己の音色を響かせて   作:匿名

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第二話 入部

 入学式からしばらくして部活動勧誘の最盛期がやってきたようで、各部活の先輩方が熱心に勧誘している姿がよく見れた。興味なさそうにする新入生に声を掛けるのは辛いと中学の友達がぼやいていたのを思い出す。それも上級生の宿命だよなぁと思いながら音楽室へと足を運ぶ。

 

 音楽室にはある程度人が集まっているようで一年生の青いスカーフをした女子生徒がちらほら見受けられる。嬉しい誤算だったのは男子生徒がポツポツと居る事だった。女子が大半を占めると言っても過言ではないこの部活で同性がいるのは非常に心強い事で中学でも男子の団結は強かった覚えがある。そんな事を思っている内に顧問の先生がやってきて歓迎の挨拶が始まった。

 

 挨拶が終わると顧問の梨香子りかこ先生は後ろに下がっていった。あとは部長に任せるという事だろう。皆の前に立った部長さんが

 「今から楽器の振り分けと各楽器の説明始めるからからよーく聞いてね~!」

 

 と声を張り上げた。そこから楽器説明が始まりトランペットから順番に説明されて行き早く終わりそうだなと思っていたのだが……

 「低音パートの田中あすかです!担当楽器はユーフォニアムです!ユーフォニアムと言うのはピストンバルブの装備された変口調のチューバの事を指します。この楽器の起源ははっきりしませんがゾンメロフォンと言う楽器を元に改良が加えられ一般に使われるようになった説や―――――」

 

 長い長い長すぎる何なんだこの先輩!?ユーフォの事好きすぎだろ何だあの文量は多すぎる起源まで語りだすとは思わんかったぞ他がさらっとしてる分ここだけ尋常じゃねぇぞオイ!?

 

 「はーい田中さ~んもうオッケーよ~」

 「えぇ~!まだこれからですよー!」

 

 あまりに長々と話していたから部長さんにカットされていた。そりゃそうだ。あれ以上語られていたらこちらが持たない。良かった、終わったとホッとする。それは俺だけではなかったようであからさまに表情が柔らかくなった部員が何人もいた。残りの楽器の説明も終わり各々が希望する楽器の所へ集まって行った。

 

 「すいません、ダブルリードってここで合ってますか?」

 「うん、合ってるよ。来てくれてありがとね」

 「お?ここダブルリード希望なんて珍しいわね」

 「中学でオーボエやってたんですよ。なので来ました。」

 「そうなの?私は喜多村きたむら来南らいな、ファゴットを担当してるの。よろしくね」

 「私はおか美貴乃みきの、私も来南と同じよ。よろしく」

 「自分は野上祐樹と言います。よろしくお願いします、先輩方」

 

 緑のリボンで黒髪が岡先輩、薄めの緑色のロングが喜多村先輩だな、覚えておこう

 

 「ところで聞くけどさ、同じパート仲間ってこの中にいる?」

 「えぇ、一人いますよ。えーと…あ、来た」

 「野上君、行くの早い…」

 「悪いな、先輩方、この子が同じ仲間の鎧塚です」

 「鎧塚みぞれです、よろしくお願いします」

 

 少し遅れて鎧塚が到着し先輩と挨拶していた。鎧塚はもう先輩に気に入られたらしく二人に可愛がられていた。そんな三人の様子を見つつ、もう少し人来るかなと思い教室内を見渡してもこちらに来る者もおらず楽器の振り分けも終わり再び部長さんが前に出た。

 

 「は~い注目~、ではこれからパート練習に移って下さ~い。新入生は今回で自分の練習する教室を覚えてってね~!」

 

 その掛け声の後にそれぞれパート練習の教室へ向かっていった。俺と鎧塚も自分のパートの先輩に着いて行き練習が始まった。

 

 「ここがパート練習の教室だからね。じゃあさっそくやろっか」

 「わかりました、このパートには三年生はいないんですか?」

 「そうなの、ダブルリードは私たちだけよ」

 「わかりました、練習は何から始めるんです?」

 「まずはみんなで音合わせしてみよっか」

 「じゃあそれで。二人がどこまでやれるか見せて貰うわ」

 「はい、それでは準備します」

 

 俺達は楽器ケースからオーボエを取り出し組み立て始めた。何年もやってきたからスムーズにオーボエを組み立てていく。二人ともチューニングも済ませ何時でも演奏出来る状態になった所で先輩達もファゴットの調整を終えたようだった。

 

 「じゃあいくよ?せーのっ」

 ♪~♪~♪~

 

 オーボエの高い音とファゴットの低い音色が教室内を包み込む。やはり誰かと音を合わせるのは良い、一人で黙々と練習をするのは嫌いではないがこうして楽器を持ち寄って演奏するのは非常に音楽をしているという心地よい感覚になる。先輩方がリードから口を離すと、

 

 「二人ともオーボエ上手いね!良い音だったよ」

 「みぞれちゃんも上手いけどアンタも相当やるわね」

 

 と、お褒めの言葉を貰った。自分の力量が認められるのは嬉しいものだ。

 

 「ありがとうございます、そう言われると嬉しいです」

 「……ありがとうございます」

 「うんうん!じゃあ、次は――――――――」

 

 そうして先輩達と練習をこなしているとあっという間に時間が過ぎ、下校の時間になった。

 

 「では先輩、お疲れ様です」

 「…お疲れ様です」

 「二人ともお疲れ様~明日もよろしくね~」

 「おつかれ~」

 

 先輩達が楽器室にファゴットを返した後、先輩達が離れて見えなくなると鎧塚が口を開いた。

 

 「希美…まだかな…」

 「俺らも終わったばっかだし、もうじき来るだろ」

 「…でも……」

 「ごめーんみぞれー!待たせちゃったよね?一緒に帰ろ!」

 「な?言ったろ?」

 「…すごい」

 「?何々、なんかあったの?」

 「いや?大した事じゃねぇしな」

 

 三人で話ながら階段を下り、靴を履き替え校門を抜ける、その頃になると話題は部活についてになっていた。

 

 「俺らの所は二年の先輩二人だけだったけど、そっちは?」

 「もー酷かったよ!先輩達、練習せず喋ってばっかだもん!」

 「…確かに、他の楽器の音、聞こえてこなかった」

 「…まぁ、雰囲気からして緩いしな。ここ」

 「それでもだよ!明日も変わらなかったらビシっと言ってやる!」

 「お、スイッチ入ったな」

 「うん!私がこの吹部を変えてやるんだ!」

 「…希美ならきっと出来ると思う…」

 「上手く行くと良いがな」

 

 そうこう喋って盛り上がっている内に道の交差点に着いた。

 

 「じゃあ俺はここで」

 「お疲れー!また明日!」

 「野上君…また明日」

 「おう、お疲れー傘木頑張れよ~鎧塚明日もよろしくな~」

 

 ブンブン手を振っている傘木と控えめに手を振っている鎧塚に手を振り返しつつ、帰路についたのだった。

 

 

 

 

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