NT劇薬娘。   作:にゃあたいぷ。

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本日、二度目の投稿。短いけど、切りが良かったので。
感想でのたくさんの意見ありがとうございます。
同じV作戦の機体だし、ジムで生産する予定で進めていた生産ラインをガンキャノンに切り替えるのも容易だったかも知れない。
あと何時も誤字報告ありがとうございます。


24.あの日の屈辱を乗り越えて。

 夜半、太陽が西の地平線に沈んだ闇夜の中、ホワイトベースの白い艦艇が避難の終わったロサンゼルスの街に忍び込んだ。

 戦争は時に、天地人の三つの要素に分けられる事がある。天の時とは、天理による動かしがたい時節、機会。即ち、戦略や謀略など人の手で操作が出来ない天の与えた好機の事を差す。ホワイトベース隊による天の時の不利は、時間制限がある事。今回、ロサンゼルスに待ち構える敵を突破し、太平洋に抜ければ良いという単純な話ではない。ホワイトベース隊がロサンゼルスに入らざる得なかった要因、旧アメリカ合衆国と旧メキシコの境に敷かれた防衛線の一個大隊。その大隊がホワイトベースの背後から圧力を掛けて来るのは明白で、ホワイトベース隊は早期決着が義務付けられている。

 地の利とは、事前準備の事であり、これは語るまでもなく雲泥の差。

 そして最後に残るは人の和で、しかし、これもまたホワイトベース隊が劣っている。というのも機体性能も込みで個々人の戦力で拮抗する事はあってもホワイトベース隊には部隊指揮を執れる者が少ない。戦況を読んで判断を降せる者は、メアリー少尉とブライト士官候補生の二人。対して、公国軍にはガルマ少将の他に青い巨星のランバ・ラル大佐の他、赤い彗星のシャア・アズナブル中佐。そして久方ぶりに現場へ復帰を果たしたキラー・ハーピーことキリー・ギャレット中佐。嘗て、レビル将軍は「ジオンに兵なし」と演説した。

 確かにそうだ、黒い三連星然り、公国軍には戦闘力に秀でていても人を率いる能力を持った者が少ない。

 しかし今、この場において、北米方面軍は人の和を得ている。

 

 ホワイトベース隊が唯一、公国軍に対して優位性を保持しているのは一点限り。公国軍は、ホワイトベース隊の拿捕。降伏を促す事が出来ずとも北米のジャンヌ・ダルクことメアリー・スー少尉の捕獲する為に優先的に動いている。アルマの齎した情報は、秘匿されている為、今回、青い巨星はメアリーの捕獲に動かない。メアリーの動きが今後の戦況を左右する。

 しかし、これが必ずしもホワイトベース隊にとっての優位に働くとは限らない。

 ホワイトベースは一旦、砲火に巻き込まれない為に艦艇を建物の影に隠そうと考える。これは街を不必要に破壊しない為の判断であり、総力戦よりも個の力を重きに置いたモビルスーツ戦を想定した判断。ホワイトベースを拿捕したい公国軍側との思惑にも合致し、互いに利の選択の為に見逃される。

 ホワイトベース隊の隠し場所を発見した時、迅速に部隊を展開する事に加えて、囮の役割も担う為に数機のモビルスーツを先行して投下する判断を下す。

 

 先陣を切るのはメアリー・スー少尉。

 照明を落とした格納庫。今回、カタパルトは使わず、開いたハッチから静まり返った街を眼下に見下ろす。まるで人類が消失したかのような静けさを見て、まるでゾンビパニックが起きた世界の行く末のようだ、と場違いな事を考える。

 これで私の北米での役割も御役御免、この戦いが終わったら一度、ジャブローに帰るんだ。と彼女はトンと暗闇の世界に身を投げる。

 瞬間、メアリーのニュータイプとしての超直感が働いた。

 脳裏を駆け抜ける電流、高層ビルの一角で被されていた夜間迷彩用のシートを放り投げる機影。薄紫色の機体が眩いばかりの高出力のバーニアを吹かし、夜空を掛ける一筋の流星となり、落下するガンダムタイプ、ピクシーにシールド・ピックを突き立てる。

