Drei DetonatioN ~鋼の咆哮~   作:日下部慎

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第4話「竜の血、人の心」

 カムイとザガート。

 二人は対峙しただけで互いの力の差を理解した。

 ゲッタードラゴンの後継機であるD2は、安定性を高める代わりに出力を抑えられている。だが既にドライストレーガーの設備で強化されており、機体性能に不足はない。

 そしてロボットを操る技能に関しては、ザガートよりもカムイの方が遥かに上だ。

 ……しかしこのセフィーロにおいて、それらは大きな問題ではない。

 尋常ならざる決意をもって戦いに臨むザガートと、未だ迷いを抱えるカムイ。

 どちらが強いかは明らかだった。

 そしてそれは、目の前でザガートと相対するカムイ自身が、誰よりも強く感じていた。

 

(この男には勝てない……いや、今の俺では戦いにすらなるまい)

 

 一方のザガートも、カムイの迷いを感じ取っていた。

 そんな『心』では自分の相手ではない。

 一瞬で蹴散らして、それで終わりだ。

 ザガートは黒い剣をカムイの乗るゲッターD2に向けて掲げる。

 

稲妻招来(サンダス)!」

 

 声とともに剣が光り、次の瞬間、上空から雷光が落ちる!

 (まばゆ)い稲妻が大気を裂いて、瞬きの間にゲッターD2に迫る。

 が――D2はそれを回避した。

 

「外した……?」

 

 予想外の結果に怪訝(けげん)な表情のザガート。

 それもそのはず。このセフィーロは命中の成否すらも『当たると信じれば当たる』世界だ。

 ザガートは確実に命中すると思っていた。

 そして今のカムイが「自分はザガートの攻撃を回避できる」と信じられるはずがない。

 故に、この結果は不可解だった。

 ザガートは確認するため、再び魔法を唱える。

 

「……衝電破撃(アスキス)!」

 

 突き出した魔神(マシン)の左手から六芒星が現れ、電熱を帯びた衝撃波が放たれる。

 しかしそれもD2はすんでのところで逃れた。

 まるで衝撃波が来ることが分かっていたかのように。

 眉をひそめるザガート。

 対するカムイの頬には冷や汗が伝う。

 

「この威力、一度でも受ければ終わりだな……だが当たらなければ関係ない!」

 

 その後、ザガートが他の魔法や剣で攻撃するも結果は同じ。

 明らかに異常な事態だ。

 しかしザガートはそのカラクリを、おおむね把握しつつあった。

 似たような奇妙な出来事は今回のドライクロイツとの戦いで何度かあった。

 

(異世界の者達も持っているのだ……セフィーロの『魔法』に近い『何か』を)

 

 それが何なのかはザガートには分からない。

 だが、この未知の現象への対処法なら、すでに分かっている。

 

「ならば当たるまで繰り返すまで。そうすれば、いつかは当たる」

 

 そうやって彼はドライクロイツの戦士たちを撃墜してきたのだ。

 尽きることを知らない魔法の雨嵐が、カムイのゲッターD2に襲いかかる。

 

 

***

 

 

 その戦いを遠くから見守る者がいた。

 ギリアム・イェーガー。

 彼は大破して地面に倒れたゲシュペンストの(かげ)で、手にした通信器を口元にあてている。

 

「次、火の魔法が4発。右前方に旋回の後、真後ろへ。2秒後だ」

 

 ギリアムは通信器を使って、カムイに指示を送る。

 彼は獏と同じく予知能力の持ち主だ。

 だが自分の意思で力を使えない獏と違って、ギリアムはその扱いに長けている。

 カムイが彼の予知を信じ、機体を操る自らの技術を信頼し続ける限りは、撃墜されることはない。

 だが……

 

「くっ……」

 

 ギリアムはくらりと目眩(めまい)を覚え、背中を愛機の残骸に預ける。

 セフィーロの魔法と同様、高精度の予知を続けるには精神力を消耗する。

 

(長くは()たんぞ、アークチーム……)

 

 ギリアムは力を振り絞るように空を見上げた。

 

 

***

 

 

 カムイのゲッターD2に攻撃を続けるザガート。

 そのザガートの視界の端に、ドライストレーガーから発進するクジラ型の航空機が映った。

 ザガートはそこに警戒の目を向ける。

 

(別働隊……まさか城にいる『柱』を狙う気か……!?)

