時間が跳躍しすぎだって?そんなの、君のさじ加減じゃないか
おいおい神様、いくら僕の人生が面白く感じなかったからといって、一気に原作開始時期まで読み飛ばすやつがいるかよ。酷い話だね。
まぁ、神様が本当に読み飛ばしたのかは知らないしそんなことできるのかも分からないけど。
ってことでヒロアカ世界に転生した僕、
さてさて、友だちが離れていったり学校を廃校寸前まで追い込んだりとなんやかんやあって無事中学3年の冬までセカンドライフを送ってきたわけだけど、何とびっくり!僕ってどうやら原作主人公こと緑谷出久くんと同い年らしいんだよ。
その証拠に、春ごろにヘドロ事件をニュースで見たし、爆豪勝己くんもしっかり確認したんだ。
だから、と言うわけでもないんだけど、原作が繰り広げられる雄英高校ヒーロー科に入学しようと思ってね。ほら、せっかくなら聖地巡礼が如く大好きな作品をこの目で見ていたいじゃん?
──と、言うわけでやってきました、雄英高校ヒーロー科入学試験!
「いやー、改めてスゴいな。僕なんかが今この瞬間雄英にいるんだぜ?人生って何が起こるか分からないね。まぁ、ただの入試だから誰でも来れると言われちゃ弱るけどさ。さて、それじゃあ行こうか、この中へとね」
そうして僕が門をくぐろうとした瞬間のことだった。ふと見てみれば、そこにはモサモサ頭の少年が。これは原作シーンってやつじゃない!?いやー興奮するね!
「どけデク!!」
そこに爆豪くんがダイナミックエントリー!そして暴言吐いたらすぐさまログアウト!
うーん、このクソっぷり、もはや惚れ惚れするね。ワンチャン僕以下じゃない?いやそれはないか。爆豪くんにはその素晴らしい才能が溢れてるからね、僕と比べるのは烏滸がましいにも程があるや。
その点デクくんは
っと、そういえば原作通りならこの後デクくん転ぶよね?それを眺めてあざ嗤うのもいいけど、残念ながらこのままじゃ麗日お茶子ちゃんが助けに入るんだよね。
だったら、どうせなら僕が下敷きになって謝り倒せよう。そうすればお茶子ちゃんは助けないでしょ。だって僕が助けてるんだし。それに、そっちの方がライバルであるデクくんのコンディションを落とせるし。うん、そうしよう!
というわけでデクくんが転びそうになった瞬間に飛び込む!
「……?」
「大丈夫?」
「わっ、え!?」
「……」
残念、お茶子ちゃんはヒーロー精神が高かったらしい。そのせいで僕が突然地面に倒れ込んだだけになっちゃったよ。
「ってそっちの人大丈夫!?」
「えっ、わ!?」
「うん、大丈夫だよ。……あーあ、また失敗だ、何やっても上手くいかないや」
倒れ伏したままいつもの決まり文句を口にする。起き上がるのも億劫だよ本当に。
「わーごめんね!?私そこまで届かなくて……!転んじゃったら縁起悪のにね…!?」
「いや、このくらいが僕にはちょうど良いさ。縁起最悪凶日万歳、僕なんかはこのくらい悪くてやっと本調子だよ。おっと、励ましなんていらないぜ?そんなことされたら僕なんかは僕でも何するか分からない」
そんなことを口にしながらぐらりと立ち上がる。おっと、鼻血出ちゃってるや。まぁいい、好きに垂らさせてあげよう。
「あ……うん、その……お、お互い頑張ろうね!」
お茶子ちゃんは顔を引きつらせて、すたこらさっさと走り去ってしまった。
あれ、僕また失敗した?うーん、何やっても上手くいかないや。
「あ、君。そう、転びそうになって挙げ句に女子に助けられちゃった地味でモサモサの君だよ君。大変不本意極まりないけど、君のことはライバルとして認めて、そしてガッツリ蹴落とすつもりだから心配しなくていいよ!それじゃ、また4月とか!」
そう話しかけて返答も聞かずに僕はお茶子ちゃんの後を追う。いやはや、杞憂なんてしなくていいと伝えるなんて、僕はもしかして優しいやつなんじゃないかな?はっはっは、これなら合格する気がするね!
◇◇◇◇
説明も終わってやっとこさ演習場前までやってきましたよっと。
いやー、長ったらしくて喧しい説明が終わってせいせいしてるよ本当。まぁこれから試験が始まるわけだから、ここから気を入れないといけないんだけどね。
まぁ?原作を履修している僕からしてみれば余裕に決まってるんだけどさ。開始の合図が唐突にくるのも知ってるから出遅れようがないわけだよ。
『はいスタートー』
そうそう、こんなふうになんのカウントもなく……あれ?
