ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「女性専用装備かよチクショウ!せっかく良い感じの性能してるのにィ!」
「【
「ええ……死亡前提じゃないと真価を発揮できないって使い辛くない?しかも、下手に異性に触れたら即死させちゃうし」
"
武器の強さに喜びを見せる者もいれば、せっかくの強力装備が女性専用であることに落胆し、地に膝を着く男戦士も。スキルの内容を確認して使い辛さに落胆している者もいる。パッシブ効果ってシャンフロだと貴重だし、それだけでもかなり強い部類に入ると思うんだけどなぁ。
──まぁ、"禍刃剥命"の報酬を全部活かせるのは女か性転換できる男だけだしね。せっかく手に入ったものが何も使えない気持ちはよーく分かるよ。
落胆する男アバター達に同情の視線を向ける。私もここまで碌に手に入れたアイテム使えてないから彼らの気持ちはよーく分かるのだ……こんなことで他人に共感なんてしたくなかったな……
「残念だったな、象牙よ。五層もあっさり突破だ」
『残念?まさか。サンラク、私は今、歓喜の感情に浸っているのですよ』
──ほうほう?
『黒死の天霊は、一号人類種より偶発的に発生したイレギュラー。人類としての「型」を保ったままマナに近しい存在となった興味深い観察対象でした。今はその内の1体が、精霊として斃されて尚も存在し続けているようですが……そちらの興味も尽きませんね。いずれこのベヒーモスにやって来た時に、しっかりと観察させてもらうとしましょう。それはそれとして黒死の天霊のその性質は、あらゆる「戦う者」にとって非常に厄介なものであり、天敵と呼ぶに相応しい存在なのですが……しかしながらあなた達は、その天敵を相手に瞬殺という素晴らしい結果を見せてくれました。死の顕現すらも踏み越えていくその足取りが、私に……母にとっては、非常に喜ばしいものなのです』
──長い長い長い、いくらプログラムだからって一息で発していい台詞の量じゃないって。
だがまぁ、象牙の気持ちは何となくだけど共感できなくもないところがある。こいつは言ってしまえば育成系のゲームをやっているのだ、しっかり造形して試練を与えて成長させ、少しずつ神代の賢人達が遺した成果が身を結ぶ瞬間を楽しむ。
愛着はあるし、愛情もある。それはそれとして試練に潰されたらそれまでだし、想像を超える成長を見せたら喜びを見せる……成る程、普通はゲームならプレイヤーは育成は「する側」であるから、結構ピンと来にくい心情だな。
「象牙。あんたのことが、少しだけ分かったような気がするよ」
『嬉しいことを言ってくれますね、ロンミン。それでは愛しい我が子達……第六層へ転送しましょう』
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「で、第六層では何をするんだ?」
『ここからは少し方針を変え、文明的なフェーズへと進んでいきます。この第六層では、一人当たり情報質量10万マギバイトの取得です』
情報質量とは何ぞや?既存の単位でも私達が知らないだけということもあるかも知れないし、サンラクが【ライブラリ】のリーダーであるプレイヤーに質問を投げかけてみる。が、wikiの運営ができる程の情報量を持つクランのリーダーでさえもマギバイトという単語は初見らしい。
「私にも初耳の概念だがね、それでもおおよその推測は成り立つよ。情報質量、マギバイト……恐らくだがインベントリではないかな?」
「あぁ、成る程……確かにインベントリってアイテムをデータ化して保存してるのよね」
『良い推理ですよ、キョージュ。情報質量とは一、二号人類がデフォルトで持つ拡張空間技術……即ちインベントリに収められたマテリアルを、次世代原子人類種の肉体に記録したものです』
「要するに、インベントリ内に入るアイテムに全て情報質量という数値が存在し……そして、その単位がマギバイトという訳だ」
『素晴らしい』
つまるところ、インベントリにアイテムを詰め込んで規定の数値に届かせれば良い訳だ。
「じゃあ、俺が一番乗りで」
「待ちな、サンラク。君のインベントリって色んな物が入ってるだろうし、まずは持ち物が少ない奴から行ってもらおう。どのアイテムにどれだけの情報質量があるかの指標になる」
という訳で、サンラクには
聞いた話によると、四層で爆泳魚相手に手投げアイテムを使いまくって素寒貧とのこと。そんなプレイヤーがエリアの中心に鎮座する台座に乗り、その頭上に「350」と表示がされる。これが炸裂グリンピースの情報質量ということだろう。
「350……」
「350かぁ……」
「炸裂グリンピース姉貴は350……」
「
「そりゃそうでしょ」
「誰もキログラムの話なんかしてないぜ」
「結構軽いんだなあ」
「絶対分かってて言ってるでしょ、あんた達!」
とにかく、ちょっとした素材や回復アイテム程度では大した数値にはならないと分かった。炸裂グリンピース姉貴も"
「それじゃあ、次は私が行ってみようか」
次の挑戦者はキョージュ。グリンピース姉貴程ではないけどキョージュのアイテムも少ない。しかしこちらには姉貴のインベントリには入っていなかった複数の武器防具や素材がある、その分が数値にどんな影響を見せてくれるのだろうか。
「ふむ……私は5280か」
「成る程……キョージュ。インベントリの空きは僕の方が多いけど、多分ですが僕の方がいい数値が出ると思いますよ」
「ほう?では、実証とその根拠を見聞きさせてもらおうかな」
「恐らくですが、マギバイトは多くの手間を掛けて作られた装備やアイテムなどの方が、数値が高くなると思うんです。であれば僕のインベントリはキョージュより多くの装備が入ってますし、量は少なくとも高い数値を出せるはず……」