 

 そんなザガートの懸念をよそに、クジラは城とは逆方向に飛び去っていく。

 クジラがどこに向かっているのかは分からない。

 だがザガートにとっては、エメロード姫の守り以上に優先する事は何もない。

 

 セフィーロの人間には『柱』に危害を加えることはできないが、異世界や並行世界の者ならば可能だ。

 つまり伝説の魔法騎士(マジックナイト)でなくても『柱』は殺せるのだ。

 そして城を守る結界が壊され、エメロードのもとに辿り着かれることがあれば、彼女は抵抗せずに自らの死を受け入れてしまう。

 それゆえ、ザガートが最も警戒しているのは「自分を無視してエメロードの所に行かれる」ことだった。

 

(……城に向かっているのでなければ、構わない)

 

 この城の前を離れることはできない。

 ザガートは戦場から遠ざかるクジラを無視して見送った。

 

 

 

 カムイはザガートの攻撃を必死に回避し続ける。

 ギリアムの予知によるサポートがあるとはいえ、口頭での指示に対して、完璧に指示通りの操縦を続けるのは困難を極める。

 ……ただしそれは、普通のパイロットであればの話だ。

 

「訓練で飽きるほど乗った機体だ……俺よりD2(こいつ)を上手く操れるやつはいない!」

 

 寸分の狂いもない機体の操作を見せるカムイ。

 もはやそれは思考の必要がない反射の域。

 幼い頃から繰り返された厳しい訓練と、カムイの天稟(てんぴん)。両者が合わさった結果によるものだ。

 ……そうして手は動かしながら、カムイは考える。

 このセフィーロでは、迷いのないザガートが強い。

 エメロード姫を守る……それだけを自らに課して、彼はそれ以外の一切を思考から排除したのだろう。

 

 だが――とカムイは思う。

 

 大切な一つのために全てを捨てる。

 それだけが“心の強さ”なのか?

 

(違う……それは違う、はずだ)

 

 その思いはカムイ自身の直感だったが、根拠と言える要素もある。

 セフィーロの『柱』はエメロード姫だ。

 神官(ソル)ザガートではない。

 ということは、ザガートよりもエメロード姫の方が強い“心の力”を持つはずなのだ。

 しかしエメロードはザガートのためだけに生きることも、セフィーロの人々のためだけに祈り続けることもできなかった。

 彼女は一つだけを選ぶことができなかったのだ。

 ならば「一つのために全てを捨てる」が唯一の正解とは考えにくい。

 

(それでは俺はどうだ……?)

 

 カムイは自問自答する。

 だが考える時間は少ない。

 正確無比にゲッターD2を操りながら、彼は静かに悟っていた。

 リミットはギリアムの予知が途絶えるまで。

 それまでに答えを出せなければ、自分はここで死ぬのだと。

 

 

***

 

 

 ゲッターアークと真ゲッタードラゴンは、トマホークで激しい打ち合いを繰り広げていた。

 空中に鳴り響く、金属同士が削り合う異音。

 数十と舞い散る火花。

 一振りごとに重い唸りをあげる巨大な戦斧を、拓馬は2本の手斧で巧みにいなして、真ゲッタードラゴンの懐に入り込もうと迫る。

 しかし竜馬はそれをさせない。

 刃の反対側にある石突(いしづき)での薙ぎ払い、柄を握った拳でのかち上げ、肘打ち、蹴り……とにかく使えるものは何でも使ってアークを弾き返す。

 それでも果敢に挑み続ける拓馬に、隼人が疑問を投げかける。

 

「拓馬、お前は何を考えている?

 俺たちを止めてもザガートが止まらなければ意味がない。

 だがザガートのやつをカムイが相手するのは無理だ」

 

 その問いに拓馬は答える。

 

「カムイなら心配いらねえ。あいつの操縦の上手さはピカイチだ。

 ザガート相手だろうが、いくらでも時間を稼げるだろ!

