Drei DetonatioN ~鋼の咆哮~   作:日下部慎

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「竜王降誕 中編」

 アレクシス・ケリヴから「ゴール三世」と呼ばれたその男は、緑色で鱗のついた肌に、瞳はギョロリとした縦長の瞳孔で、まるで“人型になった爬虫類”といった奇怪な風体をしていた。

 この世界には存在しない生物――ハチュウ人類である。

 しかしオラシオはそんなゴール三世の風貌を意に介さず、うやうやしく挨拶をする。

 

「お待ちしていましたよぉ? 私、オラシオ・コジャーソと申します。

 本日は斯様(かよう)な辺地までご足労いただき感謝の念に堪えませんとも、ええ!」

 

 先ほどから一変、芝居がかった慇懃な口調。

 これが彼にとってのビジネスシーンにおける公的(フォーマル)な態度だった。

 アレクシスとオラシオ。強烈な胡散臭さを放つ二人に囲まれ、わずかに身じろぎするゴール三世。

 しかしすぐに気を取り直し、彼はオラシオに向かって尋ねる。

 

「ほう……気にならんのか、このハチュウ人類の王たるゴール三世の容貌(かお)が」

 

「……そこはまぁ、慣れといったところでしょうか。

 そんなことよりですねぇ、まずは座って話せる場所までご案内いたしましょう」

 

 そんなオラシオの提案をゴール三世は断る。

 

「いや、ここでよい。話は早い方がいいからな」

 

「左様で。話が早いのは、こちらとしても願ったり」

 

 そうやって二人の挨拶が終わったところで、アレクシスが仲介者としての役割を果たすべく、商談の進行を開始する。

 

「では簡潔にいこうか。今回の依頼の内容は、ひとつだけ。

 そこにある機体――ゲッターザウルスを強化して欲しい、というものだね」

 

「ゲッターザウルス……」

 

 オラシオはゴール三世の背後にあるロボットを見やる。

 ゲッターザウルスは、早乙女博士亡き後の神隼人(じんはやと)が率いる早乙女研究所からの技術提供を受け、恐竜帝国が開発したロボットである。

 外見は全体的に丸みを帯びた輪郭をしており、そのフォルムは重量感がある。

 紫と深緑色のカラーリングもあって、一見するとあまりゲッターロボとは思えないデザインをしているが……よく見れば似通ったパーツが散見される。

 オラシオの目からすると、ゲッターアークよりかは真ゲッタードラゴンに近い印象だった。

 

「ここにいるオラシオ君はゲッターロボへの造詣も深いからねぇ。

 これ以上ない適任だと思うよ」

 

「えぇ、まぁ、わざわざ早乙女研究所にまで足を運んで調べましたからねぇ。

 非才の身なれど、ゲッターロボに関してはそれなりに知見を有していると自負しておりますれば」

 

「ははは、謙遜がすごいねぇ。

 帝王ゴール三世、彼の技術者としての腕前は私が保証するよ。

 それこそ、恐竜帝国の科学者にも劣らないくらいにね」

 

「ふ、本当であれば頼もしい」

 

 アレクシスは太鼓判を押すが、ゴール三世は半信半疑といった反応であった。

 しかしゴール三世もことさらに異論を挟むようなことはなく、アレクシスは商談の進行を続ける。

 

「具体的な依頼内容は“ゲッターアークを確実に倒せるようにする”。

 ……ということで間違いないかな?」

 

「うむ、わしが望むのはそれだけだ。

 どうやらアークはこの世界の技術で強化されているとのこと。

 であれば、こちらもそれに合わせねばならんだろう」

 

「ゲッターアークに、ねぇ……」

 

 それでオラシオは多くのことを察する。

 ハチュウ人類やら恐竜帝国などといった言葉を聞いた時点で予測はついていたが、目の前にいるトカゲ男はアークチームと同じ世界から来たのだろう、と。

 そしてゲッターザウルスを強化する必要性も、オラシオは強く同意できる。

 なぜなら彼はこの世界に来た直後のゲッターアークを目にしており、さらに少し前には自分自身も敵として戦場で相対しているからだ。

 再び相まみえたゲッターアークは、前に見た時よりも大幅に性能が強化されていた。

 これは万能戦闘母艦ドライストレーガーに備えられた機体改造設備によるものだ。

 ゲッターザウルスが仮に昔のゲッターアークと同程度の性能であれば、今のアークと戦って勝つことは難しい。

 

 その前提の上で、オラシオはゴール三世に問う。

 

「うぅん? では要するにぃ……アークを倒せればいいんですよねぇ?

