ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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タイトルを原作に寄せたものに変更しました。
今回はゲーム内描写無し


12:連絡がいっぱい

「ん……?黎桜からか」

 

 シャンフロからログアウトして、眠ろうと思いベッドに入った私であったのだが。スマホに通知が来たのを見て確認すると、それは黎桜から届いた聞きたいことがあるというメッセージであった。

 

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 黎桜:八千代ちゃんに質問なんだけどね?リュカオーン倒した後私デスポーンしたじゃん、そしたらセカンディルにヴォーパルバニーが居てさ。追いかけたら『兎の国からの招待』っていうユニークが発生して、ラビッツっていう兎の国に連れてってもらえたんだけど八千代ちゃんのところには来てた?

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「ユニーク?ラビッツ?マジかよ……私のところにはなーんも来てなかったぞ」

 

 まさかの内容。リュカオーンの影を倒したことで新たなユニークに繋がったと言うが、私のところにはヴォーパルバニーなど一羽も来ていない。確実に黎桜の方でだけ始まったユニークだ。

 いや、私の方にも新しいユニークシナリオは来ているけどリュカオーン関連じゃないし。私とあいつでいったい何が違ったというのだ。もう寝るつもりだったがこの際仕方がない、情報は吐ける限り全て洗いざらい吐き出してもらうぞ。元々私が戦ってたのにあいつが乗っかってきた形だし、それぐらいのことはしてもらっても良いはずだ。

 

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 八千代:そんなの影も形も無かったけど。参考までに一部始終とユニークの内容教えて

 

 黎桜:良いよー。まずデスポーンした後すぐ宿屋を出たんだけどね、そしたらちっちゃな白いヴォーパルバニーが街の中に居るのを見つけたの。手招きしてきたから追いかけて路地裏に入ったら、そこには大きな扉があって……ユニークシナリオを受注するか選ぶ画面が出てきて、受けるって決めたら扉を開けられるようになったから入ってみたんだ

 

 八千代:ほうほう、続けて?

 

 黎桜:中に入ったらそこは見渡す限り兎ばかり!追いかけてた白い兎の話を聞いたら、そこがヴォーパルバニーの国『ラビッツ』ってことと、その兎の名前が「ゼッタ」ってことと、ゼッタのお父さんの命令で私を招待したってことを教えてくれたの

 

 八千代:へー、それがラビッツの王様とか?

 

 黎桜:それは違うみたいだけど、実際一番偉い兎なのは確かだと思うよ?たくさんのメス兎を侍らせた極道みたいな大兎……「ヴァイスアッシュ」っていう名前みたい。私のこと鍛えてくれるっていうから二つ返事で「よろしくお願いします、先生!」って言ったんだけど……極道みたいだし、アニキとかで呼んだ方が良かったかな?

 

 八千代:『先生』呼びで受け入れられたならそれで良いんじゃね?何かロールプレイが必要で、先生呼びが間違ってたんじゃなければ

 

 黎桜:うーん……だったら大丈夫かも。ヴァッシュってあだ名で呼ぶこと許してくれたし!リュカオーンの影を倒したことについて、めっちゃ褒めてもらったし!ゼッタも言ってたけど、ヴォーパル魂?ってのが凄く高いんだって!

 

 八千代:良かったね。ちなみにシナリオの発動条件とか予想付く?もっかいユニークモンスター倒せってんなら超キツいけど、再現方法さえ分かるなら私も同じユニーク出せるでしょ

 

 黎桜:うーん……ヴォーパルバニーに関連してそうなことと言えば、装備かなぁ?私があの時使ってた武器が【致命の長杖(ヴォーパル・スタッフ)】だったし、似たようなユニークの【兎の国ツアー!】ってやつが、致命武器で自分よりレベルの高いモンスターを倒すのが条件で出るみたいだし。より強いモンスターを倒せば招待の方になるって感じなのかな?

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「致命武器か……確かにありそうだな。耐久低いからって使うの控えたのが悔やまれるな……」

 

 確かに、リュカオーン戦で私が使っていた武器は【傭兵】シリーズの武器、黎桜が使っていた武器は【致命】の武器という違いがあった。私も致命武器なら【致命の包丁(ヴォーパル・チョッパー)】を持っていたが、傭兵の双刃と比べると耐久値が低く継戦力が頼りないので使うのを避けていた。まさかそれがユニークの有無を分けることになってしまうとは……

 一応、wikiを同時に閲覧しながら他の可能性についても考えてみる。致命ということでクリティカルも候補に入るかと考えたが、私はソロの時から散々当ててきたし、黎桜もかなりの数当てていたのであまりアテにならない。明確な違いは武器と戦法くらいだし、やはり【致命】武器の使用の有無が関わっている可能性が一番高いだろう。

 

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 八千代:wikiでも調べた感じ、致命武器関係が一番あり得そうかな……リュカオーン程の相手はそう簡単には出逢えないだろうし、また機会があったらその時に挑戦してみるよ

