ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「ロンミンちゃん!やっぱりこれ、FM'sクリサリス掘り当てる暇は無いって!」
「むぅ……まさか、足を踏み入れた途端に気付かれるとは私も思ってなかったよ」
以前に"
こちらの存在に初めから気付かれているし、しかも隊列を組んで連携の取れた立ち回り……間違いなく"
「コイツら、こんなに連携取れてたっけ!?私の記憶だと、水晶群蠍ってもっと物量と硬さに任せた突撃一辺倒って感じなんだけど!?」
「統率されてるんだよ。
「金晶独蠍!?」
「奴の指揮を伝えてる個体が4匹居るから、まずはそいつらを倒して水晶群蠍を無力化するよ!」
通常個体はどうせ際限無く湧いてくるからその場その場での対処として、大事になるのは儀仗個体を速やかに排除すること。
儀仗個体が斃れれば、その管轄の通常個体は沈黙し無力化できるようになる。蠍で騒がしいいつもの水晶巣崖が静かになるので、採掘を行うには絶好の状況になるのだ。"皇金世代"も倒しに行きたいが儀仗個体を全滅させた後はしばらく放置だ。
「……いや、コイツら使えないか?」
「何か思いついたの?」
水晶群蠍の攻撃は、その質量の大きさ故に地面を大きく削ることが多い。チマチマとツルハシを振るうよりもこれを利用した方が、効率的には断然良いんじゃないか……?そんなことを考えた。
しかしやるとしても難易度は高い。普通に戦うだけでも何度でも死ねる分厚い攻撃陣形を、位置を誘導しながら戦わなければならないのだから。私なら頑張ればイケると思うが……"皇金世代"のことを知らなかったアーサーの方は心配だ。
「アーサー、コイツらを使って地面を掘ろう。奴らの攻撃を地面に誘導して、大きくて深いクレーターを何個も作らせるんだ」
「マジか……私にできるかな?策略を練ってその通りに動くのはともかく、私って純粋なPSにはあんまり自信無いんだけど」
「大丈夫、アイツらを上から落として地面をほじくるだけだから大したPSは要らないよ!」
「できるかなぁ!?それ本当にできるかなぁ!?」
できるかどうかではなく、やるかやらないかだ。
私達が相対しているこの群れは、横に広がるタイプの陣形を組むのが得意なようだ。コイツらの質量を地面に向けるには、上に重なるよう仕向けたり地面に攻撃するよう誘導が必要になる。地面への攻撃は奴らの下をすり抜けるように移動していれば誘えるだろうが、これは数も多過ぎるし蠍の股抜けは難易度が高いので止めておく。
「アーサー、ひたすら跳びな!」
「簡単に言ってくれるね……うっわ、ドンドン壁が積み上がってんだけど!?」
PSには自信無しと言ってる割に、避けることだけに専念したアーサーの動きは良い。腐してもトッププレイヤーの一人、積み上げてきた経験とステータスは伊達では無いということか。
それともう一つ、"皇金世代"に率いられることで動きが秩序立っていることも大きいか。普段の無秩序で暴力的な奔流と違い、無駄を無くし一糸乱れぬ動きをとるが故に動きを読みやすく、いつもなら素早さのステータスやスキルが足りないプレイヤーでも対処をしやすくなっているのだ。サイガー0やシュトーレンがそんな感じのことを言ってた。
とにかく蠍の上を飛び回り、奴らが上へ上へと積み上がるように行動を誘導していく。瓦礫を投げてきたり毒液を飛ばしてくることもあるが、その都度弾いたり防いだりしてやれば、効果無しと判断して壁を高くして跳ばせない方向にシフトする。
その戦術を利用して、大きく10段程度はピラミッドを作ってやったところで頃合いが来た。ここまで重なっておいて下が潰れないのも壁が崩れないのも流石の連携と言ったところだが。そろそろこの壁を崩させてもらおうではないか。
「アーサー、よろしく!」
「はいよ……
突きを強化する槍スキル、「
緻密に組まれた隊列は、その繊細さ故に僅かな隙で無情にも崩れてしまうもの。それでも崩れ落ちまいと揺らぎながらも必死に踏ん張る姿に、間髪入れず私がダメ押しの一撃を加える。
「ほれ、崩れろ……『
