ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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47:256番目のゴルドゥニーネ

 無尽のゴルドゥニーネ、実物に遭うのは初めてだけどまさかの人型だったか。数多の毒蛇を侍らせその中心に鎮座する姿はまさに、毒蛇共の女王とでも言うべき佇まいだが……

 

 ──コイツ、何でこんなトコに居るんだ……?

 

 開戦した第二ラウンド、四方八方から迫り来る毒蛇を捌きながらそんなことを考える。ディアナもアルテミスも耐久がかなり減ったので、ここからはまた無貌に持ち替えた。

 ゴルドゥニーネの居場所は確か、新大陸の方だったと聞いている。それがどうして旧大陸の序盤も序盤のこのエリアに居るのだ?考えられる可能性としては、単純にここまで移動してきた・ゴルドゥニーネは複数いる・実はコイツはゴルドゥニーネを名乗っているだけの偽者・リュカオーンのように分身を旧大陸に置いている……などだろうか。

 

「死ネ……ッ!死ネッ!潰れてしまエ!」

「はッ、こんな広い空間でそんなことあるかよ!」

 

 何かの皮膚を出鱈目に繋ぎ合わせた服の袖口から無尽蔵に放出される毒蛇。ゴルドゥニーネはその質量で私を押し潰そうするが、ここはドーム状に穴が掘られた広い空間。奴がどれだけ毒蛇を出そうと圧死させるには程遠く、私は余裕を持って回避も迎撃もできる贅沢な状況にあった。

 

「死ネエッ!」

「それしか言えんかこの猿ゥ!いや蛇ィ!」

 

 どうせここで倒すことはできないだろうし、情報を聞き出せると嬉しいのだけども。死ね死ねと言ってばかりでまともに会話が成立しない。何がそんなに気に入らないのか、けしかけた毒蛇が悉く返り討ちに遭ったのがそんなに悔しかったのかな?

 何でもいい、どうせEXシナリオが出ていない以上はここでコイツを倒すことは恐らく不可能。ならば少しでも多くの情報……コイツの戦法なり、考え方なりを引き出して帰るとしようか。人型なら仲間に引き込めないかな……?

 

 ──確か、人を模した姿を持つ奴はそこを疑似餌として使ってるんだったっけ?

 

 確か、そんな感じの記述をwikiだったかベヒーモスだったかで見た気がする。だとするとコイツはどっちなんだろう……他のモンスターと同じなのかそれとも亜人族に近いのか。モンスターと同じような扱いなら仲間にするのは無理か?いやヘルパーT細胞とか、ヴォーパルバニーを仲間にしてるそうだし、実際にエムルという実例も見たし不可能という訳では無いのかな?

 

「余所見ヲ……するナアッ!!」

「おっと……危ない危ない」

 

 毒蛇をけしかけるだけでは足りないとようやく理解したようで、ゴルドゥニーネは毒蛇の使い方を変えてきた。直接ぶつけるのではなく壁として使い逃げ場を潰す方向で。

 攻撃に毒蛇を使わない分、減る手数を自身が攻撃に参加することでカバーしてくる。掌から紫色の液体を噴出させ、それを鋭利な形状に固めて形成した毒の剣を両手に持って、それで私を貫かんと鋭敏な殺気を放ちながら迫り来る。

 

「ハアッ!ハッ!」

「とっ、ほっ……おらよっ!」

「ギャアッ……!!?」

「どうしたユニーク、こんなものかァ!?」

 

 ──弱い……弱くないか、コイツ?

 

 意気揚々と玉座を降りて向かってくるのだから腕には自信が有るものだと思っていたが。振りは遅いし立ち回りもお粗末、明らかに戦闘面ではど素人と言わざるを得ないポンコツっぷりであった。

 さてはコイツ、今まで戦闘はもっぱら毒蛇に任せてて自分ではほぼ戦ったこと無いな?コイツ自身の戦闘はあくまで、毒蛇が通じない相手に対しての最終手段と言ったところか。敵わないと分かってるならさっさと逃げればいいのでは……?

