ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「ふぅ……終わった終わった、と。ミシロも色々と頑張ってくれてありがとうな」
「ありがとうございます……
バミューダを撃破し、一息つく私とミシロ。これで、また暫くは深海の主クラスのモンスターは現れないはずなので、
因みにだが、皆さんどうやって私がバミューダの受け流しで地中深くまでぶっ飛んだ状態から攻撃力を維持しつつ復活したのか気になるだろう。種明かしすると、結構単純な手順だ。
まず、アモルパレントを装備したミシロが高速で移動を続ける私の前に立ち塞がり、ジャストガードで突進攻撃扱いになっている私の移動を無効化。急減速しこれ以上の移動を防ぐ。
そして私の方は、超高速の反動を激突したミシロを突破できなかったことで受けることになるが、これを私自身のカウンタースキルである「巨神の大逆襲」で受けることでダメージを無効化。受けるはずの反動を攻撃力に変えた上で、反撃をすぐに放つのではなくストックする。
後は単純だ。逃げようとするバミューダを魔眼で捉え、連結に組み込んでいない加速スキルで追いかけてトドメを刺した。
こうして文字に起こしてみると、単純だけどかなり難易度は高かったな。最初の減速からしてミシロの成功が前提だし、魔眼が無ければ逃げるあの野郎を見失ってただろうし。
「ま、勝ったから無問題よ」
「……どこに向けて話しているので?」
「気にすんな、独り言さ」
そう、そんなことはどうでも良いのだ。これで道草は終わり再び新大陸を目指せるようになるし、重要なことがもう一つある。
これで、天、地、海、全ての真竜を討ち滅ぼしたことになる……【憧焉傑刀『画竜点睛』】の神化条件を達成することができたのだ。アステヴァルに次ぐ二つ目の神化武器……いったいどのような見た目や性能になるのか楽しみだ。
──上陸したら、すぐにシュトーレンに連絡入れて強化してもらおっと。
とは言え、そんな簡単に新大陸まで進めるようなことは無い。いや、道中でそんな苦労することはもう無いとは思うけどね……単純に、ここに来るまででリアル2日掛かったから……
まぁ、泣き言を言っても始まらない。今後楽するために今苦労しているのだと思えば、足取りも少しは軽くなるというものだ。どうせこの辺で私を害せるものなどそう無いのだし、のんびりとでも確実に陸を目指して進んで行こう。
「いくよ、ミシロ。次浮上する時は新大陸だ」
「お供いたします」
……
…………
………………
「はい」
「疑問:何に対する発言なので?」
「細かいことは気にするな」
アレから二日。私達は特に波乱も無く無事に海を渡り切り新大陸へ到達した。
正確には、まだ上陸はしてないので到達したと言えるかは微妙なのだが……まぁ、小さいことを気にしてるとハゲるから気にするな。
深海と呼べる地帯はとうに過ぎ去り、今は太陽が視認できるくらいの浅瀬にいる。
コレぐらいの距離なら、「
「ミシロ、インベントリアに戻ってな」
「了解」
「あっ、ちょ、速過ぎ……ッ!」
──
完全に余計な一手間を加えてしまったせいで、加速した我が身は海を越え砂浜を飛び出し辺りに居たプレイヤーを薙ぎ倒して、そのまま砂浜の先にある密林にまで飛び込んでいった。
──いやホント済まん、殺してなくて良かった!
不幸中の幸いは、巻き込まれたプレイヤーに死亡したのが居なさそうということ。これでPKになるとかマジでしょうもないし、『小さな矜持』も消えるしで何も良いこと無いからな……
ていうか、今はそれどころじゃない。まだ最高速に達しないまま木々をものともせず加速を続けているせいで、どんどん密林の奥地まで否応無しに進んでしまっている。
「いっで……ッ!やっと、止まっ……」
「…………!!」
「た……」
──あー、うん。これは怒ですわ。
散々に破壊を繰り返し、何か硬くて大きなモノにぶつかって私の暴走は漸く止まった……その代償としてヤバげなモンスターを怒らせたようだが。
体表を覆う漆黒の鱗に、全身に夥しい数付いた何とも痛々しい生傷。リアル一軒屋サイズの巨体を支えるごん太の脚と、どうしてそうなったのかと聞きたくなる三つの頭を持つティラノサウルス。
【モンスター
【討伐対象:ドラクルス・ディノサーベラス"死闘の傷"】
【参加人数:1人】
【エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されました】
"
──上等!
