己の音色を響かせて 作:匿名
「おはようございま~す!この前のサンフェス、良かったですよ!」
朝練を終え教室に入った俺達を出迎えたのは笑みを浮かべた北川のそんな一言だった。
「おはよう、来てたのかお前」
「ああいうイベントって珍しいじゃないですか。行かなきゃ勿体無い感じがして」
「……まぁ行進なんざそう簡単に見れるもんでも無いか」
「そうですよ?ただの行進だけならクソつまんないですけど、演奏が付いてくるならお得です!」
ショートボブの髪型を整えながら答える北川。俺ら吹部の前で演奏をオプションの様に言いやがった。うーん、実に素直。
「で、傍から見てどうだった?俺らは」
「素人目から見てもキレがあって、カッコよかったです!前々から噂にはなってたんですよ。今年の吹部はスパルタだな~って。我々新聞部でも話題にはなってました。あのイケメン先生、どんな手品を?ってね」
「へぇ、意外と見られてるんだな。俺ら」
どうやらサンフェスは思いの外、他者から高く評価されている。
それに滝先生の手腕も、他の部で話題になってるらしい。
「だって去年はあんなんだったあの吹部が今年はしっかり練習してるんですから、そりゃ話題にもなりますよ。前はちっともして無かったじゃないですか」
「そりゃそうだろ。上が腐ってたんだからな」
「そこを滝先生が一気に作り変えたって訳ですね!」
「まだ完全にって訳じゃ無い。勝負はこっからだ」
そう。まだサンフェスが成功しただけでコンクールが控えている。所々不満と言うか文句は相変わらず出てるし、滝先生が流れを完全に持っていくには分かりやすい実績が要る。やはり、コンクール金賞は獲らなければ。
「へー。大変そうですね~。あ、そうだ。新聞のネタにするついでにお二人の写真撮っときました。いります?」
此方の内部事情なんぞお構いなし。彼女はサッとポケットからスマホを取り出す。
「なら、貰おうかな」
「では送りますねー」
北川との個人LINEに写真が幾つか送られてくる。
「へぇ。良く撮れてるな」
「でしょう?良い写真撮れるまで結構粘りましたからね。ついでに記事に使う予定の物も送っておきました」
送られてくるたびに画面をスクロールしていく。結構な数あるな。
「こちらで使う用の物何枚か撮って終わりのつもりだったんですが結構興が乗りまして、気が付けばこんな数に」
「お前、写真撮るの上手いな。綺麗に撮れてる」
「私はほら、花の女子高生ですから♪良いなって思ったモノは撮るようにしてます」
ニヤニヤしながら送ってきた写真はどれもブレが無く写りが良い。こんな事常日頃やっているんだろうか。にしても結構撮ってんな……ん?
「……何か俺の写真多くないか?」
「特別サービスですよ!ご家族にもどうぞ♪」
いらん気を回しやがって。さては連写モードにしてたなこいつ。
「……私も見ていい?」
「おう。ほらこれ、お前も良い感じに写ってるぞ」
すすす……と寄って来た鎧塚に写真を見せる。俺のなんて見ても面白くないだろうからどんどんスクロールしていく。何枚もある写真に紛れた中の一枚に、どこかぎこちない顔をしながらポンポンを振り上げステップを踏む写真が目に留まった。笑顔を浮かべようとして失敗したのか、シャッターのタイミングがズレたのか、微妙な顔をしている自分の姿を見た鎧塚は、頬を赤くしながら目を背けた。
「それ、消して」
「えぇ~~?この鎧塚さん可愛いのに~」
鎧塚の言葉に北川が反応する。ここまで想定内なのか猫撫で声でわざとらしく抵抗する。
「ダメ、お願い」
「そんなぁ~。消すなんて勿体無いですよ~」
「……やっぱりダメ。……恥ずかしい、から」
目線を下げながら手をもじもじさせる姿に少し嗜虐心が刺激される。かつて傘木にからかわれて照れている所を見た事はあったが、その時とは違うガチ感があった。なんだこいつかわいいかよ
鎧塚の嫌がる事はあんまりしたくないが、普段お目にかかれないレアな表情をしているこの写真を消すのは確かに勿体無い気がする。
「他の奴には見せねぇし、こいつもばら撒いたりはせんよ。なぁ?」
「え、えぇ。ですが……消しておきましょうか……」
さっきまでの勢いはどこへやら。手の平を返し自身のスマホを操作する北川。写真を消している最中なんだろうが、こんなあっさり手を引くとは。鎧塚はそれを見てあからさまにホッとしている。
ふと北川を見ればこいつも頬を赤くしながら目を泳がせていた。あれだろうか、無表情クール系美少女の照れ顔をダイレクトに見て思いの外衝撃が強かったのだろうか。
「……何見てるんですかやめてください代わりにあなたの写真を撒いても良いんですよ」
「待てやお前」
早口でとんでもない事言いだしたぞこいつ。照れ隠しの癖がキツ過ぎないか?
