Drei DetonatioN ~鋼の咆哮~   作:日下部慎

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「竜王降誕 前編」

 インド北西部、ジルクスタンとの国境にほど近い都市アムリトサル。

 現在、ここには武装したテロリスト集団が襲来していた。

 年季が刻まれた煉瓦造りの住宅、あるいはモダンなガラス張りの家屋……

 その伝統と近代的価値観が融合した多層的な街並みは、今は雑多なロボット集団によって踏み荒らされていた。

 それらは主にジルクスタン王国製のKMF(ナイトメアフレーム)や、AT(アーマード・トルーパー)と呼ばれる並行世界から来たロボットによる混成部隊だ。

 

「へへっ、こいつで吹き飛びやがれっ!」

 

 スコープドッグという名のATが手にした4連装のロケットランチャーが放たれ、警備隊のジムⅢが周囲の建物もろとも破壊される。

 飛び散り、周囲に降り注ぐ装甲素材や煉瓦の破片。

 逃げ惑う人々と、白煙をあげるモビルスーツの残骸。

 そんな中をテロリスト達は我が物顔で闊歩する。

 彼らが目指す先は、四角い人工池の中央に浮かぶようにして建立している、金色に輝く寺院だ。

 

「ようし、お目当てはコレだな」

 

「ひゅう! ギンギラギンじゃねえか!」

 

 黄金寺院(ハリマンディル・サーヒブ)

 スィク教の総本山となる重要な宗教施設だ。

 

「これに750kgの純金が使われてるってマジかよ!」

 

「よし、運ぶぞ! お前ら、そっちのカド持て!」

 

 モビルスーツ程度の大きさのある寺院に、4メートル以下のスコープドッグ数体が取り付いて持ち上げようとする。

 彼らテロリストがアムリトサルを襲撃した理由は、この金箔で覆われた寺院を手に入れ、換金して活動資金とすることだった。

 750kgもの金を換金すれば、単純計算でおよそ5,250万ドルほどの大金になる。

 

「へへ……これだけあるなら、ちょっとくらい削り取っても……」

 

 ここにいる者たちは雇われの傭兵だが、スコープドッグに乗る荒くれ者たちは実に生き生きとした様子で破壊や略奪を行っていた。

 彼らは近年頻発している『次元境界線歪曲現象』により、この世界に迷い込んできた並行世界の兵士だ。元の世界ではギルガメス連合という惑星連合国家に所属する軍人である。

 しかし彼らは元の世界に戻ろうとはせず、この世界で傭兵稼業を満喫している。

 

 その一方で、意気揚々と寺院に手を付ける最低野郎共(ボトムズ)を、味方であるにもかかわらず苦々しい表情で見る者たちがいる。

 KMFゲド・バッカに乗るジルクスタン兵たちだ。

 

「こんな事までしなければならんとは……我々、誇り高いジルクスタンの戦士が……」

 

 ジルクスタンでは現国王が出奔して不在となっているために、ひどく政情不安の状態だ。

 元からろくな産業がなく財政を傭兵稼業に頼りきっていた国ではあったが、国家の統制を失った今、もはやまともに契約先も選べない有り様だった。

 そんなジルクスタン兵に向けてAT乗り(ボトムズ)達から声がかかる。

 

「おい! 見てないで手伝えよ四つ足野郎!」

 

 ゲド・バッカの四脚ホバーを揶揄する言い回しだ。

 ジルクスタン兵は言い返すこともなく、嘆息して作業に加わろうとした、その時だった。

 彼らの上空にひとつの飛行物が現れる。

 それは色白いカラーリングで、鳥のような造形をした戦闘機だった。

 

「なんだありゃ!?」

 

「あれはドライクロイツの……いや違う……?」

 

 ジルクスタン王国の兵には既視感があった。

 かつて戦場で見た敵、魔装機神サイバスターの高速巡航(サイバード)形態。それによく似ていたからだった。

 その白い機体は、何の前置きも警告もなく、地上のテロリスト達に向けて攻撃を開始した。

 光弾が発射され、スコープドッグに命中する。

 装甲の薄いスコープドッグは一撃で粉砕され、水しぶきをあげて池に沈む。

 彼らはやられた味方に目もくれず、空に向かって銃を向けた。

 

「どこの誰だか知らんが、ただで帰れると思うなよ!」

 

「優雅に空なんか飛びやがって。撃ち落としてやるぜ!」

 

 スコープドッグは携行しているヘヴィマシンガンを。ゲド・バッカは両肩のキャノン砲を放つ。

 10体近くものロボットからの一斉対空砲火。

 しかし白い戦闘機には当たらない。

 慣性を無視したような鋭いジグザグ飛行で回避しながら、地上の機体に向かって次々に光弾を撃ち込んでいく。

 

