ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
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第七層の試練内容は、第二層の時の試練と同様のテストであった。ただしこちらは象牙がプレイヤーに対して直接問題を出すこと・問題数は一問のみという違いがある。
それに加えて、第二層よりも解答のために閲覧できる情報の量と質が段違いに多く高い。ライブラリの面々など既に定住する気満々である。もっと先に進んだ時、更に質の高い資料室があるかも知れないんだから、腰を据える前にまずは攻略した方が良いと思うんだけどなぁ。
『エネルギーの生成と自己の保全を存在意義とする旧大陸地下に眠る始源眷族の名前は?』
「……焠がる大赤翅?」
『正解です』
「楽勝だね」
エネルギーの生成、旧大陸の地下というワードからピンと来たのがこいつくらいだったのでそう答えたのだが普通に正解だった。
何というか……ベヒーモスの試練って、割とチョロいものが多い気がするんだよね。労力掛かりそうなものは普通に協力OKだし、ボスの居る試練は誰か一人でもクリアすれば、棚ぼたで同じ階層に居た人全員通過できるし……
『新大陸に生息している、平均体高1m以下の生物を5種類答えよ』
「ご、5種類ですわ?えーと、えーと……」
「エムル、あと10秒な」
「サ、サンラクサァン!?」
『10、9、8、7……』
「ほわああぁあ!!?あー、えー、うー、ヴォーパルバニー!ゴブリン!コボルト!ケットシー!ええとええと………………!!」
「サイナ、知恵貸してやれ」
「解答:ドラクルス・ディノトリアシクス」
「ドラクルス・ディノトリアシクスですわーッ!」
『……正解です。成る程、知的生命体であるというのは事実なようで』
「新大陸にも、ゴブリン……いるんですね」
「ちょっとおバカだけど頑張って生きてるですわ」
「お前にバカ扱いされんのか……」
「サンラクサン、場合によっては表出ろですわ」
──楽しそうだこと。
あちらさんもテストは無事合格したようだ。シュトーレンも合格したし、居座りを決めたライブラリの面々やまだ苦戦してるプレイヤーを残し、私達はひと足先に第八層へ進むのだった。
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「ライブラリの奴ら、勿体無いことをしたな」
「まったくだ」
第八層は、第七層とはまた違ったベクトルでの情報の宝庫と呼べるエリアであった。
モンスターの情報に特化した七層と違い、こちらは『神代人類の文明文化』に特化している。一号・二号計画が始まる前の、我々を生み出し後を託したかつての人類の情報が保管された、ベヒーモス最大の記録保管施設である。
試しに一つファイルを開いてみると、それは神代のトイレ事情について纏められた本であった。何でピンポイントでそんなの引き当ててんだよ私……ほうほう、食事の栄養効率が上がったことで排泄の機会は少なくなっていたのね。
プレイヤーにちゃんと読ませるためか、テキストは一文二文程度に短く纏められている。しかし数が数なので読み切るには骨が折れそうだ。
『この第八層の試練は、第八層に存在するフラッシュメモリーを用いて習得したスキルのみを使い、中央の戦闘エリアに出現する戦闘用人形を撃破することです。どのフラッシュメモリーを使用するかは自由に決めて構いません、しかし使い過ぎは通常のスキル習得に悪影響を及ぼすため、スキルはしっかりと吟味した方が良いですよ……サンラク、あなたは既にフラッシュメモリーを使用した経験があるようですね』
「フラッシュ……ああ、晴天流か」
どうやらサンラクは既に、同じ物を別の場所で利用したことがあるようだ。それならあいつに着いていけば色々と楽になるかも?と思ったけど、結局はこの膨大な情報量の中から自分に合ったフラッシュメモリーを見つけ出さなければならない。横着はできなさそうだし、普通に調べて攻略していくことにしよう。
『サンラクの目的はこの先にあるアンドリュー・ジッタードールのラボでしたね。私はその道を提示はしませんが……ラボに至る情報はエルマ=317、あなたなら分かるのではないですか?』
「……」
──あっちはあっちで、何だか面倒臭そうなことになってるみたいだしね……
フラッシュメモリーを見つけるのは、その情報量の多さ故に生半可な探索では不可能。その上見つけたとしても、戦闘に関係無い試練的なハズレ枠だったり、どう考えても対人しか想定してないだろコレみたいなのも混じってるので油断ならない。
用途に合った使い方さえすれば、ちゃんと有用なスキルではあるのだろうけど。生憎今回の目的は試練の突破、ボスモンスターの撃破なので戦闘に使えないスキルに割ける枠は無い。またいつかご縁があったら良いなということで……
「興味が唆られる中身も多いんだけどねぇ……」
「ロンミン、コレなんかどうかしら?『烈空血霞流新型合気柔術』ですって」
「合気で血霞?バカなんじゃないの?」
「まぁ、名前はバカみたいだけど中身は結構強そうなラインナップしてるわよ。受けたダメージに対応した反撃やバフっていう感じのスキルね」
「……それ、タンクの人権なれるんじゃない?」
シュトーレンから渡された資料の概要を確認してみると、中々強そうなスキル説明が5〜6個程記載されていた。敵からのダメージを受ける程に効果が高くなるバフ、カウンター、相手の勢いを利用した高威力の投げ技、身一つで攻撃に耐えるためのVIT上昇など、あって困らない便利なスキルが盛りだくさんの
シュトーレンはコレを採用するらしい。私も目ぼしい物が見つからなかったらコレにしようかな……名前が気に入らないから取り敢えず候補の一つ程度に留めておこう。なるべくこういうのは自力で見つけたのを使いたいという理由もあるし。
「ちなみにソレ何処にあったの?」
「オカルトの欄だったわ」
「えぇ……」
「まぁ、創作によくある何でも受け流せる合気ってリアルじゃ実現できないものねぇ」
何人か七層から降りて来た人達も情報収集を始め出して、結構エリアが賑わってきたがまだ私は良い感じのフラッシュメモリーを見つけられていない。
──うーん、ジャンルを変えてみるか……?