「野上君も、早く」
「はいはい、消しとくよ」
こちらのLINE履歴からも写真を削除する。これで別口で保存していない限り双方のスマホから件の写真が再び現れる事は無い。なんか勿体無ぇなぁ。
もう醜態を晒される心配は無いと判断したのか、自分の席に戻りスマホとイヤホンを取り出しリズムゲームに興じ始めた。
それをぼーっと眺めている内に北川は居なくなっていた。さっきまで話してたんだから一言位声掛けりゃ良いのに。
だがこれでようやく平穏が訪れた。席に戻りスマホにイヤホンを接続し曲をセットする。
流れる曲を聞きつつ授業の準備を開始した。
「まず、これからのスケジュールを皆さんにお配りしました」
サンフェス終了の余韻に浸る間も無く次の課題がやってくる。そう、コンクールだ。
手元にあるプリント。コンクールに向けてと書かれたそれに目を通す。月曜から日曜まで練習で埋め尽くされている。休みなんて片手で数える程度しか無い。まぁそれもやむなしだろう。
滝先生が来るまでこの部活は堕落していた。サンフェス練習である程度鍛えたからとてまだコンクールで十全に戦えるレベルでは無い。我が北宇治高校吹奏楽部は粒ぞろいとは言え、その人達の力だけで勝ち上がれるほどコンクールは甘くないのだ。
(おお……こんなに出来るのか……)
平日は16時から19時、土日は9時から19時までとみっちり詰まっている。これほどの練習をこなすのは中学以来か。5日だけ18時終了なのはなんでだろう?備考欄を見れば短く「あがた祭り」とだけ記載されていた。成程、だからか。
「さて。ここからが重要なのですか、今年はオーディションを行う事にしようと思います」
「私が一人一人皆さんの演奏を聞いて、ソロパートも含め大会に出るメンバーと編成を決める、という事です」
途端に周りがざわつき始める。コンクールメンバーは去年まで年功序列で選ばれていた。故に、自分は出られると高を括っていた人はその言葉に対するリアクションが大きかった。
必要だと感じれば編曲もしますと滝先生は続けたがそこまで気を回せた人は多くないだろう。
「上級生の方は心配しなくても結構です。下級生より上手ければ良いのですから。まさかとは思いますが、『下級生より下手だけど大会には出たい』と考えている人がいる、なんて事は無いですよね」
ざわつきなどお構いなく微笑みながら言い放った。上級生、特に三年生に強く向けられたその言葉に渋い顔をした者は多々存在した。明らかに挑発されているが、乗れば言葉の応酬に遭う。しかもこの場で声を挙げよう物なら自身のブライドなんぞすぐに砕かれるのが目に見えている。余裕そうな滝先生と不満げな三年生を見比べて、その空気の差に思わず笑ってしまいそうだった。
「はーいお待たせー。コンクール用の譜面とCD貰ってきたよ~」
喜多村先輩から譜面を受け取り目を通す。課題曲は『プロヴァンスの風』自由曲が『三日月の舞』、どちらも初耳だ。
「じゃあ再生するわよ」
岡先輩がCDプレーヤーにセットして再生ボタンを押す。トランペットの高らかなファンファーレから始まる。そこからクラリネットら木管が音を刻みホルン、トランペットと力強い響きが続いていき、そして再びファンファーレへ。
中盤に差し掛かると最初のファンファーレが嘘かの様に静まり、トランペットのソロパートが入る。夜空を思わせるような切なさ、哀愁、そして形容しがたい複雑な感情の籠った音色が展開される。CDから流れるトランペットは音と音の繋ぎ目を感じぬ程滑らかで、伸びやかだった。ここを吹くにはそれ相応の度胸と技量が要求される。この曲の肝はここだろう。
