Ange Vierge 青蘭に咲く乙女たち 作:楠富 つかさ
通学路は基本的に坂と階段である。理由は単純、青蘭学園がこの島の一番高い位置にあるからだ。その分、振り向いた時の景色はすばらしいものである。その景色ともう一つの特徴。
「異世界人がひしめく通学路、ね」
箒に跨る魔女や空飛ぶアンドロイド、赤の世界の住人は比較的常識的な通学をしているようだが、他は違う。一部、重力を操ることの出来る青のプログレスが空を飛んでいるものの、私たちとは違う通学形態である。その分、道路に目立った混雑もなく、着実に階段を昇っている。
「脚に負担がなくていいよねぇ」
「ま、じきに慣れると思うよ」
階段にも、空飛ぶ異世界人にもね。ちなみに、私の持つ「異能」は光を操るものだ。学校での検査で判明したことだが、頑張れば光の矢とか剣を生み出せるらしい。千尋も似た力だが、千尋はサポート系らしく、αドライバーによっては超強力なプログレスとして開花するかもしれないらしい。正に輝く可能性(プログレス)というわけだ。まぁ、私は比較的凡人らしいが。
「やっと着いたね。じゃあ、中等部はあっちだから、迷わず入学式に行ってよね!」
「私が迷子になる前提をやめてよ!?」
正門を抜けて妹と別れ高等部の体育館へと向かう。「異能」の検査をした時に体育館の場所と所属するクラスだけ知らされているのだ。迷う訳がないじゃないか。そう思いながら体育館へと向かうと……。
「あら? ねぇ貴女、どこへ向かうの?」
植えられた木の木陰に佇む女性、暁の空より少し桃色がかった髪色をしたグラマラスな人物。穏やかな表情と優しそうな翠色の瞳、言い表すのなら女神といった姿だ。柔らかなアルトボイスもその印象に拍車を掛ける。ただ、
「えっと、青蘭学園の入学式に向かうんですよ? あなたもプログレスなんですよね?」
「あ、そうでしたね。お花と会話をしていたら、すっかり忘れてしまいました」
すごくメルヘンな感じの人だ……。
「あ、アウロラ。こんな所に……。あまり私に迷惑をかけないでくださいよぉ」
「ごめんね、フローリア。今行くから。ありがとう、貴女の名前は?」
どうやら目の前の女神様はアウロラというらしい。にしても、彼女を呼んだ声の主がどこにいるのか分からない。
「えっと、北条千歳といいます。あの、フローリアさんって?」
「あ、初めまして。よっと!」
ふわりと私の肩に留まった小さな妖精さん。どうやら彼女がフローリアというらしい。
「この方が楽かな?」
フローリアはそういうと私から少し離れた位置に人間大の大きさで現れた。
「私たち妖精は人間との関わりを大切にする種族、魔法の知識があれば自身の身体を5倍くらいの大きさにすることができるの」
「そうなの、大きいフローリアと一緒だと私、迷子にならない」
「もう、これって意外と疲労感を伴うんですよ?」
どうやらアウロラが迷子になって、フローリアが探していたようだ。なんだか、フローリアがお姉さんみたい。
「まったく、その記憶力をなんとかしてくださいよ? それに、昔のことも思い出しませんか?」
「え? アウロラって記憶喪失なの?」
アウロラとフローリアの会話を聞いて驚いてしまった。この浮世離れした女神様にはどうやら記憶がないらしい。
「ここからは歩きながら説明しましょうか、行きましょう。千歳さん、アウロラ」
「あ、千歳でいいよ?」
「では、私のこともフロウとお呼びください。愛称です」
「よろしくね、フロウ。あれ、アウロラはそう呼ばないの?」
「フローリアって響きがお花っぽくて好きなの」
そんなやり取りをしながら彼女達の出逢いを聞いた。世界接続(ワールドコネクト)と呼ばれるあの事件から少しした頃、花畑にアウロラはいたらしい。それを見つけたフロウが仲良くなって、二人揃って青蘭学園に入学することにしたらしい。フロウ曰く、アウロラには学ぶべきことが多いから、だそうだ。お互いのクラスを確認すると三人揃って二組だった。取り敢えず、入学式を前に友達が出来て嬉しい。さてと、他にはどんな人がクラスにいるんだろう。楽しみは尽きない。
書き忘れましたが、千歳の容姿は《絶対進化の切り札たち》に収録されている《はじまりの少女》です。大まかな特徴は茶色っぽいロングストレートにブルースターを模した小さなヘアピン。そして巨乳です。取り敢えず可愛い。
カードの実物かシンフォニアブックを持っていないと分かりませんね。千尋はスマホゲームでの主人公の妹を流用しています。ただし、作者はガラケーユーザーなのでシンフォニアブックにあった絵から描写しました。
早く美海や沙織に出番をあげたい。いや、アウロラとフローリアを出すつもりは書くまでなかったんですよ。ただ場面にしっくりきたから指が勝手に。ちなみに、フロウはフローレンスさんの愛称です。ま、フローリアでも同じだろうと思いまして。長くなってしまいましたね。ではまた。