遊戯王世界で遊戯王するわけないだろ!! 作:アステリアス
異世界転移――それは、フィクションの世界ではよく聞く話だ。
俺の名前は増田。ごく普通の社会人で、趣味はカードゲームと少しのゲーム実況。そんな俺がまさか異世界転移することになるなんて、考えたこともなかった。だが、まさか自分がそんな状況に陥るとは……
目が覚めた時、俺は見知らぬ街のど真ん中に立っていた。近未来的なビル群に囲まれ、空中を駆け巡るモノレールが目に飛び込む。歩く人々は皆、手にカードを持ち、興奮した様子で何かを話している。耳を澄ませば、「デュエル」とか「精霊」という単語が飛び交っていた。
状況を整理するため、俺は街の中をさまよった。あちこちにカードショップやデュエルスタジアムらしき施設があり、それらがこの世界の中心的な存在であることがすぐに分かった。そして、街角で出会った親切な青年から、ここが「カードの力が全てを決める世界」だという話を聞いた。
どうやらこの世界では、デュエルモンスターズが単なるカードゲームではない。カードに宿る精霊たちは実体を持ち、人間と共に生活している。そして、デュエルの実力がそのまま社会的地位や影響力を左右するという、文字通り「カードバトルが全て」の世界だった。
「精霊たちに気に入られることが重要」という話を聞いた時、俺は思わず苦笑した。気に入られるって、どうやって? 俺にはそんな特殊能力なんてない。
転移前はマスターデュエルにどっぷりハマっていた。デッキはウィッチクラフト。ひたすらこのテーマを愛し続け、何度も試行錯誤を繰り返していた。ウィッチクラフトは環境トップの強さではなかったが、それでも彼女たちの独特な魅力に惹かれてやまなかった。そして今、そんなカードの精霊たちが実体化した世界に来てしまうなんて……まさに夢のような、いや、現実の話だ。
そんな俺の前に現れたのが、"ウィッチクラフトマスター・ヴェール"だった。彼女はカードの精霊であり、ウィッチクラフトというテーマの中心人物だ。見た目は可愛らしい少女だが、実際には成熟した知識と技術を持つ頼れる存在だ。
「貴方が私を引き寄せたのね。面白いわ」
そう言って微笑むヴェールに、俺は思わず呆然とした。彼女の言葉によると、カードの精霊は自らの意志で人を選び、パートナーとなることを決めるらしい。そして、ヴェールは俺を選んだと言うのだ。
「貴方がマスターデュエルでウィッチクラフトを愛し続けていたこと、ずっと見ていたわ。その熱意と真摯な気持ちが、私たち精霊に届いていたのよ」
彼女の声はどこか懐かしさを帯びていた。俺があの時、何度もデュエルで負け続けても、それでも彼女たちのカードを信じて使い続けた日々が蘇る。そのたびに少しずつ強くなる実感や、勝利したときの達成感が、今ここで彼女の言葉となって返ってきたような気がした。
「だから、貴方なら信じられるって思ったの。これからも一緒に、楽しい時間を作りましょ」
新しい日常の始まりだ。