お嬢様転生in宇宙世紀   作:加藤=アールパード・清正12世

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六話 やっぱヅダだね♪ そして戦争へ……

 ア・バオア・クー。宇宙世紀が始まる以前、西暦の時代から採掘が続けられている巨大小惑星だ。その所有権は民間の宇宙開拓会社、国連の宇宙局、地球連邦政府、コロニー公社と転々として、現在ジオン公国の管理下に収まっている。

 鉄資源やレアメタルもさることながら、リン鉱石が多く産出することで、ア・バオア・クーはサイド3の発展を長く支えてきた。リンは化学肥料の原料となる元素であり、農業生産性を飛躍的に向上させる。小惑星からリン鉱石が安定供給されたことは、宇宙世紀における農業サプライチェーンを地球への資源依存なしに成立させるのに不可欠なピースだった。

 だがア・バオア・クーの生産リソースは今や軍需関連に割り当てられ、急ピッチで宇宙戦艦や陸戦兵器、そしてモビルスーツを生み出す工場へと生まれ変わりつつある。

 

 そんな生産ラインの一画に、わたくしの王国は存在した。

 名目上はニュータイプ研究所『クルル機関』の実験兵器の試作場となっているが、実体はもっとひどい。

「……ほう。これが例の……モビルスーツとかいう?」

「あら、ごきげんよう! アナハイムのウォン・リーさんですわね? 平素お世話になっております」

「これはご丁寧に……クルル嬢ですな? それと、今のわたしはジオン支社への出向組ですからな。表向きアナハイムとは無関係ということになっているのでご容赦を」

 はい。アナハイムの支社を引き入れました。正確には元々サイド3に存在したアナハイムの資本をジオンが接収するときに、手を回して国有化と資産接収を防いだだけなのだが。その代わり経営権にクルル家がいっちょかみ、といういつものやつである。

 ギレンには「アナハイムの技術者を吸収した」という顔ができるし、アナハイムには「接収を防いだ」と恩を売れる。そしてわたくしの手元には優秀な技術者と熟練労働者、そして涎が出るほど貴重な宇宙世紀最高峰のアナハイム製生産ラインが転がってくる。わたくしってもしかして政治上手か? アナハイムの横のつながりで別支社にモビルスーツ技術が流れる懸念もあるが……でもアナハイムが持ってる関連特許をヘイト買わずに頂き女子できたんですよ! お許しください! クルル家管下で独占させてもらいますけどねげへへ。

 と、いうかだ。根本的に技術流出を防ぐためにこうした小惑星内で軍需生産ラインを構築しているのだ。事実、ギレンとドズルはわたくしが手に入れた元アナハイムの生産部門にモビルスーツの基幹技術であるミノフスキー型核融合炉を渡すことを拒まなかったわけだし。

 こうして、わたくしは自由にモビルスーツを造ったり、なんなら戦艦を造ったりできる工場を……工場ってかデカい町工場みたいなもんを手に入れた。え、モビルスーツはともかく戦艦は無理? そ、そんな。自前のグワジン欲しかったのに……。

 

 この工場はほとんどわたくしの手駒と言っていい。採算性を無視して機体実験したり、わたくし専用のモビルスーツを造らせることだってできる。予算? 前と変わらずアナハイムやらルオ商会などからチューチューです。なんかあいつらいくらでも金出してくれるし。逆に怖いんだが!

 さて、いくらアナハイムの技術者がいてミノフスキー関連技術を持っていても、モビルスーツを一から作るのはちっとばかし厳しい。だからわたくしは技術を持っている人たちから買うことにした。そう、ザクとコンペに負けてヅダをリジェクトされたツィマッド社である。

 ツィマッドさーん! 空中分解しちゃったヅダとかいう欠陥品、うちが改良してあげるから生産ライセンスくれろ~!

 こうして出来上がったのがこちら。エウティミア専用機『ヅダF型』である。いやっふー!

 ちなみにザク系列とは全く別のパーツ使ってるので整備性に難ありです。ザク系上がりのエンジニアとジオンの汎用パーツじゃ整備できないから、自前でエンジニアと整備パーツを用意しとかな動かせなくなっちった。統合整備計画はどうしたって? フフッ(暗黒微笑)

 だがその分性能は折り紙付きである。「実験機として作られた、量産型とは一線を画す性能の機体」みたいな、ね! ロマンですわよね! 満足がいくものが出来たのでここらでいっちょ高笑い。おーっほっほっほっほ!