 メアリーは咄嗟に機体を捩り、直撃は避けた。

 しかし、それこそが狙い。ヅダは、ピクシーの機体を抱き締めて縺れるように目標の地点まで落下する。

 

 それを見た陸戦型ガンダムがメアリーを助ける為に周りの許可を取らず、独断でホワイトベースから飛び降りる。

 薄紫色の機影に連れ去られるピクシーを見やり、陸戦型ガンダムのバーニアを吹かす彼女の視線にまたしても夜間迷彩用のシートを放り投げる一機の機影。肩に赤を刻んだ青色の機体、両手にヒートサーベルを握り締める彼の機体はグフ、グフの専用機改修型である。

 隠密行動をしていたはずの彼は、何故か拡声器のオンにし、そして声高に告げる。

 

「我が名は、ニムバス・シュターゼン! 大尉である! 正々堂々とは往かないが戦争中故致し方なし、戦争の作法を以て持て成させて頂く! いざ勝負ッ!! 北米に巣食う片翼の悪戯妖精ッ!!」

 

 舌打ちを零す、クロエの視界の端に更にもう一機、同型のモビルスーツがビルの屋上に姿を現す。

 

「一騎討ちではないぞ。卑怯と罵られるかも知らんが、これも戦争の作法! スポーツとは違うのだよ、スポーツとはッ!!」

 

 青い巨星が巨壁となってクロエの前に立ち塞がる。

 

 

 ホワイトベースが半壊したドームに身を隠す。

 同時に格納庫からガンダムと軽キャノン、そしてガンキャノンにガンタンクが飛び出す。コアブースターは、ホワイトベースの護衛の為、出撃準備の状態で待機。ガンダムのアムロとガンタンクのハヤト、軽キャノンのセイラとガンキャノンのカイがコンビを組んで街中に潜んだモビルスーツ部隊の討伐に乗り出した。

 アムロは、真っ先にメアリーの援護に乗り出した。

 しかしメアリーへ続く道には、二重三重の障壁が立ち塞がる。即ち、相手の行動を二手三手先まで読んでいる男が居る。赤いガンダム、アムロにとっては父の形見に成り得る機体に乗るのは、父の仇同然の赤い彗星が立ち塞がる。

 

「ガンダムかッ!」

「このォ!」

 

 アムロが放った開口一番のビームライフルによる射撃を赤いガンダムは半身になって回避し、そして左手で背中に差したビームサーベルを握り締めて、闇夜でも目立つ白い機体に向かって突撃する。

 

「同型の姉妹機、パイロットの腕の差が全てだと云うのであれば、私に負ける道理などないッ!!」

 

 運命は収束する。宇宙を超える因縁の対決に今、火蓋を切った。

 

 一方、メアリーの救出よりも遊撃に出た方が戦局を優位に運べると考えたセイラの別働隊。彼女の前にもまた行く手を阻む機影が現れる。

 開戦前、ガルマは政治的に他の兄姉達と比較し、見劣りする立場にあった。故に優秀な人材が兄姉に取られる中、ガルマが戦力に加えられたのは何かしらの事情がある者ばかりである。

 出世街道の道を踏み外した者達に残された最後の救済処置、それがガルマ率いる軍隊である。

 

 各拠点から引き抜いたマルコシアス隊、ジオンのMS小隊の単位と同数である三機がセイラ達の前に立ち塞がった。

 では、あと一人、公国軍が誇る優秀なパイロットは何処に配置されたのか?

 

「漸く……漸く、会えたわね……あのザクのパイロットッ!!」

 

 拡声器から発せられる言葉に、標的となったパイロットは苦笑するしかない。

 

「この時を、どれだけ待ち侘びたことかッ!!」

 

 キラー・ハーピーことキリー・ギャレット中佐。

 台パンを乗り越えて戦場に復帰を果たす。

 その私怨混じりの言葉に、彼女の部下達もまた若干引いていた。

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