己の音色を響かせて   作:匿名

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今回も読んで下さって有難う御座います。
自分には文才が無いのでアニメやらを見返しながら執筆しています。
アニメでは大まかに説明された時期ですので想像で書いている場面がこれからも出てきます。
スローペースにはなりますが、読んで頂けると幸いです。
 
 


第四話 暗雲

 

 「ただいまー」

 

 あの後、傘木達と共に下校し我が家に着いた。靴を脱いでリビングに進む。

 

 「おかえりー、今日どうだった?」

 「まあまあかな、晩ご飯何?」

 「 適 当 」

 「そーですかー」

 

 母は何故そんなに生き生きしながら言うんだろうか(困惑)

 

 「祐が作ってくれてもいいんだけど?」

 「はいはい、テキトーなやつ一品でも良い?」

 「は~い」

 「おーし、じゃあちょっと筋トレしてから作るわ」

 「よろしく~」

 

 自分の部屋に戻り部屋着に着替え、トレーニングをこなす。

 マウンテンクライマー、ロシアンツイスト、プランク、これをそれぞれ50回2セット行い腹筋を鍛える。

 中学に進学するまでは筋トレなどしてこなかったのだが、楽器を吹くのに腹式呼吸が重要と言う事を母から聞いたらしく、父が持ち前の知識を活かしてこのトレーニングを教えて下さりやがった。最初はキツ過ぎてふざけんなと思いながら今より少ないメニューをしていたが、成長を実感出来るともうちょっとやって見るかとなっていき、今やほぼ日課と化している。

 

 「47…48…49…50!」

 

 指定の回数を終え少し体を休ませる。その後部屋を出て台所の前に立つ。

 

 (何かあるかな~…)

 

 冷蔵庫を物色すると豚バラと白菜があった。もうこれだけでいいだろう。

 

 まず白菜を適当に切る、豚バラも同様に。それをフライパンの上に交互に重ねる。そこに生姜のチューブと料理酒適量をかけ蓋をする。お好みで味の素や顆粒出汁を入れても良いが今回は楽させてもらおう。これを弱火で15分ほど放置して出来上がりだ。

 

 「タイマー設定したから鳴ったらお皿に乗っけといて」

 「ありがとね~」

 「あいよ~、じゃあちょっと寝るから食べる時起こして」

 「はーい」

 

 その後、父が帰って来たタイミングで起こされ夕食を食べ、一日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活動、ミーティングにて

 

 「はーい、ちゃんとプリントは行き渡った?なら説明するわね」

 

 自分の手元には一枚のプリントが握られていた。皆そのプリントに目を通している。

 

 「北宇治高校吹奏楽部は今年もサンライズフェスティバルに参加する事になりました。楽曲はこっちで決めておくから期待しててね。この後部長、副部長、各パートリーダーはサンフェスで着る衣装を決める会議をするので集まって下さい。」

 

 サンライズフェスティバル、略してサンフェスと呼ばれるこのイベントは各校の吹奏楽部が集まりマーチングバンドを組み太陽公園を演奏しながら行進するイベントだ。コンクールのように優劣を付けるのでは無く、演奏と行進を見に来た人が楽しめる事に重きを置いている。当日は制服ではなくこの日の為に拵えた衣装に身を包むのでこの衣装目的で学校を選ぶ者もいる…らしい。

 

 「さっき言われた人達以外はパート練習を行って下さい。先生は今日職員会議なので六時のチャイムが鳴ったら各自で下校して良いからね。ミーティングは以上です」

 「はーい、みんなパート練習に行ってくださ~い」

 

 顧問の連絡事項が終わりミーティングが終了し、部長が部員に退室を促す。

 

 

 

 

 ダブルリードの空き教室でなんとなしに呟く。

 

 「サンフェスで何吹くんだろうな」

 「何でもいい」

 「おい」

 「ふふっ、でもどんな曲でも私達は当日吹けないから関係ないんだけどね」

 

 そう、喜多村先輩の言う通り我々ダブルリードパートは演奏では無くポンポンと旗を持ちそれを使った演技を行う。何故演奏しないのかと言うとそれはオーボエとファゴットに息を吹き込む為のパーツ『リード』にある。

