Drei DetonatioN ~鋼の咆哮~   作:日下部慎

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・スーパーロボット大戦30内でのタイムライン上は「覚-MEZAME-」で隼人・弁慶が加入した後になります。


Drei DetonatioN~鋼の咆哮~ 1章
第1話「熱風の来訪者」


「竜馬……」

 

 声が聞こえる。

 やつにしては珍しく、不安の色を隠せぬ声が。

 

「いったいこれから……何が起こるんだ……」

 

 答えねばならない。

 置き去りにしてしまう、友へ。

 これから起きる出来事はとても言い尽くせないが……俺が抱いている気持ちだけは伝えることができる。

 だから俺は答えた。

 

「すばらしいことだよ」

 

 そう、素晴らしい事だ。

 

 父の言う通り……鍛えて、強くなり、そして……

 ゲッターに乗って、人類のため……仲間のため……使命のために……

 戦い続けた日々で、ついぞ叶わなかった、俺の――

 

 

***

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 未来から時空を越えてやって来る侵略者から地球を守るため、自分たちも未来へと飛んだ流拓馬、カムイ・ショウ、山岸獏のアークチーム。

 未来で目的を果たし、過去に戻るべく亜空間に飛び込んだ彼らは、思いがけず別世界に招かれることになる。

 

「ここは……俺たちは戻れたのか!?」

 

 時空の歪みから飛び出したゲッターアークを出迎えたのは、青い空、白い雲、そして緑の大地。

 

「地球だ!

 戻ってきたぞ……やったな拓馬、カムイ!」

 

「ああ!

 それに見ろよ、浅間山だ!

 向こうには早乙女研究所もあるぜ!」

 

 大仕事を終えて、無事に地球へ帰還した喜びをわかち合う拓馬と獏。

 しかしカムイは違和感に気付く。

 

「待て。研究所の姿が、俺の知るものとは違う。

 それに、これは……周辺の地形データもおかしい。

 記録してある浅間山のデータと、かなり食い違いがある」

 

「どういうことだ、そりゃあ!?」

 

「まさか、違う時代に来ちまったってことか!?

 よく見りゃ、研究所も廃墟みたいになってるぜ!」

 

 カムイは早乙女研究所に通信を試みる。

 だが研究所からの応答はなかった。

 アークチームの顔に焦りの色が広がる。

 とはいえ、あまり大きな驚きはなかった。この異常事態に対して、彼らには心当たりがあったからだ。

 

「くそっ、やっぱりギリギリで亜空間に飛び込んだのは無茶だったか」

 

 もともと敵基地の自爆から逃れるために、どこへ跳ぶかも分からぬ亜空間へ飛び込んできたのだ。地球へ戻れただけでも御の字と言えよう。

 拓馬は納得するが、しかし獏の意見は少し違った。

 

「いや……途中で黒い光に飲み込まれただろ。

 俺はあれが原因だと思うぜ。

 飲み込まれる時に、人の声みたいなのが聞こえたしな」

 

「人の声だと?」

 

「拓馬、カムイ、お前らには聞こえなかったのか?」

 

 現状を把握するために話し合う3人。

 しかし、ゆっくりと語らう時間は彼らには与えられなかった。

 最初に気がついたのは、軽い予知能力を持つ山岸獏だ。

 

「――おい、なにか来るぜ!」

 

「こちらのデータにないロボット……6機か」

 

 それは彼らの知らない、この世界のロボット。

 人類と敵対する組織《クエスターズ》が保有する戦闘兵器・オルクスーラだ。

 ゲッターアークのもとへ飛来してきたオルクスーラの一団に対して、カムイは応答を求める。

 しかしオルクスーラは答えない。通信を無視し、自らの射程に入るや否や、一斉に砲撃を始める。

 

「避けろ、拓馬!」

 

 放たれた砲弾を、アークはすんでのところで避ける。

 

「うおっ!? なにしやがる、てめえら!」

 