 俺らが時間を稼げば、あとは獏が帳尻を合わせてくれるって寸法よ!」

 

 言いながら拓馬のゲッターアークは、攻撃を受けると見せかけつつ手斧を捨て、無手となって突撃する。

 身軽になったアークはついに真ゲッタードラゴンの戦斧をかいくぐり、その懐へと肉薄した。

 

「くらえっ! バトルショットカッタァァァッ!!」

 

 腕の外側についた刃での斬撃。

 しかしその刃は真ゲッタードラゴンに届かない。

 アークが手斧を捨てたのを見て自らも戦斧から手を離していた真ゲッタードラゴンは、その手でアークの拳を掴んでいた。

 拓馬の先程の答えに弁慶が言葉を返す。

 

「仲間を信じてるのか……

 ここはセフィーロだからな、お前の動きの良さも納得だ。

 ……だが問題があるぞ拓馬」

 

 それを竜馬が引き継ぐ。

 唸りをあげて繰り出される鉄拳とともに。

 

「お前は俺たちには勝てねえ!

 一人乗りのゲッターなんざ怖かねえんだよ!」

 

 真ゲッタードラゴンの拳がアークの顔面に突き刺さる。

 力強く打ち下ろされた拳をまともに受けたアークは、一直線に吹き飛ばされ、轟音をたてて地面に激突する。

 

「ぐうぅぅぅぅっ!」

 

 舞い上がる土埃の中、身を起こそうとするアーク。

 そのアークの前に悠然と降りてくる真ゲッタードラゴン。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 拓馬も善戦してはいるが、力の差は明らかだった。

 一人ではゲッターロボの力を発揮できない。

 高みから見下ろすように隼人は拓馬に告げる。

 

「そもそも、ゲッターロボの性質を踏まえるまでもない話だ。

 セフィーロでは心の力が全てを決める……

 なら1人より3人の方が圧倒的に有利だ」

 

 理屈で考えればその通り。

 拓馬もそれは理解しているが――

 

(いや……そうじゃねえ。何人が(たば)になろうとザガートは跳ね返した。

 もっと根っこのところで、俺は……)

 

 マサキからプラーナの修行を受けた拓馬は、以前よりも人の発する“気”をハッキリと感じ取れるようになっていた。

 目の前で自分を見下ろす真ゲッタードラゴン。

 その操縦席の中から溢れ出す気迫が、拓馬には見える。

 それは際限なく燃え上がる大火(たいか)

 無限に噴き出し続ける炎のようだった。

 

(でかすぎる……)

 

 そのあまりの大きさに拓馬は誇らしさすら感じてしまう。

 だが今の拓馬にとっては絶望的な壁だ。

 どうすればこんなものを越えられるのか……

 しかも、それだけではない。拓馬は気が付いていた。

 相手はまだ、その全力を自分に向けていない――

 

「……冗談じゃねえ、気持ちで負けてられるか!」

 

 拓馬の声とともにアークは跳ね起き、真ゲッタードラゴンに正拳突きを放つ。

 アークの拳は真ゲッタードラゴンの顔面を割る。

 しかしほぼ同時に、真ゲッタードラゴンの拳もアークの頭部に突き刺さっていた。

 

「があぁッ!!」

 

 より大きなダメージを受けたのはアークの方だ。

 立ち上がったばかりのアークは再び地面に倒された。

 武道家としての動きでは、拓馬の方が洗練されている。

 だが竜馬はそれを、数々の死線を経て磨き上げられた勝負勘で呑み込んでいく。

 拓馬の実戦経験が少ないわけではないが、その点においては竜馬が遥かに上回る。

 

「くそっ……だからって負けられるかよ……!

 俺は! 絶対に負けねえ!」

 

「うるせえ!!」

 

 起き上がろうとするアークの顔に再び真ゲッタードラゴンの拳がめり込む。

 そのまま真ゲッタードラゴンはアークに馬乗りになると、幾度となく拳を打ち据えていく。

 

「戦いを止めろだと?

 てめえ、それがどういう事か分かってんのか!?」

 

 竜馬の怒号とともに鉄の拳が降りそそぐ。

 拓馬は両腕を上げて防ぐが、激しい衝撃は防御を貫いてアークの操縦席にまで伝わってくる。

 

(重い……マズい、意識が飛ぶ……!)