「何だ!? 何なんだコイツは!?」

 

 激昂して闇雲に弾丸をばら撒く者。

 敵わないと悟って一目散に逃げていく者。

 白い機体はそれらの一切を逃がすことなく、瞬く間にすべての敵機の殲滅を完了させたのだった――

 

 

***

 

 

 その様子を街の外に浮かぶ飛空船(レビテートシップ)から眺める者たちがいた。

 一人はかつてジャロウデク王国で王国開発研究工房長をしていた鍛冶師、オラシオ・コジャーソだ。

 そしてその隣には、もう一人。

 頭から青白い炎を噴き出す黒衣の怪人、アレクシス・ケリヴがいる。

 アレクシスは嬉しそうに声をあげる。

 

「いい戦果じゃないか! この飛空船(レビテートシップ)はサイバスターを参考にしたんだねぇ。確かな理論と一級品の発想力……何より君の狂おしいほどに激しい情動が素晴らしい! これは私も実体化のし甲斐があるよ」

 

 テロリストを駆逐した兵器は、オラシオが作った設計図をアレクシスの『インスタンス・アブリアクション』という能力で具現化したものだった。

 しかしそんなふうに手放しで称賛するアレクシスに対して、双眼鏡を覗くオラシオの顔はいかにも渋かった。

 

「いいや、駄目だな。あれじゃあ失敗作もいいところだ、クソッ」

 

「そうなのかい? 君の源素浮揚器(エーテリックレビテータ)のおかげで、前方に推進し続けなければ飛べないという飛行機の欠点が見事に解消されている。まるでゲッターロボのように、どの方向にも瞬時に動ける……いい機体だと思うんだけどねぇ」

 

 オラシオの不満が解せないというように、首をひねるアレクシス。

 そのアレクシスに、オラシオは不機嫌さを隠そうとしない仏頂面で答える。

 

飛竜戦艦(ヴィーヴィル)に使ってた魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の代わりに、サイバスターのエーテルスラスターを再現して取り付けた。これで機動力は上がった。ああ、格段に上がったとも。……が、それが問題なんだ」

 

「ははあ、分かってきたよ。パイロットの問題だね?」

 

 合点がいったとばかりに指をパチンと弾くアレクシスに、オラシオは頷く。

 

「そういう事だ。せっかくの高機動も、中に乗る人間が耐えられなきゃあ意味がねぇ。強化系魔法で騎操士(ナイトランナー)……パイロットを保護するにも限度がある。だから自動操縦させるしかない、ってわけだが……」

 

「その言いようでは、あれだね? 自動操縦では問題があると。いろいろと聞きたいところだが……どうやら地球連邦軍が近付いてきたようだ。面倒になる前に、お(いとま)しようか」

 

 彼らは二人で手分けして飛空船(レビテートシップ)の操舵を始め、アムリトサルの街を離れていった……

 

 

***

 

 オラシオ・コジャーソは異世界の技術者であり、ジャロウデク王国という国で兵器開発の責任者をしていた人物だ。

 そこで彼は、その世界で初めての航空機となる『飛空船(レビテートシップ)』を開発した。

 その飛行原理は、こちらの世界の航空機とは大きく異なる。

 高純度で集めたエーテルは『浮揚力場(レビテートフィールド)』と呼ばれる上方向への力場を形成する性質があり、これを利用した『源素浮揚器(エーテリックレビテータ)』という装置を搭載している。

 これにより機体は「宙に浮いているのが自然な状態」になるのだ。

 

 ただし、この時点ではそれだけ。

 実用化された飛空船(レビテートシップ)は「空に浮く帆船」とも言うべき原始的な代物だったが、他国との戦争の中で推進器の開発、近接防御火器の搭載など、オラシオの手によって飛躍的に進化を遂げていった。

 

 さらにその後、オラシオはオートザムや地球を訪れ、そこで高度に発達した科学技術に触れることとなった。

 それは彼にとってあらゆる常識が覆る、まさにパラダイムシフトが引き起こされた衝撃の邂逅だった。

 地球にいる最上位(トップクラス)の兵器開発者たちは、一人で設計から各種システムのコーディング、さらには新素材研究までこなしており、多岐にわたる知識を統合して機体の開発をしていた。

 オラシオはそれまで、鍛冶師として機体の設計のみを行っていた。

 しかしそれでは、この世界の科学者たちに追いつけない。

 そう考えたオラシオは、航空電子機器(アビオニクス)やプログラミングの知識獲得に多くの時間を費やしたのだった。

 