 であればぁ、強化するより別のモノを作った方がいいと思いますよぉ?

 なんなら、人型ではない方がよろしいかと」

 

 非常にオラシオらしい合理的な提案だった。

 だがそれをゴール三世は否定する。

 

「いや、それはならん。

 宿敵ゲッターロボを倒すのは、我ら恐竜帝国であることが望ましい。

 恐竜帝国の技術はなるべく残し、見た目も大きく変えずに改造してもらいたい」

 

 その注文を聞いてオラシオは頭の中で舌打ちをする。

 

(ったく……何が「わしが望むのはそれだけ」だよ。

 案の定、後からどんどん条件が増えてんじゃねえか)

 

 辟易しつつも、この手の製作依頼ではよくあることであるため、オラシオは慣れきっている。

 そんなオラシオの気持ちに同意するように、ゴール三世の後ろではアレクシスが肩をすくめている。

 それを見なかったふりをして、オラシオは依頼主に言葉を返す。

 

「なるほどなるほど、ご注文のほど万事把握いたしました。

 そのような無理難題……と並の鍛冶師ならば漏らすところでしょうが。

 えぇ、私ならば可能ですとも!」

 

 オラシオは大仰に両手を広げて自信をアピールする。

 実際、オラシオには自信があった。

 彼はこれまでに幾度となく、こうした依頼人の困難な要求に対して、圧倒的な技術力と柔軟な発想で応えてきた。

 ただし多くの場合、“コスト”と“時間”という大きな壁が立ちはだかる。

 彼ら技術者は常にこの2つの問題に悩まされ続けてきた。

 だが今回に限っては、その心配はない。

 なぜなら設計図さえ作ってしまえば、後はアレクシス・ケリヴの能力によって具現化してしまえるからだ。

 

 技術者にとってまさに夢のような環境。

 しかしオラシオはここで、ひとつ難色を示す。

 

「しかしロボットの改造、ですか。ンン~……ロボット、ねぇ……」

 

「おや、ロボットは気に入らないかい?

 君はジャロウデクで幻晶騎士(シルエットナイト)の改造もしていただろう?」

 

「報酬次第、ですかね。

 報酬と折り合いがつきさえすれば、最高のものを仕上げてみせますとも。

 私もプロですからぁ? それに試してみたい事もありますしねぇ」

 

 これに対してアレクシスは少し思案してから答える。

 

「今回の報酬は私が持つことになっていてね。では、これはどうだろう。

 100億ドルが入った口座とカード。

 それに加えて、この世界での戸籍と信頼ある科学者としての身分を用意しよう」

 

 オラシオはこの世界の貨幣価値がよく分かっていない。

 ……が、この世界での身分というのは、非常に魅力的な提案だった。

 この世界の地球圏はジャロウデク王国などより、ずっと戸籍制度が整っている。

 とりわけ先端技術に触れるには学者としての身分は必要不可欠であり、流れの「自称天才技術者」など、どこに行っても相手にされない。

 この数ヶ月でオラシオはそれを痛いほど実感していた。

 そのため、オラシオは即答に近い形で答える。

 

「いいでしょう! この依頼、お受けしたいと思います!

 つきましては、もう少し細部を詰めたいところですが……」

 

「さっき言った通りだ。

 ゲッターアークに勝てさえすれば、何でもよい。脱出装置も不要だ」

 

「なんとぉ!?

 勝利のためなら王たる者みずからその身を投げ出す覚悟……

 ああ、まるで今は亡きクリストバル殿下のよう!

 いや陛下の気骨には感服いたしましたよぉ! 素晴らしい!」

 

 オラシオはリップサービスも込みで、依頼主の心意気を大いに称賛した。

 が、ゴール三世はその認識を訂正する。

 

「わしが乗るわけではないぞ。王が前線に出るなど愚の骨頂であろう?」

 

「ん? ……ええ、いやはや全くその通りですねぇ」

 

 期待が外れて露骨にテンションが下がるオラシオ。

 ゴール三世は後ろのゲッターザウルスに向けて合図すると、コクピットハッチが開いて中から3人のハチュウ人類が降りてきた。

 姿を見せた3人をゴール三世は軽く紹介する。

 バイス、ガンリュー、ゴズロ。

 恐竜帝国の中でも最下層の被差別民である、地リュウ一族の若者たちだ。

 

「何か相談事があるのなら、こやつらザウルスチームに聞くがよい。

 ではゲッターザウルスの強化が終わるまで、ここに厄介になるぞ」

 