ソロが終わるとそれを継ぐ様に木管がゆったりとしたメロディーを奏でる。それに聞き入るのもつかの間、オーボエのソロが入って来た。場面としては短いが無視できない所である。静かに、だが心の込められた美しい音色。まるで歌っているかの様に響くそのオーボエの旋律を俺は耳に焼き付ける。柔らかな低音を放つユーフォのソロを交えながらも優しい音が奏でられた。楽譜に目を通せばここに赤く〇が付けられている。オーディションではここをチェックする、と言う事だろう。手の平にうっすらと汗が滲んだ。
ソロの優雅な雰囲気から一転し、力強いティンパニが突然現れる。そこにグロッケンの軽やかなステップが入り、序盤の様な賑やかで勢いのある雰囲気が形成される。最初から中頃までずっと活躍していたトランペットはここで一息付く。ここで存在感が控えめになる事で、金管の低音が際立っている。木管や低音の音色が合わさって熱を帯び、どんどんボルテージを上げていく。
勢いよくシンバルが弾け曲は新たな変化を見せる。金管の壮大さを感じるメロディーに俺は身震いした。とても好みの曲調で聞いてて飽きないポイントだった。これらに混じって時々聞こえるシンバルも心地いい。
チャイムが鳴り響き、序盤のファンファーレの様なダイナミックさを持ちつつも、曲は終わりへと向かう。全ての楽器が小刻みながらも、一音一音力強い音色を奏で足並みを揃わせながらも幕は下りた。これが……三日月の舞、か。
「…何か、凄い曲だね。序盤の盛り上がり方、気に入ったよ!」
「最初と最後辺りは凄い忙しなかったわ。あの先生、コレ選んだの?自由曲よね?嘘でしょ」
先輩も聞き入っていたのか、曲の感想を言い合う二人。喜多村先輩は最初のファンファーレがお好みの様で岡先輩にくっつきながら語っていた。
「はいはい。ファンファーレが気に入ったのは分かったから、離れな、さい!」
「うわ~~」
ただ、ずっとぴったりくっつかれるのも鬱陶しくなったのか喜多村先輩を引きはがし、此方に目を向けた。
「野上とみぞれちゃんはどう思った?この曲」
「そうですね、好みの曲ではありました。最初の盛り上がり方は聞いてて気持ちよかったので。演奏としては、音程の行き来がそこそこあるのでその部分はこなしておきたいですね。ただ、最重要なのはトランペットかと。無論、我々も舐めた演奏すれば滝先生に何言われるか分かりませんから、気は抜けません」
「……音程の安定とビブラートが重要、かと……」
「あとはパッセージを正確に、だな」
「うん」
「へー。分かる奴は分かるもんなのね」
「さっすが二人!この曲、短いけどオーボエのソロあるもんね。でもどっちがソロ吹くんだろ?」
「さぁ、そればかりは何とも。出場に関してはお互い選ばれるのが最高ですが、どちらか一人だけという事も充分あり得るでしょう。と言うか、ファゴットもソロありましたよ。オーボエが前に出てたので分かりにくかったかもしれませんが」
こればかりはオーディションの結果次第だ。どちらか片方しか受からないなんてざらにある。しかも滝先生の採点なら猶更だろう。出来ればオーボエ二本の編曲になっているなら嬉しいが、どうなる事やら。
「自由曲聞くだけでも結構カロリーあったわね。次は課題曲かぁ」
「じゃあ、プロヴァンスの風、再生するよ」
三日月の舞を取り出しプロヴァンスの風のCDをセットし再生する。曲の最初から勇ましいファンファーレがプレーヤーから流れる。三日月の舞と違い打楽器がしっかりと聞こえるのが特徴的だ。
