ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜   作:ナナシノ

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 おかげさまで、評価バーが赤くなりました。
 いつも有り難うございます。


89:ロンミンの終活

 さて、色々あって『ロンミン』の存在は消えてしまうことが確定した訳だが……実際にその時が来るまではもう少し掛かる。

 シャンフロのコミカライズに当たって、継久理は専用の出版社を立ち上げるとのこと。その準備ができてから動き出すことになるので、早くても実際に仕事が始まるのは年明け以降になるのだそうだ。それまではロンミンとして遊んでいられる。

 

「……随分と直接的な名前だこと」

 

 ログインした私が持っているのは、継久理と天地が運営の権限で私宛に渡してきた『遺言状』という試作アイテムだ。

 何らかの理由でプレイヤーがシャンフロにログインできなくなった時、その状態が半年程続くとその者が抱えていたユニークや、築き上げてきたNPCとの関係性はリセットされてしまう。それに持っている貴重な装備やアイテムも抱え落ち……そうなる中には、世界観上他者による再入手が難しいものも当然存在する。

 

 そういった、プレイヤーの引退によって生じるアイテムや機会の損失を予防するためのアイテムがこの『遺言状』なのである……まだ調整段階なので、正式に実装されるのは当分先らしい。私に送られてきたのはそのプロトタイプだ。

 使い方は簡単。遺言状にフレンドのPNと渡したいアイテムや権利の名称を記し、相手からの承諾を得た上で遺言状を渡す。これで相続の手続きが完了し、遺言状の使用者が引退状態になった時に記した物が遺された相手に相続される。

 

 ──契約上、もう個人としてはシャンフロを遊べないから、せめてロンミンが居た証は残させてやるとのことだけど……誰に何を遺そうか?結構色々とやってきたし悩むなぁ……

 

 悩んだが、結論としてはプレイできなくなるまではまだ時間があるので後回しにすることにした。

 どうせ、プレイできるのは長くても二ヶ月弱程度だがそれまでにも幾らか追加はあるはず。それらも含めて相続した方が効率的だろう、実際にこれから新武器とアクセサリーを受け取りに行く訳だし。

 

 ──深海のアイテム……はてさて、どんな装備が作れたのかなー?

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「お待たせ、待った?」

「時間通りよ、問題無いわ」

「俺達もついさっき来たトコだよ」

「ふふ……今から楽しみだよ」

 

 フィフティシアの適当な店でシュトーレン、アクアリエと合流し、いつものように出来上がった装備品をお披露目して貰う。

 この流れも既に三度目だが、やはり頑張って手に入れたアイテムが装備品として形になるこの時間はたまらなく好きだ。ハクスラゲーはこの時間のためにやってると言っても過言じゃないよね。

 

「でもその前に一つ良いかしら。ロンミン、貴女真なる竜種は倒せたんでしょう?『神化』させるから預かるわよ」

「そうだね、よろしく頼むよ。あと他にも色々と副産物があるんだけど何かに使えないかな?」

「……成る程ね。アクアリエ、私はアステヴァルと()()の再調整をしてくるから、あなたの方で先に進めておいてちょうだい。新武器の試し斬りが終わる頃には戻って来るわ」

「オッケー、頑張ってきな」

 

 竜を討ち、輝きを証明したアステヴァルの最終強化に加えて。どうやらエレクトロン戦の副産物であるカムイの素材が、作ってあった装備の更なる強化に使えそうとのこと。シュトーレンはアステヴァルと素材を持って、さっさと終わらせると言わんばかりに工房へ行ってしまった。

 残されたアクアリエは、別にシュトーレンが居なくても何ら問題無いとばかりに、彼女から引き渡す予定の装備を預かり代わりにお披露目する。最初に紹介されるのは──

 

「まずは武器から行こうかな。戦いを記憶した結晶を軸に、深海のモンスター素材とクターニッドの蒼宝珠を素材として、新たに生まれ変わったアモルパレント……【アモルパレント・リバイバル】!錆を落として本来の姿を取り戻した【炎斬『熔命』】!これも最終強化の前段階に入った【憧焉傑刀『画竜点睛』】!そして完全新作──ララ=ルーナに負けまいと腕によりをかけた、甦機装(リ・レガシーウェポン)冥雷輝炎刃(ミコル・オルクス)】!以上四つが新武器だよ!」

