ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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11:サードレマに行こう

「あんた、その傷はまさか……!?」

「ん?ああこれ、リュカオーンってのを倒したらそいつに付けられたんだよ」

「あのリュカオーンを……ッ!?何て奴……」

「……おーい、大丈夫かーい?」

 

 セカンディルの鍛冶屋にて、余った化石や鉱石を使って武器の強化をお願いしに行ったのだが。肝心の鍛冶師がポンコツになってしまったせいで一向に話が進まない。どうやらリュカオーンに付けられたこの刻傷が悪さをしているらしい。

 NPCとのコミュニケーションに補正が入るとは書かれていたけど、こうも恐れられるとは……分身とはいえリュカオーンを打ち倒した証、そんなのが目の前に居るとそりゃあ怖いか。でも会話でグダつくのは怠いから話はちゃんと聞いてくれ。

 

「あんたが……いやまさか……悪かった、取り乱しちまったな。あんたのような優しい空気を纏った人間が、あの『夜の帝王』に敵として認められた証を付けているとは思ってなかったんだ」

「優しい……ああ。話は戻すけどこの鉱石達で私の武器強化してくれる?リュカオーンとの戦いでかなり消耗しちゃってるからさ、修復もお願い」

「ほう……良いモン揃えてるじゃねえか。これならきっと強く鍛えてやれるぜ、期待して待っときな」

「ああ、頼むよ」

 

 リュカオーン戦で残った手持ちを全て強化のために預けたので、戻ってくるまでは余ったアイテムの換金やポーションなどの補充に行く。チェストリアが残ってたらなぁ……まだ試してない武器とか使ってないアイテムとか、いっぱいあったのに……

 色々と店を回っている内に、武器の強化が完了したことを知らせる通知が届いた。急いで鍛冶屋に向かい武器を受け取るが、心なしか強化前よりグラフィックが良くなっている気がする。何というか燻んだ金属の色が磨かれた結果、より鮮やかに見えるようになったという感じの変化。

 

「素材が良かったからな、『改二』から色々と段階すっ飛ばして『改七』だ。大事に使えよ」

「ありがとう。どれどれ性能はと……お、耐久値がめちゃくちゃ上がってるじゃーん!」

 

 強化されたスペックの確認、『改二』の時と比べ耐久値が3倍近く上昇していた。ダメージ補正やクリティカル発生確率など攻撃性能も微増し、全体的に二回りくらい強くなっている。特に耐久が増えてくれたのがとても嬉しい。その代わり装備にステータス条件が付いてしまったが、リュカオーン戦のポイントがあるので別に問題は無い。

 沼荒野のレア鉱石を使った強化なので、次の強化はよりレアな鉱石を取れるようになってからになるだろうし、しばらくはこの『改七』と付き合っていくことになるだろう。初期装備から壊れずに残ったこいつらとの付き合いは長くなりそうだ。

 

「しっかし、こんな武器で夜の帝王を倒しちまうとはなぁ……量産品のこのシリーズを持ってる開拓者は何人も見てきたけど、間違い無くお前さんの武器が一番の大物食らいだよ」

「まぁ、普通はリュカオーンを倒せる頃にはもっと強くて派手な武器に乗り換えてるだろうからねぇ」

「貴重な経験を積んだ武器……こりゃあ『真化』の時どんな姿に変わるかが楽しみだな」

「『真化』?『進化』じゃなくて?」

 

 疑問をぶつけると、鍛冶師のおっちゃんは景気良く答えてくれた。

 何でも、真の姿と化すと書いて『真化』とする武器の強化方法があるのだという。

 

 形を変えずスペックだけを上げる『強化』

 用いた素材に合った新たな姿に変わる『進化』

 

 それらとは違い、素材に武器が蓄積した経験を用いる『真化』では更に大きく変わることがある。具体的に言うと、使い手がその武器をどのように使ってきたかで、強化後の性能は強化前と比べて大きく変化する。

 例えばロングソードを『真化』させた時、使い手が突きを多用していたならば、より突きに特化した剣または突き特化の武器種レイピアに。振り下ろして叩き切ることを重視していたならば、重量特化の剣または叩くことに特化した武器種鉄鞭に。このようにより使い手に馴染むように、大胆な変化をするが『真化』である。とのことらしい。

 

