お嬢様転生in宇宙世紀   作:加藤=アールパード・清正12世

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プロローグ:UC0064~UC0078年 戦前
一話 転生! お嬢様


「宇宙世紀転生ですわーっ! おーっほっほっほっほっー!」

 まぁサイド3生まれなんですけどね。将来が詰みである。かといって地球生まれでコロニー落としから逃げろとか言われても困るが。

 

 わたくしエウティミア・クルル! 5歳! 女の子! 転生者です!

 クルル家はサイド3ムンゾ、ズム・シティの名門である。名門といっても宇宙移民第一世代に活躍したご先祖から半世紀程度の成り上がりなんですけどね。コロニーにほんまもんの名門家系なんていません。

 父親は二世議員の政治家。母親は財界の偉いさんとこの娘。家はまぁまぁ大きいですよ。庭広いし、メイドさんいるし。土地の限られたコロニー社会でデカい庭持ってるってのはすげーのです。

 

 時はユニバーサル・センチュリー64年。ちょうど15年後にかの一年戦争が始まる目算である。そんときわたくし20歳! わぁ何もできる気がしねぇ!

 いや転生したからにはやる気満々よ? 宇宙世紀の歴史に介入は絶対しますけど、やるなら年齢的にモビルスーツ乗りになるしかねぇ……軍人さんルートしかないのか、はわわ。てかこれ士官学校行ったらシャアとガルマの同期やないかい。

 どうしたもんかねぇ。一年戦争前のジオンならMS開発加速とか内政チートに励んでみたいけど。いま私5歳だし! 政治家の父がいるからって流石に無理があるんよ。やれることがなにもない!

 

「暇ですわーっ! おーほっほっほっほっー!」

 高笑い、楽しいです。

 

 ◆

 

 わたくしは父上に連れられて政治家たちの懇親会に出席していた。正直欠席してもよかったんだけど、こういう社交界だと原作キャラに会えそうじゃん? コネ作りよコネ作り。懇親会とはコネ作りのためにあるのです。

 今日のパーティーはズムシティ議会与党が主催する大規模なもので、ジオン・ズム・ダイクン寄りの政治家とその関係者がわんやわんや集まっている。右を見れば選挙対策会委員長のマハラジャ・カーン、左を見れば宇宙港警備部部長コンスコンといった具合で、見知った有力者たちが随分見受けられた。

 ジオン・ズム・ダイクン本人はこういう俗っぽいパーティーに出てこないから、この場で一番格が高いのはザビ家とラル家かな。デギンさんは老齢のために外出を控えてらっしゃるそうなので、当主代理のギレンがラル家当主のジンバ・ラルと挨拶してた。原作知ってる身からすると絵面が面白すぎんよ。まだ若いギレンがぺこぺこ挨拶しとる。ウケる。

 わたくしもお父様にひっついていろんな政治家とぺこぺこ挨拶した。こういう時に顔と名前を覚えてもらうのが政界では重要なのだ。

 

 挨拶回りの途中、ガルマくんを見つけてしまった。これは唾つけねばなるまいてと軽快なステップで近づいていく。

「ガルマさまにおかれましてはごきげん麗しゅう。わたくし、クルル家のエウティミア・クルルと申しますわ」

 スカートをつまみ上げて恭しくご挨拶。

 ところでわたくしって転生オリ主だから(?)割とぶっ飛んだ容姿してるんですよね。銀色の髪にオッドアイとなかなか厨設定でございますわよ。いや宇宙世紀ならそこまで珍しくもないか? 顔もそれなりに整っているので、坊やなザビ家の四男をたぶらかすぐらいわけねぇですわ。ここでガルマを口説き落としてザビ家へのコネをゲットだぜですわ。おーほっほっほっほっ。

 そんなふうにガルマと談笑していると、一人会話に混じってくる男の子がいた。

「やぁ、ボクもお話に混ぜてくれないかな。同年代がいなくて、肩身が狭くてね」

 あぁん? こちとらガルマ様口説くのに忙しいんじゃい! と思って男の子を見るとその髪色は金髪で、青い瞳の――

「え!? きゃ、キャスバル・レム・ダイクンさま!? ……失礼しましたわ。ダイクン家の方がいらっしゃるとは……」

 わたくしびっくり。ジオンさんは欠席してたけど側室のアストライアとそのお子さんは参加してたらしい。知っての通りキャスバルとはのちにシャア・アズナブルと名乗ることになる赤いヤツである。

 てかガルマとシャアとわたくし(オリ主枠)揃っちゃったけどなにこれ? 桃園の誓い始まるの? 我々5歳ぞ? なんなら生まれた年同じぞ? 我ら生まれた日は違えど生まれた年は同じなりbyエウティミア・クルル。

「そう畏まらないでくれ。子供同士なんだからさ」

 なんか5歳のくせに落ち着いてんなこの男。やっぱ将来隕石落としする男は子供の頃から違うのか?