「おお~~。明るいけど、全然違うね!」
「こっちのは華やかな感じね」
そこにクラリネットと転がるようなフルートの音色が続き、金管の低音の響きが混ざる。
再びクラリネットの主題に戻るが、最初と違いフルートやサックスも参戦している。それによって音に彩りが増え、情熱を感じる音色へと変化した。
華々しいメロディーは情熱的でまるで踊っているかの様。CDケースの表紙の裏側にはラベンダー畑らしき景色を背景に『プロヴァンス地方を旅するスペインの風―――』と書かれている。成程、序盤のモチーフはスペインか。
金管による低音が勇壮さを生み出し、オーボエが物憂げなフレーズを奏でる。短いがここもポイントだな。
この曲はマーチである為に曲調の繰り返しがある。だが間に挟まるフレーズがそれぞれ変化しているからか、聞いていて飽きは来ない。
そして場面が切り替わるかの様に変化する。前半から一変し緩やかで穏やかな印象を受ける。ここの部分がラベンダー畑を現しているのだろう。ならここがプロヴァンス地方か、ユーフォとサックスが良い味出している。
落ち着いた所でトランペットが勢いを取り戻す。この曲はスペイン→プロヴァンス→スペインの流れを現しているのだろう。華々しさを感じながらも最終場面へ。
再び冒頭の様なファンファーレが流れ、力強い一音を奏で曲は幕を下ろした。短めだったが、太陽の国を感じさせる良い曲だった。
「賑やかだな……」
俺の小さな呟きにその場の全員が頷いた。……聞こえてたか。
「こっちもこっちで元気な曲ねぇ」
「どっちもダイナミックな感じでカッコいいね!」
課題曲も自由曲もどちらも壮大な曲だった。両方とも吹奏楽の曲に良く見られる急・緩・急の形式で構成されており馴染みやすい。だがどちらも難易度が高い事には変わらず、演奏出来れば一定以上の実力は担保されるだろう。コンクール金賞の為に新入生には死ぬ気で頑張ってもらう。
「さ、両方聞いたし練習しましょ」
「じゃあ俺達廊下の方に出てますので、何かあったらお知らせください」
「はーい。えーと、リード…リードと…あ、あった」
チューニングは済ませてあるからそのまま廊下でのパート練習へと流れる。ただ今日は普段と違い、オーディションで審査される場面をひたすら練習する。プロヴァンスの風の二倍近い尺がある三日月の舞。その中にある短いながらも存在するオーボエのソロ、ここは是非とも勝ち取りたい。
互いの音が邪魔にならない様にと、俺と鎧塚はある程度距離を空けて練習している。ここからでも見える鎧塚の顔は相変わらず淡泊で、今朝の出来事なんて無かったみたいに練習に打ち込んでいる。
耳に入る鎧塚の音楽は滑らかで繊細だ。まるでバレエを踊る様に空間を舞っている。だが惜しいかな、中身が無い。音色の輪郭は美しいがそれだけの物。この淡泊さは音楽にある程度関わった人間なら感付いても不思議じゃない。あの日、喜びに満ちた音楽が抜け落ちたのだ。
だが技量が落ちた訳ではない。心は空虚なまま、オーボエは美しい音色を奏でている。運指は正確で素早く、音を外すなんて初歩的なミスなど有りはしない。大事な物を失って尚その実力は衰えていない。そんな相手と俺は戦うのだ。
滝先生はサンフェスの時、「音楽とは優劣を競う物では無い」みたいな事をぬかしていたが、所詮は教育者の言葉だ。まぁ、お祭りとも称されるサンフェスだから言ったのかもしれないが。でも吹奏楽部の一部員として、同じパートの友達とコンクールの枠を賭けて競う此方の身からすれば、どうしても『それ』は意識してしまう。