私は揺れる壁の最先端……上の方へ孤毒剣のソニックブームをぶつけ、その衝撃で隊列の乱れた蠍を高空から順次落下させていく。それもただ地面に落とすのではなく、儀仗個体を潰すように奴の居る方角に対して落下面積を広くした上で。
「ははっ、隕石でも落ちたみたいだな!」
大量の大質量の落下によって、クレーターのように深く抉れた地面が顔を覗かせる。落下ダメージや圧迫ダメージによって死亡した個体が消滅し、新たに補充された個体が方々から出てくるが……それらは指示を待つかのように動きを見せない。儀仗個体の排除にはどうやら成功したようである。
地面はかなり深く抉れたが、見た限り埋まっている蛹は見当たらない。この辺りには埋まっていないかそれとも、もっと深く掘るべきなのか……一応蠍は無力化して余裕はあるし、取り敢えずある程度の深さになるまでもう少し掘ってみようか。
──アイツら、蛹の内は
「はい、ツルハシ」
「ここで採掘するのすっごい怖いんだけど」
二人で掘り進めていったが、結局ここではFM'sクリサリスは見つからず。諦めて次の儀仗個体の居る場所に進むことにしたのだった。
……
…………
………………
…………
……
「うーん、ここにも無いか……」
「結構、確率低いのかな?」
3体目の儀仗個体を潰し、また採掘に勤しむもここでも目当ては見つからず。この場も諦めて4体目の居る場所へ向かう。この後は"皇金世代"戦も控えているし、次も見つからないようだったら蛹掘りは一旦中止してまた後日にした方が良さそうだ。
採掘をしていると、ゴゴゴゴ……という音と共に視界に大量の蠍が入ってくる。4体目の儀仗個体とその率いる群れが、どうやらあちらの方から襲撃に来てくれたようだ。ツルハシをしまって応戦の用意をしようとしたが……その前に、私の魔眼が襲い来る群れとは別の脅威を捉えた。
「……近付いて来てるね。準備して」
「大丈夫、できてるよ!」
「違う、下!」
「下……え?」
私の言葉に視線を地面に向けたアーサー、その足元が突如として揺れ出したかと思うと、そのまま大穴が開き水晶の針が突き出してくる。
咄嗟のことで反応し切れず、危うくアーサーは直撃をもらうところであったが。間一髪で
「あ……ありがと、助かった!」
「しょうがない。地中移動できる蠍……こんなの私もこれまで出逢ったことなかったもの」
──
二つ名が付いているが、エクゾーディナリーのアナウンスが流れないところを見るにコイツはただの通常種の延長線上の個体なのだろう。
違いとしては、サイズが3倍近くデカいことと腹下まで完全に水晶で覆われていること、無数の関節を持ち柔軟性を確保していること、水晶が流体金属のようになっていることなどが分かる。名前からして便利な十徳ナイフ的な扱いなのだろう。
「同じようなのが奥にも居るね、攻撃用と儀仗個体の護衛用って感じなのかな?」
「呑気にしてないで!来るよ!」
さっきは立ち回りで壁の形成を誘発させたが、今度の蠍達は自発的に積み上がり壁を形成し、攻撃役の"瑞波逐流"から私達があまり距離を取り過ぎないよう逃がさないことに努める。
そして攻撃の要となる"瑞波逐流"だが、これが中々嫌らしい動きをしてくるのだ。全身をくまなく覆う水晶は通常種含め蠍達の共通弱点であった腹下さえもガードし守備に隙は無く、液状になった水晶はその強度と耐久性を維持していながらも無数の関節と合わせて柔軟な立ち回りを可能とする。
「うわっ、危なッ!」
ジョイントを巧みに動かすことで、鞭のようにしなる鋏を使った殴打。逆に関節を固め水晶の位置を揃えて巨大な包丁のようにして斬り裂いたり、それらを警戒して近付いて来たらジャブで押し返す。
腕に気を取られていたら尻尾が怖い。地面を潜らせてからの不意打ち、壁に追い詰めて連携しての毒液の弾幕噴射、自身を軸にコマのように回転しての広範囲への薙ぎ払い攻撃。そしてそれらの何よりも怖いノーモーションからの突進とタックルと、全体的に以前に戦った"皇金世代"との戦闘を思い出すような戦法を取ってくる。
──面倒な奴だなぁ!だけど、"皇金世代"戦のデモンストレーションと思えばちょうど良い!