既にクリアしたサイガー0が習得した『ジェラルド式改良型太極拳』はレクリエーション、秋津茜が習得した『ニンジャアーツ・疾風迅雷の巻』は娯楽項目、サンラクがついさっき手に取った『マクセル・ドッジアーツ』はスポーツと、かなりジャンルがバラバラになっている。
これは……もう、ジャンルという大枠で考えるよりはやりたいことから逆算していくべきか。私が欲しいスキルと言えば何か、当然だが人生縛りの助けになるようなスキルだ。
──戦闘時間を短縮する火力スキル、ダメージを食らい辛くする防御・回避スキル、突然の死を予防できる探知系のスキル。これは視覚はアクセサリーと今あるスキルで十分だから、聴覚とか……あわよくば第六感を身に付けられるみたいなのが欲しい。
何が欲しいかをある程度決め打ったことで、少しだが目的の品を探しやすくなった。先程までの目ぼしい物を片っ端から読み進めていた時間はいったい何だったんだと思える効率で、私は自分の需要に合致するスキルを集め……
「よし、こんなモンで良いかな?」
カテゴリ:『食生活』より
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カテゴリ:『福祉』より
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カテゴリ:『スポーツ』より
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……食生活・福祉・スポーツの3カテゴリから、計12個のスキルを最終的に習得するのだった。
「それじゃあ、試してみるとしようか」
習得したスキルのみを使用し、中央エリアに実現する戦闘用人形を倒す。この人形はサイナなどの征服人形のプロトタイプ的なやつらしいが、完成形が見てる前でそれをバラバラにするってのは……ちょっとした罪悪感のようなものがあるなぁ。
まぁそれでもやらなきゃ先に進めないのだ、感傷は程々にしてさっさと破壊してやるしかない。スキルも魔法も一切の縛りも容赦も無く破壊されてしまうよりはまだ人道的だろう。
──まずは、
本来『食べる』ことができないアイテムを摂食可能にし、食べたアイテムに対応するバフとデバフを齎すスキル「
ついでに
「人形の性能はそこそこ、ってところか……」
人形の持つ剣での攻撃を滑りながら回避、手首に鉄刀を当てて剣を落とさせる。他にも武装は用意してあるみたいだがそれらは使わせない、このまま最後まで翻弄し切って終わらせる。
──何だか、リズムゲーみたいな感じだなぁ……
円の軌道でぐるぐると、全周的に人形を細かく斬り刻んでいく。速度が一定なので時折攻撃を合わせられることはあるが、そんな時は
被弾する要素は一つも無く、物言わぬ人形が壊れていく様に抱く感慨も特に無い。結局最後まで少しな苦戦もしないまま、第八層の試練は戦闘用人形をスクラップにして終わるのだった。
「おうロンミン氏、お疲れさん」
「あれ、待っててくれたの?」
戦闘を終えて中央エリアを出ると、サンラクがエムルとサイナを連れて私に話しかけてきた。何でも親友に会いにいく用事ができたから、一旦ベヒーモスから抜けるとのこと。ははぁん……さては少し前に聞いた"
「おいおいサンラク、一人だけで貴重なエクゾーディナリーを倒そうなんて水臭いじゃないか。ここは私も一枚噛ませてもらうよ」
──サンラクの実力は見てきた、アレなら多分件の蠍も倒せるだろうしなぁ……そうなったら黎桜のことをレイジに売った意味が無くなっちゃう。
「ああ、それもそうだな……エクゾーディナリーってそう簡単にリポップはしないだろうし、ここはロンミン氏も一緒にお願いします」
「ありがとう。それじゃあパーティ登録を……」
「あの……邪魔は、いけないと……思います」
「……はぁ」
──まったく、おめーはよぉ……
この恋愛偏差値0め……そこで私を引き剥がそうとするんじゃなくて、自分も着いていって良いですかと聞かないからおめーの恋は叶わんのだぞ。
サイガー0……玲はサンラク、というかサンラクの中の人に気があることは見ていればすぐ分かる。恋愛クソザコ一族の末席に座るこいつは、こうして動くべき時に動けないから、いつまでもゲーム友達以上の関係から進めないのだ。サンラクはお前のことを何ら異性として意識してないし、お前のアプローチは何ら響いてないってのは、シャンフロで初めて会ったばかりの私でも分かるぞ。
──というか、こいつはちゃんと恋愛的なアプローチしてんのかな……それすら疑わしいぞ。
「そんなに気になるなら、0も来ると良い。素材の分け前は少なくなるけど戦力的には十二分だろ……サンラク、君はどうだい?」
「レイ氏が居るなら百人力だが……流石に遅くなるだろうし、時間は大丈夫ですかい?」
「だっ……!だだ、大丈夫です!イケます……!」
「決まりだね。それじゃあ行こうか」
という訳で、私とサンラク、サイガー0、そしてNPC2人の計5名はベヒーモス攻略を一旦中断して水晶巣崖へ向かうのだった。
「あら、"
「……どうする、パーティリーダー?」
「……4人までなら、素材の分割は許容できる」
「また増えました、ね……」
出発直前、"皇金世代"の情報をライブラリの人達から収集してる段階で、シュトーレンに気付かれ彼女も参戦することとなった。ごめんねサンラク、随分と増えちまったよ……いや、同じ情報貰った私も抜け駆けされるところだったんだから、別にここで謝る必要は無いか。
──さて、どんな強敵に出逢うのかな?