 

 ────────────────────

【アモルパレント・リバイバル】

 [カテゴリ]

 ・大剣

 ・英傑武器(グレイトフル)

 [効果]

【恩愛の剣】

 ・対始源特効

 ・この武器による防御時、それが攻撃発生と同じタイミングで行われたなら、それを無効化し『ブレイクゲージ』をチャージする

 ・『金炎の護り』:ブレイクゲージを消費して味方全体に特殊状態『金炎の護り』を与える。『金炎の護り』状態の対象は効果中AGI・VITが上昇し、HPが継続的に回復する。効果時間はブレイクゲージの消費量によって変わる

 ・『子守火(こもれび)』:ブレイクゲージがMAXの時のみ発動可能。300秒間HP・MP以外のステータスが1.5倍になり、アクションに火・聖属性が追加される

 また、発動時にそれまでに掛かっていた状態異常やステータスのマイナス補正がリセットされ、効果時間中はそれらを無効化する

 ・『愛憎反転(リヴァーサル)』:【憎悪の剣】にモードチェンジを行う。この時、それまでに貯めていたブレイクゲージはリセットされる

【憎悪の剣】

 ・対始源特効

 ・この武器によるクリティカル発生時、『ブレイクゲージ』をチャージする

 ・自分が攻撃によるダメージを受けた時、『ブレイクゲージ』をチャージする。チャージ量は最大HPに対する被ダメージ量の割合で変わる

 ・『蒼炎の怒り』:ブレイクゲージを消費して攻撃に蒼炎の追加ダメージを発生させる。対象から自分と味方が受けたダメージが大きい程、与ダメージにプラス補正が掛かる

 ・『自滅敵(ともだおれ)』:パーティが自分一人の時のみ発動可能。300秒間全ステータスが2倍になり、攻撃に蒼炎の追加ダメージが発生する

 また、効果時間中は1秒間に最大HPの10%のダメージを受け、相手にダメージを与えた時自分も同量のダメージを受ける

 ・『愛憎反転(リヴァーサル)』:【恩愛の剣】にモードチェンジを行う。この時、それまでに貯めていたブレイクゲージはリセットされる

 

【炎斬『熔命』】

 [カテゴリ]

 ・両手剣

 [効果]

 ・アンデット特効

 ・この武器による攻撃は、実体を持たない相手にもヒットする

 ・この武器による攻撃のヒット時、火属性の追加ダメージを発生させる

 ・この武器による攻撃が頭部にヒットした時、ダメージにプラス補正を掛ける

 ・この武器による攻撃がヒットした対象は、物理ダメージへの耐性が低下する

 

【憧焉傑刀『画竜点睛』】

 [カテゴリ]

 ・刀

 ・竜滅装備(バスターアームド)

 [効果]

 ・対竜特効

 ・『晴天流』スキルの習熟率上昇

 ・この武器による攻撃がヒットした時、耐久値の減少を無効化する

 ・『最適化(カウンター)』:この武器による攻撃がヒットする毎に、武器が対象を記憶する。記憶した対象への攻撃は与ダメージが上昇し、耐性効果を無視するようになる

※プレイヤー・NPCの場合は対象個人のみ、モンスターの場合は同種全てが効果の対象となる

【竜魂解禁:パーフェクト】

 ・『適者生存(パーフェクター)』:この武器による防御時、それが攻撃発生と同じタイミングで行われたなら、それを無効化し『最適化(カウンター)』を発生させる

 また、時間経過でDEX・TECが上昇しスキルのリキャストタイムが短くなる(上限・下限あり)

 

甦機装(リ・レガシーウェポン):シュトーレン『冥雷輝炎刃(ミコル・オルクス)』】

 [カテゴリ]

 ・対刃剣

 ・特殊銃

 ・刀

 [効果]