 

「お前タチ、加勢しロォ!」

「毒の弾幕か、なら──」

 

 メニューを操作し、天井から雨のように降り注ぐ毒液を防ぐべく武器を変更する。バリア展開能力持ちの封城の撃鉄(フォートレストリガー)でも良いのだが、今回はまだ使っていないこっちの方を試してみよう。

 英傑武器(グレイトフル)【アモルパレント・リペア】……ジャストガードに成功すれば、あらゆる攻撃をその余波ごと無効化できるという力を見せてもらおうか。

 

 ──剣を盾にして弾くだけじゃ、ジャストガード成功にはならない……なら、斬って、落とす!

 

 アモルパレントは本来両手剣だが、ポイゾレータ一式のバフで十分なSTRを確保できたことで片手でも軽く振り回せるようになっている。

 毒液の雨霰の中にあっても、どうしても当たってしまうものだけを迎撃し、それ以外は位置取りで回避することで全てを捌く。毒蛇共にとっても毒液は無限に吐き出せるものではない、いつかは弾切れを迎えて弾幕が薄くなる。その時こそが反撃に転じる絶好の機会。

 

 ──こ、こ!

 

「吹っ飛びな……「スパイラルエッジ」!」

「ヒッ……!!がっふゥ……!!?」

 

 毒液が降り止んだタイミング、弾幕が薄くなった隙を見逃さず封翔の撃鉄(ソニックトリガー)を起動。私の動きに反応され反撃や防御をされる前に先制攻撃を繰り出す。

 胸の左寄り、人間ならば心臓のある箇所に直撃したスパイラルエッジがゴルドゥニーネの服と肉体を抉りながら高く高く吹き飛ばした。カチ上げられたゴルドゥニーネは勢いよく毒蛇の壁に激突し、その威力を以て自ら壁を崩壊させる。

 

「ぐうゥ……!!貴様、よくモ……!!」

「しぶといな。硬さだけは一丁前か」

「ぐフッ、そう……勝チ誇っテいられルノモ、今の内だけダ!」

「どっからそんな自信が湧いてくるんだ……」

 

 ゲホゲホと咳き込みながらも、ゴルドゥニーネの表情は勝利への確信に満ちている。ここまで道中も含めて私に1ダメすら与えられてないのに、どこからそんな自信が湧いてくるんだろう?

 

「ワタシ達の毒ハ、当たらなかっタくらいで効果を失ウようなチャチな毒じゃなイ!」

「成る程ね、それが自信の根拠か」

 

 ずっと撒き散らされている毒液。私に命中することはなく地面にべちゃりと染み付いたそれらは、しかし未だにその効能を損なうこと無く、いつまでも存在し続けていた。

 ただその場に留まるだけではない。毒は少しずつ気化して空気と混ざり合い、眼には見えない毒霧となって知らぬ間に敵を侵し尽くすのだ。ゴルドゥニーネ特製の毒は多種多様千差万別、単純な毒消し方法ではその中の一つを消せれば御の字。だからコイツは良いようにやられながらも、自分の勝利を確信して勝ち誇っていられるのだ。

 

「ワタシ達ノ毒ハ超強力!人間なんゾにどうにカできるようナ単純なものでハナイ!お前ハこのまま毒に侵さレ、苦しみノ中で死に至──」

「……」

「死ニ……至……」

「……」

「何故ダ!!?何故そうモ平気でいらレル!!?」

「毒無効だから」

 

 ──そんなァ、って顔だなぁ……

 

 まぁ気持ちは分かるよ、渾身の作戦が最初から破綻してたって知るのはショックだよね。そこに至るまでの労力全てを否定された感じでさ。

 でも悲しいけどこれ、戦闘だから敵であるコイツに同情してやる義理も暇も無いんだよね。そして毒蛇共に対抗して、今度はこちらの自慢の毒を披露してやろうではないか。EXシナリオでの有利化を期待して、ここでできる限り叩いておこう。

