お嬢様転生in宇宙世紀   作:加藤=アールパード・清正12世

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オリジンの設定をちょちょいのちょいしてるので、ガンタンクがすでに開発済みだったりオリジンキャラが出たりします。


二話 せいじはたのしいね

 自分のニュータイプ能力の検証として透視、数秒後の未来予知なんかができると分かったわたくしは数日間それに熱中していたが、すぐに飽きた。

 未来が読めるったって結局はただの超能力みたいなもんだ。今すぐこの力を使って暴れたろうや!とはいかない。ガンダムなんかコロニーレーザー防いだりするんだぜ? それに比べて生身の肉体で出来るのなんてスプーン曲げ(物理)くらいか。

 そんなことよりコネ作りだ。超能力で遊ぶことはいつでもできるがコネ作りってのはいつでもできるわけじゃない。その時々で会いやすい人間、会いにくい人間ってのがいる。

 例えばギレン・ザビ。一年戦争が始まった原作の時間軸では彼はジオン公国の総帥になるわけで早々簡単にはあえなくなるだろうが、今の彼はそうではない。ユニバーサルセンチュリー64年における彼は弱冠20歳、その役職はズム・シティの高名な議員であるデギン・ザビの政治秘書の一人であり、ザビ家のお屋敷内ではちょっと気の強いお兄ちゃんというだけだ。

 つまり、ガルマとの伝手を辿れば簡単にギレンにご挨拶申し上げられる。

「これはこれはギレンさま。本日は休日でいらっしゃるの? どうかしら、囲碁の相手でもしてくださらない?」

 一緒におままごとしようよとぐずるガルマをガン無視して、わたくしは招かれたザビ家のお屋敷で全力でギレンに媚びていた。このIQ240の天才青年はちょっとませたお嬢様を軽く捻ったろうと思ったのか、わたくしの囲碁の挑戦を軽く受けてくれる。

 わたくし、囲碁なんてルールぐらいしか知らないのでボッコボコにされてるんですけどね。子供相手だぞ、ちょっとは手抜けや。

 

「わたくし、ズム・シティを……いえ、このサイド3、ひいてはスペースノイドの趨勢をダイクンファミリーに委ねるのは面白くないと思っていますの」

 碁でボコボコにされて涙目になりながら、わたくしは唐突に話を切り出した。五歳の幼女が突然政治の話をしだすものだから、ギレンは当然いぶかしむ。

「ジオン・ズム・ダイクンは政治家というよりも思想家です。政治という伏魔殿の深宇宙を泳ぐにはその才知才覚に欠ける……そうは思いませんこと?」

 ギレンは押し黙ってわたくしの目を見る。測られている。数秒の沈黙ののち、彼は「御父上の差し金かね?」とだけ口にした。わたくしの父を疑っているようだが、それは違うな。

「わたくしの個人的見解です。ジオン・ズム・ダイクンがやがて政界から退いたのち、ジオニズムの思想的指導者を彼の息子、キャスバル・レム・ダイクンに世襲させてはならない。ダイクン家のプレゼンスはズム・シティ議会から取り除かれなくてはならない……」

 その言葉にギレンは目を細める。どうやら一考の価値があると踏んだらしい。わたくし個人を本気で相手しているというより、わたくしの裏に父とは別の誰かがいると考えているだろうが。

「なるほど、クルル殿の考えることではないな。では君の言うダイクンの後継とは誰かね?」

「ザビ家次期当主、ギレン・ザビ。あなたのことでしてよ」

「話にならんな。わたしはただの若造だ」

 その言葉にわたくしは笑いそうになる。これが若き日のギレン・ザビという男か。その口から謙遜の言葉が出るとは。

「現実のお話をいたしましょうか。ジオン・ズム・ダイクンは早晩連邦政府によって取り除かれるでしょう。それが政治圧力にせよ、暗殺にせよ。その後のズム・シティの議会を制するのはラル家かザビ家。そして後者の実権はデギン・ザビからあなたに移ろうとしている」

