Ange Vierge 青蘭に咲く乙女たち   作:楠富 つかさ

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第一話 少女達の朝

「お姉ちゃん、起きた?」

「おはよう、千尋」

ベッドから下りてカーテンを開ける。青蘭島は本日も快晴なりってね。太平洋上に浮かぶ青蘭島は東京都に属する島で、私や妹のように「異能」に目覚めた10代の少女たちを育成する教育機関、青蘭学園を有する。

「今日から学校なんだから、しっかりしてよね」

私より数段しっかりした妹と一緒に「異能」に目覚めたのは数ヶ月前、突如世界が連結してから暫らく経った後だったと思う。そしてこの青蘭島は世界を繋ぐ“門”の真下にある。三月の下旬に島に上陸し、とうとう入学式の日が訪れた。

「寮のご飯が美味しいから、この数週間でちょっと太ったかも」

「確かに美味しいけど、制服がきつくならないように抑えてよね」

「分かってるって」

本当にちょっとだけなんだから、そんなこと言わなくてもいいのに。そう思いながら制服へと着替える。太平洋に浮かぶ島というと小笠原諸島のように暖かいイメージがあるが、ここは北緯32度くらいなので本土と季候はさほど変わらない。春先はまだ冷えるので、着用するのは冬服だ。黒のジャケットには白いライン、プリーツスカートには青いラインがあってお洒落だ。首元を彩る青いリボンも可愛い。中学に入学する妹も同じ制服だ。うん、私の妹だけあって可愛い女の子だ。綺麗な黒髪をショートに切りそろえ、金色のヘアピンで留めている。一房だけ激しい自己主張をするアホ毛も特徴だ。

「じゃあ食堂行くよ」

そう言って妹と一緒に部屋を出る。オートロックで開錠にカードキーを使うという、安心安全なセキュリティを近代的なドアの右上に掲げられたネームプレート。北条千歳と北条千尋、本来なら高校生が一人部屋、中学生が二人部屋となるが、融通を利かせてもらい妹と暮らしている。取り敢えず今は食堂へと向かう。

「おはようなのです」

出迎えてくれたのは天井苺先輩。小学生のような見た目ながら、高校一年の課程を修め青蘭学園高等部二年へ編入してきた人だ。本土の高校でも料理部に所属していた彼女が寮母のいないこの寮での料理を一手に引き受けてくれている。彼女の料理が美味しいから苦手だった早起きも、ある程度克服できた。ただし、千尋が起こしてくれないと起きないけどね。

「おはようございます、天井先輩」

「おはようございます」

天井先輩と一応呼んでいるものの、やっぱり苺ちゃんで呼びたくなるこの可愛さ。でも子供扱いされると嫌がるので我慢する。

「今日は赤の世界の方からもらった食材を料理してみたなの。とっても美味しいの!」

お盆に載った白いご飯と何かの煮物。この何かが赤の世界の食材なのだろう。それじゃ、

「「いただきます」」

きちんと手を合わせて食べ始める。さっそく何かの煮物に箸を伸ばし、ご飯と一緒に口へ運ぶ。

「???」

「なんだろう、美味しい!」

肉か魚か、はたまた実や果実なのかも分からない。でも美味しい。甘しょっぱい味付けと相性が抜群でコクがある。ご飯が進む煮物と少し薄口の味噌汁。今日も幸せ。そんな感じであっという間に食べ終わり

「「ごちそうさま」」

「お粗末様なの」

「先輩はまだ学校に行かないんですか?」

「ふふ、お寝坊さんたちを起こして朝ごはんを食べさせて、洗いものもしてから学校なの。学園側も知っているから、遅刻扱いにはならないの」

お母さんだ……寮母の時点で思ったけど、お母さんがここにいる。

「大変ですよね。寝坊する人を起こすのって」

千尋が私を見ているが、気にしない。気にしないったら、気にしない。少し広い寮の食堂から少しずつ人が減りつつある。そろそろ登校の時間だ。食堂は玄関に程近いので、ちらほらと学校へ向かうであろう制服姿の女の子たちが見える。刀の入っていそうな袋を肩に掛けた人や、弓っぽい何かを持っている人、綺麗な金髪の女の子。

「私たちも行こうか」

「そうだね、お姉ちゃん。それじゃ天井先輩」

「「行ってきます!」」

「行ってらっしゃいなの」

「異能」に目覚めた少女達、その一人としての私、きっとこれから多くの出逢いと発見があって、楽しい日々になる。私の「異能」とは全く関係ないけれど、そんな確信めいた予想が私には見える。さぁ行こう、青蘭学園へと。




ガールズラブは嫌だけど日常系アンジュが読みたい方はメッセください。
主人公をαドライバーに切り替えたバージョンをお届けしますので。
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