ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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29:神象を攻略せよ

「こうして見ると……最初の関門ってよりはただのエントランスって感じだね」

「まだ入口に立ったばかり……ということですね」

「どうやって奥に進んでいくかだな」

「あ、ハッチのようなものがありましたよ!」

 

 ベヒーモスの中に入り、「象牙」からのチュートリアルを受講した私達はここでやるべきこと……ベヒーモス第十層への到達を目指し、そのための通路を探しているところであった。一応中心にあからさまに空いている大穴が、ハズレであることは分かっている。確認しに行ったサンラクがエレベーターに轢かれて死んだからだ。

 周りを見回してみたが、シュトーレンをはじめ先に入っていった何人かの姿が既に無い。彼らはこの謎を攻略して先に進んでいる、追いつくためにもさっさと謎を解きたいところである……なんて考えながら辺りを探っていると、秋津茜が下に降りるためのハッチを発見したのだった。早っ……

 

「でもこれ、鍵が掛かってるのか開きませんね」

「ぶっ壊してみるか?」

「さ、流石にそんな暴力的な手段を取ることは無いと思います……周りに破壊痕もありませんし」

「ふぅむ……サンラク、新大陸にはもう一つのバハムートがあるんだよね?そっちはどんな感じで攻略していったの?」

 

 バハムートはもう一つあることを思い出し、新大陸にある方のバハムートのことも、知っているだろうサンラクに話を振る。彼以外の二人も攻略済みのようだし、そこから何かしら突破口が見つかるかもしれない。

 ちなみに象牙に話を振っても、『謎解きは自分で考えてこそですよ、ロンミン』と袖にされる。逆に考えてみれば、ヒント無しでも頑張れば解ける簡単な問題ということ……そこまで頭を捻るような答えではないはずだが、どうなのだろうか。

 

「新大陸の方のバハムート……『リヴァイアサン』は、全五層構造になってて進む度に中心部へ向かっていくって感じだった。そんで一層攻略するごとにこの「アンバージャック・パス」ってやつがアップグレードされてできることが増えてくんだよな」

「『ベヒーモス』では、アンバージャック・パスに相当するアイテムはありませんね……」

()()無いだけかもしれないよ?このエントランスを抜けたら貰えるとか、そんな感じで入手条件があるのかも」

「あれ……?リヴァイアサンだとクリアごとにランクが上がっていくから、一層にいる時のパスはレベル1でしたよね。レベルと今いる階層が同じになるのなら……パスを何も持っていない今はレベル0ということになるのでしょうか!」

 

 ──成る程?

 

 秋津茜の言うことが多分正解だろう。私達はまだ第一層にすら入れていない、リヴァイアサン的に言うならレベル0の状態。つまりレベルの初期設定を何処かでする必要があるということ。

 だが、入口もそうだったが辺りを見回してもそんなことができそうな設備は何処にも無い。ならば窓口はいったい何処にあるのか──象牙よ、質問はできなくても、()()()()()ならできるだろ?

 

「象牙、パスポートの新規発行をよろしく頼むよ」

 

『ええ──正解です、ロンミン』

 

 当たりだった。象牙の解答と同時に私達は開かぬままのハッチをすり抜け、その下にある床まで一斉に落ちていく。新たに通れるようになった空間の壁面には、謎の液体で満たされた大量の試験管が付いたエレベーターが鎮座していた。

 チュートリアルで象牙が言っていたが、このベヒーモスはプレイヤー誕生の聖地とのこと。あの試験管の中で()()()()()()を行い、完了したらエレベーターが動いて世界へ解き放たれる……産まれついての『役割』と『人生』を持った『二号人類』。それが開拓者なのだと理解させられる。

 

 神代、かつての人類が惑星フロンティアに降り立ち、しかし叶わなかった繁栄を成す。そのために作られたこの星に適合する新たなヒト……それが私達『二号人類(プレイヤー)』であり、そして象牙の手を離れ星に根付いた『一号人類(NPC)』ということらしい。

 その他、世界観的に重要そうな情報を大量に浴びせかけられたり、サンラクとサイガー0がエキスポ特典の『フィジカルリモデルパス』で、アバターを作り直したり……私もエキスポ行ってんだからそれできるだろって?ハハッ……リュカオーンにチェストリア破壊された時に一緒にロストしたが?