相手にとって不足無し、しっかりとぶちのめして新しいスキルの糧としてやろうじゃないか。
バミューダ戦を経て、私のレベルはきっかり150に到達して、スキルの7割くらいが新しいものに進化した。三桁スキルの更にその先で初めて修得できるスキル……その力がどれ程のものか試す試金石としては十二分な相手だろう。
武器は見た目的に竜系統っぽいし、まだ何してくる相手か分からないので画竜点睛を選択する。今後に強化を控えているので、おそらくこれが『画竜点睛』としての最後の勇姿になるだろう。有終の美を飾ってくれることを期待してるぜ。
「…………!!」
「んなもんが当たるか……よ!」
"死闘の傷"が雄叫びを上げて突進する。中々の速さだが、フェイントもクソもないただの突進など当たってやる価値も無い。魔眼でしっかりと見切り回避し、カウンターの一撃を叩き込む……が。
──はぁ……!?効いてない、だと……!?
全く効いていない……ダメージが少ないとか、弾かれたとかそういう次元の話じゃない。最初から適応が済んでいるパーフェクトを相手した時のような全てが無駄に終わるような感覚。
恐らく、当て所が悪かったのだろう。いくらエクゾーディナリーとは言え、たかが一モンスター如きが真なる竜種と同等以上の力を素で持っているとは考え辛い。そこには何かしらのギミック……タネがあるはずだ。
今の一撃は、"
可能性としては、傷が付いていない部分を狙わなければならないというのが一番あり得そうだ。しかしそれだけではないはず、他にも条件があるだろうししっかりと探ってみよう。時間を掛ければそれだけ画竜点睛も強みを発揮しやすくなるしね。
「さて、色々と試してみるか……な!」
攻撃箇所を変える、突きや峰での殴打など攻撃方法を変えてみる、スキルを使用して火力を上げてから殴ってみる……どういうやり方なら有効打を与えられるか、色々と試行して結果を出す。
結論……どうやら、"
傷の無い箇所はどんな攻撃でも効くみたいだが、恐らく一定以上のダメージを与えることで傷付き、その時の攻撃属性を無効化するようになる。そしてこれは恐らくだけど、元からある傷も同じ攻撃を繰り返すと耐性を持つようになると思う。その時は別の攻撃が通るようになるだろうけど。
つまり、コイツを普通に攻略するなら多彩な攻撃手段を以て攻撃無効の負担を軽減し、傷が増えてジリ貧になる前に削り切る必要がある……ということになるのだろう。少なくともソロで挑むには手数があまりに足りな過ぎる、かなり厄介な相手と言えるが……それは、私には当てはまらない。
「………………!!」
「デケぇ図体してちょこまかと暴れやがってよ……大人しくしな!」
「………………!!?」
画竜点睛の一撃が、"
攻撃がヒットしたのは、普通なら斬撃を無効化するはずの左半身。それがしっかりとヒットし大きめのダメージエフェクトを撒き散らしたことに驚いた様子を見せる"
画竜点睛の能力、その名を『
──とは言え、画竜点睛だけで削り切るにはかなりの時間が掛かるだろうけども。
どんな相手にも、どう使っても、100%の性能を発揮し得るというのが画竜点睛の強み。その代償として、基礎的な火力は同じ位のレアリティの武器と比較して1段劣る。竜魂解禁すれば多少は改善されるしスキルで補うことも可能だが、これだけで戦うとしたら慢性的な火力不足に悩まされ続けることとなるのだ。
ならば、どうするか……答えは簡単。画竜点睛だけに頼らず、他の武器を使えば良い。打撃武器のララ=ルーナや、月の光で攻撃する
「『古虹』発動、っと……コイツを使うのも、久しぶりって感じだな……!」
レベル150を超えたことで、『昇華』の名が付いていたスキルが進化して新たな名を得た。画竜点睛とララ=ルーナでそれらを発動し、"
「おら、食らいな……!」
スキル「轟天激震」から進化した「覇天激烈衝」と、「
覇天激烈衝は強化前から単純に威力が上がり、更にQTEに成功することで威力にボーナスが入るという追加効果を得た。絶滅の大嵐は……強化前と比べて威力と持続時間が伸びた。地味である。
「………………!!」
だが、シンプルで癖が無く分かりやすい強化なおかげで使用感が損なわれていない。初期も初期から修得した「スクーピアス」から、よくぞここまで強くなってくれたと賞賛しておこう。
覇天激烈衝で浮かせた"
「………………!!」
"
晴天流『斬風』……『疾風』の時と比べて、スタミナの消費量が減ったくらいしか変わったところは無いはずだが、そうとは思えないくらい威力が高い気がする。レベルアップでステータスが上がったからその分威力も上がったように見えるのかな?
