ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
こうした反応が投稿のモチベーションに繋がりますので、これからも評価や感想などお待ちしております。
「ネフィリム・ホロウ……久しぶりにやるか」
ユニークシナリオの結果が出るまで、リアルタイムで三日くらい掛かるらしい。その間も攻略を進めておいても良かったのだが、進捗を確認しにいちいちセカンディルまで戻るのも面倒臭いし、素直に出来上がりを待つことにしたのだ。起晶転結が残っていれば待つ必要も無かったんだけどなぁ。
という訳で、空白ができるその間は別のゲームで遊ぶことにしたのだ。買うだけ買ってやらずに放置していたやつとか、買って起動してみたは良いものの人型の操作だったせいで断念したやつとか。それで既に丸一日を潰しているが、時間を掛けただけあって4本の積みゲーを消化することができた。
──昨日の『幕末』は本当にクソだったし、こっちは当たりであることを願うよ。
昨日の嫌な記憶を思い出してしまう……この間ロックロールで買ったタイトルの一つ、『辻斬り・狂想曲・オンライン』通称『幕末』をプレイした私に降って来た理不尽の数々──数多の古参プレイヤーから齎される
キャラクリして世界に降り立ち、チュートリアルを受けようとしたその時から、もう私にとっての地獄は始まっていた。なーにがウェルカム天誅だ初心者を寄ってたかって袋叩きにするとか他のゲームなら絶対NGな行為だぞしかもその癖簡単に返り討ちにできるくらい弱っちいし外に出たら出たで何か味方のはずの格好の奴からも襲われるし大量の馬車に轢かれそうになるし竹串やら爆弾やらが私だけを目掛けて雨霰のように降って来るし乳母車でカーレースが始まるしようやく追撃が止んだと思ったらなんかやたら強い奴と強制タイマンさせられたし……確かユラとかいう名前だったっけ?勝負を眺めてた野次馬の一人が、『レイドボス』みたいなあだ名で呼んでた気がする。
お互いの利き腕が斬り落とされたところで、ストレスと怒りが有頂天となった私がゲーミングチェアから強制ログアウトを食らった事で、勝負と幕末プレイはそこで終了となった。何が天誅だよクソボケ己の悪行をお天道様のせいにしてんじゃねーぞ!何をすれば良いゲームだったのかすら分からないまま終わったじゃねーか!
──私には合いませんでしたよ。はい。
「……思い返したら腑煮え繰り返ってくるな。さっさと忘れよう」
ゲームそのものに罪は無く、悪いのはいつだってそれを使う人間なのだ。精神衛生に悪過ぎるのでもう存在を二度と思い出さないよう、脳みその奥底に幕末の記憶はしまわせてもらった。ソフトはクリア済みのやつと一緒に棚に入れてある。
閑話休題……今回やることにした『ネフィリム・ホロウ』も、買うだけ買ってやっていなかった積みゲーの一つである。ロボットを操作するアクションゲームと聞いて、それなら自分でもできそうだと思い買ったのだが。アバターが結局人間のままだったので、人型を避けていた当時の私ではプレイができなかったタイトルなのだ。
「今なら、できる」
レビューなどを確認してみたところ、あまり本作の評価は高くなく『クソゲーとまでは言わないが、刺さる人にしか刺さらない』といったもの。続編がそろそろ出るとのことなので、そちらに期待しているということらしい。エキスポで見たけど確かシャンフロと同じシステムを導入するとか何とか。
まぁ、まだ名前と目玉しか分かっていない次回作のことはさておき。まずやるべきはいつも通りキャラクリである。シャンフロと比べてあまり多くないパーツから顔をしっかり作って、それに合った体格にして名前を決めて……今回はロボット、つまり鉄の塊を操るので鉄の龍『