「アーサー、私が隙を作るからよろしく!」
「オッケー、分かった!」
「これ使って、バフ入るから」
「何々、
ダメージソースとしてはやはり、装甲貫通能力を持つアーサーの槍が効果的だ。ここまで奴の戦い方を見て立ち回りは分かった、ここからはアーサーが攻撃しやすいようにしてやる番だ。
封城の撃鉄を起動し、発生するバリアを地面に向けて不意打ちに対応させ、更に装備を怨蛇の大盾に変更する。手持ちしていれば持ち主のVITを大幅に強化し、且つ盾に触れただけで反撃ダメージと毒を与えられる優秀な装備。
「…………………!!?」
「流体金属だもんな、電気は良く通るよな!」
その上、この盾で与えられる反撃ダメージは雷属性のもの。流体金属で全身を覆う"瑞波逐流"にはそれはもう良くダメージが通る。これだけで決定打になるようなことは無いが、サブ火力として考えるなら十分過ぎるダメージが入った。
反撃を食らう程に、敵も頭に血が昇るのか躍起になって攻勢を更に増していく……それを何度でも受け止めて防ぎ切る。カウンターを食らわせることでヘイトを保ち続けられるのも良いね。
「………………!!」
「おっと、隙ありだぜ!」
盾を乗り越えて攻撃しようと、身を乗り出したところで懐に潜り込み、腹から盾を突き上げて"瑞波逐流"をひっくり返す。そしてここで反撃ダメージと同時に蓄積していた麻痺毒が、その効果を及ぼせるようになるまで溜まった。倒れ込む"瑞波逐流"が麻痺のエフェクトに全身を苛まれながら、復帰しようと弱点の腹部を剥き出しにして踠く。
だがそうは問屋が卸さない。渡しておいた強化剤でバフを受けたアーサーの槍スキル、次の一撃の威力とヒット数を3倍にする「トライピアス」が剥き出しの腹を貫き、装甲貫通効果でその下の地面ごと水晶に覆われた本体の命を深く抉った。
「よし、撃破!」
「ナイスキル!このまま儀仗個体を……ッ!?」
儀仗個体を倒そう、そう言おうとしたところで周囲が大きく揺れる。突然の振動に壁を形成していた蠍達が崩れ落ち、上側の蠍が落下ダメージで粉々に砕け散る。
震源地は分かる。今の攻撃でアーサーが開けた地面の大穴……その奥深くからだ。私の魔眼がその場所にモンスターの反応を捉えたので間違い無い。
──水晶巣崖の地中から、突如として出てくるモンスターと言えば……お前だよなぁ!?
【モンスター
【討伐対象:FM'sクリサリス"
【参加人数:2人】
【エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されました】
「お前じゃねえ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
「違うヤツ、出て来ちゃったねえ……」
FM'sクリサリスが出て来た……が、私が求めていた"
新規のエクゾーディナリーに出逢えるのは確かに幸運なことだけどさぁ、だからってこんな時に運勢使いたくなかったなぁ!そもそも逢いたかったのお前じゃないし種類違いだし!倒すことに変わりはないけど何だか損したような気分だよ!
「アーサー、このままコイツ連れて"皇金世代"の所まで行くよ!」
「乱戦になるけど大丈夫なの!?」
「乱戦上等!向かう奴は全員潰す!」
「頼もしいねえ、じゃあ行こうか!」
"輝晶点穴"との違いがよく分からない、水晶を纏ったアーマードカブトムシ"戦災孤児"を連れて"皇金世代"が待つコロシアムへ向かう。
PvMvMとなるので、周りを囲うだろう蠍がどう動くか分からなくなるが。もしも動くならその時は乱戦上等で"戦災孤児"や"皇金世代"ごと潰してしまえば片付く。絶滅させてやるくらいの意気込みを持って、蠍共の根城へ乗り込んだ。
【モンスター
【討伐対象:
【参加人数:2人】
【エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されました】
──カチコミじゃあい!
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