ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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46:無尽の毒蛇

「ここが例の地下坑道……この最深部が毒蛇の溜まり場になってるんだったね」

 

 地図を見ながら、声に出して場所がちゃんと合っているかを再確認する。散々地下を探索した結果残念違う場所でしたーは、マジで精神的に疲労が半端なく溜まるからね……うん、合ってる。

 一応、目的の毒蛇共に当たるまでは出てくるモンスターのレベルも低いし、大した障害にはならないはずだ。油断して足元を掬われないように注意して進まないとね。

 

 ──やっぱり、道中に見るべきものは無いかな。

 

 以前に一度、別のものではあるが四駆八駆の沼荒野の洞窟内は探索してみたことがある。リュカオーンの影に出逢ったあの日のことだ。

 道中で採掘ポイントを掘ってみたり、出現したモンスターを狩ったりしてみたが、あの頃と手に入るアイテムに何ら違いは無い。当時手に入れたアイテムはリュカオーンに全部ロストさせられたので少し懐かしさを感じはするがそれだけだ。今ではもっと質の良いアイテムがより多く手に入るからね……

 

「水晶巣崖とは比べるべくも無い、か」

 

 色々考えながら坑道内を歩いていると、何やら物を引き摺るような異音が、あちこちから聞こえてくるようになった。少し注意を深めてみると地面の揺れが進む度に強くなっている。

 毒蛇共だ。奴らの移動によって起きた振動が私の元まで伝わることで、この異音と振動が起こっているのだろう。そこまで長い距離を移動したという感覚は無いのだが、もう最深部まで辿り着いたということか……いや、可能性はもう一つあったか。

 

「そりゃあ、私だけが動いてる訳じゃないわな」

 

 無貌を抜き、腰を落としてスキルを発動する姿勢を作りタイミングを待つ。姿は見えなくとも確かにそこに在る存在──坑道と体色を同化し姿を消した大蛇の不意打ちを、私はカウンターの一閃で逆に首を落としてやることで阻止した。

 ここから毒蛇共との戦いの始まりだ。今の奴を含めて私の存在はもう、毒蛇共に気付かれてしまっている。人と人がすれ違うくらいはできるかという狭い通路の中で、いったいどれ程の数を相手することになるのか──

 

「うへぇ……」

 

 ざっと見ただけで、既に10数匹はこちらに向かって来ているのが分かる。まだ夜駆ける幻狼の魔眼を起動していないにも関わらずこれだ、奥の方にはまだまだ順番待ちが詰まっているのだろう。

 最初の透明蛇が一撃で首を落とせたことから、こいつら個々の力は水晶群蠍程ではなさそうだ。しかし地形の条件は水晶巣崖より遥かに悪い、狭いフィールドと数の暴力は相性が良過ぎて悪過ぎる。

 

「潰しながら進むのが吉……かな?」

 

 これだけの数、普段から通路をギチギチに埋めるように存在している訳では無いはず。この先の何処かに毒蛇共が集まれる広い空間があるはずだ、そこを目指して斬り進んでみるとしよう。

 数が流石に多過ぎるし、手数が欲しいので武器を無貌から【輝晶剣ディアナ】と、もう一つ【輝晶剣アルテミス】に変更する。まだステータス的に装備はできないはずの二振り、しかしポイゾレータ一式の装備効果によってバフが入ったことで、この戦闘中のみではあるが装備できるようになったのだ。

 

「さぁ、力を見せてもらうぞ!」

 

 そもそもこの戦い、私にとってめちゃくちゃ……とまでは言わないが有利な条件となっている。何せポイゾレータ装備の効果によって、毒蛇共の毒を始めとして状態異常をほぼ無力化できるのだから。

 奴らの強みが半減している中、脅威になるのはこのエリアの狭さと奴らの物量くらい。押し潰されたり足を取られて身動き取れなくなることを避け、とにかく位置取りに注意する。

 

「伸びろ、ディアナ!」

 

 輝晶剣ディアナの特性、自身のMPを消費することで武器の射程を拡張することができる。その力を使って刃を伸ばし、近い側の毒蛇から焼き鳥の串を刺すように貫いていく。天井を這う奴らを叩き落として床を這う奴らを巻き込み、一度の攻撃で複数を一気に撃ち倒した。

 命を失った毒蛇が、その身体を維持できなくなりポリゴンの欠片となって消えていく。これで少しだけ空間が広くなった、また狭くなるのも時間の問題だろうがそれまでは戦いやすくなる。今の内に更に毒蛇を減らして有利を広げていこう。

 

 ──「佳人薄命(エンプレスキラー)」のおかげで、一匹一匹に掛ける時間が短く済むの助かるなぁ!

