ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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 50話目です。
 いつも見てくださる皆様のおかげで、ここまでモチベーションを落とさず投稿できました。これからも本作をよろしくお願い致します。


50:頂点との戦い

 どうやら私の『閃光花火』と、ルストの使う機体『二律灰反』は同系統の存在のようだ。

 乱肥満(ランデブー)の奴も言っていたが、この手の構築は翡翠(カワセミ)ビルドと呼ばれるもので、かつてあるプレイヤーが流行らせて一時期覇権を握った構築とのこと。やっぱり同じこと考える奴はいるのね。

 

 ──同系統ってことは……はぁ。

 

 この後の戦いの展開を予想し、小さく肩を竦めながらため息を吐く。機体のカスタムに多少の違いがあるとは言え、大元となるコンセプトが同じなら勝敗を分けるのはプレイヤーの力量。

 即ち、プレイ歴0日の私と廃人共の頂点に立つルストによる互いの強みの押し付け合い。そんなの勝てる訳無いじゃんつい数時間前に操作が安定するようになったってくらいだぞ私はいや一桁ランカー倒せてるし結構上手い方だとは思うけどそれにしたって1位とミラー対決はキツいよ流石に……

 

「ちゃんと作戦、考えないとな……」

 

 無策で突貫したところで、地力の差ですり潰されるのは眼に見えている。ならばそれでも勝利をワンチャン掴める策が必要だが……それを考える暇も無く勝負の開始がシステムに宣告された──早いよ早いってまだ作戦のさの字も浮かんでないのに!

 泣き言を喚く暇も無く、二律灰反の放った容赦無い弾幕が私に迫り来る。この不意打ちはどうにかブースターの起動が間に合って避けられたが、いきなり先手を取られてしまった。互いに攻撃特化で守りは不得手となれば、後手後手になることだけは避けねばならなかったのに何たる失態。

 

「戦闘中に、余所見は良くない」

「分かってるよ……まだまだこっからだ!」

 

 何処から攻めていくべきか……閃光花火は100秒しか稼働できないから、その辺ちゃんと考えてからやらないとすぐ時間切れになってしまう。どんな機体にも長所を伸ばした分短所ができる、そこを見つけて突いていけなければ私は勝てない。分析して見極めるのだ……眠気で脳があまり動いてない自覚があるけどできるのだろうか。

 二律灰反は、左右の形状が非対称のアシンメトリー型ネフィリム。右半身には近接攻撃用の武装を大量に積み、左半身には逆に遠距離攻撃用の武装を大量に装備している。ブースターは最高速よりも小回りを重視した小型タイプ、恐らく私程ではないが稼働時間を削って能力を上げてもいるはず。装甲も胸部や頭部など以外は無レベルで薄い。

 

 ──私が勝ってるところは……

 

「まず、命中精度……ッ!」

「ッ!この速さで、よく狙える」

 

『レーザーライフルの弾速なら、今の距離からなら見てからでも避けられるよ。相手もこっちの弾幕に当たる訳にはいかないから、これ以上距離を詰めるのはリスキー過ぎてできないだろうしね』

 

 ──何か話し合ってんな……?

 

 弾幕をばら撒いて誰かが当たれば良いというスタンスのあちらと違い、こっちは一発一発しっかり狙って当てていくスタンス。狙いの正確性はこちらの方が優っていると言ってもいい、しかし距離が遠過ぎて良くて掠るくらいでしか当たらない。

 しかも、どうやらルストにはお仲間が着いてどう動くべきかの指示を出しているようだ。これでは奴の行動の殆どから思考の手間が消えてしまう、何だよそういうのあるなら言ってくれよ聞かなかったとかこっちが無知なだけなのは分かるけどさぁ。

 

「……当たった。まずは、左脚」

「チィ……!やってくれるね!」

 

 対抗策を考えている中、弾幕を避け切れずその一部に被弾し左脚を失ってしまう。しかもこの時点で既に30秒は経過している、リスクは高いがこれはもう近付いて近接で決めるしか無いか……このままでは負ける可能性しか残されていない。