「どう使ったかもそうだが、何と戦い打ち倒したかによっても真化の方向性は変わる。正直お前さんの武器がどう変わるのか……悔しいが俺には全く以って想像がつかねえ」

「へえ……それは楽しみだね。じゃあ武器を真化させた暁にはその姿を見せに来るよ。約束する」

「いいのか?」

「あんたには世話になったからね。それに職人としては気になるでしょ?」

 

 傭兵武器を真化させたら、鍛冶屋のおっさんに武器を見せに戻って来る。約束を結ぶとそれが新たなユニークシナリオ【鍛冶師は真なる姿を夢見る】として解放された。こういう些細な行動もユニークになり得る、それがシャンフロ。

 シナリオ内容は『真化した【傭兵】シリーズの武器を持ってセカンディルの鍛冶屋を訪れる』というものになっているが、クリアしたらどんな恩恵が齎されるのだろうか。報酬内容によってはほぼ全員が素通りするだけのこの街にも、滞在するに値する何かが生まれるかもしれないな。それこそとても腕の良い鍛冶師『名匠』の覚醒とか……

 

「それじゃあ私は行くよ。世話になったね」

「おう、夜道には気を付けるんだぞ。またお前さんに会える日を楽しみにしてるぜ」

 

 これで、セカンディルで今やるべきだったことは全て終えられた。武器の装備条件を満たせるようポイントを振り分けてから、改めて昨日は攻略を諦めた四駆八駆の沼荒野のエリアボス「泥掘り」の討伐に向かう。

 

 ──────────

 PN:ロンミン

 LV:2

 JOB:傭兵(片手剣)

 988400マーニ

 HP:140

 MP:1

 STM:75

 STR:30

 DEX:30

 AGI:180

 TEC:30

 VIT:60(+10)

 LUC:100

 スキル

 ・グローイング・ピアス

 ・ループスラッシュ:LVMAX

 ・水斬り:LVMAX

 ・辻斬り:LVMAX

 ・クエイクスタンプ

 ・ブロウスイング

 ・スカイスマッシュ

 ・無尽連斬

 ・解体術:LV3

 ・抜刀術:LV1

 ・パリングプロテクト

 ・観察眼:LV3

 ・スケートフット

 ・クイックターン

 ・水渡り

 ・グレートエスケープ

 ・エスケープランナー:LVMAX

 ・アクセル:LVMAX

 ・隠密行動:LVMAX

 ・スカイハイ

 ・ムーンジャンパー

 ・グレイトオブクライム

 ・四艘跳び

 ・窮鼠猫噛(きゅうそねこをかむ)

 ・死中に活:LV5

 ・鮮血の渇望(ワンツブラッド)

 

 装備

 右:無し

 左:傭兵の鉄刀『改七』

 頭:赤いバンダナ(+2)

 胴:旅人の服(+3)

 腰:旅人のズボン(+3)

 足:旅人の靴(+2)

 アクセサリー:無し(リュカオーンの刻傷)

 アクセサリー:無し(リュカオーンの刻傷)

 アクセサリー:無し(リュカオーンの刻傷)

 アクセサリー:無し(リュカオーンの刻傷)

 アクセサリー:無し(リュカオーンの刻傷)

 ──────────

 

「増えたなぁ、スキル」

 

 全然変わらない……どころかチェストリアが死んだ分弱体化したとすら言える装備面と違い、スキルは数はもちろん質もかなり上がっている。この読むからに強そうな名前の羅列よ。ちなみに化石掘りをしてる間にレベルが2に上がった。

 スキル変化や新スキル習得は、レベルアップ時に纏めてされるからな……通知がめちゃくちゃ来ててマジでビビったぞ。

 

 ステータスの方も大分変わった。初期値のままだったSTR・DEX・TECを装備条件達成のために上昇させ、余ったポイントでHPとあとVITを強化。レベルが下がったことでステータスも下がるものと思っていたのだが、どうやらステータスの実数値は変わらないようだ。

 代わりに1レベルあたりの必要経験値量が増えているけど、元々小さな祝福の効果でレベルアップには時間が掛かるので誤差の範疇だ。通常の4倍掛かるものが4.1倍になっても誤差だよ誤差、レベルが上がる程苦しくなっていくと思うけどね。

 

「楽勝だろうなぁ、これ」

 

