NT劇薬娘。   作:にゃあたいぷ。

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16.白は目立ち過ぎる、囮かな?

 宇宙要塞ソロモン、サイド7より最短距離で帰還を果たした赤い彗星ことシャア・アズナブルが率いる部隊は一時の休養を命じられる。

 サイド7で開発されていた連邦の新型兵器は彼の直属の上官であるドズル中将に受け渡されて、シャアは少佐から中佐への昇進を果たす。

 

 連邦の新型機、ガンダムは破格の性能を有していた。

 しかし試作実験機としての役割は既に終えており、ガンダムのデータベースには数ヶ月前から繰り返した実験データの数々が詰め込まれている。簡単な試験を行った結果、公国が抱えるジオニック社とツィマット社よりも詳細で精密な数値が記載されていた事から、此処から先はガンダムで試験をするよりも数値から得た情報を元に新型機の開発を推し進めた方が良いと判断。念の為、簡単な調査を終えた後、格納庫に置いていても、この機体から得られるものはないと判断したドズル中将の独断により、シャア中佐に改めて受領される。

 赤い彗星を意味する識別色に塗り替えた赤色のガンダムを前に、整備士と思しき一人の少女が、真剣な顔でノートパソコンを操作している。

 真剣に仕事をする若人に、シャアは声を掛けるのを躊躇ったが、しかし、彼の響かせる足音に気付いた少女は、シャアを見て、満面の笑顔で駆け寄って来た。

 

「シャア少佐! 光栄です、貴方のような素晴らしいパイロットの整備員になれて!」

「少し逸り気の強い御嬢様のようだ。君が、私のメカニックを務めてくれるという?」

「はい、アルレット・アルマージュ技術少尉と申します! 機関では、落ち零れとして扱われてましたが⋯⋯その、私は、少佐がニュータイプではないかという調査と、ガンダムに連邦の仕掛けた罠がないか常に調べる表向きの任務を得て、此処に来ました」

「⋯⋯これは、随分と正直者のようだ。あと私は先日、少佐から中佐に昇進した」

「あ、す、すみません!」

 

 頭を下げて謝る片三つ編みの少女を前に「気にすることはない」と頭を上げさせる。コロニーに残して来た妹も今頃、彼女ほどの年齢か、いや、もう少し成熟しているかも知れない。

 

「それにしても技術士官とはいえ、少尉か。自分よりも若い者に階級で追い付かれて、ドレンも気を逸らせなければ良いのだが」

「心配ありません」

 

 先に格納庫に来ていたのか、ドレンが赤いガンダムの脇から手を振って姿を現す。

 

「尻を叩かれはしても、功を焦って戦果を落とすような真似はしませんよ。待っていれば、戦果は中佐が持って来てくれるんですからね」

 

 その証拠にほら、と彼は首元の階級章を指先でトントンと叩いてみせる。

 

「俺も中尉に昇進しましたよ」

 

 シャアは、そんな気さくな態度のドレンを見て、笑みを浮かべた後、赤色に塗装されたガンダムを見上げる。

 

「簡単に言えば、ザクの拡張性と信頼性に目を付けた連邦軍が、ザクを機体ベースに連邦の新技術を詰め込んだ機体になります」

「となると、ザクの発展形になるのか?」

 

 アルレットの言葉に、そうとは思えなかったが、とシャアは小首を傾げる。

 

「少佐、いえ、中佐の仰られる通り、新技術に耐え得る性能を保証する為に、原型は、面影を残す程度にまで作り変えています」

「では、新型機か?」

「次世代型、とでも言うべきでしょう。とはいえ、世代をひとつ飛び越えた技術が詰め込まれており、ジオニック社も、ツィマット社も既存の設計図を投げ捨て、てんてこ舞いの状況に追い込まれてます」

 

 そう言いながら彼女は二社の惨状を伝えようと、まるで汽車の真似をする小学生のように、小さく前に倣った姿勢から肘から先を上下に振りながら後退してみせる。早い話、テンテコの舞いである。ある程度まで後退した後、前後を入れ替えて、今度は右手をウェーブさせながらまた後退する。最後は右手をくるり、左手をくるりと両手を掲げて、あれま、あらま、と二度、ポーズを決める。

 

「⋯⋯それは?」

「テンテコの舞いです」

「てんてこのまい?」

「はい、テンテコの舞いです」

「そうか」

 

 シャアは深く言及する事をやめた。とりあえず、周囲に電話線がないかだけ探しておいた。

 