『──走れ走れぇ!賽は投げられてんぞ!!?』
周りを見渡せば、焦りながらも駆け出していく受験生たち。どうやら、僕はその大群から取り残されてしまったらしい。
「ありゃりゃ、完全に出遅れちゃった感じ?おいおい、勘弁してくれよ神様。こんな僕なんか見てて楽しいかい?いや、滑稽で愉しいだろうな……あーあ、また失敗だ」
まぁこれも僕だ、そんなことよりさっさと行くとしよう。ヴィランロボは待ってくれるけど、時間と試験は待ってくれないんだから。……あ、待っている、というより待ち構えてるといったほうが正しいかな?そんなことどうでもいいね、早く行こう。
「うーん、清々しいお散歩日和だね」
大分出遅れたからか、無防備に歩いていてもロボットは襲ってこない。
いやいや、マジでお散歩して終わるかもしれないな?流石にシステムとしてそんなこと起きていいはずないんだろうけど、だって僕だぜ?そんなことがまかり通る可能性だってあり得る。
いってて悲しくなるね、ホント。
『あと6分2秒~』
そんな放送……放送?プレゼントマイクが何も介せず喋ってるから放送じゃない?まぁ放送でいいや。その放送がされたくらいのこと、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「やぁ、モサモサくん!偶然だね」
「えっ!?……あ、あの時の!」
ってことで原作主人公のデクくんを見つけた。
「あ、あの時のはありがとうございます……でいいのかな?なんて、はは……」
「全然構わないね、寄りかかりすぎてもはや寝てるような状態になってくれてもいいんだぜ?」
「えっいや、それはいいかな…!?」
「おっと、振られちゃったな。まぁそれは置いといて……あーあ、また失敗だ。また4月って言ったのに、こんなに早くあっちまったぜ」
「あはは、たしかにそうだね……」
若干和やかな雰囲気になったんじゃないかな?主人公との仲を深める、なんてまるでオリ主モノのテンプレまんまだね。まぁ間違ってないんだけど。いえーい、神様みってる~?
ま、こんなところでいいか。
「ところで、モサモサくん。ときに君のポイントはいくら稼いだんだい?」
「……あっ!!?そうだ僕まだ全然……っ!ご、ごめん!僕ポイント取らないとだから!!」
「うんうん、ポイント大事だもんね!それじゃあ僕もポイント稼ぎに行くとするかな」
デクくんは走り去っていった。
ほぼ1年間体作りをしていただけあって、その足はかなり速い。神様に平均より高い身体能力を願っただけの僕なんかとはまるで正反対。正に
そうして踵を返したときだった。
………おいおい、そんな嬉しい言葉を吐くなよ。危うくこんな悲痛な現実を真に受けるところだったじゃないか。
僕は背中を向いたまま、片手を上げて返事をする。デクくんには歪んだ顔を見せないように。
───そうして、大体0Pヴィランが出現したくらいのこと。
ここまでヴィランロボとの遭遇数脅威のゼロ!いやー転んだのがいけなかったかな?あそこで失敗したのは良くなかったな。
あーあ、また失敗だ。何をやっても上手くいかないや。
そうして僕は歩き続ける。だって、駆けずり回って敵を見つけるのは
吹っ切れたとも言うね。
……おいおい、早く出てこいよヴィランロボ、本当に0Pで終わるぜ僕。
なんて思っていたからだろうか。
噂をすればなんとやら、僕の行く道を塞ぐように1Pヴィランが飛び出してきた。
『標的捕捉!──』
「うんうん、僕に似合わない好都合だ。案外僕なんかでも上手く行くようなってたりしてるんじゃないかな?そんなことないか。それで、別に君に恨みも怒りもないけれど、というかむしろ感謝しかないけれど、この恩は総て残らず仇で返させて貰うぜ」
僕は杭を何処からともなく取り出して手に握り、両手を開いて半身に構える。
神様ならこの構えが何かわかるだろう?そう、僕って実は球磨川先輩をリスペクトしてるんだ。
ってことで───
うーん、決まったな。
どうしたんだいそんなに顔を真っ赤にして。前回の後書きで個性のことを仄めかしておいて、今回個性の話が出なかったことに怒っているのかい?たしかに前回で仄めかしはひたけど、今回で明かすなんてことは一言どころか一文字もなかったはずだぜ?
まぁでも、いくら僕にそんなつもりがなかったとはいえ、神様たちを誤解させちまったわけだから謝るよ。ごめんね
あーあ、また失敗だ。何をやっても上手くいかないや。