8話はもう少しマイルドに書き直そうと思います。内容に変化を付ける予定はありません。
正直、低評価を残した方が今も残っているとは思いませんので、書き直す事に意味はないと思いますし、書き直すよりも続きを書く方が今の読者に寄り添っていると思いますが、気持ちの問題として書き直したいと思います。
出来れば、本日中に書き直したいと思います。
V作戦の進捗は、滞りなく進められている。
プロトタイプであるガンダムを型式番号RX-78-1として、アナハイム・エレクトロニクス社(以後AE社)が今、持てる技術を結集して作り上げるガンダムを型式番号RX-78-2。そして先日、完全な形で鹵獲されたザクの技術を導入して新しく図面を引いたのが型式番号RX-78-2Sとする。
この2号機とも呼べる3機目のガンダムに関しては、ガンダムのスペアパーツを用いたザクベースでの開発となっている。
AE社の上層部は、ザクベースの機体を作る事に(予算の兼ね合いもあって)不快感を示したが、開発主任であるテム・レイは「最初は、この程度で良いと妥協する。唾棄すべき思想だ、最初から最高を目指さなくては、それなり止まりのものしか作れないと何故分からないんだ」と吐き捨て、事実、AE社の命運を賭けたプロジェクトでもある事から渋々と彼の開発に予算を追加する。ここに「予算欲しさに金銭を要求する輩なら突っぱねるが、連邦の命運を賭けた大勝負に出し惜しみをする真似はせんよ」というゴップ大将の後押しもあった事は追記しておく。
サイド7には現在、1機のプロトタイプと2機のガンダムが開発が進行している。
北米の英雄、メアリー・スー少尉の功績は連邦軍総司令部の耳にも届いている。
というのも連邦軍にとっては、ジャブローという天然の要害を除けば、最後の壁という活躍を見せている為だ。本人が居ない為、内部保留にされている昇進が積み重なっており、プロパガンダの意味を込めても彼女のジャブローへの帰還を望んでいる者は少なくない。特に連邦軍の中では、最も頭が切れる者だと知られるグリーン・ワイアット中将が彼女を持ち上げる事に全面的な賛成を示していた。
正直、親代わりのゴップが総司令部に居るので、本人への通達なしに昇進させる事も出来たのが、敢えて内部保留に留めているのはゴップの意思である。必要以上の階級は、行動に制限が掛かる。面倒な仕事は自分が引き受けて、愛娘には出来るだけ自由にさせてやりたいというのが親心である。
しかし少佐までは、避けられそうもない。
公国軍が慢性的な人材不足に陥っているのは紛れもない事実ではあるが、連邦軍もまた徐々に人材が不足している。モビルスーツという新兵器の脅威に晒されて、前線で指揮を執っていた多くの者が亡くなっていた。部隊を指揮できる者が開戦当時と比較して極端に少なくなっており、軍の秩序も保てなくなっている。
北米に所属する将兵の質の悪さも、統制を執っていた者が基地防衛で真っ先に死んでしまった事に起因する。
対して公国軍は厭戦感情が問題となっている。
勝利に次ぐ勝利も慣れてしまえば、果てない道に何時まで勝ち続ければ良いのだと嫌気も差す。コロニーの安定した天候管理と比較して、地球の劣悪な環境に嫌気が差したのもあるし、疫病が流行り始めていた事もある。コロニーで生まれ育った人間は、地上の人間と比較して、細菌に対する抵抗力が低かった。故に地道な攻略が必要になるのだが、時間もまた公国軍の敵である。連邦軍という眠れる巨人が起きる前に、公国軍は勝負を付けなくてはならないのだが、しかし、焦りもまた禁物である。焦りは禁物だが、将兵の厭戦感情が広まっては、活動が出来なくなる。公国軍にとって、時間は敵である。
そんな制約の多い中でガルマ准将が考えたのは、意外にも堅実的なものである。
南米に攻め込む為の橋頭保を築く為に、キューバのグァンタナモに拠点を置くというものだ。