 ・水棲生物特効

 ・『火力発電』:使用者のMPを消費して、この武器に電力をチャージする。チャージした電力を消費して以下の効果を扱える

【銃モード】

 ・『通常弾』:最も威力が高く、射程が長い

 ・『誘導弾』:対象にホーミングする

 ・『炸裂弾』:着弾時に爆発する

 ・『融合弾』:上記三種から二種の効果を融合させた弾丸を放つ

【剣モード】

 ・『雷冥の刃』:この武器による攻撃に雷属性を付与し、攻撃がヒットした対象の属性ダメージ耐性を低下させる

 ・『輝炎の刃』:この武器による攻撃に火属性・アンデット特効を付与し、攻撃がヒットした部位の耐久値を大きく減少させる

超過機構(イクシードチャージ)

 ・超排撃(リジェクト)タイプ・『大伐刀(ブレイズ)』:銃モードから発動。蓄積した電力を全消費して高速の居合攻撃を繰り出す。消費した電力量が多い程攻撃の威力と範囲が上昇する

 また、使用後は強制的に剣モードに移行し1000秒の間銃モードにできなくなる

 ────────────────────

 

 ──相変わらず、テキストの長いことよ。

 

 強化された三本と、新規の一本……どれも既存の効果が強くなったり、元あった効果から別物に変わったり、新たな効果が追加されたりしているせいでテキストが凄く長い。【炎斬『熔命』】は割とシンプルなテキストだが……

 嬉しいのは、どの武器も自力で火力を上げる手段を持っているということだ。私は主にステータスの高さで火力を出すタイプだから、武器自体に火力増強要素があるのはとても助かる。元が傭兵ということもあって、専門職程大量に一つの武器種用のスキルを用意はできないからね……

 

 それにしても銃かぁ。遠距離攻撃の手段はディア=ルミナスとか、アステヴァルの『土星の槍(サターン)』とかがあったけど、純粋な飛び道具をメインとする武器はこれが初めてだ。ディア=ルミナスは対刃剣だから合体の手間が要るし、『土星の槍(サターン)』はまだ実戦運用したことが無いからね。

 私のスキル構成だと、銃を強化するようなものは無いから……遠距離でチクチクしつつ、電力を溜めてドカンと一発『大伐刀』をかますという感じになるんだろうね。若しくは他の武器に迎撃を任せつつチャージに専念するとか……一つで完成してる分、活かし切るのは難しそうだ。

 

「次は盾と防具だね。目玉にするつもりだったのをシュトーレンの奴が持ってっちゃったから、こっちは少しパンチが弱いと思うけど……それでもアイツの作品は凄いのばかりだよ!」

 

 ────────────────────

甦機装(リ・レガシーウェポン):シュトーレン『冥王の鏡盾(ディス・パテル)』】

 [カテゴリ]

 ・大盾

 [効果]

 ・VIT+10000

 ・この盾は魔法を反射する

超過機構(イクシードチャージ)

 ・吸転換(コンバート)タイプ・『輝炎万丈(オン・ザ・フレア)』:受けた魔法を吸収し、自身に強化状態(エンチャント)『冥炎』を付与する。『冥炎』状態の対象は全ステータスに補正が掛かり、魔法耐性が上昇し、触れたものに火属性の継続ダメージを与える

 

冥王の死面(アビサルフェイス)

 [カテゴリ]

 ・頭装備

 [効果]

 ・VIT+1000

 ・装備中、対象は火属性または雷属性のブレス攻撃を行える。ブレスの威力・射程・範囲は対象のSTM値によって変わる

 

空母鮟鱇の死面(キャリアーフェイス)

 [カテゴリ]

 ・頭装備

 [効果]

 ・VIT+1000

 ・モンスターのヘイトが向きやすくなる

 

紅蓮海の鰭衣(レガレクス・パーラー)

 [カテゴリ]

 ・胴装備

 [効果]

 ・VIT+4000

 ・この防具の鰭部分は、装備中の対象の意思である程度操作できる

 

深海の暗殺者(サイレント・アサシン)

 [カテゴリ]

 ・足装備

 [効果]

 ・VIT+2800

 ・装備中、足による攻撃時に斬属性の追加ダメージを発生させる。この攻撃は斬撃系スキルの補正を受けることができる

 ────────────────────

 

 ──目出し帽に、ピ○ミン……?