「……今思えば、エルネスティ・エチェバルリアも同じ手合いだったのかねぇ」

 

 オラシオが隠れ家(セーフハウス)として利用している地下施設にて。

 衣服を着崩し、だらしなく椅子に背をもたれながらオラシオは言った。

 そんな彼の呟きにアレクシスが答える。

 

「彼は特殊だからねぇ。私にはむしろ、君の方が驚くに値するよ。こちらの世界の科学技術を、よくここまで理解できたものだ。しかもラ・ギアスの錬金学まで……まだこちらに来て1年足らずだろう?」

 

 アレクシスは自ら豆を挽いて淹れたコーヒーを、オラシオの前のテーブルに置いた。

 そして彼自身もマグカップを手にして、テーブルの対面に座る。

 二人の間に濃厚な豆の香りが漂い、広がっていく。

 

「錬金学とやらは専門家と話す機会があったんでね。それに魔法術式(スクリプト)より、こっちの世界のプログラミング言語の方が覚えやすい。あの時に山岸獏からコンピューティングを教われたのも……まぁ、運が良かったか」

 

 オラシオは魔法を使えない。

 彼の世界では魔法を使うために『魔法術式(スクリプト)』を脳内あるいは図形を描いて構築する必要があった。しかしこれはとても感覚的であり、理解には資質を必要とする。

 なのでオラシオにとっては感覚に()魔法術式(スクリプト)よりも、こちらの世界のプログラミングの方が遥かに理解しやすいものだった。

 

「分かるよ。この世界では、プログラミングを体系的に学びやすいからねぇ。学習のための資料も豊富だ」

 

「ああ。こっちの世界でソフトウェア開発を学んだら、そこから逆算して魔法術式(スクリプト)も理解できたしな。おかげでその辺の構文技師(パーサー)よりか、ずっと早く紋章術式(エンブレム・グラフ)を書けるようになった。今なら俺も一人で機体を作れる。……紙の上ではな」

 

 紋章術式(エンブレム・グラフ)とは魔法術式(スクリプト)を図表として物体に刻んだものだ。幻晶騎士(シルエットナイト)にはこれが大量に刻まれており、機体の動きから武装の発動まで、すべての動作を制御している。

 オラシオの言葉にアレクシスは曖昧に頷く。

 

「なるほどねぇ……」

 

 プログラミング知識を取っ掛かりにして魔法術式(スクリプト)の仕組みを理解する――その流れは奇しくもオラシオの宿敵たるエルネスティ・エチェバルリアと同じだったが……それについてアレクシスは口を閉ざしておいた。

 代わりに彼は、違うことを尋ねる。

 

「それで、さっきの話の続きを聞いていいかな? 自動操縦では、なぜいけないのかという事だが」

 

「ん? その事か。そいつぁ単純な話でね、出力が足らねぇのさ。強力な戦術級魔法(オーバード・スペル)を発動させるには、操縦者の魔力を足さなきゃあ難しい。ゲッター線やGストーン、プラーナコンバーターのような、人間の精神を利用したシステムも自動操縦じゃ導入できん」

 

「ははあ、合点がいったよ。自動操縦では性能が頭打ちになってしまうんだねぇ」

 

「そういうこった。さっきみたいな雑魚の相手ならいいんだがなぁ……強力な機体を相手にするには現状、人間を乗せなきゃ厳しいんでね」

 

 そんなふうに色々なことを語りつつも、オラシオは不思議な感覚を覚えていた。

 彼が生きてきた30年の中で、ここまで話の通じる相手はこれまでに居なかった。

 自分と同等以上の技術者という意味ではセニアがいたが、彼女とは理念の違いによって対立していた。

 アレクシスは違う。

 つい1週間ほど前に現れたこの怪人は、こちらの望むような心地良い受け答えをしてくれる。

 はじめはその馴れ馴れしさに辟易したものだが、今や余所行きの慇懃な振る舞いも消え失せ、まるで何年も付き添った同好の士であるかのような錯覚すら覚える。

 

「いや、君の向上心には感服するねぇ。私も昔の自分を思い出してしまうよ」

 

「……そう言われても全く想像できん」

 

「ハッハッ、それはそうか。……では、少し自分の話をしてもいいかな?」

 

「どうぞ、ご自由に」

 

 そっけない返答をするオラシオだが、この怪人の正体にいくばくかの興味を抱いているのも事実であった。

 

(もっとも、本当の事を語るなんて思っちゃいないがね)

 

 そう心の中で自分に向けて言いながら、オラシオはアレクシスの話を傾聴する。

 

「こんな私にも、昔は胸に滾る情熱というものがあったのさ。“正義”なんて名前をしたものがね」

 