 

 一撃ごとに、全身がバラバラになるかのような振動が拓馬を襲う。

 それでもなおガードを崩さないアークを、力ずくで押し潰そうと、竜馬は容赦なく拳を打ち据えていく。

 

「ザガートの野郎は何もかも覚悟した上でやってる……

 だったら、こっちも全力でぶちのめす!

 それが男の礼儀ってもんだろうが!」

 

 アークの腕部装甲がひしゃげ、上から拳で押し込まれた腕は胸部にまでめり込んでいく。

 しかし、どれだけ打ち込まれても拓馬はガードを解かない。

 ……すでに拓馬の意識は混濁している。目は霞んで、前はろくに見えていない。

 それでも諦めてはいない。

 絶対に負けられない理由(ワケ)が、拓馬にはある。

 

「分からねえならハッキリ言ってやる。

 てめえのやってる事は、ザガートへの侮辱だ!」

 

 ひときわ強く真ゲッタードラゴンの拳が打ち込まれる。

 その鉄の拳の下で。

 ゲッターアークの操縦席で、拓馬は口を開く。

 小さく、絞り出すように。

 しかし強い想いの籠もった言葉が紡がれる。

 

「だってそんなの……悲しいじゃねえかよ……」

 

「……なに?」

 

 ハッとした顔で、竜馬は動きを止めた。

 そして拓馬の乗るアークをまじまじと見る。

 まるで、知らない相手と初めて出会ったかのような目で。

 

「お前……」

 

 二の句をつげない竜馬。

 それに代わって、突如として大声を張り上げた者がいた。

 真ゲッタードラゴンの二号機操縦席に座る、神隼人(じんはやと)だ。

 

「きさまっ! それでも竜馬の息子かあっ!!」

 

「隼人……!?」

 

 真ゲッタードラゴンの右腕がドリルに変形し、ゲッターアークに突き下ろされる!

 アークは両手でドリルを掴んで止めた。

 が、回転するドリルはガリガリと音をたててアークの指を削っていく。

 激昂した隼人は、さらに力を込めてドリルを突き込む。

 少しずつアークの喉元に迫っていくドリルの先端。

 その下で拓馬は静かに低く声を発した。

 

(じん)さんよ、あんた何か勘違いしてんじゃねえのか」

 

「なんだと……むっ!?」

 

 徐々に、ドリルの回転が弱まっていく。

 アークの手に(みなぎ)る力によって。

 

「俺は流竜馬(ながれりょうま)の息子で……」

 

 ググッ、と真ゲッタードラゴンが押し返される。

 ドリルの回転はアークの握力で完全に停止する。

 そして拓馬は――咆えた。

 

(ながれ)りょうの息子だあああぁぁぁっ!!!」

 

 バキン、とドリルの先端が割れる。

 アークは馬乗りになっていた真ゲッタードラゴンを押し返して、立ち上がった。

 

「くっ――!」

 

 隼人の喉から焦りの声が漏れる。

 そんな隼人と入れ替わるように声をあげたのは、弁慶だ。

 

「甘ったれたことをぬかすな! ヒヨッコが!!」

 

 雷鳴のような一喝。

 ()()がよくて大らかな普段の弁慶からは想像のできない、まるで鬼のごとき怒声だった。

 

「ここは戦場。何を言おうが力がなけりゃあ、ただのガキのワガママだ!」

 

 真ゲッタードラゴンの手がドリルからポセイドンの頭部に変形する。

 

「吹っ飛べ! ゲッターサイクロン!」

 

 突き出した真ゲッタードラゴンの両手から放たれる暴風。

 その風はゲッターアークの巨体を軽々と上空に吹き飛ばす。

 すぐに真ゲッタードラゴンの手は通常の形に戻り――

 

「フィンガーネット!」

 

 続いて、真ゲッタードラゴンは宙に浮いたアーク目がけて、指先から投網を射出。

 強靭なネットがアークの全身を絡め取る。

 そして弁慶は射出した網の手元を強く握り、力を込めて引き落とす!

 

「武蔵直伝! 大・雪・山おろしぃぃぃぃっ!!」

 

 上空から一気に地上へと叩きつけられるゲッターアーク。

 弁慶が先代の三号機パイロットから伝授されたその投げ技は、機体の重量をも威力に変換し、想像を絶する衝撃を敵機とその操縦者に与える。

 拓馬ですら、一瞬で絶命してもおかしくはない。

 だが――弁慶は信じられないものを見た。

 地面に激突する瞬間、アークは網の中で転がり、そして両手を強く地面に叩きつける!