 そんな拓馬の怒声に答えたのは、攻撃を仕掛けた敵機ではなく、獏だった。

 

「駄目だな……たぶん人が乗ってないぜ。

 奴らの動きからは、意志を感じない」

 

「ちっ、そういうことかよ。

 それならそれで、遠慮なくぶっ壊せるってもんだ!」

 

 拓馬はゲッターアークを敵陣に突っ込ませる。

 そんな向こう見ずな拓馬をカムイは冷静に諌める。

 

「待て拓馬! 連中の所属も戦力も不明だ。

 それにエネルギー残量も半分程度……あまり余裕はない。

 ここは慎重になった方がいい」

 

「バカ野郎!

 ケンカ売られて、黙っていられるかってんだ!」

 

 アークは自らの両肩から2丁の手斧を引き抜いた。

 そのまま急加速で敵機に接近すると、最も近くにいる1機に向けて、迷いなく振りかぶる。

 

「ゲッタァァァ! トマホォォォォォクッ!!」

 

 縦、そして横に。

 いびつな金属音を奏でながら、2丁の戦斧がオルクスーラの胴部を引き裂く。

 しかし傷は負わせたものの、その機能を停止させるには至らなかった。

 

「こいつ……硬え!」

 

 オルクスーラのサイズはアークと同程度に大きく、硬くて分厚い装甲を持つ。

 拓馬はすぐに目の前の敵が難敵だと認めた。

 

「なら、こいつはどうだ!」

 

 ゲッターアークの頭部に光が集まる。生命の息吹を感じさせる、新緑の光が。

 拓馬は叫びとともに、その力を解き放つ。

 

「ゲッタァァァ! ビィィィィムッ!」

 

 敵機に向けて一直線に伸びる緑色の光線。

 必殺の意志を込めて放たれた一撃はしかし、標的に到達することはなかった。

 なぜなら近くにいる他の機体が間に入って庇ったからである。

 

「なにっ!?」

 

 味方機に庇われたおかげで攻撃を受けなかった機体は、正確な反撃をアークに向けて行う。

 オルクスーラの胴部から放たれる2本の白いビーム。

 拓馬は咄嗟に回避行動をとるが、避けきれなかった。ビームの1本がアークの脇腹に命中する。

 

「ぐうっ!」

 

「こりゃあまずいぜ、拓馬! ダメージがでかい!」

 

「直撃を避けてこれか……!」

 

 アークチームの3人に緊張が走る。

 拓馬も油断したつもりはなかったが、量産型の無人機が味方を庇う動きをするとは思っていなかった。

 戸惑い、思案する拓馬に対して、オルクスーラは人間のように一呼吸を置いたりすることなく即座に次の行動へと移る。

 そんな敵機を見て、カムイは声を出す。

 

「奥からも来るぞ! 囲まれるな!」

 

 拓馬はカムイの忠告の通りに、ゲッターアークを飛ばせて敵機から距離をとろうとする。

 しかし敵はそれを許さない。

 一切の迷いがない最速の動き出し。

 無駄のない挙動。

 そして一糸乱れぬ連携。

 まるで全体でひとつの生き物であるかのような、完璧に統率のとれた動き。

 拓馬はそんな敵の動きに既視感があった。

 

「この動き……まるで未来で見たゲッター軍団じゃねえか!」

 

 拓馬たちが時空間移動でこの地へ来る直前に見ていた光景。

 それは遠い未来の宇宙戦争。

 そこでは無数のゲッターロボが人類の敵と戦っていたが、彼らゲッター軍団は個の存在を否定し、ひとつの大きな意志のもとに思想・行動が統合されていた。

 拓馬と同じ感想は獏も抱いていた。

 

「たしかに似てるぜ。

 って事はやっぱり、俺たち違う時代に戻って来ちまったのか?」

 

「今は話している余裕はないぞ、拓馬! 獏! 完全に囲まれた!」

 

