ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
私の最大火力は、「
その火力には信頼を置けるが、問題なのは前準備のヒット数を稼ぐところ。やればやるだけ必殺の一撃に相応しい威力にはなるが、あまりやり過ぎると適応されて無効化されてしまう。
──ギリギリの調整、やるっきゃないか!
適応されるギリギリまでヒット数を稼ぎ、最後に一片舞で大ダメージを与える。少しミスっただけで大惨事になってしまうが……やらなきゃ勝てないのだからやる以外の選択肢は無い。
いざとなれば、周りのハードラッグ・ライノ達で稼ぐこともできるのだ。緊張感は保ちつつも縮こまらない程度に落ち着いて、さぁいこう。
「私も最大火力の用意するけど、溜めに時間掛かるから先によろしく!」
「ハッ、これで倒してやるさ!」
京極にも切札があるそうだが、繰り出せるまで時間が掛かるというのなら私だけで倒し切るに越したことはない。
できれば倒す、最低でも京極がトドメを刺せるところまでは持っていくのが私の役目。役目を果たすべく竜の懐へ飛び込んでいった。
「いくぜ、「百閃の剣」──コンボの時間だ!」
スキル「
一度敵を斬る毎に2ヒット、4ヒット、16ヒット……と倍々ゲーム式にヒット数が増えていくが、最大でも100ヒットまでしか伸びない。あくまで手数を増やすためのスキルだが、その性質がそれまでの手数が多い程、コンボの締めとしての威力が上がる「秘剣『一片舞』」とは大いに噛み合う。最後の一回以外はコンボとして繋がらなかったとしても100ヒット分のコンボを稼げるのだから。
「さて、どれくらい変わる……?」
パーフェクトへ三発の攻撃を当てる。これだけで合計22ヒットの判定になった訳だが、奴の体色にはまだそれ程の変化は見えない。せいぜいだるだるになっていた腹が少し縮んだかな?というくらいでまだまだダメージ量に余裕はありそうだ。
この分なら、百閃の剣を全ヒットさせても一片舞まで無事に繋げられるだろう。無貌が耐久力に大きくリソースを割いていて、攻撃に特化していない部分も大きいのだろうが。ダメージはスキルで出せばいいので、武器に求めるのは長く扱うことのできる高い耐久力。私の好みとしっかり合致しているとても使い勝手の良い刀である。
4発目、5発目、パーフェクトの肉体は攻撃を当てていく度に少しずつ黒みを帯び、少しずつ会敵したばかりの頃の体型に戻っていく。あの時の体型こそが、私達を相手取るに当たって最も適していた姿だったということか……どの姿でも、あまり変わらなかった気がするのだけど。
余計なことを考えている暇は無い。攻撃の間隔を空けるとコンボが途切れてしまうし、あまり悠長にしていると今度は向こうの反撃を食らう。適応がリセットされた今は、例え被弾したとしても即死することはないだろうが。それでも無駄に被弾しないに越したことはないのだから気を付けねば。
「これで、7発……!」
「………………ッ!!」
──っぶね……当たるところだったな。
7発目の攻撃を当てたところで、パーフェクトがその後隙を狙い反撃を繰り出す。刃状の翼を振り回し一帯を薙ぎ払う全方位攻撃だが、咄嗟に翼の付け根にしがみつくことで事無きを得た。一緒に回ってやれば薙ぎ払いは食らわずに済む。
そのまま攻撃が終わるのを待たず、8発目の攻撃を当ててコンボを継続する。ダメージ自体はそれ程のはずだが、衝撃を加えられたことでパーフェクトは自身の回転の遠心力を制御できなくなり、大きく後方へノックバックし吹っ飛んでいった。
「………………!!?」
「これで終わらせてやるよ……食らってみな、私の最大火力!」
パーフェクトから手を離し、尚も転がり離れていく奴へ追撃を仕掛けていく。
最大火力、秘剣『一片舞』──しかし、パーフェクトもそれをマトモに食らうことを良しとせず、体勢も整わぬまま腕を振り回し抵抗する。
「………………!!」
「そんな、苦し紛れで……!私を、止められると思うな!」
やぶれかぶれで振り回された腕、しかしその一撃は私に命中してしまう。
このまま即死……はしなかった。私への適応状態が上書きされて消えたことで、攻撃の無効化がされなくなると同時に、奴からの攻撃による即死も免れるようになっていたからだ。そうと予想はしていたが合っていたようで何よりである。
ぶん回しによるノックバックを堪え、封翔の撃鉄で上がった速度で一気に懐へ潜り込む。これ以上余計な抵抗を加えられないよう、何処からでも簡単に攻撃できない位置に陣取るのだ。
これでもう、私を阻むものは何も無い。改めて無貌を振り抜き、今度こそ必殺の一撃『一片舞』を無防備なパーフェクトの胸元へと放った。強大な破壊力が竜の肉体を破壊していく──!