「クルル家を噛ませろというのか? 本性が見えたな」

「焦らないでくださいまし。わたくしは政治家を志しておりませんの。父の選挙区は秘書の誰かが継ぐでしょう。ガルマさまからわたくしの話を聞いたことはなくって? わたくしの夢は軍人さんですのよ」

 ギレンは再び黙った。ここでわたくしの本音を尋ねたり、裏に誰がいるのかと直接尋ねないあたりがギレンという男の性格を物語る。つーか、わたくしは五歳児だ。つまりこの男は五歳児相手の歓談にド真面目に策謀を感じ取って熟考の姿勢に入っているのだ。正直ドン引きである。どんだけ性根が捩じれたらこうなるんですか? わたくしが匂わせぶりな態度取ってるのも悪い気はしますが。

「わたくしの企図をお疑いなのでしたら、お願いを一つ申し上げます。ダイクンが取り除かれてのち、アストライアとその子はともかく、ダイクンとの子を持たない正妻のローゼルシアは急速に影響力を失うでしょう。そうしましたら、彼女の処遇をわたくしにください。クルル家ではなく、わたくしに」

「ローゼルシアだと? 彼女こそただの思想家だ。わからんな」

「あら、わたくしこれでもジオニズムには入れ込んでいますのよ? ファンなのです」

 そうにっこり笑うと、これまたギレンの顔に影が差す。百面相かよ、おもしれー。

「……対価は?」

「対価? 冗談がお上手でいらっしゃる。あなたさまの弟の友人の、ほんのささいな『おねだり』ですわ。無視していただいてもいいのです。わたくしはただの五歳児なのですから。ですが、わたくしは受けた御恩は忘れなくってよ?」

 いや、マジで。ちょっとギレンさんに唾つけようとしただけなのに、勝手に訝しんでくれるものだから勘違いモノみたいになっちまったよ。結局囲碁はぼっこぼこに負けたが、ギレンは最後に「覚えておこう」と結んでくれた。

 なんか知らないけど無償でローゼルシアを貰えることになったぞぉ。やったぁ。

 

 ◆

 

 宇宙世紀転生したからには軍事系の開発に関わってMS魔改造とかしたいよな~とか思うのだけれど、幼女の身で何ができるか。色々考えた結果匿名で本を出版することにした。

 軍事思想書を出したらいい感じに売れて今後の宇宙世紀の軍事ドクトリンに影響を与えられないかな、みたいなわけです。

 そう思い立って最初に出した本は『宇宙世紀における宇宙戦の航空主兵論と対空機銃について』である。中世期、第二次世界大戦における大艦巨砲主義から航空主兵論への転換を引きながら、MSみたいな新兵器の存在の出現をぼかしつつ示唆し、宇宙戦艦の対空機銃の強化を説いた本である。

 なお、これは売れるぞ~と調子こいていたけど全然売れませんでした(涙)。くそくそくそー!

 

「ギレンさま! ドズルさま! この本をお読みになりましたか? これは遠からず発足するであろうムンゾ宇宙軍にとって重要な一冊ですわ!」

 ステマ攻撃をくらえい。一般大衆に売れなかろうが軍事指導者に読ませられりゃそれでええねん。

 ごり押しした結果両名に読ませることに成功し若きドズルからは好感を得られたものの、肝心のギレンからは「アイデアばかりが先行した書だ。肝心の想定される新兵器の青写真が見えてこん」と否定されてしまった。ミノフスキー型核融合炉も開発されてない時期にMSについての詳細なんて書けるわけねぇだろうが~! 

 次はアンバックシステムについての本でも書くか? と思ったが、参考文献を読んでたら技術的な知識が追い付かず諦めた。姿勢制御について調べてたらなんか難しい数式がたくさんでてくる! わたくしはド文系なんですのよ~!

 それから4年あまり、わたくしは執筆に時間を捧げた。『コロニー経済自立に向けた10の手引書』とか『地球連邦政府議会の政治力学とスペースノイドの投票権』とか『コントリズムと環境主義』とか色々書いた。全部売れなかった。わたくし、文才ないんかなぁ!?