 

 黎桜:その時はまた手伝うよ!招待受けたらヴァッシュから【致命魂の首輪】っていう、経験値が減る代わりにレベルアップ時のスキルポイントが増えるアクセサリー貰えたから、なるべくレベルが低い内に受けれるようにした方がいいかも

 

 八千代:あー……それなら、私はこっちのユニークで同じ効果貰ってるからいいかな。重複したらレベル1桁の今でもレベル上げしんどくなりそう

 

 黎桜:あ、そうなの?まぁ八千代ちゃんも招待受けたらその時は一緒に進めよ!ヴォーパルバニーの仲間も付くから、ソロプレイもやりやすくなるよ!また機会があったら一緒やろうね、あとフレンド登録も忘れてたからちゃんとやるよ!

 

 八千代:はいはい、おやすみ

 

 黎桜:おやすみ!

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「ユニーク……魅力的だけど、仮に出すとして経験値減少するってのが怖いな」

 

 兎の国からの招待を受けると貰える、【致命魂の首輪】というアクセサリーにあるという経験値減少効果……仮に小さな祝福と重複するとなると、倍率次第だが減少量が1/10にも1/20にもなり得るのが少し怖い。もしもそうなったら低レベルでのレベリングにすら支障を来すだろうし、私が招待を狙うのはまだ先にした方が良さそうだな。

 どんな内容のシナリオかも気になるけど、それは黎桜の配信を追えば観れるしその時でいい。今はとにかく攻略と進行を優先するべきか。まだサードレマに着いたばかりだし、せめて新大陸とやらを行き先の視野に入れられるくらいには進みたい。これは時間が掛かるぞ……既に次のログインでは、まず寄り道をすることが確定してるし……

 

「明日のことは明日考え……またメッセージ」

 

 思考を切り上げて寝よう……そう思った矢先にまたしてもメッセージが届く。今度の連絡は黎桜ではなく瑞樹姉さんと力也兄さんから、瑞樹姉さんはエキスポの時に私の足をしてくれた人だ。二人は双子のきょうだいなのである。

 

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 瑞樹:エキスポ以来ね。八千代、シャンフロはもう始めたの?楽しめてる?

 

 力也:まさか、人型嫌いの八千代ちゃんがシャンフロに手を出すとはなぁ

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 瑞樹姉さんもそうだが、力也兄さんもシャンフロプレイヤーの一人だ。妹分であり同じゲーマーでありながら、これまで一緒にプレイできなかった私と同じゲームをできることが楽しみとのこと。

 喜んでくれるのは良いんだけどさ、こんな夜遅い時間からする連絡ではないよね?せめて昼間とか夕方とか、普通に連絡取れる時間にしてくれよ……返事はするけど。

 

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 八千代:楽しめてるよ。今はサードレマ

 

 力也:エキスポ後からでしょ?はっや

 

 瑞樹:やっぱり人生縛りはやってるの?ちゃんと死なずに進められてる?

 

 八千代:一回即死したけど、それ以降は順調に進められてるよ。順調過ぎてレアアイテムいっぱい手に入ったのに全然使えないのが困る。黎桜の配信にも偶然だけど出たから見るといいよ

 

 瑞樹:黎桜ちゃんの?ああ、配信のために一からやり直したって言ってたわね。偶然ってことはエリアで鉢合わせしたとか?

 

 八千代:リュカオーンと戦ってたらあいつが乱入してきた。おかげで勝てたけど、本名衆目に晒しやがったことは許さん

 

 力也:マジ?

 

 瑞樹:アレを倒したの!?トップクランですら最近ようやく倒したって聞いたのに……

 

 八千代:あいつの乱入で助かったけどさ、こっちの顔見るなりいきなり私の本名大声で話すんだよ。あいつ自分が配信中って自覚あったのかな

 

 力也:そりゃあ黎桜ちゃんが悪いわな……最近はご無沙汰だったけど、八千代ちゃんも新しく始めたなら俺も復帰してみようかな?

 

 八千代:最近はログインしてなかったの?

 

 力也:宝石匠(ジュエラー)っていう生産職になるのを目指してたんだけどね。最後の難関がどうしてもクリアできなくて萎えてログインしてなかったんだ

 

 瑞樹:私の方も似たような状況だったんだけど、こっちはリヴァイアサンのおかげでどうにかなりそうだから同情するわ……自力でレア鉱石採ってそれでアクセサリーを作るって、生産職に求める強さのハードルが高過ぎるのよ

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 難関とは?生産職についてはマジで一ミリも触れていないので知らないが、そこまで転職が難しいものなのだろうか。

 聞いてみると、その宝石匠とやらに転職するための条件は「メインに『細工師』、サブに『仕立工』を設定することで発生する(とされる)ユニークシナリオを攻略する」ことらしいのだが。肝心のクリア条件が「自力で採取したレア鉱石を素材にアクセサリーを作成する」なので、前提となる鉱石の採取の時点で躓いているとのことだった。

