NT劇薬娘。   作:にゃあたいぷ。

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本日、短かったので2回目の投稿。


15.Beginning.

 ペイルライダー計画、表向きには次世代型MS開発計画。実際には、連邦軍の独自開発MS計画。

 サイド3のモビルスーツに対抗する為、地球連邦政府がAE社のテム・レイ主任に協力を求めた事を皮切りに地球連邦軍のAE社依存が急速に加速したように思える。というのも戦闘機や戦車を始めとする通常兵器の開発元は軒並み、勢いを失って地球連邦に対する影響力を弱体化させられている。

 現在の地球連邦軍が抱える兵站事情にも強い影響力を持っているのがAE社で、彼の企業なしには連邦軍は戦争を継続する事が出来ないと言われている。

 

 ゴップ大将は、持ち前の政治センスから地球連邦内でのパワーバランスが崩れている事に勘付く。平時であれば、ゴップの独断は地球連邦政府に糾弾されて然るべき凶行。しかし今は戦時である。

 地球連邦の明日を握るのは連邦軍であり、主導権は連邦軍高官が握り締めていた。

 正直な所、AE社は軍人相手なら御するのも簡単だと考えていた。事実、AE社は簡単に軍内部に潜り込んでおり、AE社から出向した現MS開発主任のテム・レイは、技術大尉の階級が与えられている。

 

 所詮、頭が回ると言っても戦場での話。謀略を得意とするワイアット中将もまた企業の力を侮っている。

 軍人は、定められた戦場と駒、規則を用いて盤を挟むのが精一杯。戦場も、駒も、規則すらも作り出せる存在とは、戦っている舞台が違うのだ。

 だから、ゴップ大将が妨害に出る事は、AE社は想定していなかった。

 

 ペイルライダー計画は、表向きには保守派と武闘派の内部抗争。しかし事実は異なり、ペイルライダー計画はゴップ大将とレビル大将の共演である。

 レビル大将は、政治を理解するが考えるのが苦手である。ティアンム中将もまた同様、ワイアット中将の場合は戦場と目的を設定する事で初めて能力を発揮する参謀タイプの人間だ。故にレビルは連邦内部の事は、ゴップに丸投げした。

 国家、引いては国民を守るのが軍人の務めであるとレビル本人が自戒しているのもある。

 

 ペイルライダー計画の責任者には、最初、レビル大将からバスク・オム大佐が推薦される。

 バスクは狡猾で政治を理解し、ゴップとの相性も良く、特殊任務にも適した人物であると考えた為だ。しかし、ゴップの方からバスクの配属を拒否、もう少し実直な人間が良いと要望があったので技術将校でもあるジョン・コーウェン少将が推薦される。これもゴップが難色を示す。

 大きく溜息を吐くレビルに「というかだね」とゴップの方が名指しする。

 

「ワイアット中将を貸してくれないかね? 別に君の手から引き離そうという訳ではない。現地に立つ必要はないんだがね、政府高官を欺き、大企業を相手にする以上、思慮深い人物が必要なのだよ」

「それならゴップ閣下、貴方自身が動かれれば良いでしょう」

「私は目立ち過ぎるのでね、私が動けば一発だよ」

 

 朝方、寝室で盗聴器を発見した。と彼もまた、深い溜息を零す。

 

「派閥の違う君に頼んでいるのも武闘派とされる人物は、政争に興味がないと思っている為だ。まあ単純に人が居ないのもあるがね」

「そこまで警戒するのであれば、正体も隠しておくか。現場に出ないのであれば、名を晒す必要もあるまい」

「任せるよ。モビルスーツの性能も現場の人間が考えた案で良い。必要なのは、AE社に依存しない形でモビルスーツを開発することだからね」

 

 こうしてペイルライダー計画の責任者として、もしかしたらありえたかも知れない配役のバスク大佐を退け、グリーン・ワイアット中将、もとい秘密の高官グレイヴが誕生する。ワイアット中将は案外、ノリノリでグレイヴを演じていた。

 テストパイロットには、民間人より、というよりも徴兵を受けて、モビルスーツパイロットとして破格の能力を示した戦災孤児の女の子が選出される。

 まだ15歳、子供に兵器の開発に携わせるなんて、と思われるかも知れないが、今の地球上に安全な場所もないし、親がいない女の子なんて今の御時世では格好の的だ。出来ることであれば、保護したい、と考えるのが人情。ワイアット中将は清濁を併せ持つ人物であり、つまりは、名よりも実を取った。

 あくまでもテストパイロットで戦場に出す予定はない。という条件の下で、彼女はペイルライダー計画を用いて、保護したのである。

 

 少女の名前は、クロエ・クローチェ。彼女がペイルライダー計画に組み込まれて、最も問題視されたのは、モビルスーツパイロットとしての適性が高過ぎる彼女に合わせてモビルスーツが開発された為、「パイロットが乗る事を想定していない機体」と呼ばれるものが完成してしまったのである。

 連邦のヅダとか言ってはいけない。自壊する所も似てるけど、連邦のヅダとか言ってはいけないとクロエも言っています。

 

 そんな機体を乗り回したメアリー・スー少尉は見事、肋骨の骨を何箇所を折った。三度目の急加速をした時、折れた肋骨が彼女の内臓を傷付けて吐血してしまっていたりする。

 彼女自身、負傷慣れし過ぎて「え、そんなに酷かったの?」と小首を傾げたので、軍医から信じられないものを見る目で見つめられた。また長期休養である。

 

 余談になるが、クロエがメアリーを助ける為に乗ってきた機体は、陸戦型ガンダムである。ペイルライダー計画に参考戦力として受領した機体で今回、それをクロエが盗んだ形になる。

 盗まれた機体には、製造番号2の文字が刻まれていたとか、いないとか。ジオンのテクノロジーは使われていないので、たぶん、気の所為である。

 

 

 時は流れて9月、運命の時が来た。

 サイド7で開発していたV作戦の新型モビルスーツ、ガンダムを狙って赤い彗星と呼ばれるシャア・アズナブル少佐が強襲を仕掛けた。

 結果的にプロトガンダムは大破、サイド7に自ら乗り込んでいたシャア少佐はガンダムの奪取に成功する。同時に重要機密の詰め込まれたホワイトベースはシャア少佐の追跡を振り切って、ルナツーへと逃げ延びる。

 そこには天然パーマの民間人の姿があったとか、なかったとか。

 ガンダムとライトタイプ・ガンキャノンがコンビを組んでシャアと対峙し、任務の達成を優先したシャアは戦域を離脱。その後、追跡の任務を引き継いだコンスコン艦隊が大気圏突入前にホワイトベースを強襲、新旧含めたザク12機が大破し、地球に降下するホワイトベースを見送った。

 

 ガンダム本体を手にした以上、シャアは再びサイド7の地を踏む必要はなくなった。故にシャアは、後に軽キャノンと呼ばれるモビルスーツのパイロットと直接、顔を合わせる事もなかった。

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