うちの担当達はただただカワイイ   作:トレーナー

1 / 2
始まり

「ウマ娘ってのはね、ひたむきなんだよ」

 

「レースに、想う誰かに勝ちたいという気持ちにね」

 

「だから      

 

 

「中身空っぽなことを名言ぽく言おうとしないでくれますか、先輩」

 

 

「……だから    

 

 

「聞いてますか、先輩」

 

 

「……」

 

「……だから  

 

 

「いやどんだけ言いたいんすか!? もう良いって言ってんでしょっ!?」

 

「要するにウマ娘はすごいってことですよね? 先輩クオリティだし」

 

 

「…………な」

 

 

「な?」

 

 

「やっかましいなぁっ!? 最後くらい言いたいことを言いたい風に言わせてもらえないかなぁっ!?

 

 

「嫌っすけど」

 

 

「ひどい!?」

 

 

「今年で4人目ですし。……そもそも仕事だけ増やして逝く先輩に、感謝も敬意もちょっと良い雰囲気の別れも必要ねぇっすから」

 

 

「ぐっ……恨むぞ後輩ぃ……あとなんか字違くない?」

 

 

「気のせいです」

 

 

 ただでさえ人手が少ないと言うのに、なんてタイミングで辞めるのか。

 いや、こうなるのも必然だったと言うべきだが。

 

 

「……ほら、新妻さんが呼んでますよ」

 

 

「ん、ああ……まあ、うん、改めてこれだけは言わせてくれ」

 

 

「はい」

 

 

 手を振って、先輩を呼んでいる彼女"達"を見る先輩の目は、とても幸せそうである、が。

 纏う雰囲気は、どこか……。

 

 

「うん、お前は、俺みたいにはなるなよ」

 

 

「……うす」

 

 

「ま、俺が言えたギリじゃないんだけどなっ! 頑張ってくれよ後輩!」

 

 

「先輩の抜けた穴が小さいんで、なんとか頑張りますよ」

 

 

「ひどいな!?」

 

 

 どこか、悲しげだった。

 

 

 まあそれはそれとして、馬鹿ではある。

 

 

「……ひどいなっ!?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 トレーナーという職業は、狭き門である。

 ウマ娘という、未来ある少女の運命の片棒を担うのだから、当然の話ではあるのだが。

 すっげえ難しい、洒落ならんレベルで。

 

 そして、皆が想像している8倍は忙しい。

 最初のうちはまだ、まだ1人で片付けられる範疇ではあるのだが。

 大体、サブトレーナーになってから、担当が2人目……つまり、チームを作っていく段階まではまだ個人レベルの忙しさだと思う。

 例外だらけだけど。

 

 そして極めつけには。

 人手不足が著しいのだ、この忙しさを加速させるかのように。

 それは何故か。

 

 

『今年に入って4人目』

 

 

 ……そう、あの先輩で4人目だ。

 ここ、中央トレセン学園に属するトレーナーの寿()退()()の人数だ。

 

 

「はぁ……」

 

 

 寿退社とは、『結婚を理由に会社を辞める』という行為につけられた名前である。

 言っておくが、今年辞めて行ったトレーナーは、女に特別モテるとか、どこぞの御曹司とかではないぞ。

 

 じゃあ普通に良い人見つけたのか、と言われたらそうでもない。

 では誰と?

 

 いるじゃないか、トレーナーにとびっきり近くて、尚且つひたむきに熱意を注ぐ相手が。

 そうだウマ娘だ。

 

 

「……理屈としてわからないわけじゃないから困る、うん」

 

 

 俺達は狭き門をくぐってトレーナーになった訳だが、その努力の源にあるのは大小あれど『ウマ娘のため』っていうのは変わらんところなのだ。

 そんな奴が、色々多感だろうお年頃のウマ娘達のために動いたらどうなるだろうか。

 

 まぁうん、捻じ曲がるよな、ナニがとは言わんが。

 俺たちは決してウマ娘達に邪念を抱いて接している訳じゃないことには留意してもらいたい、いやマジで。

 カワイイとは思うが。

 

 レースへの情熱がそのままこちらに向いたと考えてもらって構わない。

 ある者は颯爽とトレーナーを捕まえて"逃げ"たり、ある者は最後の最後に大逆転の"追込"を見せたり……はたまた"先行"したり"差し"込んだり。

 

 ぶっちゃけ、側から見てる分にはレースで参考にできそうなエピソードもあったりして面白い。

 自分がそうなったらと考えたら? ……ちょっと頭痛い。

 

 

「適切な距離……保ててるか……?」

 

 

 そんなたかが心の10mや20m、ウマ娘からすればすぐの距離だろうが。

 トレーナーの些細な対処である、効いていると思いたい。

 

 俺達は、ウマ娘"に"幸せになって欲しいのであってウマ娘"と"幸せになりたいんじゃない、ウマ娘が幸せならオッケーです。

 

 

「……トレーナーさん」

 

 

「ん? おおどうした」

 

 

「いえ、その、浮かない顔をしていたので」

 

 

「あー……心配されるようなことじゃないさ」

 

 

「……本当ですか?」

 

 

「本当だよ。大した問題じゃない」

 

 

「そう、ですか」

 

 

「ああ、先に部屋行っててくれ、後で向かう」

 

 

「……はい」

 

 

 ……うん、行ったな。

 いや、余計な心配かけさせたかな、余計とも言い切れない問題なのかも知れんが。

 

 余談ではあるが、俺ももうそこそこのトレーナーみたいなものなので、担当しているチームがある、さっきの彼女も……シュヴァルグランも、その1人だ。

 

 

「んー……まあ、うん、うちの担当はおとなしめの子が多いし、多分大丈夫……だよな?」

 

 

 確実におとなしくない1人を除いて、というかまだ4人チームのひよっ子だし俺。

 これ以上人数増やせるものなのかという疑問は尽きない、今でさえ忙しさやばいんですけど?

 

 俺よりずっと要領がいいトレーナーとか、ベテランであればもっと規模が大きい。

 ……なんか過労死しないか心配になる、というのは口にしちゃいけない。

 

 

「シュヴァルグラン、セイウンスカイ、ウインバリアシオン……カレンチャン」

 

 

 現時点での俺の担当であり、苦難を乗り越えたかけがえのないウマ娘達だ。

 ……ん? この4人に言えること?

 

 

「うちの担当は、ただただカワイイ……ってか?」

 

 

 いや、散々寿退社とか危ういこと並べ連ねたけど。

 4人とも4者4様でとてもカワイイのだ、気分としては娘を見る父親に近いのかも知れない、これは。

 

 

「……ダメかもしれんね、うん」




シュヴァちもセイちゃんもカレンちゃんもシオンも皆カワイイ(脳死)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。