パナマからメキシコに抜ける陸路を睨み付ける事も出来るし、軍港としての機能も付ければカリブ海から南大西洋へと抜けて南米の海岸線に睨みを利かせる事も出来る。何よりも重要なのは、ニューヤークとキューバを海路で繋ぐことが出来る事、パナマを占拠出来れば、運河を使って、キャリフォルニアとも海を使って輸送路を繫げる事が出来る。防衛的な考えで見ても、ニューヤークとキャリフォルニア、キューバの3点で三角形が結べるのも悪くない提案のはずだ。
この提案をランバ・ラル大尉が聞いた時、彼が最も関心したのはガルマ准将は海路の有用性に気付いていた点である。
ガルマ准将は現在、前線から身を退いている。というのも彼は今、政治に重きを置いており、地球の社交界と友好的な関係を取り持とうと考えていた。その一環で彼は海路の有用性を知り、それを元に戦略を組み直していた。兵站は、軍にとっての血管である。補給路を結べる事は、前線で戦い続ける将兵の待遇改善に繋がる。マ・クべ少将は水陸両用モビルスーツの充実に関して、懐疑的に考えていたが、ガルマ准将は海路を重要視している。
海路と鉄道を制する者は、地上の兵站を制するのである。
ガルマは、戦果以外の方法で厭戦感情を緩和する道を模索していたのだ。
そしてガルマ准将の戦略を成就させるのに邪魔になるのが北米ゲリラの存在である。
連邦軍の公国軍から見た北米ゲリラの見立ては当たっている。現在、公国の北米方面軍が最も脅威としているのがメアリー・スー少尉が率いる北米ゲリラの存在である。彼女が稼いでくれた時間が、連邦軍に猶予を与えている。ジャブロー基地の所在は、簡単には分からないようにしているが、それでも、目と鼻の先に敵が居て、戦闘機が頭上を飛び回るのでは話が変わって来る。
そして今、肝心要のメアリー少尉は、窮地に陥っていた。
「なるほど、確かに読まれている。完全に取ったと思ったのだがな、間一髪で防がれたか」
初戦の時、キリー中佐が初心者のメアリー少尉に勝てなかったのは複合的な理由がある。
先ず最初に降下作戦直後で重力下での戦闘に慣れていなかった事、初めて乗るモビルスーツを満足に動かせる訳がないと侮っていた事。そして彼女自身、ザクが鹵獲されて動かされていた事に少なからず動揺していた事。彼女の心の隙を無意識に読んだメアリー少尉が、己の直感を信じて大きく踏み込んだことが功を奏する。
以後、彼女がキリー中佐を避け続けたのは、モビルスーツがなかったのは勿論、仮にザクを完全な状態で鹵獲したとしても次は勝てない事が分かっていた為だ。
それだけ、メアリーの中でキラー・ハーピーと呼ばれる彼女の存在は脅威に映っていた。
「私に勝てる? いや、今はもう勝つか負けるかじゃない。やるしかないんだ!」
今回、メアリーは策に嵌められた。しかし結果として、彼女は最適解を選び続けている。
ラル大尉を避けようとすれば、ニムバス大尉の陸戦高機動型ザクと衝突する可能性が高く、ラル大尉のザクと挟み討ちになる。ニムバス大尉の位置も読んで逃れようとすれば、今度はラル大尉の内縁の妻、クラウレ・ハモンが率いるランバ・ラル隊が待ち構えているのだ。
メアリーだけが生き残れる事を考えれば、他にも道があったかも知れない。だが、襲撃の為に機械化歩兵を率いるメアリーでは今、此処でラル大尉を突破する以外に道がない。
そして、そこまで相手の思考と状況を読んだ上で、ラル大尉は単騎で北米のやべえ奴と一騎討ちをする道を選んだ、そういう状況へと追い込んだ。
「なあに、読まれると分かっていれば、それを織り込んだ上で戦えば良い話だ」
ランバ・ラル大尉、又の名を青い巨星。
公国軍の戦士を体現する男が、ヒートホークを片手に立ち塞がる。
◆
弾き飛ばされたヒートホークを尻目に私、メアリーはもう一振りのヒートホークを求めて腰に手を添える。
しかしヒートホークを手にするよりも早く青いザクが距離を詰める。一撃必殺で殺される距離、私は、それまで一度しか使わなかった引き金を振り絞った。頭部に装備されるバルカン砲が火を噴く、照準を付けられるような装備ではない。しかし予想外の場所から予想外の攻撃に青いザクも思わず、距離を取る。