 レベルは低くても、今の私は明らかに進行度で見ればオーバースペック。余程の理不尽にでも見舞われない限りは、ソロ殺しと言われている泥掘り君も問題なく倒せるだろう。むしろ一方的な虐殺になってしまわないかが心配だ。

 まぁさっさと終わる分には別に構わない、杞憂は程々にして泥掘りの待つ沼地最奥へ向かおう。散々寄り道して苦労した後なので、いい加減にサードレマに行きたいのだ。推奨レベル20程度のエリアボスなんかに苦戦している暇は無い。

 

「沼荒野にはそれなりに長く居たけど……お前に会うのは初めてだな、泥掘り(マッドディグ)君」

「グオオオオォオ!!」

 

 純白のつるつるとした皮膚に覆われた、四足歩行の鯰みたいな鮫……私が初見で抱いた感想は「某グルメ漫画にこんな奴いたよなぁ」であった。捕獲レベル4000くらいあるあいつ、流石に関係無いはずなのでその考えは頭から切り離す。

 泥掘りの攻撃手段は噛みつき・尻尾振り回し・前脚によるパンチ・泥の中に隠れて地面からの急襲カチ上げなどがある。ブレスを吐いたり泥を飛ばして攻撃したりはしてこない。貪食の大蛇よりは強いがまだまだ序盤のボス、って感じの強さだ。

 

「さて、いくか……水渡り」

 

 スキル「水渡り」を発動。泥濘んだフィールドは足を取られ歩きを強制されてしまうが、このスキルは発動中水上の移動を可能とする。歩く必要無しで移動できる「スケートフット」も合わせれば、リキャストタイムを潰し合って、長い時間泥を無視して移動することも可能になる。

 それだけではなく、周りに点在する岩山を足場に「四艘跳び」や「スカイハイ」を使えば、沼そのものを無視することも可能だ。今の私のスキル構成だとギミックをガン無視できるのである。

 

「ギャアアァァ!!」

「うーん、やっぱり一方的になったか……」

 

 開始前から懸念していた通り、私だけが攻撃し続けられるワンサイドゲームになった。プレイヤーが沼に足を取られて機動力が下がるのを前提にしたのだろう泥掘り君の低い機動力に加えて、リュカオーン戦のためにAGIを伸ばしまくった私のステータスとギミックをガン無視できるスキル構成。色々と噛み合ってしまった結果、泥掘り君は動き回る私を目で追うことすらできなくなっていた。

 

 ──可哀想に泥掘り君……でもねこれ、避けては通れないんだよね。ボス戦だから。

 

 体液の滑りが皮膚の光沢を強調する、リアルだとちょっと触りたくない背中に飛び乗る。落下の勢いと衝撃で泥掘りを抑え付け、武器を傭兵の鉄鎚に持ち替えてスキルを発動。パワースタンプから進化して破壊力を向上させた「クエイクスタンプ」で、泥掘りの脳天を叩き割る。

 直接触れずとも、伝播する衝撃だけで大地が揺れ泥が弾け飛ぶ程の一撃。実際のところ威力はそれ程高い訳じゃないのだが、発する強烈な振動は頭部にヒットさせれば、高い確率でスタンによる行動不能を狙える強力なスキルである。オマケ程度だが部位破壊もしやすくなってるぞ。

 

「……ッ!!」

「泥の中に逃げたか。てことは来るな、初見殺し」

 

 強烈な一撃を食らい、たまらず沼の中に潜り逃げ込む泥掘り君。あの巨体が潜れるような深さの沼ではないと思うのだが……そこはゲーム的にできると決まっているということなのだろう。wikiをちゃんと読んだら原理とか書かれてるのかな?

 それはさておき、このまま沼地にいると泥掘りが地中から起こす振動によって、強制的に行動不能状態にされて不可避の攻撃を食らってしまう。泥掘りが「ソロ殺し」「近接殺し」と呼ばれる所以となる高空へのカチ上げ攻撃を。攻撃そのものではなく落下ダメージによってプレイヤーを殺す、途轍もなく性格の悪い初見殺し。

 

「さて、どーすっかね」

 

 対処するのは簡単、スライドムーブで最寄りの岩山まで移動すればいい。振動は食らうけどカチ上げからは逃れられるので、沼中から出てきたところを叩いてやればそれで終わりだ。もう奴のHPも殆ど残っていないだろうからね。