 

 ヤケクソになったわたくしはニュータイプ論について書き散らした。原作知識をフル動員して、わたくし自身が前世でしてた考察も好き放題入れて、書きなぐった。そしたらその本は、なんか……売れた。マジで?

 「ニュータイプは死んだ人間と話ができる」とか「脳波を通して物理現象を引き起こせる」とかオカルト満載の本だぞ? こんなんベストセラーになるなよ。いや、多分ウケたのはニュータイプに対して旧来の人間を『オールドタイプ』と新たに定義して徹底的にこき下ろしたからだろうけど。扇動的な文体にしたことは否定しない。スペースノイドの自尊心をイイ感じに煽りまくる内容にしたからな。

「クルル嬢、貴君が常々勧めていた作家の新作は読んだかね。ジオニズムを引用しながら、その先の人類の革新について具体的な道程を描いた名著だよ」

「アッハイ、ソウデスワネ」

 そういえばギレンくんってゴリゴリの優生思想をお持ちでしたわね。普段接してるとちょっと気難しいだけの兄ちゃんだから忘れかけてましたわ。

 さて、9歳になったわたくしは明るく元気な小学生である。一方のギレンはというと25歳になりいよいよ出馬して見事ズム・シティの代議士の一人になっていた。

「これからはギレン先生とお呼びしなければならないかしら?」

「冗談はよせ、クルル嬢。それで用向きは?」

 そういってギレンはクククと笑う。この数年でわたくしは見事ギレンのお気に入りに収まることに成功した。ちょっと聡明で英才な、自分を慕ってくれる美少女を無下にする奴はそうおるまいて。人に好かれるというのは実に簡単なものだ。そういうのはわたくしの得意分野でしてね、くふふ。

「実は折り入って頼みがありまして……ニュータイプの研究所を作りたいのですわ。民間ではなく政治主導で、です」

 ジオン・ズム・ダイクンが描いた人類の革新、ニュータイプ論はその具体例に欠けるものだった。件のベストセラー本はその具体的な形を示したのが目新しい点だったのである。

 わたくしがギレンに提示した案は次のような話だ。これからの時代、ニュータイプとはなにかということが政治の場で問われ始めることになるだろう。そこでいち早くニュータイプの定義を政治的に決めることのできる機関を作るのだ。それも、あくまでニュータイプ的超能力を研究する機関という名目で。

「研究所の名目でニュータイプ論争の主導権を握ろうというのか。面白い」

 もちろんそのイニシアチブを握るのは、研究所の創設に尽力したザビ家とクルル家ということになるだろう。わたくしとギレンは悪い顔をした。

 その後、ギレンはデギンに掛け合って研究所創設の約束を取り付けてくれた。さすが仕事の出来る男だ。わたくしはニタ研創設後に第一被験者――ここはかっこよく『ファースト・チルドレン』とでも呼んでおこう――としてねじ込まれることになった。まぁ我が父とギレンのコネのおかげで実態は顧問みたいな地位だがね。わたくしの身体で人体実験はマジ勘弁。

 

 とはいえ実際に研究所が作られるのは数年後の話だ。それよりも直近に大きなイベントが待ち構えている。それ即ち――。

 

 ◆

 

 ユニバーサルセンチュリー0068。

 ジオン・ズム・ダイクン。議会演説のさなかに倒れる。ムンゾ自治共和国の連邦からの独立宣言がされると目されていた演説中での事件だ。誰もが暗殺を疑った。

 元より地球連邦中央とサイド3間の摩擦は極限に達しており、民衆のデモは暴動に発展。連邦軍はガンタンクまで投入した武力鎮圧を開始する。ズム・シティの中央は騒乱状態だった。

 デモ隊が投げつけた火炎瓶が道路で轟々と燃えさかり、ガンタンクがそれを踏み潰していく。

 わたくしは前衛的な行政庁舎の構造物に昇ってそれを眺めていた。ちなみにこの建物はのちの公王庁になる例のアレである。

「おーっほっほっほっほ! もっと争うがいいですわ!」

 連邦軍の治安部隊は発砲もやむなしというわけで、物見遊山でデモ隊を冷かしてたら流れ弾がビュンビュン飛んでくる。

 おーこわ。

 