──さて、追撃追撃……お?
距離を詰めるべく前に出ようとしたところで、転がっていた"死闘の傷"が体勢を立て直し三つの口から謎の塊を吐き出した。
黄色と黒が混ざったマーブル模様のそれは、付着した唾液が光を反射して不気味に輝いている。どう考えても碌でもないものだし、わざわざ食らってやる必要も無い。ジャスガで防いで終わり……となるはずだったのだが。
「……ッ!?」
──爆発……!?そうか、可燃物!
触れた瞬間、塊が爆ぜその威力で私の身体が大きく吹き飛ばされてしまう。ジャスガは確かに成功したはずなのに何故……と少し考えたが、その理由にはすぐに思い至った。
あの塊は黒と黄色の二種類が混ざっている……少しの衝撃で急激に温度を上昇させる超デリケートな可燃物と、温度の上昇によって膨張・炸裂する成分を持った液体の混合物、言わば液状のダイナマイトのようなものなのだろう。
ジャスガを成功させたことによって、確かにあの塊を『ぶつけられることによる』ダメージは無効化することはできた。だが、そこからの爆発による二段構えの攻撃……ジャスガで無効にできるのは単発の攻撃のみ、こういった連撃を防ぐことは難しいという欠点を突かれる形となってしまった。
対策するのは簡単だ、ララ=ルーナからアモルパレントに持ち替えれば良いだけだからね。でもその場合は完全に防御用と割り切る必要がある……画竜点睛だから通じてるだけで、もう奴の斬撃耐性は伸び切っているだろうから。
──ダメージは……うん、大丈夫そうだね。
爆発を受けてどれだけHPが減ったかを確認してみたが、どうやらララ=ルーナの『
絶世奥義が使えれば、HPを気にすることなく動けるけど……アレはまだリキャスト待ち中。死ねば待ち時間はリセットされるけど、そのためだけにワザと死ぬつもりは無い。
「さぁ……スパート掛けてくぜ」
画竜点睛の高い耐久力をもガリガリと削る超振動が付与され、攻撃のヒット数が向上する。
もう打撃は効果が薄くなってくる頃合いなので、ララ=ルーナは回復に専念。後はもう画竜点睛だけで決着まで持っていく。
火力は心配になるだろうが、実際そこまで懸念する程ではないとも思っている。超振動に加えて時間経過による『最適化』の進行、そして何より──
──モンスターがなりふり構わなくなる時は、それは弱ってきているという証拠!
これまで戦ってきた奴ら、どいつにもこいつにも当て嵌まる特徴。HPが少なくなってくると、形態変化したり大技を連発してきたりとなりふり構わない戦法を取ってくるようになる。
"
「……………!!」
「汚ったねえなぁ、誰が触るかそんなもん!」
"
当然、あんなもの食らってはやらない。封虹の撃鉄で得た飛行能力で大地を離れ、直接爆発を食らわない空から攻めていく。爆風の影響は受けてしまうが直撃よりは遥かにマシだ、無視してリジェネに任せたゴリ押しで一気に押し切る……!
──シュトーレンとアクアリエに感謝だね!
