ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「…………!!」
「ちょっ、早っ……!攻撃激し過ぎ、こんなん全部当たるなってそんなの無理でしょ!?」
「気合いで頑張れ」
「そんな無茶苦茶な!」
「前はそれをやって勝ったんだけどね」
元剣鋏であった左右の腕から伸びる光剣、それをレイピアのように手首のスナップで巧みに操り"皇金世代"は変幻自在の攻撃を仕掛けてくる。流石に元程の器用さは無いが、それでも手首を少し捻るだけで一気に変化する光の軌跡に、そこまで反応速度の速くないアーサーはタジタジだ。私は2度目ということもありまだ余裕があるが。
防御は出来ないので避けるしか無いが、あまりにも攻撃が苛烈過ぎる問題。前回と違って2人しか居ないのでヘイトの分散がし難く、常に相手の攻撃に晒され続けるので対処に手一杯となり、こちらのターンが全くと言って良い程に回ってこないのだ。別にこのままでも"皇金世代"が最終的にガス欠で死ぬことは確定しているが、時間が掛かり過ぎるのでなるべくこちらからも攻撃はしたいところ。
──さーて、どう反撃していくかねぇ……?
武器を蛇槍『金剛牙』に変更。"皇金世代"の光剣と打ち合うのは不可能だが、手癖でやらかしてしまう可能性があるので、攻撃以外では耐久力を消耗しないコイツが適任だろう。覇憧傑刀『無貌』もクリティカルを出せれば耐久減少を無効化できるが、より確実なのは今回はこっちだ。
一度使った手がまだ通用するかは分からないが、アーサーには
「こいつも使うか……!」
「空飛べるやつ!便利そうだよねソレ!」
正面からだけでなく、多角的に攻撃ができるように
虹色にキラキラ光る私の身体で、透明化するアーサーを隠しつつ空へ向かい無を蹴り出す。ワンチャン攻撃が届かないことを期待したが、普通に光剣のリーチは伸ばせるし、何なら普通にジャンプして同じ高度まで当然のように上がってくる。やはりインチキはできなかったが、それでも動ける角度が増えたことで立ち回りはやりやすくなった。
──そろそろカウンターできそう……!
何度もジャンプを誘発させ、そのタイミングやどこに隙ができるかは把握できた。もう一度跳ばせてやれば今度はその瞬間を狩りにイケる。
腕の光剣を躱して頭に一突き。反撃の尻尾を飛んで回避し光剣の届かない高さへ移動、"皇金世代"の跳躍を引き出す。
「…………!!」
「よし、ノコノコやって来たな……ッ!?」
"皇金世代"のジャンプから、私の居る高さまで追いついて攻撃を始めるまでにできる僅かな無防備なタイミング。そこにバンカード・ピアスを合わせて叩き落とし、攻撃と落下による二重のダメージを与えた上で、アーサーに追撃してもらう皮算用……しかし、それを成す直前で"皇金世代"は咄嗟に行動を切り替えた。
両腕、尻尾……漏出する光の出力を瞬間的に増大させ、身体を捻ることで水泳のクイックターンの如き方向転換を実現。奇襲のタイミングを測っていたアーサーを、その巨体で圧し潰したのだ。
「アッグ……!?」
「アーサー!」
食い縛りが発動したのか、落下エネルギーも加えた大質量の直撃を受けたにも関わらず、アーサーはまだ死んではいなかった。だからと言って切り抜けられるということは無く、そのまま光剣による追撃を受けて爆散する。
──隠す努力はしたけど……それでも、ちゃんと眼で追えてたのか。
アーサーを始末した"皇金世代"は、そのまま機敏な動きで私の方へと向き直る。次はお前だとでも言いたげな所作だが……それは油断し過ぎだ。
水晶巣崖を登る前に、寄り道をしておいたのが本当に良かった。
「…………ッ!!?」
「余所見厳禁……ってね!」
「ナイス、アーサー……私も!」
復活したアーサーの槍が、"皇金世代"の無防備な胴体を穿つ。「綺憶像失」のデメリットによって復活の度にスキルや魔法を制限されるが、カレドヴルッフならそこまで問題にはならない。最も重要な装甲貫通は槍自体が持っている効果だからだ。
水晶に守られた柔らかい本体を貫かれ、大きくダメージを受けて怯む"皇金世代"。その隙を逃すまいと私は封翔の撃鉄を起動……AGIを強化して更にスキル「グラビティゼロ」「フリットフロート」で重力を下方向に変換。急速落下による擬似的なバフを乗せてバンカード・ピアスを撃ち放った。
「ぐぐぐ……これでも足りんか……!」
スキルもシチュエーションも、可能な限り火力を高められる良いものであったが。当てた場所が悪く部位破壊には至らなかった。側面に近い無傷の部分にヒットしてしまった、流石にスピードが速過ぎて軌道修正はできなかった……大きく亀裂こそ入れられたものの、やはり浅い。
──クソ、傷口に当てられてたらワンチャン止め刺せてたかも知れなかったのに……!