「……チィ、やっぱ足りないか」
「………………!!」
私の『一片舞』は、確かにパーフェクトの堅牢な甲殻をバキバキに砕き裏の片翼を斬り落とした。
しかし刃はその命までは届かず、そこには全身を黒く染めた竜が佇んでいた。
いくらそれ自体の火力が高いとはいえ、バフも何も無い一撃程度で削り切れる程、ボスモンスターのHPは甘くはない。
適応もされてしまった以上、もう私からコイツにできることは無い。いい加減下準備とやらも終わった頃合いだろう……トドメは京極の切札とやらに任せることにしよう。頼んだぞ。
「引き付けありがと……おかげで、コイツの準備が間に合ったよ」
京極の切札──強烈な光によって白く輝く刀を上段に構えるそれは、未だ三桁のレベルに至らぬ私には無縁の領域にあるスキルだ。
最大8つのスキルを連結し、新たなスキルを生み出す絶技【
「──7連結……『
それはまさしく、天より落ちる雷。
反応など誰もできなかった。パーフェクトも私も含めて、雷光の迅さで振り下ろされる刃を知覚することすら叶わず。竜の甲殻を破壊して尚も余りある力で、無果落耀の古城骸の一地域を草木の一本も生えない更地に変えてしまったのだった。
「……!!…………!!………………!!」
「まだ形が残ってるか。流石ボスモンスターともなるとしぶといね……でも」
「……!!」
「もう、終わりだよ」
天ノ神鳴の直撃を受けて、肉体の大部分を失ったパーフェクト……僅かに形を残した頭部と頸部をオレンジ色に染め、京極の喉元へ食らいつく。
しかしその牙が届くことは無かった。限界を迎えていたパーフェクトの肉体は、京極に触れる寸前のところで消滅する。そして、竜の討滅が果たされたことを示す通知が届くのだった。
【竜の討滅は果たされた】
【『
【最も貢献した装備が
【ジョブ『
【はい いいえ】
「おぉ、装備が変わってる!いやぁこういうの見ると頑張った甲斐があったと思えるよね」
「一人で盛り上がってんじゃねえぞボケナス!」
「へぶうっ!?」
竜の討伐報酬に目を輝かせる京極に、怒りのドロップキックをぶち込んでやる。このヤロウの攻撃に巻き込まれたせいで私も死んでしまい、そして最後の
「何すんだ!」
「こっちのセリフだ!巻き込むって分かってたんなら最初から説明してろ!」
もう一度殺し合いになりそうだったが、お互い満身創痍だしこれ以上戦う気力も今は無かったので言い合うだけに済ませておく。
イラつくのは山々だが、それよりも報酬がどうなったかを見る方が大事だ。新しいジョブに加えて使っていた装備の変化、どれがどう変わったのかを把握しておかねばならないのだから。
────────────────────
【覇憧傑刀『擊竜』】
[カテゴリ]
・刀
・
[効果]
・攻撃成功時、耐久力の減少無効
・『晴天流』スキルの習熟率上昇
・対竜特効
・『
・『
【
[内訳]
頭:
胴:
腰:
足:
[効果]
[一式装備時]
・状態異常無効
・状態異常付与率・効果量上昇
・対竜耐性
・『
[竜魂解禁時]
・『
真なる竜種とは肉持つ恐怖の
人はそれを繰り返し前に進んできた。
ならば真なる竜種、肉持つ恐怖を討ち滅ぼしたあなたは、彼の理解者なのだ。
歩めど、歩めど。
その道のりに終わりは無く、その標は未だ遠くにあり。
共に歩もう。道のりに果ては無くとも、確かな一歩を刻みつけよう。
