遊戯王世界で遊戯王するわけないだろ!! 作:アステリアス
アトリエの扉が静かに開き、冷ややかな空気を纏ったカルテシアが足を踏み入れた。その瞬間、ヴェールが華やかな笑顔を浮かべ、両手を広げて歓迎の声を上げた。
「カルテシア! よく来てくれたわね。あなたが持ってくる素材がなければ、このウィッチクラフトの名声も保てないわ」
その言葉に続けるように、増田もすぐに立ち上がり、普段より丁寧な態度で挨拶をした。前世でのマスターデュエルではカルテシアには頭が上がらないのだ。
「カルテシアさん、今日はわざわざありがとうございます!」
カルテシアは軽く会釈を返し、無言のまま室内に入る。その静かな仕草には、自然と視線を引き付ける気品があった。赤いドレスが歩くたびに揺れ、その鮮やかな色彩がアトリエの柔らかな光に映えて美しく輝く。
「ここにバッグを置いてくれる? みんなでじっくり拝見させてもらうわ」
ヴェールが指し示す椅子の近くにカルテシアは歩み寄り、丁寧にバッグを置いた。ハイネは素早く机を片付け、素材を並べるスペースを確保する。
「こちらに置いていただければ、すぐに確認しますね」
カルテシアはバッグから丁寧に宝石の詰まったケースを取り出し、一つ一つ慎重にテーブルの上に並べていく。その動きは無駄がなく、洗練されていた。増田はその様子をじっと見つめながら、静かに感謝の言葉を口にする。
「前の世界では、本当にカルテシアさんのおかげで助けられました。あなたがいなければ、ウィッチクラフトの皆と頑張れなかったかもしれない……。こうしてまたお願いできるのが本当にうれしいです」
その言葉にカルテシアは一瞬だけ表情を和らげ、わずかに微笑んだ。その笑みはほんの一瞬だったが、増田の心に強く刻まれた。
作業が始まると、アトリエの空気は静寂に包まれた。カルテシアは一言も発さず、持参した宝石を一つずつ丁寧に並べていく。その指先の動きには、職人としての確かな技術と誇りが宿っていた。
「この透明度……驚くほどの品質だね」
シュミッタが感嘆の声を上げると、カルテシアはちらりと視線を向け、無言で頷いた。その仕草だけで、彼女がその評価を喜んでいることが伝わる。
「カルテシアの無口なところも、彼女の魅力のひとつよね。でも、その素材が私たちの作品をさらに引き立ててくれるんだから」
ヴェールが優雅に微笑みながら言葉を添えると、アトリエのメンバーたちは深く頷いた。
一方で、ポトリーとピットレは作業台の端でカルテシアを観察していた。
「ねえ、あの人、全然しゃべらないけど、本当にすごいよね」
「うん、でもちょっと怖い感じもあるよね。あの目でじっと見られると、なんかドキッとしちゃう」
二人がひそひそ声で話していると、カルテシアが作業の手を止め、二人をじっと見つめた。その鋭い視線に、ポトリーとピットレは思わず背筋を伸ばす。
「ご、ごめんなさい!」
焦った声を上げる二人を見て、カルテシアの表情がわずかに和らぐ。そして、彼女は再び素材を並べる作業に戻った。
やがて、カルテシアが持ち込んだ素材がテーブルに全て揃った。そのどれもが高品質で、光を受けて美しく輝き、アトリエ全体を明るく照らしているかのようだった。
「すごい……カルテシアさん、本当に素晴らしい」
増田が心から感嘆の声を漏らすと、カルテシアは小さな微笑みを浮かべた。その笑みは儚くも心に残るもので、アトリエの空気が一層温かく感じられた。
「これだけの素材があれば、良い作品がまた作れるわね」
ヴェールが満足げに頷きながら言葉を添えた。カルテシアは静かに頷き、無言で席を立つ。そして、去り際に軽く手を振り、アトリエを後にした。
彼女の背中を見送りながら、増田は静かに呟いた。
「また頼むかもしれません。そのときもよろしくお願いします、カルテシアさん」
こうして、カルテシアとの仕事は滞りなく終わり、アトリエには再び和やかな日常が戻った。
書いてて満足してきたので、次の話ぐらいで完結にしようと思います。