 弁慶は驚愕に目を()いた。

 

「う、受け身だと……!?」

 

 そう、柔道の受け身だ。

 網の中という不自由な状況でありながら、拓馬は完璧な受け身をとってみせた。

 受け身で地面を叩いたことで舞い上がる粉塵。

 もうもうと煙る土埃を、弁慶は注視する。

 その目が捉えた。

 まず土煙の中から出てくる手、それに続いて猛然と現れるゲッターアークの体。

 弁慶は警戒し、身構えていた。

 ゲッターアークの――拓馬の動きを。

 しかしそこから先、弁慶は何ひとつ反応することができなかった。

 重心を低く、滑り込むように懐へ入り込む足(さば)き。

 下から上へと跳ねて、相手の重心を崩す腰の動き。

 腕を掴んで、自らの肩口に巻き込むような引き込み。

 それら一連の流れは全てがよどみなく、完璧に連動していた。

 

 一本背負投(いっぽんせおいなげ)――

 

 機体のコントロールを失い、宙に浮く中で弁慶は思った。

 なんて美しいんだ、と。

 その投げの動作は弁慶がこれまで目にした中で最も流麗でありながら、同時に最も力強かった。

 

「おおおおぉぉぉぉぉッ!!」

 

 真ゲッタードラゴンは背中から地面に叩きつけられた。

 その操縦席で弁慶は衝撃に息を詰まらせる。

 

「ぐ――かはッ……!」

 

 大の字で仰向けに倒れる真ゲッタードラゴン。

 その頭部の隣に立ち、見下ろすゲッターアーク。

 弁慶が見上げたアークの姿は、猛々しい気魄(きはく)が全身から(ほとばし)るようだった。

 そして拓馬は先に言われた弁慶の言葉に答える。

 

「だったら見せてやろうじゃねえか!

 3人まとめてかかって来やがれ!!」

 

 たったひとりが乗り込んだゲッターロボで。

 そう、堂々と啖呵(たんか)を切ってみせた。

 

 その時。

 ざわり、と気配が変わった。

 

「――!?」

 

「竜馬……!?」

 

 誰より早く、隼人と弁慶がそれに気がついた。

 自分たちが乗る機体、その一号機の操縦席の中から、熱く燃え(たぎ)る闘志が膨れ上がっていることに。

 流竜馬は肉食獣を思わせる獰猛な笑みを口元に浮かべて、言った。

 

「俺に代われ、弁慶」

 

 

***

 

 

 壊れた漆黒の機体の(そば)で、ギリアム・イェーガーは膝をついた。

 

「く……!」

 

 視界は霞み、息を切らし、思考が定まらない。

 連続した予知で、ついに彼の精神力は底を突いた。

 震える手で通信器を握るギリアムは、カムイに最後の通信を送る。

 

「すまん、カムイ……もう未来は()えない。あとは……自分を信じて……」

 

「――わかった。礼を言う」

 

 カムイは短く答えた。

 眼前の黒騎士のごとき魔神(マシン)を見据えると、操縦桿を強く握る。

 ……カムイの答えは、まだ出ていない。




【知らなくてもいいけど知るともっと面白いかもしれない話】
・ゲッターアーク原作漫画版の10話タイトルが「竜の血 人の心」。ここではカムイがハチュウ人類と人間とのハーフという境遇により、恐竜帝国と人間との間で板挟みとなる様子が描かれている。アニメではあまり板挟みという印象は受けない演出に変えられている。

・スパロボ30のギリアムは精神コマンド「先見」を持っており、攻撃を必ず回避する状態を味方に付与できる。

・稲妻招来(サンダス)は魔法騎士たちがセフィーロに来た直後、いきなり湧き出てきた魔物をクレフが倒した魔法。

・衝電破撃(アスキス)は第2部で成長したアスコットが使用した魔法。導師クレフから教わった。

【挿絵について】
使用している挿絵は、ほいみん氏(https://x.com/frosted_hoim_in)に描いて頂きました。
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