遠く、靭く。我が名は常に、君の隣に在る。
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「おお……」
色々と効果が追加されたり、変更されたりしているがかなり強くなっている。
無貌改め『擊竜』は、耐久維持の条件がクリティカル発生から攻撃のヒットに変更。更に竜特効と一度戦った相手への特効、そしてそれを失う代わりに大幅な耐性を獲得する効果を得た。
それだけでなく、武器自体の攻撃性能や耐久力もかなり上がっている。シャンフロに於いて、装備の耐久力は点々のメモリのような感じで表されるのだが、その数が戦闘前よりも倍近く増えていた。耐久力が上がるのは助かる、もしも直せず壊してしまったらロストするからね。
防具の方は、読みはそのままに漢字が当てられるようになっている。
性能は一式装備でないと効果の恩恵を受けられなくなったが、状態異常が軒並み無効化できるようになったり、そもそものVITが5倍に増えてたり、時間が経てば経つ程有利になるなどと、かなりの強化が成されていた。
見た目の方は、擊竜は鞘に竜を模したような歪な線で描かれた模様が入り、擊竜蜂装一式は黒をベースに紫が差し色に入るようになった。竜のような模様もしっかり入っている。動きによって結構ズレるので静止してないと分かり辛いけども。
京極のほうも、詳しい内容こそ秘密だそうだがどうやら似たような変化をしたらしい。効果が変化したり追加されたり、見た目が変わったり……格好付けてる時に同じことを言ってたけど、やはりこうも変わると倒した甲斐があるというものだ。
──今度逢った時は、自分でトドメを刺せるようになりたいな……
今回は成り行きとは言え美味しいところは京極に持っていかれてしまったし、綺憶像失が無ければ瞬殺されていた戦いだった。
もう同じのには出逢えないだろうが、真なる竜種自体は他にも居るだろう。次また逢った時は絶対にぶっ殺してやると心に決めて、改めてフィフティシアまでの行軍を再開しよう。この後まだエリアボスも残ってるんだよなぁ……
「このまま私はフィフティシア目指すけど、京極はどうするの?」
「行き先は同じだね。死に戻りするのも何だし攻略手伝うよ、アイツはソロだとかなり苦戦する相手だからね……」
という訳で、私達の共同戦線はもう少しだけ続くこととなる。
最後のエリアボス、『ユザーパー・ドラゴン』との決戦に向けて、疲労で重くなる肩と腰を上げてまた歩を進めるのであった。
「
連結ランク6 攻撃スキル
(「秘剣『雷電』:LV.MAX」+「秘剣『流星』:LV.MAX」+「星斬り」+「天斬ノ太刀」+「
刃を電光に変えて放つ雷速の上段斬り。余程硬いモンスターでない限りだいたい一撃で倒せるだけの火力と基本不可避の速度を持つ。
発動から実際に繰り出すまでに、体勢を変えてはならない60秒のチャージ時間が必要。その上リキャストタイムも200時間とめちゃくちゃ長い。更に発動後は反動で全ステータスが半減し10秒間麻痺状態になりその場から動けなくなる。
そしてほとんど無いが避けられた場合、溜め込んだエネルギーが自身に逆流して死ぬ。相手をオーバーキルし過ぎても余剰エネルギーによる周囲の破壊に巻き込まれて周りの味方ごと死ぬ。今回もかなりの環境破壊をもたらしたが、一応ロンミンの死だけで何とかなった。