攻撃を仕掛けながらも、頭の隅で私はそんなことを考えていた。
耐性の弱化、無力化、空中機動を活かした四次元殺法、数多の回復手段にスキルの少ない中でも大火力を狙える必殺の大技。どれも彼らの作ってくれた装備でなければ成し得ないことだ……モンスターの特性を活かしてくれている、とも言える。
おかげさまで、初見な上に本来かなりの難敵となるはずだったであろう"
「……………!!」
「当たらんよ……食らいな、「
私を捕捉して動き回ることで、四方八方に撒き散らされるゲロを避けつつ、爆風は無視して受けるか画竜点睛のジャスガで振り払い対処。肉弾戦を「月花ノ構エ」や「
新スキル「
「…………!!」
一発目。7ヒットが追加で入る。
「…………!!」
二発目。14ヒットが追加で入る。
「………………!!」
三発目、四発目……繰り返し、ヒット数が最大になるまで攻撃を繰り返す。画竜点睛だけでは効果時間内にそこまで持っていくのは厳しいので、ダメージは度外視でララ=ルーナでも攻撃を重ねる。そっちのダメージはしけたものだが……
「……………!!」
「さぁ……これで、終いだ!」
……おかげで、777ヒットに間に合った。本来は片手剣二刀流とかを想定したスキルだろうから、そうしてればもう少し楽だったかな?アルテミスとかの短い剣に変えとけば良かったかもね。
まぁ、何はともあれ準備は整った。この戦いの決着を告げる結びの一太刀……秘剣『
──まったく、一周回って尊敬できちまう程の勘の良さだな……褒めてないけどさ。
木花咲宴は発動までに『ヒットした攻撃回数』に応じてその威力と射程を向上させる……だが、ほぼ上限まで伸ばした射程にも収まらない程に"死闘の傷"は離れてしまった。追いかけようにも再び射程圏内に収める頃にはもう、とっくにスキルの時間制限は超過してしまっているだろう。高い火力を出せるだけに、時間には結構シビアなのだ。
──けど、それは私一人ならの話だ。
「頼んだぜ、ミシロ」
「
ここまでずっと存在感を消し、状況の観察に徹させていたミシロが装備した『
奴に耐性強化能力があると分かった時点で、ミシロはどこかのタイミングで必ずダメージを通せない足手纏いになると分かっていた。だから下手に戦闘に介入させず、その手助けが最も有効になるだろうシチュエーションが来るまで待機させていたのだ。そしてその忍耐は、最高の形で彼女に報いを与えることとなる。
「……………!!」
「逃がしはしない……潔く、死ね!」
ミシロの射撃と同時に駆け出した私は、それが命中すると同時に跳び上がり刀を抜く。地に伏しながらも鋭く私を睨み付ける三面六眼の竜、その正中線を通すように画竜点睛が閃いた。
秘剣『
大量の斬撃を、打撃を受けた。何度も自爆しては大地を転がり、その傷の数は計り知れない。
それでも……竜の眼光は、最期の瞬間までその鋭さを失うことは終ぞ無かった。
【モンスター
【討伐対象:ドラクルス・ディノサーベラス"
【エクゾーディナリーモンスターが撃破されました】
【称号『死闘の覇者』を獲得しました】
【称号『傷だらけの猛者』を獲得しました】
【
「ふぅ……お疲れ様。ありがとうね、ミシロ」
「
決着は着いた。最終的には「綺憶像失」の一回も発動せずに済んだし、危なげ無く終わったと言えるだろう……だけど凄く疲れた。新大陸にやって来て一発目の戦闘が、まさかこうも突発的で高カロリーなものになるなんて思ってなかったからなぁ。
新大陸に着くという目的は果たしたし、今日はこれで終わりにするとしよう。途中でチラッと見えた街まで戻る気力は……無い!適当にセーブポイントを設置してそこで寝てログアウトだ!
「それじゃあミシロ、またね」
「はい。お休みなさいませ、
こうして、ログアウトした私の意識はまた現実へと戻っていった。そのままフラフラと誘われるようにベッドに飛び込み……義肢を外すことも忘れ、昼まで泥のように眠るのであった。
「うぅ、身体痛い……」
……起きてからそのことを酷く後悔したとは、最早言うまでもないだろう。
『死闘の覇者』
獲得条件:ドラクルス・ディノサーベラス"
『傷だらけの猛者』
獲得条件:ドラクルス・ディノサーベラス"
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