 ブースターを点火し、速度を更に引き上げて弾幕の中を突っ切り二律灰反へ突撃する。速度が上がればその分だけ操作もし辛くなるが、対人戦を繰り返す中でPSはかなり上がった自信がある。自分ならできると信じて突き進むのだ。

 

 ──勝つには使わないとダメかな……ここまで見せずに済んでた、閃光花火の()()

 

 閃光花火には、排熱ブレードとレーザーライフルの他にもう一つ武器を持たせてある。ここまで十何戦かやってきたが使う機会は無かった隠し玉、それを切って勝利を掴む。

 今からやるのは初見殺し、故に見切られればそれで終わりの一発勝負。例え100回やれば100回負ける相手だったもしても、私が勝てる101回目を引き寄せてみせろ!

 

「70秒も要らん……10秒で終わらせる!」

「面白い……来い!」

 

 突貫──それしかできないのかと言われそうだがこれこそが今の閃光花火が取れる最適解。フィニッシュに必要な要素以外は全てを捨て石にして、ただひたすらに二律灰反の命を狙いに行く。

 右、左、左、上、下……縦横無尽の動きで弾幕を掻い潜り接近。右脚は犠牲になったが排熱ブレードの間合いまでもう少しの所まで来た。ここまで来れば奴はもう遠距離攻撃を使えない、何故ならレーザーではなく実弾メインのルストの火器は、着弾時に大きな爆発を引き起こす。僅か数m程度の距離ではその爆発に自分も巻き込んでしまうからだ。

 

『ルスト、ここからはブレードメインで!』

 

「大丈夫、分かってる!」

「いくぜチャンバラ、焼き斬ってやる!」

 

 排熱ブレードは実体としての刃を持たない、高熱で焼き切るタイプのブレード。これを防ぐには耐熱性に優れた盾や装甲が必要であり、それ以外の対処法は回避しか存在しない。

 当たれば斬れる、だがそう簡単にいく程絶対女王と呼ばれるような奴が容易い訳が無い。実際に双方の剣撃による殺陣は激しい回避戦となる。

 

「良い速さ……けど、まだ足りない!」

「なら、ドンドン上げていくよ!」

 

 閃光花火の右肩を狙う縦斬り、二律灰反はそれを左脚を軸に身体を30度回転させて回避。そのまま閃光花火の機動力を維持しているブースターを狙って一突き、それを右腕で庇い勢いを殺しながら貫通する刃をへし折り潰す。

 左腕以外の四肢を失った閃光花火は、バランスを取るべくブースターを吹かす位置を逐一調節しながら地面に堕ちないよう浮き続けている。当然エネルギーは大量に消耗するし、全力稼働は大量の熱を排出する──そしてその熱を受けて、排熱ブレードはその火力と範囲を更に広げていく。

 

「ブレードに触れないなら」

「チッ……!」

 

 それを持つ腕を斬れば良い、ってか。

 封じたはずの右腕の武器……それを持つ腕から飛び出した刃によって、閃光花火の左腕は肘から先を斬り飛ばされた。胴体のみ──私の武器はこれで全て封じられた──そう、思うだろう。

 

 ──切札を切るのは、ここからだ!

 

 四肢は失われた。

 だがまだ終わっていない、どれだけ派手に損壊しようとも、システムが決着を告げるまでは敗北にはならない。例え胴体すらも失い首一つになろうともまだ、私には武器が残っている。

 

 手が使えず、掴めないのなら──その顎で勝利を咥え取れ!

 

「──噛みつき、か!」

「違う」

 

 ルストの言葉は半分正解、閃光花火の口は開閉可能で『噛みつき』ができるようにしてある。超至近距離の戦いで武器の方に気を取られた相手の喉笛を千切り取る切札……の、一つ。

 本命は、噛みつきという攻撃で狙って有効打になるのは首から上であることを利用すること。ネフィリムにとっても頭部は急所、そこをやられればお終いであるからこそ、そこを狙われていると分かれば咄嗟にでも守ろうとする。その瞬間ガードに使った腕や盾で目線は私から切れる、隠し持ったもう一つの見えない切札への対応が遅れる。

 

『爆発……ッ!?いったい何が!』

 