次の挑戦者は毘猩猩磐斎。名前へのツッコミはしないものとして、彼の数値は「7012」と本人の予想よりは低かったものの、仮説通りこれまでで最も高い数値を叩き出す。
「10000はいくと思ったんだけどなぁ……これは結構面倒な感じの試練かも?」
「だが、これで攻略の糸口は掴めたよ」
「足りない分は……あのショップで買い物して埋めろってことで良いのかな」
『その通り。ここに来るまでの過程で得た、或いはこれから得るベヒーモス内限定通貨『リザルト』を使用することで、この階層では買い物ができます。エンターテイメント性ではリヴァイアサンに劣るかもしれませんが、それが技術力で劣るという事実に直結する訳ではない……ふふ、ある種の対決とは懐かしい構図です』
──成る程ね?端の方に服屋のマネキンみたいに並んでるロボット、やっぱり売り物なのね。多分クリアしないとベヒーモス外には出せないとかそういうオチなんだろうけど、まぁ穴埋めのためだけに買うんなら別にどうでも良いか。
「それじゃあ次は、私が……」
「いやロンミン氏、ここは俺に行かせてくれ。数値の傾向はもう分かったんだしそれなら俺が行ってももう問題無いだろ?」
「そうだね。話題のプレイヤーのスコアがどれ程のものになるか期待してるよ」
「おう、任せときな」
象牙なども含め、全てがサンラクに注目する中で彼は台座に乗る。装備を全て外し
「何桁あるのよこれ……」
「一、十、百……まだ上がってる……」
『8965億3861万7246マギバイト、文句無しの歴代最高記録ですね』
「チッ、兆はいかなかったか」
──はえー……すっごい。
武器?防具?デキる男はロボや船をインベントリに入れておくものさ……と、覆面越しでも分かるドヤ顔を見せるサンラク。まぁこの記録を変えられるプレイヤーは……あ、サイガー0でも超えられてないならもうヘルパーT細胞くらいじゃないかな。素材アイテムばかりだけど、私やアクアリエの取り分も一緒に入れてあるから、そもそもの量がえげつないことになってるし。
その後も彼が連れている兎……エムルと言うらしいがこいつはどうするのか問題が起きたりしたが、サンラクの交渉とエムル自身の必死の叫びにより、我々同様に条件を達成することでエムルもちゃんと次の階層に進めるようになったことで解決した。エムルの熱弁に対する象牙の冷ややかな視線は凄かったな……人間、いやAIだけどここまで無関心になれるのかって。
「さて、それじゃあ今度こそ私の番だ」
取り敢えず、装備は全て外してインベントリにしまい台座に乗る。
磐斎氏の考察により、『武器・防具は高い情報質量を持つ』ということが分かっている訳だが……それはより正確に言うのなら、『プレイヤーやNPCの手で素材から加工された武器・防具』ということになるはずだ。そうでなければ"
私の装備はどれも初期装備だけど、『改十五』に強化するまでの過程で、それなりに多くの人の手に触れている。素材も貴重なものを結構な量使っているし、情報質量は中々のものになるはず……
『1574万6505マギバイト、合格です』
「あれ、思ったより高いね」
『『夜襲』の眼を加工したアクセサリーのおかげですね、あれだけで実に1500万マギバイトもありましたから』
「へぇ、流石はユニークってところか」
これで七層に進む権利は得た訳だが、ショップの品揃えが気になるので先に見ていこう。存在することは知ってたけど、まだ実物は残骸遺道のゴーレムくらいしか見たことがなかったロボットや、リアルでも存在していそうな実銃の数々。他にも街のショップでは買えないような希少なアイテムが並んでいる様を見るのは中々心が躍るなぁ。
リザルトは十分にあるし、性能の確認はできるようなので確認しながら買う物を決めていく。規格外と付く物があるなら、私の持ってる規格外エーテルリアクターに使い道が生まれるのだが。残念ながら象牙に聞いてもここには無いとのことだった。
「うーん……消耗品以外は微妙なのが多いな」
見ていて思ったのだが、ショップで買えるアイテム特に装備品は微妙な性能の物が多い。っていうかどいつもこいつも利用にMPを要求してくるから私にはどれも使えないんだが?使えそうなのは戦術機タイプメンとか言うシリーズだけか……取り敢えず3種類あるから一機ずつ、あとこいつらと合体するための専用装備を購入しよう。
試運転してみたいが、この場にはプレイヤーしか居ないので他の疑問を試してみる。『ショップアイテムの情報質量どうなってんの問題』だ。見た目的にはかなり手の込んだ作りをしてそうだが、性能ははっきり言って微妙……そんなこいつらの情報質量は如何程か。インベントリ内を今買ったアイテムだけにして計測してみると『1万2000』だった。
「えぇ、低っく……」
私の計測値が1574万6505、その内1500万か【
試しに【傭兵の鉄刀『改十五』】を計測してみるとその数値は『7万2000』と出た。これ一つで戦術機3機の6倍……たくさんの素材と金を掛けただけの価値はあるってことだな、うん。他のゲームだと、銃やこういったロボの類いは人権装備になりがちだが。シャンフロでは普通に鍛えた剣や槍の方が強いということのようだ。
このタイプメン共はインベントリアの肥やしになるだろうけど、それが分かっただけでも購入した価値はある。それに装備するとスキルや魔法を制限されてしまうが、装備条件は無いしステータスがそれなりに強化されるから、使い所は少なくとも必ずあるはずだ。
まだ机上論でしか語ってないから、実際使ってみたら強いかもしれないし。決してプレイヤーに金を無駄に使わせるだけの、しけた罠装備なんてことにはならないはず……そのはずだ。
──次、行くかぁ……
最初ワクワクしていただけに、微妙なものだと知った落胆は大きい。萎えた私はショップを後にして道の開けた第七層へ向かうのだった。
・『???』
ロンミンの『旅人』シリーズを、 【