「ふぅん。その正義とやらは、何故なくなった?」

 

「私にはね、永遠の命があるんだ。これは比喩ではなくてね、何をどうしたところで“死ぬことができない”んだよ。だから数えるのも馬鹿らしいくらいに永い時を過ごした中で……いつしか火が消えてしまったんだろうねぇ」

 

「…………そうか……」

 

 オラシオは否定も肯定もせず、ただそれだけを答えた。

 アレクシスの語った話は現実味に乏しい妄言にも等しい内容だったが、さりとてそれを否定する材料も、彼は持ち得ていなかったからだ。

 そして異世界や並行世界というものの存在を知った時から、どれだけ荒唐無稽な話でも受け入れる心の準備はしてある。

 そんなオラシオの微妙な反応を気にした様子もなく、アレクシスは続く言葉を紡ぐ。

 

「だから今の私は、他人の情動を形にすることでしか、胸の内に広がる虚無感を満たせなくなってしまったんだ」

 

「なるほど長生きするのも難儀なもんだ。それで、その話のオチはどこに持ってくつもりだ?」

 

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに、アレクシスは朗々と告げる。

 

「オラシオ・コジャーソ。君は“自分の世界”が欲しくないか?」

 

 そうして彼は続けて説明する。

 すべての電子機器の内部には、『コンピューターワールド』という異世界が存在すること。

 これを作り変える能力をアレクシスが持っていること。

 アレクシスが提供する異世界の中では、オラシオの精神が反映される。

 そこでは何をするのも、世界の創造主たるオラシオの思いのままになる。

 ……という事だった。

 

「分からないところは私がサポートしよう。どうだい、楽しそうだと思わないか?」

 

 それは同じ遊びを共有する友達のように。

 自然であり、気軽であり、思わず首を縦に振ってしまいたくなる魅力的な甘言だった。

 ――が、オラシオは見透かしたように口の端を歪めて言った。

 

「新条アカネとかいう小娘の代わりを、俺にさせようと?」

 

 アレクシスの体がぴたりと止まる。

 それからしばらく間を置いて……彼はため息を吐くように呟いた。

 

「……アカネ君は、もう駄目そうでねぇ。新しい怪獣を創る気力もないようだ。なに、君は大丈夫だとも! その飛空船(レビテートシップ)への情熱は、きっと尽きることなく世界を広げ続けるだろう」

 

 そうやって勧誘を続けるアレクシスを、オラシオは一刀両断に斬り捨てた。

 

「興味ないな。お前は俺を勘違いしている」

 

「……というと?」

 

 意外そうに聞き返すアレクシス。

 それに対してオラシオは、これまでの気だるげな様子から一転して、熱の籠もった口調で答える。

 

飛空船(レビテートシップ)なんざ出資者の要望に応えた商品に過ぎん。俺の興味があるのは空だ! そこに何があるかも分からぬ、前人未到の果て――! それを見て! 調べて! 俺は突き止めたい!!」

 

 情熱と興奮を隠そうともせずに、自らの夢を語るオラシオ。

 その姿はいかにも狂気じみていたが……それでいて彼が抱く夢の内容そのものは、意外なほどに健全で、呆れるほどに純粋なものだった。

 

「……自分のための世界に、興味はないと?」

 

「ないね。“自分の知ってるもの”しかない世界の、何が面白い? 俺が見たいのは、まだ俺が知らない“何か”だ」

 

 オラシオの答えを聞いたアレクシスはコーヒーを口に含むと、告げられた言葉を咀嚼するように味わってから飲み下した。

 

「……残念、どうやら私の見込み違いだったようだねぇ」

 

 そう言う彼の口調は、しかしあまり残念そうな響きはなかった。

 

「けれど、ひとついいかな? 君の夢はエーテルの空の上へと行くこと……だとしたら、こちらの世界の科学技術と繋がった今、すぐにでも実現できるだろう。後はただ確かめるだけの単純な作業になってしまうと思うが……?」

 

 オラシオがいた世界は、宇宙空間の中に地球という惑星のあるこちらの世界とは、根本的に異なっている。

 あちらの世界の空は高密度のエーテルで満たされており、その先に何があるかは判明していない。……が、地球のロケット技術を使えばそこへ到達するのは難しくない。

 その懸念に対してオラシオは当然のように答える。

 

「確かめたらその後は、調べて研究して……やる事はいくらでもあるだろうよ」

 

「仮に、研究するほどのものがそこに何もなかったとしたら?」

 