 

 肝心の『ヅダF型』の性能はというと。まあ中身は空中分解しなくなったヅダってだけです。モビルスーツに関してトーシローしかいないアナハイム出身とそもそも電気系にはさっぱりなニタ研出身しか今の手駒にはいないので。

 武装は従来のマシンガンやヒートホークも用意しているが、こちらもどうも足りない。ザク・マシンガンは元より対艦攻撃を想定しているが、戦艦何十隻という大艦隊相手にMS数機で突っ込んだときを想定すると、この火力は心もとないのである。

 わたくしが現在構築しているドクトリンは、ギレンの前でも述べた通り、ハイエンド化によって戦艦をやすやすと落とせるモビルスーツの運用理論だ。それもできうる限り、会戦中の補給をできるだけ減らし、モビルスーツ一騎で戦艦を数十隻落とせるような……そんな機体。

 対艦攻撃時の主力になるであろう制式の対艦ライフルとバズーカを改良、総弾数を増やしもした。連邦との緒戦ではこれらが戦果をあげてくれるだろう。だがやはり足りない。

(ビームライフル。ってか、ビームサーベルが欲しいですわね……!)

 継戦能力的にビームサーベル欲しすぎる~~!! だが技術力が足りない。じゃあアサルトアーマーみたいなの作れません?ってエンジニア部に泣きついたけど「ミノフスキー粒子ってそういうのじゃないんで……」って苦笑いされたし。

 現状でも対艦ライフルとバズーカ担いでカタログスペック通りに運用できれば、単騎の補給なしで連邦の主力戦艦(マゼラン、サラミス)を数隻単位で落とせる試算が出ている。こうした継戦を重視した武装の改装は既存のザク部隊にも降ろされているから、黒い三連星あたりが使えば史実以上の戦果をあげてはくれるだろう。どうしても物足りなさはあるが。

 

 それと、モビルスーツを戦術レベルで機動させる航空機システム――サブフライトシステムの構築にもすでに成功している。あくまで宇宙用で地上だとまだ使い物にならんけど。土台となるドダイとかの戦闘機は元から存在してたし。姿勢制御周りを担当した部署はデスマーチだったらしいので菓子折り持っていってやらな。

 そもそも上記の武装の、とくに総弾数周りの改造は、サブフライトシステム構築によってモビルスーツに乗せる必要のある推進剤が大きく削減されたためにできたことだ。重量周りの制限が取り払われたことで、予備弾薬を機体に詰め込む余裕ができた。

 サブフライトを運用できる母艦の整備もできたし……やれることはやったかなぁ。

 よくも悪くもジオンだからこそできた改革だな。戦える軍を急ピッチで立ち上げてる最中だったから、規則破り横紙破りもモーマンタイ。そこにザビ家のコネをあわせて好き放題やらせていただきました。つーかれたぁ。

 

 ◆

 

 ……時は宇宙世紀0078年。

 連邦政府とジオン公国間では互いに挑発行為が繰り返され、経済摩擦と貿易戦争は日々激化している。

 戦争は不可避であると、誰もがそう考えている。政治権力をもった高官たちが考えていることは、どう戦争を避けるかではない。来るべき戦争において、自分と自分の権益をどうサバイブさせるかだ。

 アースノイド・スペースノイドを問わず、民衆は戦争を忌むどころか歓迎している。地球連邦政府の官僚機構、その腐敗と制度疲弊こそがみなを苦しめているのであり、戦争はそのショック療法なのだという風潮が平然とまかり通っている。連邦政府の発足以来、国家間の絶対戦争が絶無であったことは、平和主義の理念と価値を大衆から拭い去ってしまった。一度宇宙という広い空間に出てしまえば、遠くのコロニーにいる他者の痛みはどうしたってわからないのだ。かつてない人口爆発は人命一つ一つが本来持つ絶対的な価値を希薄にしているのだろう。

 連邦政府というアウゲイアスの牛舎の汚泥をよしとしてきた地球圏の人類は、神無き世紀にザビ家のコロニー落しという大洪水の試練にさらされる。けだし、人類の中から生まれた罪業は、人類のさらなる罪業のみが清算を迫っている。

 

 ならばこそ、わたくしが担うべき役回りとは――




ひとまず現行の更新分はここまで。
次回以降を一年戦争編として、ちょっとだけ更新おやすみっ。
以下最新作ジークアクスのネタバレ注意







【※※※ジークアクスのネタバレを含んだ後書き※※※】





【※※※ネタバレ注意!!!!※※※】







本作はジークアクス公開前からちょろちょろと書いていたんですが、ジークアクスがまさかの宇宙世紀ジオン勝利IFだったことを受けて、この作品を史実宇宙世紀準拠にするかジークアクス準拠にするか迷い中です。
ジークアクス寄りの世界にするとなると、ジークアクス本放送まで待たざるをえないなぁと思うので、それまで更新はちょっとお休みするかも?
でもルウム会戦とかの緒戦なら書いてもそんなブレは起きないか……? どっちみちプロットを考えるので一か月ちょいは更新停止ですっ。ごめんねっ。
あとたくさんの評価と感想ありがとうございます。「宇宙世紀モノって絶対感想荒れるやん。最初から感想返ししない方針のほうがいいかもな……」と思ったので返信してませんが、読んでます。励みになります。
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