コンクールに出場出来るのは最大で五十五名。この吹部はそれ以上に部員が所属しているから当然蹴落とし合いになる。自分の力を疑ってはいないが油断をすると足をすくわれるのは中学の頃に経験している。
あの頃はまだ自分が優位に立てていると慢心し、余裕でいるとソロを逃した事があった。しかも、自分好みのメロディーだったから滅茶苦茶悔しかった。今でも思い返せる苦い記憶、だからこそ必死に練習したし、努力が評価される喜びも知った。
かつて俺が手ほどきした相手が今や目の前に立ちはだかる壁となって聳え立つ。コンクールの為にこうやって競うのは中学以来か。久々のオーディション、それ自体はまだ先だが、今からでも心が震える。高校に入って初めてのコンクール、今年こそはものにしたい。是が非でもコンクール出場権を勝ち取って見せる。
「さて、まずは一通り吹いてみるか」
楽譜をセットし、集中する。一歩ずつ行こう。焦る必要は、無い。
「スゥ――」
リードを咥え息を通し、音を奏でる。周囲に音が広がって行った。
〇の付いた場所を吹き終えリードから口を離す。訪れる静寂に向こうから聞こえるオーボエの音が響いた。
ここから聞こえる彼の音色は、とても雄大だ。まるでベルから音の風が吹き抜けていくみたい。彼のオーボエは、音量任せじゃない。練習を積み重ねたテクニックにも、確かな磨きが掛かっている。
(上手……)
一本の芯がある、途切れる事の無い大きな響き。野上君の強みはそれだと私は感じている。
少し離れた所にいる野上君の顔は真剣そのもの。獲物に狙いを定めた獣を思わせるような、鋭い目線。あの目を見るのは、とっても久しぶり。
何かに挑む時、本気を出す時、彼はあんな目になる。譜面を前にしているけれど、心はどこか別の所に行ったみたいにどこか遠くを見据えている。彼には今、何が見えているんだろう。
足元を眺め思案する。彼の目線の、その先を。
「ねぇ。ちょっと良い?」
「…………中川か。ここに来るとは珍しい。個人練か?」
「まぁ、そんなとこかな。野上はどう?順調?」
「ああ。でも、オーディションなんざ久しぶりだ。緊張する」
「へぇ、野上でもそうなるんだ。意外だね」
夜空……星……星座?
「少しだけ、な。それで、要件は?練習ならもっと良い場所あると思うが」
「それなんだけど……どっか良い場所知らない?」
「そうだな……ゴミ捨て場?焼却炉?だったか。あの辺りは、薄暗いし人通りも少なそうだった。そこ行って見たらどうだ?」
「あー。あの辺りね、行ってみるよ。サンキュー」
「おう。貸し1な」
「ケチくさいなぁ~もう」
物思いにふけっている間に夏紀が野上君に話しかけていたみたい。……こんな所に来るなんて珍しい。
私が想像している内に用事を終えたらしく、ユーフォニアムを抱えながら来た道をくるりと引き返して行った。こっちから見えなくなる前に、夏紀を見ていた私に気付いたみたい。微笑みながら胸の前で小さく手を振ってくれた。わざわざそんな事、しなくて良いのに。
夏紀を見送った野上君は再び譜面と向き合い、再び廊下はオーボエの音で賑やかになる。
同じフレーズを繰り返す度に音が滑らかになっていく。感覚を掴めてきたのか、彼の顔は柔らかくなる。
今この廊下には私と野上君の二人だけ。それを良い事に少しの間、彼のオーボエに浸っていた。
お待たせ致しました。仕事やらが忙しく、中々執筆する事が出来ない状況があったのですがなんとか書けました。
この作品を見て頂いて誠に有難う御座います。これからもよろしくお願いします。