「だったら別の見知らぬ場所を目指すだけだ。幸い、こっちの世界はまだ宇宙の果てに何があるか分からんようだ。だったら俺が最初に行ってやるさ。そう、宇宙の外側まで……」

 

「――それはやめた方がいい」

 

 遮るように出された言葉。

 今までに聞いたことのない、低く抑えたアレクシスの声だった。

 一瞬にして変わった空気。

 アレクシスは彼らしくもない真剣な声色で、オラシオに告げる。

 

「あるいは、君なら本当に行けるかもしれない。だが……君のためにひとつ忠告しておきたい」

 

「……聞こうか」

 

「宇宙の外には、何もいいものはない。ただの絶望があるだけだ。少なくとも君の望むようなものは……何も」

 

 何事にも他人事のように悠然としているアレクシス・ケリヴの、初めて見せる沈鬱な様子。

 普段は、どこまで本気で取り合っていいか判断しかねる……そんなふうに思っていたオラシオだったが、こればかりは純粋な善意による忠告だと感じた。

 ……しかし。

 オラシオは長話でぬるくなったコーヒーの残りを飲み下すと、アレクシスに言う。

 

「悪いが、そう言われても俺のやる事は変わらんね」

 

「だろうね。ああ、君はそれでいいとも」

 

 と言った時には、アレクシスの口調は軽くて飄々としたものに戻っていた。

 そうしてアレクシスは席を立ちながら言う。

 

「さあて、私はフラれてしまったが……私が初めに言った依頼は受けてもらえるのかな?」

 

 言われて、オラシオは目の前の彼と初めて出会った時のことを思い出す。

 オラシオの情動を活かした依頼がある……という話だった。

 

「そもそも、この1週間はそのための査定だろう? 俺の設計図を実体化して、テロリストなんかと戦わせてたのは」

 

「ははっ、君に隠し事はできないねぇ。先方は信頼に足る優秀な技術者を所望していてね。その点、君なら申し分ないとも」

 

「……まぁ、条件と報酬次第だな。依頼人ってやつは、いつだって現場を無視して無茶な条件を出してくるもんだ」

 

「どこの世界も変わらないんだねぇ。それじゃあ、依頼人を呼ぼうか」

 

 ――それから、およそ1時間後。

 セーフハウスの入口で、オラシオはその“依頼人”と対面した。

 廃棄された地球連邦軍の基地を勝手に間借りしているそのセーフハウスには、大きな格納庫がある。

 その中に搬入されたのは、1体のロボット。

 恐竜帝国と呼ばれる並行世界の勢力が開発した、異例のゲッターロボだった。

 その名を『ゲッターザウルス』と言う。

 ゲッターザウルスの前に立つアレクシスは、背後にいる人物――それを人と呼んでいいのか定かではないが――をオラシオに紹介する。

 

「彼が今回の依頼人。恐竜帝国の皇帝、ゴール三世だ!」




【知らなくてもいいけど知るともっと面白いかもしれない話】
・アムリトサルの黄金寺院の周囲にある池はアムリタ・サロヴァル(不死の池)という名前がついている。

・スパロボ30のストーリーの中で、ジルクスタン国王のシャリオはドライクロイツに執着し、国を出て追いかけてくるようになる。

・ナイトメアフレームやアーマード・トルーパーはかなり小さい。全長3~4メートルほど。(参考:初代ガンダムのRX-78-2は18メートル。マジンガーZも同じ18メートル。ゲッター1は38メートル)

・レイアースに登場する国「オートザム」は高度に機械化された国であり、精神力を数値化して利用することもできる。

・『ナイツ&マジック』原作では、オラシオは戦場の様子を人づてに聞いただけで、エルが作った推進器の原理を把握して同じものを作っている。

・オラシオは兵器開発するだけでなく、戦闘の流れをあらかじめ予測して助言を与えたり、自分が飛空船を造った時点で対飛空船を想定した開発を始めていたりと、先見性に優れた描写が原作の中で多々見られる。

・『ナイツ&マジック』の主人公であるエル(エルネスティ・エチェバルリア)は、元々は地球で暮らしていたプログラマーであり、異世界に転生した。

・アレクシス・ケリヴには『宇宙パトロールルル子』のオーバージャスティス本部長とのデザイン上や設定上の類似点があり、演じる声優も一緒。同一人物という裏設定がある…という話があるが、これは公式として出された設定ではない。

・『SSSS.GRIDMAN』の前身である『電光超人グリッドマン』では、現実とコンピューターワールドを行き来して物語が進んでいく。『SSSS.GRIDMAN』の舞台であるツツジ台も、おそらくコンピューターワールドの一種であると考えられる。(どの電子機器にツツジ台があるのかは作中で明かされていない)
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