「くそっ……!」

 

 追い詰められたゲッターアーク。

 もはや一か八かの勝負に出るしかないと、3人は覚悟を決める。

 その時だった。

 グニャ、と周囲の景色が歪む。

 

「なんだ!?」

 

「この感じは……あの時と同じ……」

 

 驚く拓馬と、何かを察知する獏。

 それを察知したのはオルクスーラも同じだった。アークを囲んでいた6機は何かを警戒するように距離をとる。

 次の瞬間、アークのすぐ近くに黒い球が出現した。

 

「あれは! ワープの途中で俺たちを包んだ黒い光か!」

 

 まるで全ての光を逃さず奈落へと引きずり込むかのような、果てしなく昏い漆黒の輝き。

 その黒い球が出現していたのは、ほんの数秒のことだった。すぐに小さくなって消滅し、景色の歪みも収まる。

 そうして黒い球が消えた後には、1体のロボットが残されていた。

 

「なんだ? ずいぶん女らしいロボットだな」

 

「あの黒い球から現れたということは……俺たちと同じように、強制的に転移させられてきたか」

 

「なら、協力できるかもしれんな!」

 

 現れた機体は人間の女性にとても近いフォルムで、法衣のような緑色の装甲には美しい装飾が施されていた。しかし決して華美な意匠ではなく、荘厳さと気品を見る者に感じさせる。

 それは拓馬たちが居た世界にも、この世界にも存在するはずのない機体。

 魔装機ノルス・レイだ。

 

「えっ? ここ、どこ?

 空がある。ってことは……あたし、地上に来ちゃったの?」

 

 魔装機の操縦席に座る少女の名は、セニア=グラニア=ビルセイア。

 セニアは突然見知らぬ場所に転移させられ、混乱している。

 そんな彼女にもオルクスーラは攻撃を仕掛ける。

 砲撃がノルスの足元に着弾。衝撃で地面が揺れて、土埃が舞った。

 

「ちょ、ちょっと!

 いきなり撃ってくるなんて、何のつもり!?

 いや、この動き……人工知能?」

 

 優れた技術者であるセニアは、オルクスーラのAI制御を一目で見抜いた。

 そこへオープン回線で、獏からの通信が入る。

 

「そこのロボットのパイロット、聞こえるか?

 俺たちもお前と同じだ。黒い光に飲まれて転移してきた。

 奴らの正体は分からん!

 とりあえず一緒に戦ってくれるか!?」

 

 獏の提案に、セニアは即答した。

 

「いいわよ!

 よく分からないけど、敵なんでしょ?

 よろしくね、ゲッターチーム!」

 

「ゲッターを知ってるのか!?」

 

「そのようだな」

 

「理解が早くて助かるぜ!」 

 

 意外な返答に驚くアークチームの3人。

 かつて地底世界ラ・ギアスでは地上人が大量に召喚される事件があり、セニアはその際に兜甲児からゲッターロボの特長を聞いていたのだ。

 そしてラ・ギアスの戦乱を生き抜いたセニアには、緊急事態への耐性があった。

 セニアは躊躇うことなく敵対者へと攻撃を仕掛ける。

 

「忌むべき兇眼(きょうがん)、受けてみなさい! イビルアイ!」

 

 ノルス・レイの両の瞳が輝き、光弾が発射される。

 オルクスーラは避けようとするも、光弾はセニアの視線に導かれて標的を追尾。避けきれずに命中し、着弾点に爆発を引き起こした。

 しかし……

 

「えっ、うそ!? 効いてない!?」

 

 全くの無傷……というわけではなかったが、かすり傷と言って差し支えない程度の損傷だった。

 ノルスは本来、性能が足りず儀礼用に使われていた魔装機だ。

 それに改修を行い、戦闘に耐え得るレベルへと引き上げらてはいるが……お世辞にも性能が高いとは言えない。

 これに焦ったのはむしろ、アークチームの3人だった。

 

「おい、あのロボット弱いぞ!」

 

 戦力にならないだけならともかく、この状況で足手まといが増えるのは致命的だ。

 ノルスの性能とセニアの腕では、オルクスーラの正確無比な射撃を避けられない。

 ノルスに向けて放たれる砲撃。それをアークが庇う。

 アークの肩の装甲が吹き飛び、配線が露出した。

 

「ぐうっ……!

