遊戯王世界で遊戯王するわけないだろ!! 作:アステリアス
異世界に飛ばされた俺、増田。
この奇妙な世界での生活が始まった。ここは遊戯王の世界だけど、実際のところカードゲームだけが全てじゃない。
はっきり言おう! 精霊達がいるのに、遊戯王をするのはもったいない!!! 何で遊戯王なんてクソゲーをしなければいけないんだ……! インチキ効果もいい加減にしろ!
「マスター、今日は何をして遊ぶの?」
ヴェールが俺に問いかけながら、小さな手で髪を整えていた。その仕草には幼さと愛嬌があった。
「今日はベイブレードで遊ぼうかと思ってる。ほら、これ」
俺は手に持っていた愛機“ビクトリーウイナー”を見せた。回転力と安定性が自慢のカスタマイズ済みベイだ。
「ベイブレードねぇ。いいわ、私が相手になるわよ!」
ヴェールの瞳が輝き、彼女はどこからともなく自分のベイを取り出した。それは彼女が自分で作ったという“アルルスペシャル”。聞いた話では、ゴーレムアルルと一緒に開発した特注品らしい。
「なんだそのカスタマイズはぁ? 俺のビクトリーウイナーに勝てるかな? いくぞ!」
俺はスタジアムにビクトリーウイナーをセットし、気合を込めてシュートの準備をした。ヴェールも負けじとスタジアムの反対側で構え、指先でベイを軽く弾きながら得意げに微笑んでいる。
「さあ、マスター。私を楽しませてくれるのかしら?」
「お前こそ、覚悟してろよ! その余裕を吹き飛ばしてやる!」
俺の宣戦布告にヴェールは鼻で笑いながら、手元の"アルルスペシャル"をスタジアムで準備。小さな舌を出して挑発してくるその様子に、俺の闘志はさらに燃え上がった。
「ゴーシュート!」
俺たちは同時にベイを放った。ビクトリーウイナーは鋭い回転でスタジアムを駆け巡り、相手のベイに攻撃を仕掛ける。だが、アルルスペシャルはその攻撃を悠然と受け流し、バランスを崩さない。
「ちょっと待て、ヴェール。なんでこんなに強いんだよ!」
俺が驚きの声を上げると、ヴェールは得意げに笑った。
「だって私はウィッチクラフトのマスターよ? 工作技術も魔法の腕も一流なんだから、こんなの簡単よ」
「ずるいだろ、それ。普通のベイじゃ勝てるわけないじゃん!」
「ふふ、それならもっと改良してきなさいよ。ほら、見て、これが私のアルルスペシャルの特徴よ」
ヴェールはアルルスペシャルを手に取り、その構造や改良点を解説し始めた。その内容は驚くほど緻密で、素人が真似できるような代物じゃなかった。
「なんだよ、それ……完全にプロの仕事じゃん」
俺が呆れていると、ヴェールは突然手を叩いて笑い出した。
「じゃあ次は、私のルールでやってみましょう。ハンデをあげるわ!」
「本当か? それなら勝てるかもしれない!」
ハンデというのは、ヴェールが目隠しをしてシュートするというものだった。その目隠し姿が妙に可愛らしく、俺はつい口元が緩む。
「おいおい、目隠しして本当にできるのか? 無理しなくてもいいぞ?」
「マスター、私を誰だと思っているの? 」
目隠しの布が彼女の小さな顔にぴったりと巻かれ、その隙間から覗く自信満々の表情がなんとも愛らしい。俺は思わず「あぁ、ずるい」と心の中で呟いた。だが、いざ始まってみると――。
「ゴーシュート!」
ヴェールが放ったアルルスペシャルは、目隠しをしているにも関わらず、恐ろしい精度でビクトリーウイナーを弾き飛ばした。
「ぐはっ! また負けた!」
俺は頭を抱えてスタジアムに座り込む。ヴェールは目隠しを外しながら、得意げに胸を張った。
「どう? ハンデをあげても私が勝っちゃうのよ。マスターって本当に弱っちいわね!」
「これ、全然ハンデになってないだろ……!」
ヴェールは小さな舌を出して、にやりと笑う。その表情が完全に挑発していて、俺の心の奥底に火が付いた。このメスガキがよぉ……!
「くそっ、次こそは絶対に勝ってやる! 目隠ししてるくせに生意気だぞ!」
「ふふん、マスターがどれだけ頑張っても、この私には敵わないのよ!」
ヴェールが勝ち誇った顔で胸を張る。その仕草がさらに俺のプライドを刺激してくる。
「おいおい、目隠ししてるのにそこまで偉そうにするのか? 今度は本気だ!」
俺が勢いよくベイをセットし直すと、ヴェールは余裕たっぷりに腕を組み、目隠しの下で微笑む気配を漂わせた。
「ふふん、マスターがどれだけ頑張っても、私に勝つなんて100年早いのよ!」
彼女の挑発に乗せられた俺は、無謀な挑戦を続けたが、結果はやはり変わらなかった。負けるたびにヴェールはさらに得意げになり、そのたびに俺は地面を叩いて悔しがった。
その後も挑戦を続けるものの、何度挑んでも結果は同じだった。負けるたびにヴェールはますます得意げな顔をする。
「もうだめだ、俺のプライドが……」
「ふふ、マスターのそういうところも可愛いわね」
彼女は笑いながら俺の肩を叩いた後、優しく髪を撫でてきた。その仕草に、思わず俺はぽかんとしてしまう。
「ほら、そんなに落ち込まないの。次はもっと強いビクトリーウイナーを一緒に作りましょうね。私が手伝ってあげるわ」
その声はまるで母親のように優しく、さっきまでの生意気な態度とはまるで違う。俺は思わず頷きながら、「ずるいよ、そのギャップ」と心の中で呟いた。
ヴェールとの距離が近づき、ふわりと心地よい香りが漂う。「あっ、髪の香りが……」と思わず呟いてしまい、深呼吸するように吸い込んでしまう。
「癒される……、これがヴェール成分か……」
しかしその瞬間、ヴェールがニヤリと悪戯っぽく笑い、「ねえマスター、感動してるところ悪いけど、髪の毛の香りをかぐのはちょっと変じゃない?」と突っ込んできた。
「えっ!? いやいや、そういうつもりじゃなくて……!」
慌てて弁解する俺を見て、ヴェールは楽しそうにケラケラ笑う。俺は完全に彼女の手のひらの上だ。
ウィッチクラフト達の日常は始まったばかりだ!