 

「お前だけ毒を吐くんじゃ不公平だろ、今度はこっちの毒を食らわせてやるよ……この甦機装(リ・レガシーウェポン)    【震天の孤毒剣(ロンリー・ウェーバー)】でな!」

「何ヲ、言っテ……ッ!!?」

 

 最後まで台詞は言わせない。私の背丈程もある大剣を振り回しゴルドゥニーネを吹っ飛ばす、その軌道をアクセルで加速して追いかけ、追いついてそのまま追撃にもう1発。これで地面に叩き付けて動きが硬直したガラ空きの背中に更にもう1発。

 息吐く暇を与えない三連撃に、ゴルドゥニーネも小さくない深手を負った。肉体は毒に侵されスリップダメージを受け、麻痺毒によって身動きを大幅に制限され、壊毒によって服の袖に隠されていた肘の毒を噴出する器官も破壊された。どうやらあの器官から毒と共に毒蛇共を出していたようだ。多分インベントリみたいになってるんだと思う。

 

 ──普通なら、これでもう私の勝ち確みたいなものだけど……こっからどう逃げおおせる?

 

 重ねて言うが、EXシナリオが発動していないこの場でコイツを倒すことはできない。どこかで必ずこの戦闘は強制終了させられる。

 つまり落とし所としては、ゴルドゥニーネの撤退や強制負けイベントがあるはず。コイツの弱さ的にあり得るのは撤退かな?流石にここから覚醒していきなり強くなりますは考え難い。さぁ、お前はどうやってこの場から逃げ出すと言うのだ?

 

「何ダッ、その眼ハ……ッ!!」

 

「漸ク見つけた新天地だったノニ、全部、全部!!台無シにしやがッテ!!」

 

「ちくショウ……!!」

 

「ふざけるナ……ふざけルナ……!!」

 

 ──お、まさかの覚醒パターンか?

 

「オ前の全てヲッ!!ぶっ壊しテやル!!」

 

 口振り的に、どうやらコイツは他の何かから逃げてこの場所に辿り着いたらしい。漸く安息の地を得られたと思ったら、それも強襲してきた私によってぶっ壊され、平穏な生活は終ぞ得られることは叶わなかったと……そりゃあキレるわ、うん。

 ゴルドゥニーネの最後の抵抗……残った左腕を麻痺が残る中で無理やり掲げ、中にしまっていた毒蛇を毒液と共に大量に放出する。その勢いいつまで経っても弱まることはなく、奴が在庫を出し切るつもりでこれをやっていることがよく分かった。

 

 物量は段違いに増えたが、恐らくこれを越えればもう奴の戦力は残らない。ここが正念場というのなら私も切札を切ろうじゃないか。

 震天の孤毒剣を右腕に持ち替え、左手に着けたゲーミング手袋の宝石を胸に叩き付ける。プレイヤー初の宝石匠が手掛けた逸品、封虹の撃鉄(オーロラトリガー)(スペリオル)の効果が発動し全身が虹色の輝きに包まれた。

 

「『古虹(オーロラ)(スペリオル)』……発動。そして」

 

 ──超過機構(イクシードチャージ)、『賦活性(リベレト)』!

 

 孤毒剣の毒が私に流れ込む。血液を通して全身を回る毒はしかし悪影響ではなく、身体の内で灼熱の如く燃え上がり身体を活性化させた。

 賦活性タイプの超過機構は、装備の機能を肉体に作用させて恩恵を与えてくれる。こういった特殊状態は刻傷でも無効化されない、その二つを重ね掛けした今の私は最強の己の状態だ。古虹・極の制限時間である10分までの天下だけどね。

 

「『振動せよ(booming up)』」

 

 孤毒剣のもう一つの効果、刃を振動させることで放つソニックブームによる遠隔攻撃。振動と虹による追加ダメージが殺到する毒蛇を退け、包囲に大きな穴を作り出す。

 その開いた隙間を逃さず、古虹・極の飛行機能でドームの上空へ移動し高所を奪う。ここから奴らが攻撃を私に当てるには、毒液を噴射するか仲間を踏み台に登る必要があるが……私はソニックブームを乱射しまくってそれをさせない。

 

 ──空を飛ぶのは初めてだから、あんまり難しい動きさせないでくれよ!