 言うが早いか勝手に施設の奥へと進んでいくゴール三世。

 そこにアレクシスが付き従うようにして案内する。

 

「奥の方に空き部屋が山ほどあるから、そこを使ってもらうことにしよう」

 

 それだけ言ってゴール三世とアレクシスは歩き去っていった。

 二人の姿が見えなくなったところでオラシオは首元を緩めると、大きな溜め息を吐き出した。

 

「さぁてと……そんじゃあ、始めるとすっかねぇ」

 

 そうやって独りごちると、オラシオはゲッターザウルス改造の準備に取りかかった。

 まずはザウルスチームから機体情報を聞き取りして、彼らの身体能力を測定。

 次にゲッターザウルスを自らの手で調査。

 オラシオは機体の内部にまで入り込んで隅々まで徹底的に調べ尽くした。

 それらが終わると、部屋に籠もって設計思想・改修方針についての考えをまとめ、そうしてから設計作業に取りかかる。

 どのような機体にするかは早い段階で決まり、以前より考えていた新機体のアイデアを流用できそうなことから、2~3週間もあれば終わるだろうとタカをくくっていたオラシオだったが……

 

 

 

 1ヶ月後。

 作業の進捗を聞きに訪れたアレクシス・ケリヴは、破り捨てられた図面の山の中で、頭を掻きむしって怒鳴り散らかすオラシオの姿を目にすることになった。

 

「なんで……なんでだぁッ! 何が足りない!? ちくしょうめぇッ!!」

 

「おやおや、荒れているねぇ」

 

 それもそのはず。この2週間ほどオラシオの作業は一切進んでおらず、完全に頓挫していた。

 その原因は感覚的に「できる」と確信した事が、作業の終盤に差しかかったところで致命的な論理破綻に気付いたためだった。

 あと一歩、何かが足りない。しかしその“何か”が分からない。

 

 アレクシスは部屋に散乱する設計図に目を向け、それらを読み取って言う。

 

「ふぅむ、何がいけないのかな。

 君はどうやら、小型・人型化した飛竜戦艦(ヴィーヴィル)を造ろうとしているように見受けられるが……?」

 

 彼の見立ては的確であり、オラシオの目指すところの本質を突いていた。

 オラシオは部屋に入ってきたアレクシスを横目でちらりと見やると、すぐに視線は書きかけの図面へと戻して、事の発端を語った。

 

 ――以前、オラシオは戦場で真ドラゴンと真ゲッタードラゴンの両者と相対した。

 この時オラシオは、これらの機体が「全く同じ設計思想のもとに作られている」と直感した。

 いや、より正しくは「真ドラゴンの設計思想そのままに小型化・人型化したものが真ゲッタードラゴンなのだろう」……と彼は当たりをつけている。

 

「なるほど。だったら飛竜戦艦(ヴィーヴィル)でも同じ事ができるのでは? というわけだね」

 

「そういうことだ。だが……ああ、くそっ。一体どうやって……!

 どっちも見たんだぞ、この目で俺は! しかも真ドラゴンには自分で乗った!

 夢の中だが、アレは夢じゃない!

 俺は確かに乗って、自由に空を翔けたんだ!!」

 

 この数日ほとんど眠れずに疲労が蓄積されているせいか、オラシオの口からは支離滅裂な言葉まで飛び出す。

 さらに喋っているうちに興奮が増してきた彼は、絶叫しながら机を叩く。

 

「ああァァッ! なんだってんだ!! どうやったんだ早乙女賢ッ!!」

 

 情緒が乱れて荒れ狂うオラシオを前にして、アレクシスは心配するでもなく、むしろ満足そうな笑みを浮かべる。

 

(いいねぇ、これはいいものが出来そうだ)

 

 ご満悦のアレクシスは、ふと机の上にあるものに気付く。

 それは小さな緑色の結晶片だった。

 

「これは……」

 

 アレクシスの呟きに気付いたオラシオは、その結晶を軽く見やる。

 

「あぁ……それは早乙女研究所で見つけた。

 金属だったもんが、高濃度のゲッター線を受けて結晶化したようだ。

 後で研究しようと借りてきたんだが……いくら調べてもただの結晶。

 欲しいなら持って行ってもいいが?」

 

「いいや、遠慮しよう。それは君が持っているといい」

 

 やんわりと断ったアレクシスは、ペンを手に新たな試算を始めたオラシオを見て、彼の邪魔をせぬよう静かに退室していった……

 

 

 

 そうして数日後。

 あれから作業が進展したという報告は上がらず、鍛冶師の部屋から聞こえてくるのは奇声のみ。

 すでに半月ほども同じ状況が続いており、依頼を出したゴール三世も徐々にしびれを切らしてきた。

 

「あの胡乱(うろん)な男……どうやら口だけだったか。

 やはり人間ごときに恐竜帝国のロボットを任せるのは荷が重いか?