「エウティミア、どこへ行っていた? 外は危険だ。家にいなさい」

「これはこれはお父様、大変申し訳ありません。それよりも近々ローゼルシア・ダイクンが我が家に転がり込んできます。匿える手段を用意してくださいませんか?」

「エウティミア、お前はなにをっ――いや、いい……わかった」

 我が父……クルル家当主とわたくしの関係は微妙なものだ。成熟した精神を持つ転生者が親なるものとうまくやれるわけがない。

 父の育児方針は基本的に放任である。わたくしがザビ家とつながりを作ろうと躍起になっていたことを複雑に思っている節はあったが、特に口出ししてこなかった。あくまで幼子の戯れだと考えているのか、わたくしを一人の人間として尊重して手出ししていないのか、はたまた関心がないのか。あるいは……彼の心中を察することは難しい。

 ザビ家やズム・シティの政界に幼い身で殴り込みをかけて暗躍せんとするわたくしを止めようとしない彼は、客観的に言ってしまえば父親失格なのだろう。だが、わたくしになにを言う資格があるだろう?

 親への愛着を持たず、異常に早熟で、なにを考えているかわからない娘など、悍ましいにもほどがあるのだから。

 

 数日のうちに状況は目まぐるしく変化する。ダイクンの後釜を狙った政争の激化。政治的暗殺の多発。治安維持部隊による市民の弾圧。サスロ・ザビもまもなく爆殺された。

 混乱のさなか、ダイクンの遺児が行方不明になっていたことが判明したものの、どこか別のコロニーへ亡命したという見方が大勢だ。つまるところダイクン家はもはや民衆の関心ごとではなくなっていた。

「……クルル家の小娘。エウティミアとか言いましたね。子供だてらにザビ家にすり寄って跳梁しているとか。政局は子供の遊び場ではありませんよ」

「これは随分なご挨拶ですわね、ローゼルシアさま。今やあなたの身柄はわたくしの思うがままなのですよ?」

 ということで約定通りローゼルシア・ダイクンがわたくしのもとに転がり込んできた。彼女は移民第一世代の代表のような人物だ。スペースノイド独立思想……いわゆるコントリズムを唱えた著名な思想家であり、40年代から50年代の独立運動を牽引したサイド3のジャンヌ・ダルクである。

「ふん。大方ダイクン家の遺産でも狙っているのでしょうが、あの家には何も残っていませんよ。ダイクンは清貧を志していましたから」

「ご冗談を。二つ、得難い宝が残っているではありませんか。ローゼルシア・ダイクンと――アストライア・トア・ダイクン。この二つがね」

 そう。わたくしの目的は最初からアストライアの身柄を確保することにある。ついでにローゼルシア本人もね。

 ローゼルシアは政界への影響力を完全に逸失した過去の人だが、思想界、知識人層への影響力はまだまだ残っている。なによりこの女はあのデギン・ザビとの同世代だ。ギレンは人心がわからない坊やなのでローゼルシアの価値がまるでわからなかったようだが、こいつはザビ家への重要なカードになる。

 加えてローゼルシアを掌握すれば流れるようにアストライアも手中に入る。政治はもはやアストライアに関心を向けておらず、アストライアの身の処し方はダイクン家の首領であるローゼルシアが決める手はずになっていたからだ。そしてアストライアはキャスバル・レム・ダイクン――後に赤い彗星のシャアとして帰ってくるあの男の母親だ。宇宙世紀においてこれほど有用なカードはなかろう。原作知識あってこそ取れる判断だ。原作知識チート万歳。

「ローゼルシアさまとアストライアさまには我がクルル家が所有するリゾート地に移っていただきます。冷遇などはいたしませんわ。お二方にはできる限り長く、ながぁく生きていてくださりませんと……ね?」

 あー、政治って楽しい。

 おーっほっほっほっほ! わたくしは悪い感じに高笑いした。

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