駄文です
むずいです
幼児のころというのはあっという間に過ぎ去るもので、気が付けば5歳の誕生日を迎えていた。背は随分と伸び、割と自由に体を動くことができるようになった、と感じる。水鏡をのぞくと,黒色の狐耳と尻尾が上へと元気にはね,灰色の髪は顎の下あたりまで伸びており,小さい物だけではあるが,手でしっかりとつかむことができる.最近では,部屋の中にある本などを積み上げて遊んでいた.体に精神が引っ張られる感じが強いが,これは仕方のないことだろう.
そして今日は初めての外出の日だ.一週間ほど前から今日という日をずっと待ちわびていた.
母親が言うには,この村では5歳を迎えると訪れなければならない場所があるらしい.詳しい話は聞かせてもらうことができなかったが,着いたら説明すると言っていた.
「多那,そろそろ行くよ~!」
机の上に置かれた肩にかけるかたちの鞄を持って戸のほうへと走る.
今世初のイベントに心を躍らせながら,母親の後をついて行った.
森の中をしばらく進むと木でできた大きな家があった.その家は古びており,シミなどの残った壁の様子から何年もたっていることがわかる.しかし,致命的な傷は何一つなく,確かに人の手入れが入っている様子を感じ取ることができた.
あたりを見渡すと,俺と同じように連れられてきたと思われる子供がそれなりにいて.それぞれの親は家の少し離れた位置から子供を見ていた.まるで,これからなにか悪いことが起こるかのような反応に,かなり不安になってしまう.ほかの子たちも同様で,不安げにあたりを見渡す子,泣き始めてしまう子など,怯えている様子のが多く見える.
しばらく待っていると,扉がゆっくりと開き,中から老人が出てきた.
「ふむ,ちゃんとそろっているね....さぁ,中に入っておいで」
疑問に思う暇もなく中に追いやられるようにして,室内へと押し込まれる.中に入ってすぐの正面,そこには神々しいとも禍々しいともとれる1つの像が鎮座していた.窓ガラスから入る光がチラチラと揺らめいている.
「ここに祀られているのは,かつてこの地を切り開いたとされるニナ様です.」
室内の照明がつき像がはっきりと見えた.尻尾や狐耳のない少女と思われる存在が地へ縫い留められている,その様相を象っているように感じられる.
「彼女がなぜここで祀られているのか,それはこの地を切り開き,魔の者が近寄れないようにしてくださったからです.彼女が何者であったかは伝わっていません」
「しかしその御恩を忘れないために,こうして残されているのです」
言い終わるや否や,その老人は目を閉じ,手を合わせた.
俺からしたら謎でしかない人物のニナ.それでも,このように森を拓き村を敷いたのは間違いなく偉業だろう.周りの子はみんな一様に,老人の真似をして像を拝んでいる.俺もそれに倣って,目を閉じ手を合わせた.
しばらくして,老人がおもむろに話し始めた.
「これから君たちは月が7回上るたびに,この場所へ来てもらいます.いろいろと覚えてもらわなければならないことがありますからね.しばらくここで,くつろいでいてください」
そう言った後に老人は扉から出て行ってしまう.てっきり,村の習わしのような感じで毎度お祈りをするのかと思ったのだが違ったようだ.ふと,となりに座っていた子から声がかけられる.
「ねね,君はあのニナ様っていうのどういう風に見えた?なんかきれい!あ,私はナルっていうんだ!」
その子は勝気な紅の瞳に天真爛漫さが固まったような印象を受ける,声からして元気いっぱいというのが似合うような子だった.あの像がどう見えたかなんて,そんなのは迷うこともない.畏怖,という言葉がふさわしいだろう.
「俺は多那だよ。俺は畏怖をかんじたな..心が冷えるような感じ?」
「いふ..?すごい言葉使うんだね!」
ナルにとっては難解だったのか,わかんない,という様子でボケっとしている.あまり難しい言葉を使わない方がよさそうだ.
「あのね、聞いて!私、騎士様が好きなの!」
ナルは膝立ちになって、ずいっと顔を寄せてきた。近い。
「絵本でね、いっつもかっこよくて、とっても強いの!」
騎士。全身鎧に直剣、守護の象徴——と、前世の知識が勝手に絵を出してくるが、この世界の騎士が同じとは限らない。
「騎士様って、なにするひとなの?」
「えっとね、王国ってところにいて、わるものをやっつけて、みんなを助けるんだって!」
「ナルは見たことあるの?」
「ないよ?」
ないのか。即答だった。
「でも絵本で見たもん。剣もってて、鎧きてて、きらきらしてるの。ナルもね、おっきくなったら騎士様になるんだ!」
そう言って、ナルは何も持っていないが、剣を持っているような感じでびしっと像に向けて構えた。様になっているかは、まあ、置いておくとして。
「わかんない!でもなる!」
迷いゼロである。女の子でも騎士になれるのか、という疑問が頭をかすめたが、この様子だと聞いても「なる!」しか返ってこないだろう。眩しいやつだ。
それから俺とナルは老人が帰ってくるまで様々なことを話した.どんなことがしたいのか,嫌いなもの,互いの家についてのことを話して,少しは仲良くなれたと思う.
「それでは,みなさんお疲れさまでした.こちらのドアから出てくださいね」
老人の言葉に従って外に出ると,すでに暗くなっており,月があたりを照らしていた.ナルと話していと,俺の母親がこちらへ駆け寄ってくる.
「多那,大丈夫だった?楽しくやっていけそう?私,心配で心配で...」
「俺は大丈夫だったよ!この子,友達だよ」
そういい,隣にいるナルを俺の前に手でおして出す.ナルは見るものを和ませるような明るい笑顔を浮かべて,元気に挨拶をした.
「こんばんは!タナちゃんのお母さんですか?」
「ええ,そうよ.この子の友達になってくれたんだって?この子,突拍子もないことをするときがあるけど仲良くしてあげてね」
「ちょ,やめてよママ!」
とんでもないことを言ってくれた.俺はそんなことをしているつもりはないが,そう受け取られていたとは.まことに遺憾である.しばらくすると,ナルは迎えが来て,こちら側に大きく手を振りながら森の道へと消えていった.周りの子や大人がだいぶ減ってきた中で,俺と母さんも帰路につく.
夜の森は静かで,落ち着く雰囲気を漂わせている.たまに獣の鳴き声がするのは怖いが.ゆっくりと歩く中,母さんがぽつりとつぶやく.
「ねぇ,多那.まだまだ教えられいないこと,たくさんあるからそれまで待っててね」
そう話す母さんの顔は,闇夜に紛れてよく見えなかったけれど,そこに宿るものは冷たいものではなく暖かさに満ちていた.
独自の架空言語的な表現って使っていいんですかね..?
あ,次回の更新は未定です