 

『ちなみに、このリセット・カリキュレーター・システム……R.C.Sでは、肉体の再構築だけでなくブーケ・パズル第五段階と、相応のリザルトを消費することで、神経機能などの身体能力の強化も可能となるのですよ』

 

 ──ブーケ・パズルがベヒーモスのパスポート、リザルトがここだけで使える通貨……だったね。

 

 そして、それは良いことを聞いた。全てを攻略した後でじっくり試してやろうじゃないの。

 そうして移動していると、遂に先行プレイヤーの尻が見えるところまで来た。何やら「液晶時代のゲームを持ち込みました!」みたいな、広大なアスレチックコースに阻まれているようだ。象牙によるとこのアスレチックをノーダメで突破するのが、第一層における試練らしい。

 

「見た感じ、どうよ?」

「シュトーレンをはじめ、先に行った奴らが何人か居ない。ここまで一方通行だったからクリアして先に行ったってことだろうし、ステータスさえちゃんとしてればそこまで難しくはないんじゃない?象牙も基本的な運動能力を試すって言ってたし」

「取り敢えず、試してみましょうよ!」

「順番は、どうしますか……?」

 

 それなら次は私が行ってみようかな。立候補して一番手を貰い、アスレチックの待機列に並ぶ。

 

 ──行こうか。

 

 前の人の失敗を見届けたら、少しその場で跳ねながらリズムを取り挑戦を開始する。今回はスキルを使わずに進む──アクアリエ謹製、ユニークアクセサリー【夜駆ける幻狼の魔眼(ヴォルファント・ヴィル)】の試運転といこう。

 

「おお、速い!」

「スキルを使ってない……なのにあの速さ?」

「ロンミン氏は、素のステータスがめちゃくちゃ高いからな……さっきステータス見せてもらった時はぶったまげたぜ」

「そんなに凄いんですか!?」

 

 後ろから3人の声が聞こえてくる。速さに驚いてるけど一番高いのはHPだぞ、それをサンラク経由で知った二人が驚くのが聞こえる、凄いと驚かれるのは中々良い気分になれるな。

 私のステータスは、小さな祝福の効果によって常人の4倍成長するようになっている。その分成長するまでの過程が大変になるはずだったけど、それも"月華美神"のおかげでスキップできた。初期から始めた廃人でも、私を超えるステータスの奴はそう居ないだろう、それ程の領域なのだ。まぁステータスよりスキルや魔法の方が重要になりやすいし、だからどうしたという話でもある。

 

 それはさておき、一本道に待ち受ける様々な障害を一つずつ丁寧に乗り越えていく。

 

 最初の飛び石地帯は、一つずつ丁寧にかつ素早く移動し抜ける。あまり長く一つの石に居座っているといずれ割れてしまうので、迅速に丁寧にタイミングを見極めて跳び移っていく。

 

 次のトンネル地帯は、全方位から周期的に突き出す棘をどうするかだが……難しく考える必要は全く無い。棘が突き出してくる前に速攻で次の関門まで駆け抜けてしまえばいいのだ。

 

 次はレーザー地帯。"月華美神"のそれに比べれば細いし遅い……流石に、アレの後ではあまりにも見劣りするギミックにやられる道理は無い。何ら苦戦することなく通り抜けることができた。

 

 次は無限に開け閉めされる扉、開いている瞬間を狙って通り抜けてはい終わり。あまりに簡単なのでこの辺から魔眼の認識強化をオフにした、それでも全然大丈夫だったな……

 

 そして最後は、不規則に揺れ動く数十本の刃付きの振り子。少し動きを目で追ってみたが規則性のようなものは見つけられず、どうやら動きは完全にランダムな模様。前までの四つのギミックと比べてこれだけ難易度が全然違う、バランスどうなってんだもう少し難易度を統一してくれ。

 だがまぁ、それでも何の問題も無い。私がリハビリのために学んできた武術……リアルでは肉体の都合で実践は難しいそれも、シャンフロのリアルと遜色ない物理演算と生身の身体なら扱える。あと少しだけど油断せず行こう。

 

『あらあら、これは素晴らしい』

 

「凄い、振り子をすり抜けてるみたいです!」

「あれもスキルじゃねえのか……リアル技能の高さをゲームに活かしてる感じなんだな」

「……そう、ですね。私も同じ流派で学んではいたんですけど、同じことはできません」

「マジか、0氏でもできないの?」

 

 行く手を阻む障害をすり抜け、次へ次へと進んでいくその姿は吹き抜ける風の如し。位置取りと受け流しに長けた『百柄流』の歩法──その強みを十全に発揮できるならば、どんな壁であろうと容易く乗り越えてしまえる。約10年、これだけを習い練習してきた成果が出ていた。

 リアルでは当然、義足じゃ精密な動きができないのでこれ程の動きはできない。けれど五体満足でいられるゲームの中でなら……VR剣道教室や蠍との長い戦いの中で、動きのコツを掴めたことで本来の強みを発揮できるようになっている。そもそもの難易度が高いから、集中力が弱まると上手くいかなくなるのが欠点だが……

 

 ──これができる内は、誰のどんな攻撃にだって当たらない……誰にも負けることは無い、はず!