「よし……始めますか!」
……
…………
………………
オープニングはスキップ、チュートリアルも以前一度だけログインした時に終わらせたことになってるのでこれもスキップ。前のこと過ぎて操作方法など欠片も覚えていない私の元には、プレイヤーに最初に与えられるネフィリム……無改造の『ネイキッドノービス』が鎮座していた。
「取り敢えず、ストーリー進めながら覚え直すか」
そんな感じで軽く考えいたが……『ネフホロ』はそんな甘ったれた心持ちが通用するような、優しい世界ではないと知るのはすぐだった。
「操作性悪過ぎだろこのゲームウウウゥゥ!」
一面にして通算6回目のゲームオーバーを迎え、私は心の底からの叫びを放った。
ただ動かすだけならば問題無い。普通に生身……いや、アバターを動かす時と同じ感覚で動かせるが問題は武装やオプションを使う時だ。指先や関節の微細な動きで起動や操作をコントロールするので、下手に動かすとやりたかった動き同士が干渉して明後日の方向に突っ込んだり、エイムが全く合わなくなったりそもそも何もできなかったりと。ネフィリムの操縦中は常に、針穴に糸を通すような繊細で高難度な操作を要求されるのである。
「過疎ってる理由がよく分かる……こんな難しいと敷居高過ぎて人定着しないわ」
あまりの操作難度の高さ、それが本作の評価を貶めているほぼ唯一にして最大の欠点。続編では改善されていることを願いたいが……この煩しさに適応し乗り越えた時、『ネフホロ』というゲームの真価にプレイヤーは触れられるようになる。
通算16度のゲームオーバーと、約半日の時間を掛けてストーリーモードを最後まで進めたことで、漸く操作にも慣れてきた。慣れてくると必要な動作を最低限に小さくしたり、モーション同士を干渉させないように動かすことも可能になる。そしてただ操作が上手くなったというだけでなく、ストーリーを進めることで初期機体以外のネフィリムを使えるようになったり、ラボが解放されてカスタムができるようになったりと自由度が跳ね上がる。
──そして、この手のゲームは対人戦が一番楽しいんだよなぁ!
自由度が高い対人ゲーは、魑魅魍魎がひしめく混沌の坩堝となるもの。勿論環境に合った『強い』機体が最大手になるものだが、それにメタを張るようなやつやトレンドに流されず我が道を行く奴、脳の構造から違ってるとしか思えない変態など、多種多様な化物に出逢えるのが対人戦。
そんな中に自分の考えた、自分だけのオリジナルで挑みそして勝つ──その時の快感は、何物にも変え難い素晴らしいものになる。操作の難しさに挫折して匙を投げたままでは、この快感を味わうことは絶対にできないのだ。さぁ私もさっさとカスタムを済ませて混沌の中に飛び込むとしよう。
「せっかくだし、シャンフロとかなら縛りがあるから選ばないようなものにしよう」
人生縛り──ゲームオーバー=死のゲームなら、だいたいの場合取り入れる縛り内容。人生は一度しかないからということで、ゲームオーバーになってもそのデータではやり直さず、データを作り直して一からまた始めなければならないというもの。
ネフホロのゲームオーバーは『使用ネフィリムの全損』というものであり、私が死ぬ訳では無いので人生縛りをする意味は無い。ならば人生縛りをする時は心情的に選び難いカスタムをするべきだ。こんな時でもいつもと同じでは芸が無い。
いつもなら……それこそシャンフロなら、死なないことを第一に耐久力に優れたステ振りをしてその後に機動力→火力と振っていく。継戦力のある構成で最終的に勝つ、そんな感じを目指して組む──いやシャンフロだと武器性能やスキルのおかげで普通に火力出せるし、ベヒーモスでのリセットのせいで今までのステ振りは台無しになったけどね?