 それから適当にべらべら談笑して二人とは仲良くなった。ちょうど歳も同じだし、社交会とかなくても時たま会うくらいの関係になりましたよ。お茶会とか言っておうちにお呼ばれしてね。ダイクン家ザビ家に比べてわたくしのクルル家は明らかに家格が下なんだけどね。わたくし自身が銀髪オッドアイ美少女で只者ではないオーラ出してたから許された感はある。厨設定オリ主容姿バンザイ。

 ていうかこれ、ガルマとキャスバルの関係取り持っちゃったのかなぁ。わたくしってば早速原作ブレイク?

 

 それからまた、なんでもない茶会で二人と顔を合わせたときのこと。

「ねぇガルマさま、キャスバルさま。わたくしたちはこのサイド3の次代を担う新世代ですわよね。ではお二人は将来はどのような道を歩まれるおつもりですか?」

 わたくしは目を細めてなんとなしに問うてみた。

 キャスバルは率直に「僕は父上の後を継ぐよ。ダイクンの子として」と述べたが、ガルマは口をもにょもにょしてハッキリしない。まだ5歳だからなぁ。キャスバルみたいに芯が出来上がってる方がおかしいよ。え? わたくしの将来の夢がなにか、ですかガルマさま? それはもちろん――

「わたくしの夢は軍人さんでしてよーッ! 遠からずムンゾにもズム・シティを中心とした正式な宇宙軍が設立されるでしょうからね! 今から士官を目指せばエリートキャリア積み放題ですわー! おーっほっほっほっほっほっー!」

 現実的に出世するなら軍政畑の高級将校ルートで、退役後は父親の後援と軍のOGで政治家コースかな? あとはMSのパイロットコース。まぁ一年戦争とかいう敗北確定イベントでキャリアもぐっちゃぐちゃになるんですけどね。はぁ。

「軍人、かぁ。僕もザビ家の男としてそんな風になれたらいいなぁ……」

 やめとけよ坊やなんだからと忠告したい気持ちは胸にしまっておくことにした。だってガルマと肩並べて士官学校行きたいもんね。おほほほ。

 

 ◆

 

 歴史は中央集権と地方軍閥の勃興を繰り返す傾向にあると言われる。室町幕府が衰退して始まった戦国時代から、徳川政権は生まれた。イギリスの植民地から独立してアメリカ合衆国は成立した。

 中央と地方の戦いは歴史上なんども繰り返されてきたことで、連邦政府とコロニーの関係もまた歴史の繰り返しなのである……なーんて考えてみたり。原作知識の通りなら、一年戦争後の連邦政府も衰退していって宇宙戦国時代が始まるわけだしね。

 

 さて、ジオンと連邦どっちが悪だの正義だのなんていうガンダム大好きおじさんたちのしょうもない議論には前世ではわたくし自身も参加して熱くなったけど、それは他人事の論理なのだと今ではわかる。切実で重要なのは、どちらが正義かではない。自分がどちらについているかだ。

 自分が今暮らしてるコロニーが搾取されるのは嫌だ。でも今のわたくし自身はコロニー社会でも上流階級に生まれていい暮らしができている。

 打って変わって、コロニー落としなんて何億人も殺す所業はよろしくないとは思う。でもわたくしの関係ないところで何億人何十億人死んでようが正直どうでもいい。わたくしが幸せならそれでいい。感性がオールドタイプ的なもんでね、人の痛みとかわからんわ。

 ……責任逃れの論理であることは自覚している。本当に必要なのは――良識ある市民として本当に見つけなくてはいけないのは、戦争やコロニー落しなんてのを止めながら、しかもスペースノイドの権利を地球連邦から勝ち取るウルトラC。山積した社会問題を解決する銀の弾丸だ。だが目下、わたくしの手元にはなにもない。シャア・アズナブルやアムロ・レイだって結局はなにも止められなかったのだ。ならば、しかし、けれども……それでも――。

 転生者として宇宙世紀に生まれてしまったことを考えると、そんな撞着が頭の中を時折ぐるんぐるん駆け巡るのだ。そんでもって、わたくしの中の葛藤をよそめにいずれ戦争は起こるのだ。そのとき、わたくしはジオン側に立たざるを得ない。生まれ育った地はしがらみのようにわたくしを縛っている。

 これも仕組みの深さってやつの一部かしら? ため息が出るね。

 

 畢竟、わたくしは政治的信念や指標となるイデオロギーを持っていない。だがノンポリというわけでもないのは言うまでもない。

 なんかこれシャアみたいだな。宇宙世紀の普遍的理性、あるいは単なる政局の時勢によって舞台に吊り上げられた大根役者の一人。自分という操り人形をルビコン川の向こうに放り投げたらどうなるのか、ちょっとわくわくしてきました。本当にため息出るわぁ……。

 

 ◆

 

 ま、難しいことはさておき、私は自室のベットの上でうにゃうにゃ唸りながら瞑想していた。自分のニュータイプ能力を覚醒させられないかという実験である。

 これがなんとなしにうまくいった気がした。

 目を閉じて、精神を落ち着かせる。意識を部屋中に拡散させる。不思議な感覚が私を包んでいた。目を閉じているのに、周りの家具がどこにあるのかわかる。隣の部屋でせわしなく掃除をするメイドの輪郭が透けて見える。

 あー、これわたくし普通にNTの才能ありますわね。確信めいたものがあった。

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