 

 振り子ゾーンを抜けても油断しない。第二層への扉の前まで辿り着き、まだ開かないそれに密着するくらい身体を寄せる。すると、振り子ゾーンを抜けて着地した地点に、恐ろしい程分厚く鋭い断頭の刃が降ってくるのだった。

 

「あっぶな……ホント、油断ならねぇな……」

 

『素晴らしい身のこなしでしたよ、ロンミン。まさかスキルも魔法も一切使わずに、全ての関門を駆け抜けてしまうとは……ご褒美の2万リザルトです』

 

「ロンミンさん、お見事ですー!」

「流石、リュカオーンの刻傷を5枠も付与されただけはあるな……」

「えっ、刻傷を5枠も……!?」

 

 これで第一層はクリア。第二層へ向かう権利は得られたけど、サンラク達がクリアするのを待ってから一緒に向かう。別にパーティを組んでる訳じゃないし一緒にいるのも成り行きだけど、せっかくの縁だし大事にしておきたいからね。

 奴ら三人はあっさりとクリアしていた……サンラクはスクロールやスキルを駆使して僅か5秒で全てを駆け抜け、サイガー0は行く手を阻む関門の全てを力で粉砕し悠々と。秋津茜は更地になった一本道を何の障害も無く渡るのだった。

 

 ──トッププレイヤー、怖……

 

「0さんのおかげでとっても楽でした!」

「上手くいって……良かったです」

「まぁ、今更この程度に苦戦はしねぇよな」

 

『ふふふ……素晴らしいですよ、サンラク、サイガー0、秋津茜。神代の賢人達が託した未来が上質に繋がれていることが、私は嬉しいです』

 

「……次、行こっか」

 

 さて、次は何が待っているのかな?




 アンバージャック・パスに関する話は若干間違っている(リヴァイアサン第一殻層攻略でパス獲得なので、一層攻略中はパスは持ってない)のだが、みんなうろ覚えなせいで指摘はされない。ロンミンはそもそも行ったことないので指摘できない。

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[ステータス]
PN:シュトーレン
LV:144
JOB:古匠
SUB:歴戦兵
68700マーニ
HP:300
MP:750
STM:300
STR:200
DEX:250
AGI:10
TEC:250
VIT:200
LUC:1

[スキル]
通常スキル
・轟天激震:昇華(スタンバイ)
・飛天烈波:昇華(スタンバイ)
・天頂突貫:昇華(スタンバイ)
・グラウンド・ゼロ
大地神の怒り(ガイア・インパクト)
・剛撃【破界鎚衝】
・アスラ・スマッシャー
・ギガノトスイング
勝利の神撃(ウルスラグナ・スマッシャー)
爆心膝撃(グラウゼロ・スマイト)
・ドレインストライク:LV.6
・レテ・バニッシャー
・怪力無双
・ラスト・スタンド
・リミットブレイク:LV.3
・化天の幻
・全霊喚起
・ハイエスト・ストレングス
・ハーキュリー・ブラスター
・クリティカル・フォーカス
・レガシー・フォーカス
真界観測眼(クォンタムゲイズ)昇華(スタンバイ)
星幽界導線(アストラルライン)昇華(スタンバイ)
無重律の恩寵(スペースチャージ)
黒影逆落とし(いちのたにたゆうぐろ)
・ヘルメスブート
・リミット・マキシマイズ
・グランドアクセル:LV.MAX
・オーバーアクセル:LV.8

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)
・「肉斬骨断(コンコルド)
・「星火燎原(スターフレア)

[魔法]
・レガシーセンス
武装鍛造(フォージライズ)
武装強化(ストレングライズ)
武装進化(エヴォライズ)
武装真化(トゥルーライズ)
武装融合(フュージョライズ)
破損修復(ブレイクリペア)
損傷修復(ダメージリペア)
衣服縫製(クロスライズ)
衣服修復(クロスリペア)

[装備]
右:甦機装(リ・レガシーウェポン):シュトーレン【龍王の撃芯(ジャガーノート)
左:無し(ジークヴルムの祝福)
頭:無道の鉢巻
胴:無道の装衣
腰:無道のズボン
足:無道の長靴
アクセサリー:格納鍵インベントリア
アクセサリー:炎霊の手袋(イフリートグローブ)
アクセサリー:列砲百足の繋鎖(トレイノル・チェーン)
アクセサリー:神秘宿す指輪
アクセサリー:神秘宿す指輪

[特殊状態]
・ジークヴルムの祝福
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