今回はそれとは真逆を行く組み方をしよう。装甲は限界まで薄くして素材も軽い物を使って軽量化、その分大・小出力に差を付けたブースターを複数搭載して、最高速・加速力・小回りをできる限り高い水準で両立する。武装は何にしようかな……取り敢えず遠距離用のレーザーライフルと、ブースター付け過ぎによるネフィリムのオーバーヒートを防げる排熱ブレード、この二つで十分そうではあるけどもう一声くらいは欲しいかな──お、これ良さそう。
「できた!」
完成した。ロボットと言うよりはブースターの大量に付いた棒人間状の箱という風体の、最高クラスの機動力と火力を持つ私のネフィリム。名前は『閃光花火』……上述の長所と引き換えに、豆鉄砲ですら致命傷になる紙耐久と僅か100秒しか稼働できないクソ燃費を併せ持つピーキーマシン。
準備はできた、後はモードをオンラインに切り替えて対戦相手を募るだけ。過疎ゲーの対戦環境は最適化にしろ闇鍋にしろ、煮詰まりに煮詰まってエグいことになってることが多い。果たしてどんな奴らに出逢えるのか……私は心躍らせながら、オンライン環境という名の混沌の坩堝へ一歩を踏み出した。
……
…………
………………
「ハッハー!どうしたどうした、そんなトロ臭い動きで捉えられると思うなよー!」
「クッソが、ちょこまかと動いてんじゃねえぞ!」
対人戦を開始してからだいたい数十戦。勝った負けたを繰り返して、少しずつランキングを上げていった私は、そろそろランク一桁台のトップランカーの背が見える辺りまで登り詰めることができた。
現在の対戦相手はランキング9位、無数のレーザー砲台を搭載した重装甲戦車型ネフィリム『パワードタンク』を操る男、PN「乱肥満」。ランデブーと読むらしいが……人のこと言えないけど、実際に読み仮名に設定できない当て字を、多くの人が見るPNに使うのはどうかと思うんだ。
「命中ォ!おいおい一桁ランカー様よう、こんなに新参に良いようにやられてちゃあ、実力派として格好付かないんじゃないかい!?」
「抜かせ新参者……!俺の見せ場はこっからよ!」
自慢の機動力で空を駆ける私と、無数の砲門から放たれるレーザーでそれを追う乱肥満。最大100秒の鬼ごっこはどちらかが壊れるまで続き、そこで勝者が決まる。ならば最終的に勝つのは私だと確信を持って挑もうではないか。
下から迫り来る極光の線を潜り抜け、パワードタンクの硬いボディにチクチク銃弾を当てていく。排熱ブレードを使えれば大ダメージが見込めるが、流石にあの弾幕の根元に飛び込むのはキツい。レーザーライフル乱射で削れはしているものの、この分だとこっちの稼働限界が先に来そうだ。
「やっぱ、飛び込むしかないかな……?」
「これで終わらせる、堕ちろや
高耐久の相手を攻めあぐねている内に、パワードタンクのレーザーが左右に私の進行方向を塞ぐように放たれる。当たらないよう急減速させたことで機体は慣性の影響を受け、身を翻して壁の無い天上へ逃げるには大きな隙を晒す状態──そこを乱肥満は見逃さず確実に仕留めるべく切札を切った。
「砲台を稼働しまくったから、熱は十分に溜まってるぜ……食らいやがれ!」
「うお……お、おおお!」
私の排熱ブレード同様、ネフィリムの稼働によって発生する熱を利用した装備。ゲージが満タンになる迄は使えず、しかしその火力は抜群で照射時間は圧巻の15秒という決戦兵器『排熱砲』。その燃え上がる一撃が、機動力を封じられた私に向けて一直線に放たれた。
左右にはレーザーの壁で動けない。空いている上側に向かうには機体の向きを変えて、ブースターをフル稼働させる必要があるがそんな暇は無い。ならばどうするべきか……一か八か、低い可能性を手繰り寄せるべくブースターを切って着地する。
「地上に降りたか!だが、排熱砲の攻撃範囲はそんなに狭くねぇぞ!」