 とは言え、せっかくステータスで差を付けているのだから別のやり方を試してみたい。例え失敗したとしても、今の耐久力なら落下ダメージまで普通に耐えられると思うし。やってみようかな……何も思うようにはさせない、完璧な勝利ってやつを。

 

鮮血の渇望(ワンツブラッド)、起動……更に解体術、発動」

 

 30秒間STRとDEXに補正を掛け、時間内に攻撃で誰かにダメージを与えられなかった時、逆にマイナス補正が掛かる「鮮血の渇望(ワンツブラッド)」を起動。加えて部位破壊のしやすさに補正を掛ける「解体術」を同時に発動。

 武器を傭兵の鉄刀に持ち替え、抜刀し鋒を地面に向けて然るべき時を待つ。振動による行動不能状態になってから、それが解除される泥掘りのカチ上げ攻撃を受けるその瞬間……リュカオーンの分身殺法をあしらった時と同じように。

 

「まだ……まだ……まだ…………今!」

「ア……ッ!!?」

 

 カチ上げ攻撃が触れたその瞬間、「パリングプロテクト」と「グローイング・ピアス」を同時に発動し沼内の泥掘りへ反撃の突きを食らわせる。カウンター成功により上空への吹き飛ばしは無効、より強くなった突き刺しが、砕かれ柔らかくなっていた頭部を抉り裂いた。

 泥掘り君にはもう、私の反撃を耐えられるだけのHPは残されておらず。か細い悲鳴を上げながらポリゴンとなって散っていった。これにて四駆八駆の沼荒野、突破完了……私は無事サードレマへ向かう権利を得ることができたのだった。

 

「レベルは……1上がったか」

 

 曲がりなりにもボスモンスター、少なくなった経験値でもレベルをしっかりと上げてくれた。このポイントはもう少しだけ貯めて、使うべき時になったら使わせてもらおう。オーバーキル否定派という訳じゃないけど、弱いものイジメはカルマ値を上げやすいみたいだしその用心だ。小さな祝福を維持したいのでカルマ値の上昇は困る。

 もう沼荒野に思い残すことは無いし、さっさとサードレマまで行ってしまおう。武器強化に中々時間を取られたから、街に着いたらセーブポイントを更新して今日はそこで終わりになるかな。続きはまた明日1日のタスクを全部終えてからやろう。明日は生協の宅配が来るから、冷蔵庫の整理をして空きを作っとかないといけないのだ。

 

 ──数日分纏めてくるからなぁ、あれ……足の早い食材は管理が面倒なのが玉に瑕。

 

 明日のことを考えるのはそこそこに、今はまずサードレマに向かう。何やら近い内にPvPイベントが行われるとのことで、街の中は色んな属性のプレイヤーで溢れているそうだ。私は黎桜の配信でレアアイテムを持っていると晒されているので、特に気を付ける必要がある……結論から言うと、宿屋まで特に何事も無く進めたのだけども。

 セーブとリス地の更新は済んだし、最低目標には達したので今日はもう落ちる。刻傷を見た門番の挙動不審振りは一周回って面白かったな……どうやら刻傷と祝福を同時に持っていることで、NPCからの反応がチグハグなものになっているようだ。セカンディルだけが特別じゃなくて、どこでも同じような反応をされるってことか……面倒な。

 

「さて、それじゃあまた明日ー」

 

 落ちたらすぐに寝よう。そう心に決めてから私は仮想世界よりログアウトするのだった。




 ロンミンは小さな祝福とリュカオーンの刻傷によるNPCとのコミュニケーション補正を同時に受けている。それ故NPCが受ける第一印象が凄まじく混乱するようになる。例えるなら優しげな物腰と雰囲気の人が、服の下に隠している刺青とか返り血を見てしまったという感じ。

 お気に入り登録数10件を記念して、原作の設定ゲロに倣い今後登場(予定)のモンスターについての情報を下に一言で残しておきます。
 登場時期は未定ですが、どんなモンスターが出てくるか是非お楽しみにお待ちください。



















『地上の満月』
それは、月に憧れた者の末路。

『怨み晴らせど』
この憎しみに、終わりは無い。

『水晶の底に眠るモノ』
戦災孤児はそこに居た。

『より良い明日へ』
脅威を飼い慣らせ、その智慧を以て。

『天までは届かぬ』
バベルの塔は、崩れるが運命。
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