勝てる相手ではない。しかし今、逃げる訳にも行かなかった。
時間を稼ぐ必要がある。モビルスーツを相手に歩兵は、全くの無力とは言わないが、しかし真正面から戦って太刀打ちできる相手ではない事は確かだ。待ち構えるのは悪手、なら、と私は逆に相手との距離を詰める。踏み込む一歩が地面を揺らし、モニター越しに見る青い機体のモノアイが私を捉える。
両手に構えたヒートホークを内から外に振り払おうとした私に、青い機体は、敢えて私の歩調に合わせて距離を詰めて、ヒートホークを振り抜く前に肩をぶつけて封じ込まれる。
青い機体はスパイクのある左肩、対して私は、盾のある右肩。構えとしては脇構えに近く、互いに互いの肩を押し付け合う姿勢になる。ザニーはザクと比較して、信頼性という面で大きく劣る。徐々に押し込まれるのを感じる、機体を弾き飛ばされる前に私は対策を打つ必要がある。故に私が今、かち合わせている右肩を相手の内側へと滑り込ませようとした直前、青い機体が私が潜り込むよりも早く、私が想定するよりも更に深く、左肩を滑らせて私の懐に潜り込んだ。密着し過ぎて、互いに決定打のない状態。青い機体は、私に背中を向けた状態で畳んだ膝を伸ばし、ザクの頭部でザニーの顔面に頭突きを噛まして来た。衝撃で大きく振動するコックピット、仰け反る機体。コックピットのモニターにノイズが入る、メインカメラに支障をきたしたか。体勢を立て直そうとしたその時、既にもう青い機体はヒートホークを横に振り被っていた。
直感する、これは躱せない。明確に訪れる死の予感に息を飲んだ。
次の瞬間、青い機体が突如として爆破される。青い機体のパイロットの気迫に飲み込まれていた私は一瞬、何が起きたのか分からなかった。だけど直ぐに理解する。足元に、まだ残っている一台の装甲車。其処から放たれたバズーカ砲が青い巨体を捉えたのだ。
だけど、青い巨体は止まらない。
バズーカ砲の一撃が、ザクの装甲に傷をつける事はない。精々、関節に衝撃を与えて漸く、地面に倒れさせることが出来るかどうかだ。衝撃に一瞬、青い機体は動きを止めたが、しかし、相手は躊躇する事なく、私の命を刈り取る為に熱刃を振り抜いた。
数秒である。足元の兵士が稼いだ時間は僅か数秒、しかし、その数秒が半歩、ザニーを下がらせる事を可能にした。メインモニターが付いていたコックピットがヒートホークで根こそぎ刈り取られる。空気が吹き込んだ、冷たい空気だ。汗で濡れる身体が冷たかった。操縦桿を握る手が震えるのは、寒さ故か。青い機体は止まらない、モノアイがまだ倒れない私の機体を見た。私が無意識の内に振り被っていたヒートホーク、よりも早く、懐に潜り込んだ敵機は、そのまま私に向かって体当たりを仕掛けた。
吹き飛ばされる機体。地面に倒れ込んだ、その衝撃で私の身体は外へと放り出される。
地面に叩き付けられて意識が飛びそうになる。
実際、意識が飛んでいたのかも知れない。霞む視界に俯せに倒れるザニー、肘を突いた僅かな隙間に連邦兵の一人がコックピットの中に乗り込んでいるのを見た。動かせる訳がない、動かせる見込みがあれば、完全な形で鹵獲したザクをジャブローに送る事もなかった。しかし、直感する。元より動かす必要がない事を、彼の思念が告げている。
暫くして、青い機体に鹵獲されたザニーは、コックピットに座る兵士の姿を確認し、逃げるゲリラ部隊を一瞥する。しかし彼は、それ以上の追撃を切り上げた。
遠方から姿を現す別の機体、同じ青色だけど、肩の部分が赤く塗装されていた。
ザニーが二機に連れ去られる姿を見つめながら私は一度、気絶したんだと思う。次に目覚めた時は仲間の連邦兵が居て、言葉も喋れない私を回収し、装甲車に乗せて戦場から連れ去った。
全身の骨が折れていた、暫くの休養を余儀なくされる。