失敗してしまったが、ここは良い方に考えて気持ちを切り替えよう。浅くとも傷口は広げられたのだから、次は何処に当てても大丈夫……今度は失敗のしようが無いからイケる、と。
とは言え、先程のような好機をもう一度持ってくることは難しいだろう。今のは"皇金世代"がこちらが蘇生できることを知らず、一度は確実に倒したアーサーから意識を外したからこその結果だ。シャンフロのAIの頭の良さを考えれば、同じ手はもう通用しない可能性が高い。
「だったら……!」
古虹を解除して、地上に降り立ち武器を金剛牙から無貌に切り替える。今からやろうとしていることにはこっちの方が良い。槍よりも刀の方が細かい取り回しは効きやすいからね。
思い出すのは前回の"皇金世代"戦のこと。スキルや武器固有の強化が無くとも、普通に攻撃を通せる部位があった──それは、口内。硬い牙を避けて口元に刃を通すのを狙っていく。
──喉の奥まで、突っ込んでやるよ!
以前のサンラクを参考に動き、どうにか猛攻を凌ぎつつ進行はできているが。彼と私ではAGIや反射神経などが違うので、完全に同じ動きはできず危なくなる場面も多い。その度に下がらざるを得なくなり3歩進んで2歩下がる状態だ。
私も「綺憶像失」は持っている、3回までなら死んでも復活はできるが……"皇金世代"の攻撃が突き中心になってきてるのが問題だ。腕を突いて引き戻すという動作をゆっくりやられる、それだけで仮にスキルが発動した時に、復活地点でリスキルを食らう危険が伴うのだから。
対策するのは簡単だ。突き以外の攻撃の時にワザと食らって一度死んで、リスキルの危険が無い状態で復活してしまえば良いのだから。
だが、それをやるのは憚られる。いくら復活できるとは言え今は人生縛り中、命大事にを主旨とする縛りの中でそんな、命を使い捨てるような真似をするのは流石に違うのではないかと。そんな思いがあり考えても実行に移せないでいたのだ。
「ぐぅ……中々上手くいかないな……!」
「だったら、手伝ってあげるよ……ッ!」
何度も進もうとし、何度も阻まれ刃を突き立てられずに膠着しつつあった状況。アーサーはそれを打ち破るべく静観を解き、カレドヴルッフと共に"皇金世代"へ突撃した。
工夫も何も無いただの特攻……しかし、"皇金世代"は律儀にもそれを真正面から迎撃する。避けるなり何なりどうとでもできたはずなのに、律儀にその特攻に対して光剣を合わせた。それまで私に向いていたヘイトを完全にアーサーの方に向けた、余りにも急激な心変わりである。
「ッハア……!ロンミンちゃん、"皇金世代"は聖槍を警戒してる!だから、私が来たら貴女に背を向けてでも私を始末するために動く……!いくらでも動けるでしょ、これなら!」
「……ありがとう!」
アーサーの言う通り、"皇金世代"己に致命傷を与える余地がいつでもある聖槍を常に警戒する必要性を背負っている。それに対処するべく動く瞬間は私にとっては明確な隙となる──アーサーの命を代償として消費する必要はあるが。
ならばこのチャンスを逃してはならない。綺憶像失による復活はあと1回分残っているが、それも使わせる前に倒し切って見せようではないか。それがチャンスを与えられる側として、私が果たすべき責任であり誠意なのだから。
「食らっていけ……秘剣『月牙』!」
刀の突きを強化するスキル、「秘剣『月牙』」で"皇金世代"の顎を穿ち抜く。クリティカルで入った一撃は口周りを守る水晶を貫き、つっかえ棒を入れたかのようにその動きを阻害する。あまり噛みつきなどを食らう機会は無いが、攻撃手段を一つ奪えたと言う事実は大きい。