 

 盾は確か、サンラクが同じ名前の物を使っていたから同じように使えるのだろう。胴装備は天女の羽衣みたいな感じで可愛いし──魚素材だけど。足装備もメカメカしくてカッコいい。問題なのは頭装備二種、コイツらの見た目だ。

 アトランティクス・レプノルカ"三位一体(トリニティ)"の素材を使っただろう【冥王の死面】は、ヌメヌメとした嫌な光沢に包まれた目出し帽。そしてスレーギヴン・キャリアングラーの素材を使っただろう【空母鮟鱇の死面】は、額の先から鮟鱇の提灯が立派に主張しているピ○ミンスタイル。

 

 ──癖が……癖が、強い!

 

 素面で装備するには、ちょっとばかり抵抗が強い癖のある見た目。効果は私のステータスにばっちり噛み合っているのが本当に惜しまれる。

 多分、激戦の最中でテンションが上がってる時でもなければ身に付けることは無いだろう……でも、すぐ装備する機会がありそうだと予想できちゃうのが何か嫌だなぁ……

 

月天霊装(プルーク・ラ・ルナ)って重ね着ができるでしょ。だから欲しい時にやれることを拡張できる、特殊効果に重点を置いて作ったそうだよ。実際月天霊装単体じゃ硬くて死に難いだけの装備だからね」

「それが良いんじゃん……まぁ、擊竜蜂装(ポイゾレータ)とは効果が被ってるから勿体無いとは思ってたけど」

 

 アクアリエの言う通り、月天霊装は生存力に特化しているためそれだけでは火力を出し辛い。

 せっかく重ね着ができるのだし、できることが被り気味な擊竜蜂装だけではなく、攻撃性能を伸ばせる防具もあった方が確かに良いのだ。いややっぱりこの見た目は……うん、いつか慣れるさ!

 

 ──擊竜蜂装との重ね着も強いんだけどね?【竜魂解禁】すれば、余程の火力バカ相手でもなけりゃほぼ無敵になれるんだし。

 

「取り敢えず、今納品できるのはここまで。俺のアクセサリーもあるんだけど……調整中の装備の付属品みたいなものだから、シュトーレンの方が完成してから渡すよ」

「オッケー、じゃあ私は試し斬りしてくるね」

「どっか心当たりでもあるのかい?随分と足取りに迷いが無いみたいだけど」

「まぁね。また忘れる前に、やっておきたいことがあるから」

 

 今ので出せる分は最後だそうなので、シュトーレンを待つまでの間に試し斬りに行くことにする。

 行き先は、もう決めてある……一度聞いたことをすっかり忘れてて、二度もサンラクから同じことを聞いてしまった()()の在処。

 

 ──無果落耀の古城骸、古城地下。

 

 晴天流スキルを習得できる場所。

 擊竜、改め『画竜点睛』の今までずっとテキストの無駄になってた効果……いい加減、活用してやらないと可哀想だしね。




 終活開始。
 最終的に全部他人の手に渡るなら、せめて渡して恥ずかしくないものを渡したい。
 今のロンミンはそんな思いでプレイしています。

【アモルパレント・リバイバル】
 アモルパレントの結晶にアトランティクス・レプノルカの『照鏡骨』や、スレーギヴン・キャリアングラーの『幻惑灯』、アーコリウム・ハーミットの『指揮鋏』などを素材とし、淵源の蒼宝珠(ナイツ・オブ・コバルト)を混ぜ込んで生まれ変わらせたもの。
 未練を晴らした先の「再生成(リバース)」でも、新たな持ち主と共に歩む覚悟を決めた「再構築(リビルド)」でもなく、一度死んでこの世に甦った「再甦成(リバイバル)」。
 守る力が伸びた他、反転を司るクターニッドの蒼宝珠を素材としたことで『恩愛』から『憎悪』へ反転し、身を滅ぼす程の攻撃性も得てしまった。

 【憎悪の剣】モードの方が効果が一つ多いのは、反転に使ったクターニッドの力に混ざった『青』の力が大きく、釣り合いが取れていないため。
 対を成すものを以て釣り合いを取り、『神化』することで小さき者を守らんとする『恩愛』と、敵を排除せんとする『憎悪』を両立した真の護り刀として覚醒する。【■■■アモルパレント】
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