 

 上空から乱射、乱射、乱射。毒蛇の在庫が尽きるまで何度でも擦り倒す。飛行中はMPをガンガン消費するし、MPが切れたら賦活性も切れるので回復はこまめにしっかりと。

 

「クソ……」

 

 毒蛇を薙ぎ倒す。

 

「いつまデ……ッ!!」

 

 毒蛇を薙ぎ倒す。

 

「もウ、これ以上ハ……!!」

 

 毒蛇を薙ぎ倒す……数が減ってきた。

 

 今が本体を叩く絶好の機会。私は加速スキルをフル回転させ、更に封翔の撃鉄を更に重ね掛けして最速の状態を作り……その速度を以って、ゴルドゥニーネに突撃を敢行した。

 盛大な爆発音が響き渡り、ドーム内が衝撃で激震に揺れる。モクモクと湧き上がる土煙が晴れてそこに見えたのは──爆発に巻き込まれて散った毒蛇の死骸と、下半身と左腕の二の腕から先を失い地に倒れ伏すゴルドゥニーネ。そして落下のダメージこそ大きく受けたものの、莫大なHPによって健在のまま立つ私の姿であった。

 

「勝負アリだな、ゴルドゥニーネ」

「覚えていロ……オ前だけハ、必ず、地の果テまでも追いかけテ殺してやル……!!」

「うおっ……まだいたのか」

「チク、ショウ……ッ!!」

 

 規制によってモザイクの掛かった左腕の断面から現れた毒蛇が、ゴルドゥニーネを呑み込むとそのまま穴を掘って地中深くへ逃げていった。流石に地底までは私も追えない……あの足の速さ、最後まで逃げられるように温存していたのか。

 毒蛇はもう何処にも居ない……ゴルドゥニーネは逃げ去りもうここには来ないだろう。鍛冶屋のおっさんから頼まれた毒蛇の掃討は、これで決着が着いたと言って良さそうだ。あとはセカンディルに戻っておっさんに報告して、新しい装備を作って貰えばシナリオクリア……何が良いかな?

 

【ロンミンは『256番目のゴルドゥニーネ』を退けた】

 

【称号『憎悪の矛先』を獲得しました】

 

【256番目のゴルドゥニーネから殺害宣告を受けました】

 

追憶結晶(メモリークリスタル)が今回の戦闘を記録しました】

 

 ──情報量が多いな?




 256番目のゴルドゥニーネの呪毒の特性は硬化と保存。毒に包まれたものをその状態を維持したまま長時間保存できる。毒は外気に触れると気化するので保存期間は永久ではない。インベントリのようになっている自身の体内に毒で保存した物を収納することで、物の劣化を防いでいる。

 配下の多数の毒蛇は体内で繁殖させ、増え過ぎた分を毒で保存することで共食いや寿命などによる数の減少を防ぎ多くを確保している。戦闘時は保存しておいた毒蛇を解き放ち、基本的にそいつらに任せて自分は極力戦わない。

 毒蛇は色々と種類がいるが、本体が貧弱なこともありどれもあまり強くはない。他のゴルドゥニーネの眷属と戦わせたら……それこそ原作に登場した奴らと戦ったら鎧袖一触にされる。

 今後再登場する予定ではあるが、どのような扱いになるかは原作のゴルドゥニーネ戦次第。もしかしたら予定しているラストバトルの方が先になって、碌な出番の無いまま本作が完結するかも。
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