を楽しませるのだ」
瞬間、僕の体が端から光の粒子になって消えていく。それに合わせて意識も薄れていく。
こうして僕は転生を果たした。
◇◇◇◇
「あーあ、また失敗だ」
人気の無い狭く暗く陰鬱な雰囲気の漂う路地裏。そこには一人の青年と、岩のような、猿のような子供ほどの奇妙な生物がいた。
「何やっても上手くいかないや」
青年は奇妙な生物を一瞥したのち、興味を無くしたかのようにそこから離れていく。だが、それを奇妙な生物が引き留めようと手を伸ばし、足を掴む。
青年は不満げに、気味悪く半身振り返りその奇妙な生物を見下した。
「なにさ畜生の分際で。僕はもう君に用がないんだ、その手を離してくれよ。確かに悪いとは思ってるぜ?でもそれとこれは別の話だ」
まるで独り言のように吐き捨てる。だが、それに反応するように声が上がる。
「ぅう……そつ………ぅき……ぃ」
それは、奇妙な生物からだった。それは岩のような、猿のような見た目をした
──本名
「嘘なんてついてないさ。僕はただ失敗しただけじゃないか。個性を強くする、なんてことが簡単にできるわけないだろう?君のためにやったことだって言うのに、少し失敗した程度でそんな批判をされるいわれはないぜ」
ヘラヘラと笑う青年はそんな言い訳をのたまう。
そして。
「ほら、離せよ」
それは、能面のような笑顔とは裏腹に酷く冷たい声だった。
もはや悍ましささえ感じる声音が、半ば本能的に岩倉岩石の手を引っ込めさせた。
「うんうん、分かってくれるならいいんだ。僕としても殺しは好みじゃないから助かったよ」
「っ…………」
「ん?なにをそんなに怯えてるんだい?君は煩わしい人間関係から脱却したんだぜ?君をいじめるやつはもう君を君だと思わないし、周りのやつらを見返すためにヒーローにだってならなくていいんだ。だってもう君は人間じゃないんだから!」
それは残酷な宣告。ひとでなしからのひとでなしへの悪意に満ちたリップサービスだった。
岩倉岩石はボロボロと涙を流す。それは悔いか恐怖か、本人でさえ分からない。ただ、それがこの青年が原因であることは確かだ。
「い……ぁ、だ……ぁ……も、どし………ぇ……も……ど、ぃ………て……」
「ん?ムリ」
呆気なく、あっけらかんと青年はそう口にする。
「………ぁ…………………っ」
岩倉岩石の心はポッキリと手折られた。言葉も夢も、希望も自身すらもさっぱり消え去った。
それはもうただの伽藍堂になった。
それに満足したのか、はたまた期待はずれだったのか、青年は踵を返して路地裏の闇に消えていった。
パソコンで見てる神様だと僕の喋りが上手く見えないかもしれないけれど、それもまた僕だ
あーあ、また失敗だ。何をやっても上手くいかないや