即座に金剛牙を再び取り出し、今度は月光を噴出する右腕に切先を突き立てる。溢れ出る光と暴れる動きに阻まれるが、金剛牙は攻撃以外の使い方では耐久値が減らないという特性を持つ。この状況下では攻撃ではなく競り合いと判断されたようで、壊れることの無くなった金剛牙はしっかりと競り勝ち、右腕に栓をして武器を更に一つ奪った。
「これで、安地が作れる……アーサー!」
「分かってるよ!」
アーサーがすかさず右側に回る。どちらかが安地に入ることで"皇金世代"はそちらに意識を割かなければならなくなり、反対側への対応が中途半端になることで安全な立ち回りがしやすくなる。
このまま、時計回りにグルグルと回りながら少しずつ"皇金世代"を削っていく。段々と漏れ出る光が弱まっていくのを目視し、終わりが近付いてきていることが分かるが……油断は禁物。奴は絶対にその時は最後っ屁をかましてくる、そこまでキッチリ潰して初めての完全勝利だ。
「いつ頃とか、タイミング分かる!?」
「一旦止まって力を溜め始めるからその時!」
最後の一撃がいつ放たれるか、その時が来るのを今か今かと待っている。
そして来る……その時が。
「前はサンラクに良いところ持ってかれたけど……今回は私が持ってくよ!」
「頑張って、私はできそうにないしね!」
最後の攻撃に備え、動きを止めて力を溜め始めた"皇金世代"に対抗し私も準備をする。
途中で打ち切ったことでリキャストが間に合った封虹の撃鉄を起動し、更に
「まだまだ……ッ!」
更に、
スキルも大盤振る舞いといこう。月下限定でステータスを強化する「月天讃歌」、敵の体格が自分より大きい程補正が掛かる「一寸蟲魂」、戦闘時間が長い程補正が掛かる「アドレナリン・マックス」、次の一撃を確定クリティカルにする「
一瞬の静寂が訪れる。"皇金世代"に残る左腕と尻尾の光剣、この二振りによる連撃が最後の攻撃となるだろうが……どちらか一方は使わせない。一撃で全てを終わらせるからだ。
──大丈夫、集中できてる。
"
「…………」
「…………」
動かない。
「…………」
「…………」
動かない。
「…………」
「…………」
まだ、動かない。
時間の短いバフはそろそろ切れる頃だが、それでも焦らず来るべき時を待ち続ける。動かざるを得ないのはあちらも同じ……いや、リミットで失うものが命な分あちらの方が焦りは確実に大きい。
「…………」
「…………」
待つ。
「…………」
「…………」
待つ。待ち続ける。
「…………………………!!」
「……こ、こ!」
その時を逃さず、孤毒剣を振り下ろす。待ち切れなかった"皇金世代"の動きを、魔眼は確実に捉え身体はそれに応え動く。
振り下ろされた大剣。大振りの一撃はその動きによって光剣を紙一重のところで躱し……反撃の一閃で黄金の甲殻を中身ごと両断して見せた。
「今回は……カッコよく、決められたんじゃないかな?」
【モンスター
【討伐対象:FM'sクリサリス"
【討伐対象:
【エクゾーディナリーモンスターが撃破されました】
【称号『我戦故我在』を獲得しました】
【
【不世出の奥義「
私達の勝利が、この瞬間確定したのだった。
八千代は死なない立ち回りは得意だが、攻めるための立ち回りはあんまり得意ではない。「攻撃は最大の防御」「当たらなければどうということはない」は苦手な言葉。