 リードとは吹き込まれた息で振動を起こし音を発生させるパーツで基本的にはクラリネットなどに使用されるがオーボエとファゴット使用されるダブルリードはその名の通り二つのリードが使われている。と言うのもリードの製作過程で二つのリードを重ね合わせ一つのリードに成形されているがこのリードは薄く、細い為行進しながら演奏するとアンブシュア口の形が崩れやすく思った音が出しにくかったり、つい力んでリードを割るなどの事故に繋がる恐れがあるからとされている。

 

 「でも何吹くか気になるじゃないですか」

 「そうだね。カッコいい曲だと良いなぁ」

 「わかります。テンション上がりますよね」

 

 そうやって談笑していると疲れた様子の岡先輩が帰って来た。

 

 「はぁ~会議ってほんっと疲れるわぁ~」

 「お疲れ様です。どうでした?会議は」

 

 水を飲み少し休憩を挟んでから岡先輩が口を開く。

 

 「ほんっと面倒くさかったわ~。衣装決めが白熱しててさ、こっちが良い、あっちが良いの繰り返しで。パーリーなんて三年ばっかだし息を潜めるのに必死だったわ」

 「それは…大変でしたね」

 「それで白熱したっていう衣装はどんなの?」

 「あぁそれね。はい、コレ。言っとくけど、ここダブルリード以外で喋んないでよ」

 

 ホントは見せちゃダメなんだけど。そう呟きながら岡先輩は机に衣装の参考イラストを広げた。如何にもマーチングといったデザインで黄色をメインにした半袖の上着と白いヒラヒラとしたスカートのようだ。勿論ズボンもある。

 

 「良いですねコレ、動きやすそうで」

 「おぉー良いじゃん、かわいい!」

 

 チラリ、と横目で鎧塚を見てみると相変わらずの表情、女子だからこういうのに興味あると思っていたがそうでもなさそうだ。

 

 「来南が気に入いりそうとは思ってたけど、野上まで食いつくとは意外ね」

 「変なデザインだったら抵抗ありましたけど、ちゃんとしていたので一安心、って感じです」

 「男子だったらこういう衣装着る事無いもんね」

 「そうですね。へー、良くできてるなぁ」

 「それ、演劇部が作ってるのよ。凄くない?」

 「え!?これをですか!?」

 

 驚いた。このクオリティの物を学生の身で作成しているとは、北宇治の演劇部って結構やり手なんじゃないか?

 

 「いや、流石に一から全部って訳じゃ無いんだけどね。学校にある服や安いの買ってきて、装飾やら何やらアレンジ加えてるんだってさ」

 「だとしてもですよ。これは凄いです」

 「まぁここの吹部ってこれといった成果を挙げられて無いから業者に発注出来るほどの部費が下り無いのよ。でもサンフェス出場はここの伝統だから何とかして衣装を用意しないといけないワケ。そこで、梨香子先生が演劇部の顧問と交渉して作ってもらってるんだってさ」

 

 なるほど、衣装製作にそんな背景があったとは。演劇部には申し訳無いが我々の為にも是非とも頑張ってもらいたい。

 

 「ま、演劇部には私らのために働いてもらいましょ」

 「じゃあ、そろそろ始めよっか。ステップと振り付けの確認、歩幅の調整が終わったらそれぞれいつもの練習。この流れで良い?」

 『はい』

 

 喜多村先輩の呼びかけに鎧塚と一緒に返事をする。イベント当日に吹かないとは言え疎かにできないし、ここでサボって腕を鈍らせる訳にはいかない。気を引き締め練習に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 「きゃっ!」

 「おっと」

 

 翌日、リードの予備があるか確認しようとした所、楽器室で女子がチューバらしき物を手から滑り落としそうになった所を間一髪で助けた。

 

 「危ねぇ、大丈夫か?」

 「ありがとう、助かったよ~」

 

 危うく怪我しそうになった女子…確か長瀬とかいう名前だった気がする。

 名前を思い出していると入口から誰かが入って来た。

 

 「すまん。遅れた……野上に長瀬、何してるんだ?」

 「私が楽器落としそうになって助けてくれたんだよ」

 「ギリギリだったけどな」

 「悪いな野上、俺が早く来るべきだった」

 

 こちらに申し訳なさそうにするのは後藤、同じ一年の男子で長身。ちょくちょく話す仲だ。

 

 「いや、気にするな。後藤も用事あったんだろ?仕方ねぇよ」

 「そう言って貰えると助かる」

 「そうそう。後藤君が気にする事無いよ」

 

 こちらと一言交わした後共に微笑み合う後藤と長瀬…こいつら仲がいいだけじゃないな?付き合ってんのか?でも後藤がちょっと固い感じだしまだか…?