 いや、だがそのような考えのままでは……」

 

 (つの)る不満を顔に(にじ)ませながら通路を歩くゴール三世。

 時刻は深夜。すでに灯りは消えて通路は真っ暗だが、ハチュウ人類の目は暗闇などものともしない。

 

「ウウム、致し方あるまい。かくなる上は、ここにお連れするしか……」

 

 その時だった。

 暗い通路の先に、ぼんやりとした光が浮かび上がっているのにゴール三世は気がついた。

 それは淡い光に包まれた人影だった。

 いったい何者なのか。目を凝らした結果、ゴール三世は自らの目を疑い、手の甲で繰り返し自身の(まぶた)を擦った。

 だが何度見返しても変わらない。

 そこにいるのは、かつての恐竜帝国の支配者であり、ゴール三世の実父。

 帝王ゴール一世だった。

 

「う、うう……!」

 

 ゴール三世の喉から呻きが漏れる。

 帝王ゴール一世が生きているはずがない。

 とうの昔にゲッターロボとの戦いに敗れて、最後は百鬼帝国の手にかかって命を落としているのだ。

 あれは何だ? 幽霊? なぜここに? 世界が違うのに?

 様々な不可解がゴール三世の頭をよぎる。

 動転し、混乱した彼の口から半ば反射的に発せられたのは、反発の言葉だった。

 

「ええい、今さら何をしに出てきた!?

 おれが……息子のおれが気に食わんというのか!?」

 

 その声は震えていた。

 思わず出てきた言葉は、彼のコンプレックスと後ろめたさの表れだった。

 彼、ゴール三世は恐竜帝国の中で、常に偉大なる父と比較され続けてきた。

 父王の頃から恐竜帝国に仕えていた将軍、重臣。彼らは皆一様に、諦観と落胆の視線を彼に対して向けた。

 そうした扱いを受け続けてきたゴール三世の胸の内では、絶対に越えられない大きな父への畏れと、激しい反抗心が育っていた。

 そんな自らの心身に根付いた恐怖心に抗い、ゴール三世は叫ぶ。

 

「今の恐竜帝国の体たらくは、功を焦ったあなたのせいだ!

 だというのに長老どもは、わしを値踏みする!

 偉大なる初代ゴールに及ばぬと!

 挙句の果てには前王の子たるわしを無視してジャテーゴなどを次の王に……!」

 

 恨みつらみの言葉を告げるうちにゴール三世は当時を思い出し、両手をわなわなと震わせて怒りをあらわにする。

 

「あの屈辱が分かるか!?

 わしは力押ししか知らぬあなたとは違う……戦いは頭を使って行うものだ!

 必要ならば何とでも手を組んでやる! たとえ宇宙を滅ぼす大敵であろうとも!

 ……ど、どうだ! 何か悪いか!?」

 

 痛いほど締め付けられる心臓から勇気を振り絞って、父の亡霊に向かうゴール三世。

 しかし亡霊は何も答えない。

 それは無言のまま自らの息子に背を向けると、通路の奥へと歩いていった。

 

「ま、待てっ!」

 

 思わずゴール三世は後を追う。

 しかし通路を曲がると、彼は父の亡霊を見失ってしまった。

 代わりにそこには、半開きになったドアの隙間から漏れる光が見えた。

 恐る恐る、ゴール三世はその隙間から部屋の中を覗く。

 するとそこにいたのは――破られた図面の海の中で机に向かうオラシオと、薄ぼんやりとした光を帯びた恰幅(かっぷく)のいい老科学者。

 面識はないが知っている。

 早乙女研究所前所長、早乙女賢だ。

 光に包まれた早乙女博士の体は奥にある壁が透けて見えており、それは彼が先程のゴール一世と同様に、常世のものではないことを示している。

 部屋にいる二人は机を挟んで何事かを話し込んでおり、その卓上には緑色の結晶が鈍い輝きを放っていた。

 いったい何を話しているのか。

 ゴール三世は息を殺して中にいる二人を注視する。

 

 

***

 

 