 

 不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)佳人薄命(エンプレスキラー)」。その効果は同性の相手への与ダメージ増加と、異性の相手への低確率での即死効果付与。他にも切り札的なやつがあるけどアレは命と引き換えなので使わない。

 毒蛇共はどうやら雌の個体が多いようで、スキルも乗せていないただの一撃でもかなりのダメージが入れられる。脆い奴は即死してくれるので敵の頭数を減らすのに大いに役立ってくれていた。

 

「シャアアア……!!」

「邪魔だ!」

 

 毒蛇の噛みつきにきた大口を、アルテミスで下顎を砕いて阻止する。そのまま逆手に持った剣を振り切って顎を破壊し、死骸が消える前に蹴り飛ばして後続を妨害。

 

「もう一回……伸びろ、ディアナ!」

 

 消滅前の死骸に道を阻まれ、動きが止まった毒蛇共にディアナの一閃が通った。伸びた黄金の刃が何十もの命を同時に散らし、辺りにかつて毒蛇だった素材がばら撒かれる。放置していても動きの邪魔になるだけだし、鍛冶屋のおっさんとの約束もあるのでしっかりと回収させてもらった。

 大幅に数を減らしたが、奥から迫り来る毒蛇が尽きる様子は見えない。倒しても倒しても追加の毒蛇がやって来て、所狭し我先にと大口を広げ私の命に牙を剥くのだ。この無尽蔵っぷりはやはりゴルドゥニーネが絡んでいるからこそなのだろうか?何にせよこの状況が続くのは面倒だ。

 

「もう少しは耐えないと、だな……」

 

 また毒蛇が殺到するまでの少しの空白に、MPをしっかりと回復しておく。HPはアルテミスの回復効果で間に合っているので、私が注意すべきなのはMPだけ。HPを消費してHP回復とはそれ意味あるのかと思っていたが、中々リジェネの回復量も多く速度も早くて助かっていた。これで効果は範囲内なら味方にも及ぶのだから、アルテミスは結構強力な武器と言えるかも知れないね。

 そして、アルテミスにはもう一つやって貰わねばならない仕事がある。そのためにも非クリティカル攻撃をたくさん当てる必要があるのだが、これが意外と面倒臭い作業なのだ。ポイゾレータ一式のバフでLUCが上がったことでクリティカルが発生しやすくなっているし、短剣のアルテミスでまともにダメージを与えようと思えば、角度や攻撃速度的にどうしてもクリティカルになりやすいからである。

 

 ──かと言って、クリティカルにならないように優しく撫でる余裕はないからなぁ……

 

 毒蛇共を継続的に減らす必要があるので、弱い攻撃でお茶を濁す余裕は無い。偶々非クリティカルの攻撃を当てられることを祈りながら、ディアナで毒蛇を減らし続ける作業を行なっていく。時間は掛かるがこれが確実な方法だ。

 ならせっかくだし、使い捨てアクセサリーの性能をここで確かめてみよう。力はそこそこで数は無尽蔵と物を試すにはもってこいの相手だし、遠慮なく試運転といこうではないか。

 

「出番だぜ、アクセサリー達」

 

 そうと決まれば早速、アクアリエ作使い捨てアクセサリーその2とその3、【封城の撃鉄(フォートレストリガー)(ピュア)】と 【封翔の撃鉄(ソニックトリガー)(ピュア)】を装備する。

 そしてそれぞれの効果を起動。封城の撃鉄によって電磁バリアが展開され、封翔の撃鉄によって風を纏いAGIが強化される。更に最大三段ジャンプが可能となり機動力は大幅に高まった。

 

「ははッ、いいね、中々の強化っぷりだ!」

 

 電磁バリアに触れた毒蛇がダメージを受け、硬直して大きく隙を晒す。それをアルテミスでクリティカルが出ないよう気を付けて狩り取り、強化された機動力でまた次を狩る。このサイクルで少しずつアルテミスの合体ゲージを貯めていく。

 

 ──夜駆ける幻狼の魔眼(ヴォルファント・ヴィル)のデメリットか……結構痛いなコレ……?

 

 本来、使い捨てアクセサリー達の効果時間は180秒あるはずなのだが。それが120秒まで短縮されてしまっている。

 夜駆ける幻狼の魔眼(ヴォルファント・ヴィル)を装備することによる、刻傷効果上昇のデメリットだ。180秒で刻傷付与部位の装備品が破壊されてしまう効果が、魔眼によって120秒で破壊に強化されてしまっている。そのせいで壊れるまで効果の続く撃鉄の限界が、本来より早まってしまっていたのだ。

 

 初回だから外さなかったけど、次からは使う時は魔眼は外しとかないといけないな。まぁ今は敵の数と位置を筒抜けにする魔眼の方が優先度高いし、我慢して効果時間が短い状態で使おう。

 

「あと……少し!」

 

 そうこうしている内に、アルテミスの合体ゲージも9割近くチャージされた。撃鉄の効果はとっくに時間切れになってしまったけど、かなりの効果量で使い心地は良かったと言っておこう。

 在庫はまだまだたくさん有るけど、あと少しのところで使うのは流石に勿体無いか。残りの1割は頑張って撃鉄無しで貯めるとしよう。それくらいなら普通にどうとでもできる。

 

「だいたい、5〜6匹も狩ればいけるか?」

 

 クリティカルになってしまうことを考慮して多めに見積もっても、だいたいそれくらい毒蛇を倒せばゲージをMAXにできるはず。狙い目は……

 

「透明になったくらいで……私の眼を誤魔化せると思うなよバーカ!」

「シャ……ッ!!?」

 

 ──この透明化持ちの蛇、コイツだな!