 くそっ、どうする……どうすりゃいい……!?」

 

 こうなっては、もはや万にひとつも勝機はない。

 厳密に言えば、今からでもセニアを見捨てて単機で逃げれば生存の可能性はあるだろう。

 しかしその選択肢は、拓馬にはなかった。

 たとえ一瞬でも自分たちの呼びかけに応え、共に戦ってくれた者を、見捨てることなどできはしない。

 絶対に何とかする――拓馬は打開策を求めて必死に考え続ける。

 それに応えたのは、カムイの声だ。

 

「拓馬、キリクだ! 1機なら抱えられる!」

 

「……!

 そうか、なるほどな! オープン、ゲット!」

 

 カムイの考えを理解した拓馬は、即座にゲッターアークを分離させる。

 形態を変え、どのような状況下でも対応できるのがゲッターロボの持つ最大の強みだ。

 カムイの操るゲッターキリクは腕をドリルに変化させて、地中を高速で突き進むことができる。

 ノルスはゲッターロボよりも一回り以上は小さい。

 これなら抱えたまま地中に潜り、敵の包囲から逃れることが可能だ。

 アーク号、キリク号、カーン号の3機の戦闘機となったゲッターロボは、再び合体せんと中空で集合する。

 

「チェンジ! ゲッターキリク!」

 

 ……が、その直前。

 オルクスーラのビームがカーン号に命中する。

 

「うおおおおおおっ!?」

 

「獏!!」

 

 煙を吹き上げ墜落するカーン号。

 これがゲッターロボの持つ最大の弱点。

 合体できなければ無力。ただの3機の戦闘機でしかない。

 事ここに至り、カムイの口から力のない声が漏れる。

 

「これは……もう……」

 

 その先は噛み殺した。

 しかしカムイが何を言おうとしたかは、誰もが分かっていた。

 ゲーム・オーバーだ。

 どれだけカムイが頭を働かせようと、何もやれることが浮かばない。

 その認識は拓馬も同じだった。

 

「……ちっ」

 

 そこで拓馬が行ったのは、通信だった。

 セニアの乗るノルス・レイに向けて声をかける。

 

「あんた、名前は?」

 

「え? セニア……あたしの名前はセニア……だけど」

 

「そうか。逃げろセニア。ここは俺らに任せろ」

 

「ちょ、ちょっと、それって……!」

 

 損傷のある敵機にアーク号を突っ込ませれば、撃墜できるかもしれない。

 それが他の5機の足止めにも繋がるかもしれない。

 たとえ勝機がどこにもなかったとしても。

 命の灯が尽きるまで、その闘志は消えない。

 覚悟はとうの昔に決まっている。拓馬は強く操縦桿を握った。

 

 ――その時、風が吹いた。

 

 拓馬の目に映ったのは、大空を横切る白銀。

 こちらに迫る敵機を横切るようにして、通り過ぎる何かがあった。

 1秒後、それが飛来したロボットによる、通り過ぎざまの斬撃であると気がつく。

 理解にわずかな時間を要したのは、それがあまりに(はや)すぎたからだ。

 切り裂かれた敵機は少し遅れて爆散する。

 風のように現れ、爆風を背に受け、空に佇む白銀のロボット。

 

「さ――」

 

 その姿を目にしてセニアが声をあげる。

 

「サイバスター!!」




使用している挿絵は、ほいみん氏(https://x.com/frosted_hoim_in)に描いて頂きました。
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