「おいおいオペレーター……ダメじゃないか、敵から眼を離すなんてなぁ!」

「下……ッ!?」

 

 噛みつきに隠したもう一つの切札……それは、口から吐き出す単発式の炸裂弾。噛みつきを警戒して突き出された守りを吹き飛ばし、絶対的な勝機を作り出す必殺の一手だ。

 炸裂弾を吐き出した後は、体勢を思いっきり低くして爆風を下で受ける。ブースターの出力と爆発の反動で一気に首を降下させ、二律灰反の脚に顎を届かせて噛みつき──そして、浮上する力を利用して地面のある一点。斬り落とされた左腕が握る排熱ブレードの面へ叩き落とした。

 

 ──普通に叩きつけただけじゃ、多分ダメージが足りなかったかな?

 

「残り時間2秒……ギリギリだったけど、私の勝ちだぜ女王様」

「ふん……次は、私が勝つ」

 

 二律灰反のボディが焼き斬れ、システムはこれ以上の活動が不可能と判断した。この瞬間勝負の結果が下され、私の勝利が確定したのだった。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「まさか、二段構えだったとは……死角になって見えてなかったけど、口の中に炸裂弾を格納していたんですね。速度重視の翡翠ビルドに仕込み武器は使い辛いけど、成る程確かに……これなら装甲の隙間に無理なく仕込めるか……」

「初見殺しだけどね。実際最初の一回以外はまるで通用しなかったし」

「……徹夜じゃなかったなら、二戦目以降もまだ良い勝負できてたはず」

「ハハッ、女王様に評価されるとは嬉しいね」

 

 試合が終わった後は楽しく雑談だ。お互いの構築のコンセプトや戦闘スタイル、実践運用して初めて分かる細かな使用感など。色々と反省をしたり相手からのアドバイスを受け入れたりして、次に使うネフィリムをより良いものにしていくのだ。

 あの勝利のあと、負けっぱなしでは終われないと機体を変えたルストと更に10戦程対戦した……そしてその全てで、大した見せ場もなくボコボコにされて破れ去った訳だが。それでも対戦中は徹夜の疲れを忘れるくらいには楽しかった。

 

「またログインしろ。そしてまた戦え」

「メインはシャンフロだから、ネフホロに来る機会はそんな無いんだけど」

「お前もシャンフロか……!」

「どうどう、ルスト。シャンフロの方でも近々大規模なPvPがあるそうだし、そっちで戦えば良いんじゃない?ネフホロに限らなくたって、選ばなければ対戦できる場所はあるでしょ」

 

 ──そういえば、スルーしてたけどサードレマでそんな話があった気がするな……

 

 何だったか、確か王国内でクーデターが発生したことで前王派と新王派の争いが起こった。プレイヤーはこの二勢力のどちらかに付き、自分の陣営の勝利を目指して敵のプレイヤーと戦う……って感じの内容だったはず。

 前王派には大多数のプレイヤーが。新王派には配信者が連合を組んで付いているそう……黎桜がこの戦いに参戦するなら、私は多分あいつの味方として新王派で参戦することになるだろう。内乱なんてアホらしいし攻略を優先したいんだけどなぁ。

 

「ルストとモルドはどっちに付くの?」

「前王派。シャンフロの方で入ってるクランのリーダーがそう決めたからそっち」

「クラン入ってるんだ……意外」

「どういう意味?」

 

 ここまで話してた感じ、そういうの面倒臭がりそうだったから意外だなぁって。でもちょうど別陣営なら自然と戦う機会はできる、シャンフロで出逢うその時を楽しみにしていようじゃないか。

 

「私は多分、新王派になるかな。もしも出逢うことがあったらその時は恨みっこなしだよ」

「望むところ。叩き潰す」

 

 シャンフロでの再会を約束したところで、流石に眠気に限界が来たのでログアウトする。疲れたけど楽しい時間であった。




 ネフホロで八千代に一番合っているのは地上番長型。稼働時間と装甲を損なわず機動力を手に入れる代償に攻撃力はガタ落ちするが、高AIMと生存力で時間切れによる勝利(Time Over Death)を狙っていくタイプ。
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