 そんな事を考えている内に後藤と長瀬が頷き合い此方の方を向いた。

 

 「なぁ、野上って南中出身だったよな」

 「?…おう」

 「ここの吹部について野上はどう思ってる?」

 

 音楽室が近いからか少し言いづらそうに、眼鏡の奥の瞳を鋭くさせこちらに問いかけてくる後藤。

 何かあったんだろうか。出身中学を聞いてくる事から察するにうち南中の連中が問題でも起こしたか。それとも別の何かか。

 

 「…結構緩い。あの人しか吹いて無いんだろうなって所はある。この空気感は昨日今日とかの次元では無いだろうな」

 「…野上はその辺りに関する不満を周りに言った事は?」

 「無い。でもそういう事を聞くって事は…」

 「うん。今、南中出身の人達が部活の先輩とちょっと揉めてるって事を何人かから聞いたんだ。野上君も南中なんでしょ?だからどう思ってるか聞いてみようって話をしてたんだ」

 「……なるほどな」

 

 二人から聞いた内容に内心顔を顰める。

 俺の出身校である南中は吹奏楽の強豪として有名な中学校だ。コンクールで上位の成績を収めるのに力を入れており、指導は当然厳しい。去年府大会で銀だった事も相まって今年こそはと息巻いているのが容易に想像出来る。あいつらにとって、北宇治のこのだらけ切った現状は好ましくないはず。

 

 「まぁ、南中とここじゃ全然環境違うからな。文句言いたくなるのもわかる」

 「だよね。はぁ…大事にならなければ良いんだけど…」

 「そうなりそうなら周りが止めると思うけどな。二年生とか」

 「でも何時までも止められるとは思わない。そう遠くない内に爆発するんじゃないか?」

 「それはあいつらの忍耐に期待しよう」

 

 俺も北宇治に来た南中のメンバー全員と親しい訳じゃ無い。関わりの薄い奴が揉めてるならそいつらで好きにやっててくれ。関わるときっと面倒な事になる。

 そう思いながら長瀬のチューバを眺める。何か形変じゃないか?

 

 「それより…それ、チューバ、だよな?」

 「これ?これはスーザフォンって言うんだって。サンフェスじゃこっちを使って演奏するんだよ」

 

 へぇ、スーザフォンって言うんだコレ。初めて見た気がする。

 

 「意外だな。知ってると思ってた」

 「俺、吹奏楽でも興味ない事はすぐ忘れるんでね。自分の事じゃないなら猶更」

 「わかるよ。興味ない所とか聞いてると眠たくなるもんね。授業じゃ歴史とか」

 

 歴史は本当に眠い。あの先生の話し方は人を眠りに誘う能力がある。

 長瀬に同意していると後藤が咳払いしてから話し始めた。

 

 「話を戻すが、俺達も今の吹部が良くないとは思ってる。でも、今の俺達に出来る事なんてほとんど無いだろう。だから今は地道に練習を重ねるべきだと思う」

 「だろうな。コンクールが近づけば、少しはやる気になるかも知れん」

 

 思っても無い事を口にしながら後藤に同意する。

 

 「言いたい事はそれ位だ。あすか先輩が待ってるから、俺達は練習に戻る。悪い。時間を取らせたな」

 「気にするな。こっちも思わぬ収穫があった」

 「じゃ、そっちもサンフェスの練習頑張ってね」

 「おう。もう落とさない様にしろよ」

 

 そう言って二人を見送り楽器室を後にした。

 二人から良い事を聞けた。内容は良いとは言えないが、自分も無関係とは言えなさそうな事を知れたのは大きい。

 

 (南中を中心に揉め事発生…か)

 

 そういえば最近他の連中と話して無かったなと気付く。偶には話を聞いてガス抜きが出来れば、もしくは解決の糸口が見つかればと思いながら自分の練習教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、リード確認するの忘れた」

 




今更ながらに主人公のプロフィールを載せておきます。

 名前:野上祐樹のがみゆうき
 誕生日:10月22日
 身長:175cm
 趣味:アニメ・ゲーム楽曲を吹く 野良猫探し 料理
 家族構成:父と母との三人暮らし
 好きな物:猫 旨辛料理 コーヒー
 嫌いな物:生トマト 梅干し
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