 

 力也兄さんはまだ新大陸には行けておらず、旧大陸で条件を満たそうとするなら『水晶巣崖』の蠍を掻い潜る必要があるのだという。それがどうしてもできなくて、半ば諦めていたのだと。

 水晶巣崖はサードレマから『千紫万紅の樹海窟』を抜けて、第四の街フォスフォシエと第八の街エイドルトの間『奥古来魂の渓谷』にある隠しエリア。一度踏み入れば最後、レベル100オーバーの蠍達によってミンチにされる超危険地帯。ここの蠍の水晶や超レア鉱石を安定して取れるのは、通称『ツチノコさん』と呼ばれるプレイヤーだけらしい。

 

 ツチノコさん本人から聞き出せた情報やその他情報を加味しても、未だ彼または彼女以外にそれを成せる者は現れていない。あるとしてそれは途方もなく再現の難しい攻略法であり、戦闘能力に割けるリソースの少ない生産職には尚更難しい。

 故に、宝石匠になれたプレイヤーは未だに誰一人として存在しないのだ。鉱石を採り終える前に蠍にミンチにされてしまうから。

 

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 八千代:なる程……じゃあ私が手伝おうか?蠍のヘイトを私が買うから、その間に兄さんは悠々と鉱石を掘って退散すればいいよ。掘ったのが自分でさえあれば仲間の有無は大丈夫でしょ?

 

 力也:八千代ちゃんが……!?申し出は嬉しいけど無理だよ、あそこの蠍はマジで数も質もやば過ぎるんだから!レベル100オーバーの蠍が何十匹も徒党を組んで、一人のプレイヤーを死ぬまで追いかけるんだよ!人生縛りで挑むエリアじゃないよ!

 

 八千代:大丈夫だよ、そういう所でも生きて帰ってこその人生縛りさ。それにね、兄貴分が困ってるのならいつも世話になってる妹としては助けになりたいと思うものだよ。これでもリュカオーンだって倒してるんだから、腕前は信用してほしいな

 

 瑞樹:そういうなら任せてみたら?失敗しても八千代のデータが消えるだけなんだし、力也には何のデメリットも無いでしょ

 

 力也:いやいや、それは……

 

 八千代:いつログインできるの?明日までにフォスフォシエまで進めておくから、私はそれ以降なら午後はいつでも大丈夫だよ

 

 力也:……もういいか。俺も明日なら21時以降はログインできるから、八千代ちゃんがフォスフォシエに来るのを待ってそのまま行こう。どうせ失敗するならデータ作り直しは早い方がいいでしょ

 

 八千代:それで決まりね。忘れないでよ!

 

 力也:そっちこそ、遅刻しないようにね

 

 瑞樹:軽くシャンフロの雑談するだけのつもりだったのに、結構話し込んじゃったわね。いつか一緒にプレイしましょうね八千代、おやすみなさい

 

 力也:おやすみ

 

 八千代:おやすみー

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「サードレマからどう進むか迷ってたけど……流れで決まっちゃったなぁ」

 

 元々の予定として『栄枯斉衰の死火口湖』に行くことは決めてあったが、そのまま攻略してファイヴァルに行くかまでは決めていなかった。サードレマに着いてすぐ止めておいて良かった、一度攻略したエリアを戻るのは面倒くさいだろうからな。

 しかし水晶の蠍か……古参プレイヤーの兄さん達がああも慌てるくらいなら、相当強さのヤバいモンスターであることは確かのはずだ。レベル3の私とは比べ物にもならない強者、しかしそんな格上にも挑戦してこその人生縛り。

 

 安全だけを求めて退屈な時間を過ごすよりは、濃密な時間を太く……そして危機を乗り越えてより長く生きる。それが私の遊び方。

 蠍の危険度はともかく、純粋に兄さんとゲームをできることが嬉しい。私が人型を避けていたせいでやるゲームが被らなかったので、まともに協力プレイをできた試しが無いからだ。瑞樹姉さんとも……百姉さんとも約束したけど、あの二人ともいつかやる機会ができると良いな。

 

「……そうだ、ヤバいトコ攻略するなら黎桜の奴も食い付くだろ。連絡しとこ」

 

 黎桜に「明日フォスフォシエに行きたいから一緒に攻略しようぜ」とメッセージを送り、私は電気を消してベッドに潜った。返事はどうせイエス以外は無いだろうし確認は明日でいい。それよりもこの眠気を解消する方が重要なのだ……ああ、もう瞼が重くて開かない……

 

「むにゃ……」




 原作キャラと絡むのはいつになるやら

 瑞樹はアイドル風の男アバター、『名匠』
 力也は中世風の女性アバター、『細工師』
 力也は宝石匠への道のりで挫折し半引退状態であったが、瑞樹は諦めずに開拓を続けて新大陸に上陸しリヴァイアサンで可能性を見出した。これから爆速でリヴァイアサン攻略に挑むだろう。
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