 

 透明化毒蛇……素材の名前から『透食の大蛇(アサルテクス・スネーク)』というコイツが狙い目になる。ステルス機能に胡座を掻いているのかは知らないが、他の毒蛇共と違って動きがトロい上にとても素直なのだ。

 こんなの、見える者からしたらどうぞ殺してくださいと言っているようなもの。それなら遠慮無くアルテミスの糧にさせてもらおうではないか、同胞がやられるところを見ていないのか、どいつもコイツも真っ直ぐに飛び掛かってくるし。

 

 通路はまだまだ長く、予想していた広場への到着は未だに為されていない。ならばこの狭さを逆に利用してやろうではないか……不可避の死をもたらす光を受けさせてやる。

 

「ディアナ、アルテミス──合体ゲージMAX!」

 

 二振りの剣の合体。刃が展開し柄同士が絡まり合い光が弦となり、巨大な弓が形成される……対刃剣【輝晶弓ディア=ルミナス】の完成だ。

 このディア=ルミナスは、普通の矢ではなく合体ゲージを消費して専用の矢を放つ。試しに一本矢を生成して射ってみたところ、ゲージがミリ単位くらいで減ったことが確認できた。これなら100射くらいはできるかな?毒蛇を喉元から尻尾まで貫く火力も申し分無い。

 

 ──けど、今回はこっちだ!

 

 せっかくの性能だが、今回求めているのは通常矢ではなく切札の方。一撃で合体ゲージの全てを食らい放たれる最強の一矢だ。そのために封城の撃鉄を再起動し、電磁バリアを展開して準備に邪魔を入らせないようにする。

 弦を引き絞り、矢の生成に必要なリソースを全てこの一矢に乗せる。放たれるのは超長射程・超高火力、合体に至るまでの過程……その労力の全てを燃料に輝く一筋の光。その名を──

 

「──『月女神の光矢(ルナティック・オーバーレイ)』!」

 

 坑道の狭い通路内を、燦然と輝く光の矢が照らしながら駆け抜けていく。その軌跡に触れた毒蛇共は素材すら残さず消滅し、私はその光景を魔眼の力で逃さず捉えていた。

 文字通り、跡形も無く消え去った毒蛇共によって坑道内はシンとした空気が広がる。もうこれ以上は裏から後続がやってくることはないと、毒蛇の供給が途絶えたことを見抜いた魔眼が伝えてきた……が、まだクリアにはならないようだ。

 

 この手の戦闘のクリア条件は、だいたいの場合一定数の敵を倒す・規定の時間まで粘る・特定の1体を倒すなどのパターンになる。無事に帰って報告するまでがシナリオです、という可能性も無い訳ではないのだろうが……それならせめて、戦闘終了によるリザルトは表示されてもいいはずだ。

 リザルトが出ないということは、そもそもこの戦闘はまだ終わっていないということ。毒蛇の供給は既に途絶えているにも関わらず、戦闘は未だに終わらない──このことが示すのは何か。それはこの戦闘の勝利条件が、一定数の撃破や時間経過などではなく、特定の相手を倒すとなっていること。

 

 ──つまり、この先に()()ってことだ。

 

「……初めまして、だね」

「ワタシの眷属タチを、ヨクモ……!」

 

 通路を最後まで辿った時、やはり辿り着いたのは大量の毒蛇が入れる広い空間──そして、そこから更に繋がる無数の穴。

 坑道の通路とは違い、明らかに何の整備もされていないそれらの穴。その奥から見える毒蛇なんぞよりも遥かに強大な気配を見つけ、その在処までやってきた私が出逢ったのは。

 

【ユニークモンスター:無尽のゴルドゥニーネに遭遇しました】

 

 真っ白い肌に一部残る鱗。真紅色の瞳に何かの皮膚を繋ぎ合わせた服のようなもの、口からチラリと見える舌は二股に分かれ、それが人に似て否なる何かであることを如実に表していた。

 アナウンスが示す通り、コイツがユニークモンスター・無尽のゴルドゥニーネ。リュカオーンの影以来となるユニークモンスターとの遭遇を、この場で私は果たしたのだった。

 

「コロす……!絶対ニコロしてやるワ……!」

「物騒だなぁ、可愛いお顔が台無しだぜ!」




 今回のユニークシナリオのクリア条件は、『毒蛇を250匹倒す』というものになっている。今回ロンミンはそれを極短時間で完遂したため、ボーナスとして毒蛇達の大元と出逢えるようになった。
 つまり、今回のユニークシナリオは本編でロンミンが考察していた条件(一定数の撃破・時間経過・特定個体の討伐)を全て持っていたことになる。EXシナリオではないので、ここでゴルドゥニーネの討伐は勿論できないが。
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