「ところで先程、ニュータイプと言っていたな?」

「⋯⋯言っていません」

「ドレン、こう言ってるが?」

「本国では、キシリア様が胡散臭い研究に投資しているようですよ。その研究の内容が人類の革新、ニュータイプ能力に関する事のようです」

「なるほど、つまり君は私をニュータイプだと?」

「⋯⋯その可能性がある、と博士から聞いています」

 

 必要であれば、夜を一緒にしろとも。と暗い顔をするアルレットの事にシャアは高笑いを上げる。

 

「ハッハッハッ! その博士とやらは、私をロリコンか何かと勘違いしてるのかね」

「ですな! 赤い彗星は、未成年の女性に不義理を働くほど落ちぶれた御人じゃありませんな!!」

「で、ですよね! 私もよく分かりませんし、もしかしたら酷いことされちゃうのかなって心配してました! 軍人ってそういう人が多いって聞きますし!」

「シャア中佐は、仮面を被っちゃいるが紳士な御人ですぜ! もし仮に未成年の相手を惚れたとしても成人するまでは待つ器量をお持ちの方だ」

「ドレン褒め過ぎだ。私だって若いんだ、警戒するに越したことはない」

「手の早さも三倍って事ですかね?」

「ハッハッハッ! よかったな、ドレン。此処が艦橋であれば、降格は免れなかったところだ!」

「ハッハッハッ! 時と場所は弁えてますよ!」

 

 男二人が笑い声を上げる姿を見て、此処でなら私もやっていけるかも、とアルレットは笑みを綻ばせる。

 

「ところで中佐、この後は地球に降りるんですよね?」

「そうだな、ドズル閣下から弟のガルマを助けてやってくれと直々に言われている。木馬の一件もあるが、北米のゲリラも厄介なのだそうだ」

「青い巨星が捕縛したって話ではありませんでしたか?」

「ドレン、あれは偽物だって話だ」

 

 北米ゲリラ、開戦直後から北米方面軍を苦しませている存在であり、公国内でも名が知れ渡っている。

 悪戯妖精の名で知られる彼女には、懸賞金も掛けられており、彼女の捕縛。もしくは撃破は、北米方面軍の悲願とまで言われる程だ。

 シャアの任務は、あくまでも木馬の拿捕だが、しかし、シャアは北米ゲリラの存在も気になっている。

 直感にも似た感覚、これがニュータイプの感覚とでもいうのか。

 

「まさかな」

 

 シャアは失笑し、言葉に踊らされている。と自戒する。

 現状、シャアに迷いはない。他の者に功を譲る前に木馬共々ゲリラを捕らえてみせようと意気を改める。

 ザビ家への復讐には先ず、自分が戦争の英雄になる必要があるのだから。

 

 

 一方で北米、とある秘密のゲリラ拠点。

 ジャブローに帰る素振りも見せないクロエ少尉は、怪我で動けないメアリーの代わりに陸戦型ガンダムを用いて襲撃を繰り返す。公国の妖精部隊と接敵する事も多々あれど「三対一は卑怯だ!」とクロエは悪態を吐き捨てながらも無理せず撤退を繰り返す。

 純粋なパイロットの腕前は、メアリーよりもクロエの方が洗練されていた。

 撤退と囮に専念したクロエを捉える事は北米でも有数の精鋭部隊でも難しく、補給部隊を守れても決定打を与える事が出来ない事に妖精部隊は歯噛みする。

 その間にもメアリーが率いる北米の反ジオン勢力は名乗り上げる度に鎮圧されている。

 

 メアリーの戦果から連邦軍はゲリラ部隊の有用性を認めて、支援するも、メアリーと同等の戦果を出す事は出来ず、存続させる事も難しかった。

 

 連邦軍が有効的な手立てのないまま歯噛みをしている時、宇宙から一隻の強襲揚陸艦が北米に着陸する。

 ホワイトベース部隊、彼の部隊と接触する事が、まだ開発途中のモビルスーツの搬入と一緒に本部より命じられる。

 同時に、公国軍の中でも動きがある。

 木馬を拿捕する為に北米軍を任されるガルマ少将が指揮を執る。前線はラル大佐が担っている為、ガルマは思う存分に指揮を執ることが出来た。

 そしてサイド7で鹵獲した連邦の新型機の解析を終え次第、彼の友人でもある赤い彗星を援軍に寄越すという話を兄のドズルから聞いたガルマは意気を上げて、木馬の拿捕に臨むのである。

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