「知ってるよ!でも……穴は、ある!」
排熱砲はゴン太のレーザー砲。射程も長ければ照射時間も長く、太さのお陰で縦だけでなく上下左右への範囲も広い広範囲攻撃。飛行状態から着地したくらいでは攻撃から逃れることはできない……しかし上空にいた私を狙って放たれた攻撃であるが故に若干の隙間が地上にできていたのだ。
そこを狙う。倒れるように地に伏せ、少しでも平たくなれるよう腕を広げて脚も膝を付けず水平に構えスレスレのところでやり過ごす。熱のダメージで背部が溶け、大きなダメージを受けたと報せが齎されるがそれは無視。まだ動けるなら問題無い。
「ブースター全開……いっけ、閃光花火!」
ただやり過ごすだけでは終わらせない。ライフルだけではどうしても決定打に欠けるし、この攻撃できない時間ができた以上はもう、凌げたとて私の勝利とはいかないだろう。それを覆すには排熱ブレードによる近接火力が必要になる。
今の状況はチャンスでもある。排熱砲はその威力の高さ故に反動も大きく、踏ん張るために使用者はその場からほぼ動けなくなる。加えて乱肥満は私の逃げ道を塞ぐために、レーザー砲も全て稼働している状態……私が反撃に転じた時、奴は今それを防ぐための手段を失っている状態なのだ。
「今なら、カウンターが通る……ッ!」
ブースターを吹かし、低姿勢状態を維持しながらパワードタンクへ向けて突貫。ただ突撃するのではなく出力を調整してタイミングを図る……狙いは排熱砲の照射が終わるその瞬間。残り時間は6秒……5……4……3……2……
「1……今!」
「何ッ……!」
辞世の句は遺させない。排熱砲の終わり際と浮上のタイミングをバッチリ掛け合わせ、新たな行動に転じる暇を与えずに排熱ブレードでパワードタンクの重装甲を一刀両断してやった。同じ排熱装備……こちらは使用にある程度融通が効く分威力も射程も低めだが、それでも一撃で敵機を焼き斬る火力を出せる──この瞬間、私の勝利が確定した。
「よっしゃあ!ランキング一桁討ち取ったり!」
「だあぁ!ちくしょう負けたァ!」
達成感で満たされる私の脳内。やはり対人戦で強い奴に勝てると気持ちが良いな、この自己肯定感が上がっていく感じは素晴らしい。
ここで時間を確認すると、時刻は午前5時になろうかというところであった。最近ゲームで徹夜ばっかりしてる気がするな……生活リズムが狂うと大変だし流石にもうログアウトしておく、か……
「……次は、私と勝負」
「ルスト!もうそんな時間か!」
「えっと、この人は?」
「新参のアンタはそりゃあ知らんか……ネフホロの絶対女王、ランキング1位のルストだ」
ログアウトしてもう寝よう……そう思った矢先に現れたのは、このゲームの頂点に君臨する絶対女王──PN「ルスト」その人であった。
どうやらログインしてきてから、私が対人戦を荒らしている話を聞き興味を持ったそうで。その力量の程を確かめるべくこうして出てきたのだと。もう眠いし断ってもいいのだけど……わざわざ女王様の方から来てくれたというのに、そんな勿体無いことできる訳が無いじゃないか。
「望む所!よろしく頼むよ、女王様!」
「……フッ、意気の良い奴は嫌いじゃない」
八千代がシャンフロ作中に出てきたゲームをプレイしたら
GH:C→この手の格ゲーだと癖が少なく扱いやすいタイプのキャラを好んで使う。シルバージャンパーやランゾウ辺りがメインキャラとなる。
世紀末円卓→奪い合いには参加せず普通にゲームデザインに従う。いずれ他のプレイヤーにブチギレて引退する。
鯖癌→そもそもギリシャ文字サーバーまで誘導されない。されたならβやηなどの人の少ないサーバーで黙々とプレイしていた。基本的に他人の邪魔はするのもされるのも嫌い。そして長々と生き続けた果てに、噂を聞きつけた他鯖の連合の襲撃を受け、大部分を道連れに死ぬことになる。