「ゲッターロボを作れ……」

 

 気付くとオラシオの前にそれは居た。

 睡眠不足も限界を越えて意識朦朧とした彼に向けて、半透明に光る早乙女博士は静かに語りかけてくる。

 囁くように。あるいは託すように。

 異世界の優れた技術者に向けて、ゲッター線研究の第一人者たる男は、天啓を下すかのごとく厳かに告げた。

 

「君ならできる。君の力で新たなゲッターロボを――」

 

「知るかァァァーーーーッ!!!」

 

 ドワオと勢いよく机が叩かれ、いくつもの紙が宙を舞い、緑の結晶が床に転がり落ちた。

 オラシオは寝不足で充血した(まなこ)をさらに血走らせ、今にも机の向こうへ掴みかからんばかりの勢いでまくしたてる。

 

「俺が知りたいのは飛行船状の機体を人型の枠に落とし込むノウハウだけだ!

 余計なことはせんで黙っとれ!」

 

「…………」

 

 男の怒号を受け、早乙女博士の幽霊は机の上に置かれたペンを手に取ると、図面に線を引き始めた。

 オラシオはそのペンを持つ博士の手に頬が触れるくらいに顔を近付け、まさしく舐め回すように凝視する。

 

「ほお!? ほうほうほう……なんと、そんなことを!?

 ハッ、ハハッ! そうか、その手があったかァ~~!!」

 

 早乙女博士が少し線を引いただけで、オラシオは全てを理解した。

 彼は幽霊からペンを奪うと、恐ろしい速度で設計図を書き始める。

 

「だったらこれも出来る……そうじゃないかぁ!?

 これも! これも! こんな応用だって出来るッ!

 ヒヒ、ィヒァ! いいぞぉ! ヒァッヒャヒャア!」

 

 そうしてオラシオは完全に目の前の図面に没頭してしまう。

 早乙女博士の霊はしばらくその様子を見ていたが……オラシオはついぞ顔を上げることはなかった。

 完全に無視された早乙女博士は、やがて音もなく姿を消す。

 その消える直前の表情はどこか物悲しさを(たた)えていたように……ドアの隙間から見ていたゴール三世の目には見えた。

 

 

***

 

 

 部屋の外から中を覗いていたゴール三世は、奇々怪々な笑い声をあげてペンを走らせ続けるオラシオの姿を目にして、自然とその部屋から離れるように後ずさっていた。

 

「な、なんだこいつは……大丈夫なのか……?」

 

 そら恐ろしくなったゴール三世は、そそくさとその場を退散したのだった。




【知らなくてもいいけど知るともっと面白いかもしれない話】
・原作漫画版では設定など皆無に等しいゲッターザウルスだが、アニメ版では「神隼人がゲッターロボの合体ノウハウをハン博士に技術提供した」という設定になっている。

・ジャロウデク王国第二王子クリストバル・ハスロ・ジャロウデクは、司令官でありながら幻晶騎士に乗って前線に出た結果、エルのイカルガに負け、最後は崖から転落して命を落とす。スパロボ30でも戦死する運命は変わらず、シナリオでは飛竜戦艦ヴィーヴィルが出てくる前の前座という扱い。

・ザウルスチームの3人は原作漫画版とアニメ版で見た目も設定も大きく異なっており、名前すら違う。(原作では3人のうち1人だけ「ゾル」という名が明らかになっていた)

・原作漫画版ではザウルスチームが地リュウ一族という設定もなく、これはアニメ版独自の設定。

・漫画『ゲッターロボ號』で遺棄された早乙女研究所へ15年ぶりに踏み込んだ隼人や一文字號たちは、高濃度のゲッター線を受けた金属が結晶化しているのを発見する。

・アニメ版のオラシオは、エルのことをわざわざフルネームの「エルネスティ・エチェバルリア」で呼ぶ。

・早乙女博士のフルネームは原作の中では明かされていない。「早乙女賢」の名前は『偽書ゲッターロボ ダークネス』から。

・『ゲッターロボアーク』より前の話になる『ゲッターロボ號』では恐竜帝国の女帝ジャテーゴが出てくるが、ジャテーゴの詳細は語られず、アークでも一切触れられないので、帝王ゴール一世から帝位がどのように変遷したのかは謎に包まれている。

・『ゲッターロボアーク』作中で、カムイはゴール三世に向けて「帝国の民はあなたが権力の座にあるうちは恐竜帝国に未来はないということを知っている」と言っており、帝国内でのゴール三世の評価は低い模様。
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